詳細書評

サイキック・マフィア

―われわれ霊能者はいかにしてイカサマを行ない、大金を稼ぎ、客をレイプしていたか

[2001/07/30 Up]

"livedoorブックス "で購入


 この本の振れ込みは「改心した霊媒師の告白」との事でしたが、読み進むうちにその悪辣な手口や神経、発想にかなりの嫌悪感を感じました。そして、もしやこの告白自体「見せかけの改心」ではないかとすら思えてきました。その根拠は、彼ら霊媒の行動原理はすべて“金儲け”で、それ以外のなにものでもなかったからです。もしや、この暴露本の売上目当ての告白では?との疑いすら持っていました。著者にして告白者のM・ラマー・キーンは、それまでにあまりにも多くの人を騙し、あまりにも多くのものを奪っていたからです。

 しかし、「8.決別」「9.サイキックマフィア」の各章で、その改心が本物の様に感じられる文章があり、また、それまでの章はこの最終章2つをより深く考えさせる前振りと言っても良いかもしれません。(金儲けだけだったら、こんな暴露本を出すより霊媒を続けていたほうがずっと儲かる)

 先にも述べた様に、最終章以外の章も「前振り」との言葉で片付けらず、とても興味深いものです。霊媒に限らず宗教、そして時には友人関係なども「心のクスリ」と言って良いでしょう。しかし、この「クスリ」も根本的にその心の病を治す治療薬もあればプラシーボ効果のみを期待する偽薬もあります。そして霊媒は副作用も知らされずに服用される麻薬と私は考えます。根本的な効果は無く、幻覚を見せ現実から逃避させ、そして利用する人の財産を食潰すのに十分なお金が必要だと言う点で、麻薬と言う言葉以外に例えが浮かびません。本の中に「息子を亡くした母親」に霊媒師が息子の霊を呼び出し再会させるくだりがありました。もちろん息子の口からは母親に対する想いと、再会を取り成した霊媒師への感謝、そしてそれに見合う謝礼を払う事。次第に疑い出す(だんだん話しの中心が謝礼に移るものだから)母親を犯罪すれすれのトリックを使い納得させる事に成功したり…。

 とてもやるせない気持ちにさせます。例え法外な謝礼で、嘘であっても息子と再会できた母親は幸せだったのか?(逆に大金を払っても再会を実現(!?)させられる人は他にいないのですから)しかし、このもやもやもキーン自身の言葉で解決しました。

『霊媒に依存しているかぎり、人はぜったいに自立する力を見つける事はできない。そして、その力がなければ、人生など生きるに値しないのだ…』

 霊媒の「個人情報の取得」「失せ物の物品引寄せ」「空中を舞うトランペット」など、マジックの観点から見ればかなりちゃちな物がほとんどです。「暗闇の中で黒い服を着て…」などは、マジックと比較して、どうかと思います。「皆さん、3秒だけ目を閉じてください」というマジシャンが何かやっても面白くないのに、交霊会では歓迎される様です。

 この本が出版されたのが97年ですが、最初に出版されたのは76年だそうです。当初、知らずに読んでいたので「えらく古い話だなぁ」と思っていましたが、時代は変わっても本質は今も変わらないことを痛感させられます。特にキーンの言葉には本当に重みがあります。

 また、スティーブン・マーチン主演の「奇跡を呼ぶ男」(1992年リチャード・ピアース監督)という映画を思い出しました。この映画自体リメイクですが、いつの時代も宗教の名を騙るペテン師は存在するのでしょう。内容はニセ伝道師が奇跡を起こし、寄付金を騙し取る話ですが、ラストで本当の奇跡を起こしてしまい、愕然としながら良心の呵責にさいなまれ、移動教会(実状はエセ宗教サーカス団)を去っていくと言う話です。

 総じて、この本の中では2つの啓蒙をしています。「ペテンに引っかかるな!」との警告がまずあり、次に今なおペテンを続ける霊媒師に対する元同業者の救いの手の様にも受け取れます。人を騙しつづけながら、それを生業としている彼らは、良心を無くしてしまうか、麻痺させざるを得ない。その結果、精神破綻を招き、アルコールや薬物依存に陥る。よく「霊媒師は他人の不幸を背負い込み、自らは悲惨な最後を遂げる」と言われますが、実際はこういう理由からかもしれません。この点で、某喫茶店のマスターにも読んで欲しいところです。(が、ただ単にレパートリーを増やすだけだったりして)

 監修には「と学会」のデバッガー(超常現象などを科学的に検証する人)でありJAPAN(通称超常ウォッチャーズ)代表の皆神龍太郎氏で、巻末の参考文献(これはオリジナルの「Psychic Mafia」のものかもしれませんが)の豊富さと、その一口コメントは、今後同種の本の購入に役立ちそうです。

 当初はこれ以上に詳しく内容を書いていましたが、やはり先に読んだ人間がアラスジや見所を書くのも無粋なので、この程度で。


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