MAINTENANCE

LPのお手入れ


いま新品でLPを入手することは、大変珍しい事、と言えるでしょう。
現在、国内でのLP生産数は、全音楽ソフト生産の、0.03%程度らしいです。
LPと言えば中古盤、というのが当たり前かもしれませんね。
しかし中古盤は「中古」だけに、かなり汚れている場合がほとんどです。
買ってきてレコードクリーナーで軽くホコリをぬぐった程度では、
音溝の汚れはなかなか取れるものではなく、見た目にピカピカの盤でも、
大概「パチパチ」ノイズが、相当に出るものですね。
これこそアナログ盤の味、といって珍重される方も居られる様ですが、
やはりCDに馴れた世代には、パチノイズは敬遠されるものです。
アナログ全盛期を知る世代でも、
当時はこんなにひどいノイズは体験されていないと思います。
手入れの行き届いたLPはそれほどノイジーなものではありません。


新品の盤の封を切り、いきなり針を乗せてもほとんどノイズが発生せず、
おおやはり新盤だ、と感動しませんでしたか?
その後10回、20回と再生回数が増えるにつれ、徐々にパチノイズが
増して行き、レコードクリーナーでゴシゴシこすればこするほど
チリが音溝深く潜り込んでゆき、ますますノイズがひどくなって・・・
これは静電気の仕業です。

LPは正しい扱いをしていれば、たとえその後50回、いえ100回
再生したとしても、それほどノイズが激増するものではないのです。
盤、針先の清掃、針圧調整、針先磨耗に気をつける、程度の気遣いだけで充分です。
これらを怠ると、盤の磨耗やノイズ増大が一気に早まります。
トレース2回目には、初回と同じ音は聴けなくなってしまいます。


中古盤の場合は、やはり前オーナー氏の扱いの良否が、盤質に大きく影響しています。
磨耗針で再生されていたものは、相当歪みっぽい再生音となることが多いのですが、
針先形状を違う物に変えると若干改善される場合もありますので、
試してみる価値があると思います。
ポピュラーな円錐針(俗に丸針ともいう)や、ダエン針でトレースした盤なら、
音溝の磨耗箇所に触れにくいと言われる、ラインコンタクト形状の再生針で
再生すると良い結果が得られる場合があります。


一方、中古盤特有の盤の汚れについてはどうでしょうか。
静電気により長年引き付けられたホコリ、チリなどが堆積しているもの、
静電気対策として塗布されたレコードスプレー等が、雑音の原因となっているもの、
タバコを吸われる方の場合はヤニによる汚れ、湿度の多い所でのカビ、
盤面についた指紋なども、時間が経過すると厄介な汚れとなってしまっています。
更に、中古盤やさんが気を遣って、何らかの薬剤で盤面をピカピカに磨き上げて
くれている場合がありますが、こういったものが意外と大きなノイズを出す場合が
あるんです。一体、何使って磨いてんのかな?


目に見えない場合でもこびり付いた汚れが付いている場合は、レコードクリーナーで
磨いたところでほとんど効果はありません。ホコリは取れても汚れは取れないのです。
盤面がキレイでもパチパチノイズがひどい盤がありますが、これらは音溝の奥に
汚れがこびり付いている可能性が大です。
汚れを取るには「洗浄」、これがもっとも有効です。すなわち水洗い。

盤面に水道水を流しつつ、ベルベットクリーナーで音溝をこするのです。
盤の汚れによっては、中性洗剤を併用すると良いかもしれません。
油性の汚れやカビなどの場合は洗剤が効果的です。
なお、当然ですが作業環境は広く取って、盤面にキズなど付けぬ様、
充分に注意して下さい。盤の下には、濡らしたタオルなどを敷いておきますと
盤も滑らず、安全に作業できます。


洗浄後は自然乾燥させると良くありません。
水滴の跡が残り、雑音が残る場合もありますので、乾燥する前にかならず拭き取ります。
LP1枚あたり、ティッシュペーパー3枚で完全に拭き取り出来る筈です。
レーベル面からあら拭き開始、3枚目は仕上げ拭きです。
音溝に沿ってやさしく丁寧に吹き上げて行きます。

こうして拭き取り上げた盤面は、約5分後には再生可能な状態まで乾燥します。
レーベル面の乾燥にはやはり時間が掛かり、季節にも依りますが1時間〜半日程で
乾燥すると思います。乾燥がいい加減ですと、保管中のカビの原因となりますので、
ご注意下さい。


レーベル面は紙ですから、水に触れればそれなりに膨潤しますが、乾燥後は
ほぼ元通りになりますので、神経質になる必要はないでしょう。
ただし、1970年代以前のレーベルでは、水溶性のインクが溶け出す場合もあります。
下に敷いたタオルに色移りするのでわかりますが、レーベルそのものが大きく
色あせするものではありませんから、これも問題ないでしょう。
盤面、レーベル面とも、製造時には大きなプレス圧力が掛かっているものなので、
LP盤の水洗い、なんて荒っぽい事をしても、意外と丈夫なものなのですね。


さて、洗浄後1回目のトレースの際には、針先に引っ掛かるホコリに注意して下さい。
ほとんどが、拭き取りに用いたティッシュの繊維クズだと思います。
2回目以降のトレースでは掘り出されなくなりますのでご安心の程を。
どうですか?だいぶS/Nが良くなっている筈ですね。
針先に着いてくるゴミが極小になっていると思いますし、こびり付く性質の
ゴミがほとんどなくなっていると思います。
スタイラスチップが、ブラシだけで充分にキレイになるハズです。


あらゆるレコードケア製品よりも効果が高いと感じたのはこの「洗浄法」だけでした。
汚れを均一に延ばす方式とは原理的に全く逆のアプローチですが、
唯一正攻法かな?、とも思います。
全自動レコード洗浄機からヒントを得た手動洗浄法ですが、まずは傷んでしまってもよい
盤でお試し下さい。文面では書ききれない細かなノウハウもありますが、これらは
洗浄に慣れていただくことで自然に身につくものと思います。


なお、洗浄後の普段のホコリ取りに用いているクリーナーを紹介致します。
オーディオテクニカのAT6012という超ロングセラー商品です。
一般的なベルベットクリーナーとは違い、植毛が横に寝せてあります。
洋服のホコリを取るエチケットクリーナーというのがありますが、
まさにあの原理をレコードクリーナーに応用した製品です。
故に、クリーナーにほこりが引っ掛かる構造となっていますので、盤上を1周させるだけで
確実にホコリが取れます。これはなかなか気持ち良いものです。
簡単にほこりが取れるために、盤を必要以上にこすることが無く、
静電気も殆ど発生させないというメリットもあります。
また、空気がとくに乾燥する時期には、付属のクリーナー液を注入して湿式として用いれば、
さらに効果的ですね。


特に汚れていた盤の洗浄結果を、実際に音として聴いて頂きましょう。
昭和40年代前半頃の物と思われる、日立ステレオ試聴用レコードと、 昭和53年の原田真二のアルバムを洗ってみました。
洗浄前後の再生音を比較してみて下さい。
mp3ですので音質は良くありませんが、ノイズ量の変化だけを聴いて下さい。



「ロシアより愛をこめて」 洗浄前(705KB)  洗浄後(705KB)

「BEGINNING」       洗浄前(912KB)  洗浄後(911KB)

 

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