黙示録 


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貧困層が倍増! 「年収120万円時代」がやってくる
非正社員率が4割を突破! 貧困率もトルコ、アイルランドに次ぐ第5位だ
  SAPIO 2005年11月23日号     ●小泉改革   森永卓郎(経済アナリスト)
  2002年、「年収300万円時代」というフレーズが日本に衝撃をもたらした。その言葉どおり、日本では瞬く間に二極化が進み、今年OECDが発表した貧困率では世界第5位にまで一気に転落。そしていまや「年収120万円時代」に突入した日本に何が起こるのか。

  日本国民は先の衆院選で小泉自民党を全面的に支持した。それが何をもたらすのか理解していたかどうかは別にして、大半の人々が自ら下流社会に落ち、固定化されることを容認したのである。世界でも希有な超階層社会がもうそこまで迫っている。なぜそう言えるかというと、そもそも03年1月の施政方針演説で、小泉首相は階層社会への移行を明確に宣言しているからだ。
  彼は、日本経済がデフレから脱却するためには「歳入改革」「歳出改革」「規制改革」「金融改革」4つの構造改革が必要と訴え、これらを断行すれば、必ずデフレから脱却できると言った。しかし、その中身を精査していくと、極めて奇怪な改革であることが判明するのである。

 デフレを促進させ、国民を苦しめる4つの改革の中身とは

  第一の「歳入改革」というのは、要するに「増税をする」ということである。
 手始めとして03年5月に発泡酒の税率を上げ、同年7月にはタバコの税率を上げた。04年1月には配偶者特別控除を廃止し、05年1月に老年者控除を廃止し、公的年金等控除を縮小している。さらに来年1月からは低率減税を半減することが決定しており、07年には全廃する方向で議論している。他にもさまざま検討されており、消費税も07年度改正で10〜15%に上げられる可能性が高い。
  竹下内閣や橋本内閣は、消費税の導入や税率の2%引き上げ程度でひっくり返ったが、小泉内閣は高い支持率を維持しながら、比較にならないような空前の大増税を、それも子供をもつ親やパートで働く主婦、老年者など、弱者を狙った大増税を実施したのである。
  増税というのは収入の手取り分を減らすことだから、デフレ対策どころか国民の購買力が落ちてデフレ要因になるということだ。
  第二の「歳出改革」も、具体的には「公共事業を大幅カットする」ということで、地方では建設業者の売り上げが落ちて不況に陥っているので、やはりデフレ要因になる。
  第三の「規制改革」は、「規制を緩和して競争を促進する」ということで、当然のことだが価格引き下げ競争によってデフレを引き起こす。
  第四の「金融改革」はどうか。これは「不良債権処理を加速化する」ことで、実際には過剰債務を抱えた企業をつぶしてハゲタカ外資に売り飛ばしただけで、企業の資産は叩き売られ、従業員はリストラされて、これもデフレ要因になっているのである。
  ではなぜ、小泉首相はデフレを促進させる政策を4つも並べて「デフレ対策である」と強弁したのか。実はここにこそ小泉改革の本質がある。
  デフレが起きる理由は、供給が需要を大きく上回り、モノが溢れて価格が下がるということだ。この状態を是正する方法は2つある。1つは「需要を伸ばして供給に追いつかせる」こと。故・小渕元首相は公共事業をどんどん行ない、減税して国民に購買力をつけてモノを買わせようとした。
  しかし、小泉内閣はまったく逆だ。過剰になった供給をカットして需要に合わせようとしているのである。しかも一律カットするのではなく、生産性の低い企業や過剰債務を抱えた企業を叩きつぶしてきたのである。
  供給者が減れば、やがて需給のバランスがとれる。しかも、生き残っているのは競争力の高い勝ち組企業だけなので、再び日本経済は強い国際競争力を取り戻すというのが基本的な考え方である。

 小泉改革で年収120万円以下の親子フリーターが増加

  問題は、つぶされた企業で働いていた人々の行く末である。会社が倒産して失業した場合、最初の1年ぐらいは失業保険で食えるが、いずれ保険は切れる。
そのあと、中高年の場合は再就職先がない。それでも、彼らは家庭を守らなければならないから、多くの人々は派遣でも嘱託でもパートでもいいから仕事に就くという選択をした。
  04年7月に厚労省が発表した調査結果には、驚くべき現実が記されている。パートなど非正社員として働いている人々の比率は、99年には27.5%だったのが、03年には34.6%と7ポイントも増加したのである。これほど劇的に非正社員の比率が上がったのは初めてのことだ。
  この調査では、非正社員の月給の調査も行なっているが、月収10万円未満の人が37.2%に達している。10万〜20万円の人と合わせると78%である。平均年収はおそらく120万〜130万円ほどであろう。
  年代別では、40代が24.3%でもっとも多く、ついで20代が23.2%、50代が20.4%となっている。親子でフリーターをしているケースも十分あり得る。

  今年2月にOECD(経済協力開発機構)が、日本人にとって衝撃的なレポートを発表した。それは加盟国の貧困率調査である。
  OECDが定義する「貧困率」とは、各国の国民の所得を高い順に並べて、真ん中に位置する人の金額を中央値とし、その半分以下しか所得がない人の割合である。計測可能な24カ国の中で、貧困率1位はメキシコ(20.3%)、2位がアメリカ(17.1%)で、このあたりは常連だ。3位がトルコ、4位がアイルランドと続き、堂々5位にランクされたのが日本(15.3%)である。一億総中流といわれていた10年前は8.0%だったので、2倍近くも貧困層が拡大している。しかも、この調査は00年のデータを基にしているので、05年の現在はとんでもないことになっている可能性もある。

 世界でも稀に見る冷酷非情な階級社会が日本で生まれる

  今年6月に政府税調が出した報告書には「日本の課税最低限は主要先進国でもっとも低い」と書かれている。先進国の中で一番貧乏人に税金を掛けているのは日本で、その上さらに配偶者控除や特定扶養控除の廃止などで、弱者を追いつめる税制が進められようとしている。
  80年代から90年代にかけてイギリスとアメリカがやったことを20年遅れて今やろうとしているのが小泉内閣で、それらの国が経験した市場原理の負の部分に一切手当てせず、冷酷非情な構造改革を進めている。
  しかも、日本の上流階級を構成するのは金を右から左に転がして巨万の富を得ただけの人々。欧米の富裕層のように、慈善事業や社会福祉事業に還元もせず、文化やスポーツへの投資も金儲けの手段としか考えない人たちである。
  この先、下流社会に突き落とされる日本国民の身に何が起きるのか。それはポリー・トインビーというイギリス人女性ジャーナリストが著した『ハードワーク〜低賃金で働くということ』を読めばよくわかる。これはサッチャー改革によって一般市民が落ちていった下流社会に潜入してレポートしたもので、こなしきれない量の仕事をひどい低賃金でやらされ、ただ命をつなぐだけの生活が綴られている。著書の中でトインビーは「カーテンレールを買うことが夢」だと言っている。
  ヒトラーが選挙で勝ち続けて頭角を現していくとき、ドイツ国民はヒトラーに相当ひどい目に遭わされているのに、それでも支持し続けた。人間は弱れば弱るほど、強いリーダーを求めるものなのである。改革の流れは止められそうにない。

●森永氏の論調は多分に小泉内閣批判となっていますが、私がここに取り上げたのは内閣を批判するためではありません。小泉という人物が冷酷無比な人種であるということは知っておく必要があるとは思いますが、いま進められている「構造改革」は、アメリカ(を裏で操る支配層)がわが国政府に命じてやらせていることですので、誰が首相になっても同じ道を歩むことになっただろうと思われます。小泉首相は大変操りやすいという点で、歴代首相よりはアメリカの評価は高いのかもしれませんが‥‥(おかげで小泉首相はブッシュ大統領から親しみをこめて「軍曹!」と呼ばれているとか)。
  要するに、かつては一億総中流と言われ、世界で最も所得格差が少なかった日本社会は、いまでは世界でもトップクラスの「貧富の差の激しい社会」へと変貌してしまったのです。それは、ごく一部の成金的な富裕層を生み出した反面、圧倒的多数の国民はかつて味わったことのない貧困を経験させられています。まさに「日本を破壊せよ!」という「サタンのシナリオ」が実現しつつあるのです。 (なわ・ふみひと)

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