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2000/05/12 【音楽短評】 岡村靖幸『真夜中のサイクリング/なごり雪』

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2000/05/12 【音楽短評】 岡村靖幸「真夜中のサイクリング/なごり
雪」

○岡村靖幸「真夜中のサイクリング/なごり雪」
このディスクを初めて耳にしたのは、深夜の吉祥寺、 ヴィレッジ・バンガードだった。一瞬、山崎まさよし か、と思ったが、なにかグニョグニョしたその感触に 岡村の名前がすぐに蘇ってきた。10年ほどまえの活躍 期にはラジオで聞く以外、まともに聞いたことのなか った岡村だが、大音量でかかる新曲を聞いて、あのこ ろと比べて何かが大きく変わっていることが伝わって きた。
山下達郎の「ヘロン」が出たとき、その何ともいえない息苦しさに共感した。岡村のこのディスクに対する感動もそれに通じるものがある。すっきりしないことをまっとうに歌いあげること。絵空事のようにさわやかな世界や、逆に演技にしか映らない悲観的で絶望 的な世界に安住することなく、歌うこと。それがこの 岡村の最大の魅力であり、彼が歌わなければならないということ、そのものが姿を現している。ことばがあ のグニョグニョとした形で歌われなければならないこと、今はそれが一つの必然としてはっきりとわかる。 私は以前はそれをポーズとしてしかとらえてこなかったが、彼にとっては最初から一貫してそうだったのかもしれない。
この新譜についての世間での評価はあまり聞かれない。しかし、このすごさはいずれ世のなかにしみわたっていくことだろう。


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