確率で嘘をつく

[2003/05/06 Up]


ロシアンルーレットは何番目が有利?
超能力実験のこじつけ
確率と統計の盲信

ロシアンルーレットは何番目が有利?

 明確に「確率論」を専攻したわけではない私には極々基本的なことしか解説できませんが、 意外に直感に惑わされ、その基本的な説明で疑問が氷解する場合がありましたので少し確率の 話をしましょう。

 ロシアンルーレットを例に話をして見ましょう。
 6連発のリボルバーに一発だけ弾丸を装填し、6人の参加者が順次自分のコメカミにあてて引き金を 引く場合、何番目に並べば一番有利でしょうか?

・一番最初が有利
 最初は1/6の確率でしか弾が出ないから。最後の人なんて、死ぬのがわかってて引き金を引く事になる!

・一番最後が有利
 とにかく自分まで回ってくる可能性が低く、それまでに誰か運の悪いやつが死んでくれるはず!

 相反する意見なので、どちらかが確実に間違っていることは容易に想像できますが、どちらが 間違っているか?それとも両方間違っているのか?答えはどちらも間違いで、どの順番であろうと 1/6で弾が出る確率は一緒です。実際に計算してみましょう。

 まず、確率の基本から話をすると「絶対に起きる」状態を1となり、「絶対に起きない」状態は0となります。 その0から1の間の小数点でその事象が起きる可能性を表します。

 さて、先の一番(最初/最後)が有利の両意見を考える上で、“引き金を引かないといけない確率”と “弾が出る確率”の組み合わせで評価します。これは、最初の人は確かに弾の出る確率は低いが最初に 引き金を引かなければならない、つまりは確率1で引き金を引くこととなる。最後の人は自分が引き金を引く 確率が低い(その前に弾が出てしまえば自分に回ってこない)が、まわってきた時は確実に弾が出る確率が 1の状態で順番がまわってくる事を考えればわかると思います。

 説明が長くなりましたが、表にしてみました。

順番 1番目の人 2番目の人 3番目の人 4番目の人 5番目の人 6番目の人
引き金を引く確率 1 5/6 4/6 3/6 2/6 1/6
弾が出る確率 1/6 1/5 1/4 1/3 1/2 1
最終的確率 1/6 1/6 1/6 1/6 1/6 1/6

 ご覧の通り、結論は「どれも一緒」です。最初の人は必ず引き金を引くので「引き金を引く確率は1で 「弾が出る確率」が1/6、両者を掛け合わせた結果が「1/6」となります。2番目の人は1番めの人が「死なな かった」場合に順番がまわってくるので「引き金を引く確率」は「5/6(=1-1/6)」となります。次に「弾が 出る確率」は6連発のうち1発が残り5発、そのうち1発が出る確率なので「1/5」。よって両者を掛け合わせた 結果が「1/6」となり、3番目の人は1番目、2番目の人が生き残っていた場合に順番がまわってくるため、 「引き金を引く確率」は4/6、「弾の出る確率」は1/4、以下、同様の計算をしていくと・・・結局どこも一緒です。


超能力実験のこじつけ

 さて、前章の様な疑問を抱えていた人も、実際に計算に基づく数値を見ることにより納得していただけたと 思います。では、今度はロシアンルーレットではなく、「5枚のカードのうち、1枚のカードを当てる」という 透視実験についてです。  この場合、「アタリを1回目に引き当てる」確率と「ハズレを引き続け、最後にアタリの1枚を残す」確率は どちらが低い(つまりは難しい)でしょうか?前章で書いた計算方法で行けば「どちらも一緒」が答えです。

 しかし、一時期「超能力養成方法」として前述のカード透視がTV番組などでも取り上げられ、行われていました。 方法としては「ハズレを引き続け、最後にアタリの1枚を残す」ことを目的とし、訓練していました。

 なぜ確率が同じなのに後者の方法を採用したのでしょうか?

 私なりの考察が入りますが、これは“訓練の成果”を見るためで、3回の試行に対して実験の結果をどう評価 するかの手がかりを無理やり作ろうとしているからではないかと考えています。ここでこの実験の結果を表現する 方法として(x,y,z)と言う表記をします。x,y,zがそれぞれ1回目、2回目、3回目の各試行で何枚目にアタリが 出たかを意味するとします。したがって(5,5,5)と表記された場合“大成功”と言う訳です。

 超能力などの要素が無ければ全ての組み合わせで全125通りがまんべんなく起きるはずですが、能力があるのでは ないかと“こじつけながら”この3つの数字の並びを評価すれば、どのくらいの確率で「超能力の保持可能者」が 現れるでしょうか?

 当然、(5,5,5)は文句無く能力者と判定しますが、(N,N,N)と3回とも同じ数字が出た場合も「何かある!」と なります。(5,5,4)などの“惜しい”パターンも番組では能力者の可能性ありと拾い上げていました。

 徐々に良くなっていくパターンは「能力が開発されつつある」とし、徐々に悪くなっていくパターンでは「疲れが 出始めた」と。だからこそ、こじつけでも考察が作りやすい「ハズレを引き続け、最後にアタリの1枚を残す」という 手法が必要だったわけです。

 ・・・これって私の言いがかりのように思えるかもしれませんが、この能力開発方法を提案した(自称)超能力者は 別の番組で「双子のテレパシー実験」を行い、デタラメな考察をしていました。双子にそれぞれ1/5の選択をし、 両者が一致するかどうかを実験し、7組の双子の中でみごとに成功したのは2組。それに対してその超能力者の 出した結論は・・・

 「確率から言えば20%ですが、2/7≒29%より有効な結果が得られました」と。

 もうお分かりだと思いますが、大雑把に言って7組しか実験に参加していないのなら(全て約ですが)0%,14%, 29%,42%・・・など、8通りしかありませんし、机上の計算どおりの20%という答えが出ない事を考えるとこの結果は 「計算どおり」「確率どおり」としか言いようがありませんし、少なくとも「双子のテレパシー」の存在の根拠 にはならないでしょう。


確率と統計の盲信

 今度は逆に「確率は公平だ!」と言う原則を拡大解釈してしまったことによる誤りについてです。

 怪奇作家のエドガー・アラン・ポーはサイコロを5回振り一度も6の目が出なかった場合、次にサイコロを振った 時の6の目の出る確率は他の目の出る確率よりも高いと考えました。もちろん解説するまでも無くこの考えは間違いです。
 そりゃそうです。振られたサイコロが過去の出目を記憶しているはずはありませんし。

 そう、確率は如何なる場合も公平に作用します。過去の事象に左右されることも無ければ、未来の事象を左右する 事もありません。しかし、それを統計と組み合わせると微妙な不協和音を奏でてきます。
 例えばサイコロを599回振って1〜5が100回、6だけが99回の出目が記録されていた場合。先のエドガー・アラン・ ポーの理論を笑っていた人もけっこう彼と同じ思考に入ってしまうかもしれません。
 かく言う私も他人事ではありません。特にギャンブルに関しては似たような思考をしてしまいます(笑)。

 続いて確率の偏りについてです。100回のコイントスで表が出る確率が55%を超える可能性と200回のコイントスでの それはどちらのほうが可能性が高いでしょうか?正解は同じで・・・はありません。100回の方が「表が出る確率が55%を 超える可能性」は高いと言えます。

 確率の偏りが発生する可能性は試行回数が少ない場合により顕著に現れます。前述の例を100回ではなく9回にすれば わかりやすいでしょう。8回まで裏表が同じ回数(表の出る確率50%)の状態から次に表が出れば55.555・・・%です。更に 極論を言えばコイントス1回なら?

 前章の双子のテレパシー実験でもわかるように、確率の話をするのに統計と絡めてしまった場合にはそのサンプル数 にもきちんと注目する必要があるでしょう。


PS)同様にTVや新聞などでグラフが出てきた場合、その軸に書かれている単位と目盛りをきちんと見ておくことが 必要です。以前に人気犬種の統計である犬種の飼育頭数の伸び率が他を圧倒していましたが、そもそも日本に2〜3匹 しかいなかった頃と比べていたのが原因でした。比較したのが数年前でしたので、順調に繁殖しただけでも軽く1000%UP という結果になるんですけどねぇ。

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