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2002/05/25 【図書受入記録】御厨貴『オーラル・ヒストリー』

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2002/05/25 【図書受入記録】御厨貴『オーラル・ヒストリー』

御厨貴『オーラル・ヒストリー』中公新書
宗教研究の場にある者にとって、オーラル・ヒストリーという言葉がまずもって呼びおこすのは、ライフ・ヒストリーや「内在的理解」という言葉だろう。教団をはじめ、ある場で成立している〈意味〉を理解するための方法として、インタビューはとらえられることが多い。
政治学者の書いたこの本にそういったものを求めると、それは全く裏切られる。ここでの対象は政治における意思決定の具体的な姿を明らかにすることであり、政治家の信念といったものものは、どちらかといえば二次的な部類に属する。

ある意味、眼からウロコ、というかふだん見聞きしている調査と懸け離れた新鮮さがここにはあった。例えば、インタビューは複数、だいたい3人くらいで行うのが適切、といった指摘(その背景には、諸般の合理的理由があるのだが、ここではふれない)には、他方で人文学のフィールドワークがかかえる、調査の客観性をめぐる問題が想起され、目標が異なるとこんなに方法意識が違うのかと驚くとともに、何か重要なヒントを得たような気にもなったりする。御厨氏は具体的な成果を世に問うているだけに、こうした方法論に関するコンパクトな書も説得力のあるものになっている。

出てからしばらくたっているのだが、このあいだ非常勤先の書籍部で偶然にみつけて立ち読みし、1週間考えて次の週に講義に出かけたときに結局買ってしまった本なので、とりあえず紹介。


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