詳細書評


邪馬台国はどこですか?

[2001/07/30 Up]

"楽天ブックス "で購入

"livedoorブックス "で購入

 私は小説はほとんど読まず、さかのぼると中学生の頃に星新一のショートショートにはまっていたものの、それ以来はぱったりと興味が無くなりました。が、私の父に薦められ、まぁどんなものかと思いながら読んでみたのがこの本です。大傑作です。

 この小説は、いくつかの章に分かれていますが、一つの章が一冊のトンデモ本になりそうな内容が盛りだくさんのお得な内容です。なお且つ、(こちらが予備知識がなく、明確な批判ができないので)つい信じてしまいそうな、実に巧妙なものです。多分、自説に不利な証拠などは隠しているのかもしれませんが。

 アラスジはあるバーに集まるフリーライターと新進気鋭の女性歴史学者、その指導にあたる教授、間に入りオロオロするバーテンダーの4人(だけ)で、些細なきっかけで歴史の解釈や推理をもとに独自の理論と学会の定説をぶつけ合うと言うものです。従来の学説で当たり前となっている話が、そのフリーライターの切り口ではトンデモ無い解釈となります。

無粋を承知でいくつか例を挙げると、

○邪馬台国はどこですか?:今の岩手県、八幡平
○聖徳太子は誰ですか?:推古天皇の良い部分のみを擬人化した架空の人物
○謀反を起こしたのはなぜですか?:明智光秀が、織田信長に頼まれ、自殺を幇助したのが本能寺の変
 いきなり結論を書くと荒唐無稽の話ですが、もしこれが小説ではなく、まことしやかに書かれたものだったら(何度も言うが)己の無知から信じてしまいかねないと思いました。(いや、もしや真実では?)

 これは(学会などの)権威ある人々からの反論を避けるため、もしくは作者自身荒唐無稽な推理を楽しむのが目的で小説という形を取っているのかと思います。トンデモ本を読んでみたい。でも、この歳になってUFOの本なんかエロ本を買うより恥ずかしいと感じるひとにはお勧めです。私も安い単行本なのでいろんな人にあげたり貸したりしていますが、概ね好評です。

 また、そのあとがきも見逃せません。実はこの本は、「第3回創元推理短編賞候補作」であり、この本の題名にもなっている「邪馬台国は…」の章がこの賞への投稿作品です。残念ながら大賞は逃しましたが、選出者が「これを推理小説の分野にいれる事が妥当か?」との疑問を抱えつつ、最終選考に推したいきさつと葛藤が書かれていますが、他の応募作品が「嵐の中の洋館」物、「学園ミステリー」物ばかりで食傷気味だったとのこと。(このあたり、「じっちゃんの名にかけて!」がかなり影響していた様です)審査員の方々も、一様に難色を示しつつ、それ以上に興味をそそられた傑作です。

 ただ、著者の鯨統一郎氏のほかの作品「隕石誘拐―宮沢賢治の迷宮」「なみだ研究所へようこそ!―サイコセラピスト探偵波田煌子」と(小説を読まない私にしては)積極的に読んでみましたが、どうも「邪馬台国は…」の印象が強すぎて(面白かったのですが)やや物足りない感じがして残念です。



「Elwoodの選んだ本」に戻る