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2002/07/07【音楽短評】ムーンライダーズ『ダイア・モロンズ・トリビューン』

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2002/07/07【音楽短評】ムーンライダーズ『ダイア・モロンズ・トリビューン』

Moon Riders / Dire Morons Tribune
昨年の冬に出たアルバム。出たころからチェックしていたが、 家で一定の場所を占めるCD群を考えると、購入に踏み切れずにいた。しかし、高校生のときに友人の家で聞いてムーンライダーズ『カメラ=万年筆』を聞いてショックを受けて以来、20年近くにわたってムーンライダーズを聞き続けている身としては、「ムーンライダーズを聞かずして何が私の人生か?」と啖呵を切って、結局買うことにしたのだった。正解だった。なにがしかのスペースや財貨とひきかえに、私の幸福は増進した。

何はともあれ、まずをもって〔鈴木〕慶一の声が好きなのである。

慶一の声は、客観的には音程があやしいときがあり、矢野顕子らとやっているビューティフル・ソングという企画では、矢野や大貫のような音程の確かな〈外部世界〉と同じ平面におかれることで、慶一の声は「きびしい」ものになってしまっている。私としては、慶一やムーンライダーズにそうした「普遍性」は期待しておらず、いってみれば、自分たちで小屋をかけてそ
こに自分たちの世界を展開してくれることを楽しみにしている。その意味でとても複雑な心境である。ただ、本人が楽しそうなのでいいかな、と思うことにしている。

今回のアルバムでも彼らの小屋がかかっており、慶一の声はとてもいい。
また、ムーンライダーズは、男子高校生が集団でもりあがっているようなコーラスだけでもたまらない。これは『カメラ=万年筆』をはじめて聞いたときから変わらない感覚。

これらに加えて、今回のばあいは「実存」や「人生」との微妙な距離感、浮遊感が顕著だと思う。ムーンライダーズのアルバムについて、私はどの1枚が一番いいといったような聴き方はしていないし、できないので、今回
のものもそういう評価はしないが、しばらく何度も聞いていたい。


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