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「こっくりさん」と「千里眼」―日本近代と心霊学

[2004/07/11 Up]

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 近代日本の幕開けとされる明治時代。文明開化の波に乗り、日本人にとっては初めての(本格的な)科学が上陸してきます。しかし、何事も新たに接するものは「夢」と「希望」であるとともに「拒絶」と「恐怖」という一面も兼ね備えています。そんな“得体の知れない”科学がそれまで「迷信」と見なされた「霊」を「科学」的な対象として蘇らせたてしまいます。また、輸入された科学の中に混じった“不純物”である「テーブル・ターニング」「ウィジャ盤(ボード)」「プランセット」等がやがて「狐狗狸(こくり/こっくり)さん」へと変貌を遂げ全国に広まるとともに、「メスメリズム」「催眠術」の呼び水となり「千里眼」の流行へと発展して行きます。

 当時、こっくりさんと言う不思議現象を目の当たりにした人々は、当然のごとくその原理を解明しようとします。しかし、そのアプローチの仕方一つで科学にもなればオカルトにもなります。科学とオカルトの境が曖昧な事は今も変わりませんが、当時も「電気」という魔法がその説明に歪んだ形で使われました。いわゆる「人身電気(Human Electricity)」、ひいては「メスメリズム」「スピリチュアリズム」などがそれです。

 現代でも様々な形で影響を与える事となるフランツ・アントン・メスメルによる“万能治療法(?)”であるメスメリズムの原理とされた動物磁気は人身電気として「こっくりさん」を説明する手段として用いられる一方、催眠術としての側面では超能力開発、特に千里眼の潜在能力を引き出す為に注目を集めます。

 こっくりさんの流行によりオカルトを科学と区別つかない状態で受け入れてしまう土壌が出来てしまった当時の日本を千里眼は容赦なく襲います。千里眼の流行とこれに対抗する科学、そのせめぎ合いの様を十分なまでに記した貴重な一冊です。
 特に千里眼実験での両陣営の感情的対立も人間味を感じるとともに、オカルト・超常現象への接し方の参考になります。

 また、巻末には索引があり、調べものにはとても便利。資料としての価値も十分!



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