PHONO CARTRIDGE

AUREX C−550U



今や、まるでオーディオとは無縁になってしまったかのように思われる東芝が、
約30年程前に始めたオーディオ機器専門のブランド、オーレックス。

Aurexとは、Audio(音)のRex(王様)という意味だったらしいですが、
東芝の音響事業部の威信を賭けた、素晴らしいネーミングだったと思います。
かつては気合いの入ったハイエンド機を続々とリリースするなど、その名に恥じない
素晴らしいオーディオブランドだったのです。

プリアンプのSY−Λ88などは、当時のオーディオ誌でも高い評価をされて、
高価だったにも関わらず、かなりのヒット作となりました。
また、SR−M99という小型ながら42kgもある超重量級プレーヤーをリリースするなど、
相当に頑張ってはいたのですが、全く採算が取れずに、
撤退への道を選ぶ事になったのは残念です。
家電系のオーディオブランドで、現在も頑張っているのは松下だけとなってしまいました。
思えば、テクニクスブランドは最も早く(昭和40年頃?)現われて、現存しているのですから、
最も長く継続している事になります。
このオーディオ不況のご時世に、こりゃ凄い事です。

さて、このC−550Uカートリッジは、そのオーレックスが凄く頑張っていた頃の
単売MMカートリッジです。1970年代後半から80年代前半の頃の品と思われます。
大手家電系によく見られるOEM生産による商品で、どうやらナガオカ製と思われます。
特徴的なのは、カーボンファイバー製の真っ黒なカンチレバーです。
二重構造となっており、その根元にはアルミパイプがわずかに見えています。
針はムクダイヤのダエン針が採用されて、全体に軽量化された造りです。
しかし、振動子の前後動を防ぐ目的でよく採用されるサスペンションワイヤーは
使われておりません。これは、この時代の製品では珍しい事ではないでしょうか?

スペックをはじめ、正しい針圧値すら不明ですが、1,8g前後で良い再生音を
聴かせてくれます。低域、高域ともそれほど欲張ってはおらず、
どんなジャンルの音楽でも過不足なく無難に再生してくれますが、
特にこのカートリッジならでは、という相性の良い盤があるわけでもなく、印象は薄いです。
構造的には、むしろ付属のヘッドシェルの方が面白く、
マグネシウムモノコック構造&鉛板ダンピング方式により、シェル本体部の鳴きが
相当に抑えこまれています。鉛板はカートリッジの接触面の一部にも入り込んでおり、
非常にこだわった設計だった事が分かります。ただし、指掛け部は鳴き易い様です。

緑透明蛍光色の針ノブが目にも鮮やかですが、その内部の空隙にもダンプ用の
ゴム片が装填されており、設計者のこだわりが大いにつたわってきます。
やはり、あの頃は最盛期だったのですね。大手メーカーが、採算の取れない
こんなちっぽけなカートリッジを手懸けていたのですからね・・・

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