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2002/03/26 【図書短評】川津幸子『ビンボーDel.』

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2002/03/26 【図書短評】川津幸子『ビンボーDel.』

本の短評、ただし料理本。
川津幸子『ビンボーDeli.』
この本が最近とてもお気に入り。
夕方、子どもと遊びながら夕食の準備をする身としては、 まずレシピがコンパクトでなければならない。子どもの予測できない動きのまえに、文章を長々と読んでいるヒマなどないのである。この本では3センチ×5センチ程度のスペースにレシピが箇条書きにまとめられている。必要最小限にしぼりこまれているその文章はすてきであるとともに、非常に実用的。

レシピの条件、その2。厳格に時間順に書かれていること。子どもにかまっていたり、ちょこちょこと雑事が入ったり(ほら、そんなこと書いているあいだに、新聞の集金が…。)する身にとって、レシピ全体を読んで、時間的な前後関係を自分で把握して、理解して…などということをやっているスキはない。この本は、その点も自覚的である。朝日新聞の休日に連載されている、和食の紹介コーナーとは大ちがいである。こちらのほうも、写真が食欲をそそり、わたしもそれにそそのかされていくつか作ったが、手順がうっとうしい。というか、新聞の切り抜きを見ながら料理するのだが、いちいち文章で書いてあるものを読んで理解して、あ、これは先にやっとくべき作業じゃん、もう煮ちゃったよ…、などと行きつ戻りつせねばならず、やたらいらいらするのである。

これほどうだうだ書くのなら、いっそ檀さんの本くらいまで行ってほしい。檀さんの本は見ながら作ろうとは思わないから。(わたしは自分でカード
にまとめなおしていたりする)

以上は、基本。で、そのうえで『ビンDeli.』(うちでは略してこう呼ぶ)がすぐれているのは、おいしいものが簡単に作れるからである。中華料理店で食べたおぼえのあるゆで豚やスペイン風卵焼き、トマトのプロバンス風なんちゃらとかが、ごくごく簡単にできる。最後のものなんて、ニンニクとオリーブオイル、トマトぐらいの材料で、生トマトからは遠くへだたった食べ物になるのである。毎日の食事だからこそ、食べ手としてはともかく、作り手としてはあきる。それをやる気にさせるものが、この本にはある。

本のつくりはとてもしゃれてて、それゆえわたしは最初敬遠していたのだが、しゃれているだけでなく、非常に実用的なことは作ってみてはじめてわかった。

さすがに調味料はいろいろなものが必要となる。(うちでは家人がすでにほとんどを用意していたので、わたしは苦労しなかったが)でも、ある程度限られているので、その日の一品の材料を買うときにあわせて購入していけば、いずれそろうと思う。

「ビンボー…」というわりに本の値段が安くないのが購入をためらわせるが、もとは十分とれる。ぜひ立ち読みして、好きなレシピを暗記して、家で一度作ったら、きっとほしくなるのでは。

とにかく、おいしいものを作って食べよう。


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