2001年夏のテレビドラマ「ウソコイ」で彼女が歌った主題歌「セパレート・ウェイズ」がきっかけだった。
「Separate Ways」
きらきらと輝くようなピアノの下降音に乗って歌うサワリのところとか、低音から入るイントロのところとかがとくにきれい。フェイの日本語も何かかわいいし、軽やかな、そしてていねいな歌唱もいい。
○「夢中人」のアルバム。
「夢中人」
ちょっと長めのわくわくするような前奏から最初のテーマが始まり、起伏の激しい魅力的なこのメロディーを、彼女はていねいにこなしている。和音の進行もリズム楽器も魅力的。
「恋する惑星」というおかしな映画も見た。スッチーに失恋した男がビール瓶に向かってうだうだと愚痴をこぼしたり、引き出しに入っているシャツに「そんなところに隠れてないで、現実に立ち向かえ」などと説教したりする、ヘンなセリフが笑えた。このアルバムの「夢中人」は映画の中で彼女が歌っているのと同じバージョン。
ライブ・バージョンのCD「香港シーニック・ツアー98〜99」では、一度繰り返しを省略して短くなっている。ほかに北京語バージョンもあり。
元歌のザ・クランベリーズの「ドリームズ」も聴いてみた。作曲者のドロレス・オリオーダンの歌もすばらしい。フェイのはこれにほとんど手を加えず、単に英語を中国語に置き換えただけ、のようだ。
「流星」
短調の、起伏に富んだ見事なメロディーを、テンポのよいリズムに乗せながら、短調の和音の魅力をありったけのテクニックで聞かせてくれる。「合唱上がり」の歌好きとしてはこういう和音の展開はたまらない。
ことに、
我有一個希望(ウォ・ヨー・イーゲ・シワン)
のところのレの臨時記号♯がすごく印象的。
その前の
我是一顆流星(ウォ・シ・イーカ・リュウシン)
のところの、ミ・ラ・ミ・ラ・ミ、という単純な音型がまた対照的に美しい。
この曲は「フェイ・ウォン・バラード・コレクション」というアルバムでも聞いたが、こっちは長調の前奏で始まったりしてかなり印象が違う。ぼくには、「夢中人」
のアルバムに入っているバージョンのほうがいい。
○「チャン・ヨウ(唱遊)」のアルバム。
「ラブライフ・感情生活」
はフェイの作曲。中国的なメロディーで始まる魅力的な曲。短調のなだらかなメロディー、半音上がってまた半音下がるという単純な音の上下が美しい。東洋的な印象の効果音を使ったバックも素晴らしい。
「イマジネーション・臉」
も彼女自身の作で、いきなり優美なメロディーから始まり、しっとりと情感たっぷりに聞かせてくれる。高音の美しいフェイにはぴったりの、高い音域で上下するメロディーがとても美しい。
ちなみにこの歌は「香港シーニック・ツアー98〜99」にもあるが、歌詞が違うから、ライブ盤が広東語で、「チャン・ヨウ」のは北京語? でも繰り返しのところだけは歌詞が同じ。今のところ謎。テンポが遅いので、一緒に歌いながら、なんとか歌詞にもついていけるようになった。
「フライアウェイ・飛」
「夢中人」や「流星」とともにぼくの第一のお気に入り。フェイの歌うゆったりとしたメロディーの向こうに、ずっと遠くから聞こえてきて少しずつ音量を増し、また消えていく美しいバックコーラスがからむ。
ゆったりとベースが入って来るあたり、静かに淡々と刻まれるリズムも美しい。折り返して最初に戻ると、主旋律とは別の、不思議な笛の音がかぶさって、二つの別々のメロディーがしっとりと溶け合って流れ始める。このあたりが一番美しいところ。
そしてソの音ばかりを続けるバックコーラスが静かにふくらんで、
看日落的斜陽カンリルォーデ・シェイヤン…
のあたりがクライマックス。じっと集中していると、淡いピンクの花が視界いっぱいに広がる桃源郷に、天女の声が降り注ぐような、中国的な幻想の世界。名曲、といっていいと思う。
○「フェーブル」のアルバム
「カンブリア紀・寒武紀」
がいい。フェイの作曲で、「ラブライフ・感情生活」「流星」と並ぶ短調の名曲。意表をつくメロディーの展開と、美しい半音の上り下りはフェイのお得意らしい。
「セパレート・ウェイズ」や「夢中人」の印象からは、フェイにこんなにたくさん短調の曲があるのは意外だった。でも彼女には日本の演歌をたくさん聞いた時期があったそうなので、もしかしたらそんな影響もあるのかなと思う。
○「香港シーニック・ツアー98〜99」
「堕落」
が気に入っている。フェイの作曲でテンポのよいポルカ。4小節ごとに動いて行く単純明快な構成。きちんと計算された曲作りがフェイの才能を感じさせる。フェイが軽々と楽しそうに歌っていて、こっちもつい体が揺れてしまうような…。itdalida…という合いの手も効いている。
こういう洒落た歌を作り、軽く歌いこなしてしまうところはさすが。「夢中人」と並んで、フェイの歌の中では一番「かっこいい」歌。「フェイ・ウォン・バラード・コレクション」にも入っている。同じバージョンだが、「香港シーニック・ツアー98〜99」のほうが歌唱が格段にうまいように思える。
いい歌に出会うと、ぼくはいつも自分で歌えるようになりたいと、強く思う。ところが、フェイの歌は、歌詞カードの歌詞は漢字ばっかりで読めないし、日本語の訳はついているがそれでは歌えない。
インターネットで、歌詞をローマ字で表記したサイトを見つけた。「ピンイン」といって中国で考え出された中国語の発音記号みたいなもの。Faye Wong Lyricsで検索するといくつか見つかる。
漢字の歌詞と、このピンインの歌詞を照らし合わせてみた。日本語とは漢字の読みがかなり違うが、こうすると、それでもいくらかわかったような気になる。漢字だからある程度は意味がわかるし、ローマ字が並んだピンインの歌詞だけを見ているよりも、歌詞がずっと身近なものに思えてくる。
以下は「フライアウェイ・飛」の歌詞の一部…
屋 頂 上 的 小 鳥
wu ding shang de xiao niao
天 上 飛 的 白 雲
tian shian fei de bai yun
こうして、漢字とピンインとを並べて打ち直した。
それをプリントアウトして常に持ち歩くという方法で「フライアウェイ・飛」を覚えた。テンポが遅いので覚えやすいし、中国語の響きの美しさを味わうのにも最適の歌だと思う。
「流星」にも挑戦したが、これはテンポが速いので大変だった。でも、何が何でも歌いたいという気持ちが、退化したぼくの記憶中枢を猛然と叩きまくり、意外に短期間でともかく歌えるようになった。
中国語の発音は、フランス語のRに似た不思議な音や、ドイツ語のウムラウトみたいな変母音もある。英語のLに近い音とか、同じシでも
si shi xi の区別があるし、日本語にはない fa,fi などの音もあったりするので簡単ではない。NHKの中国語講座と、放送大学の中国語も発音中心に眺めている。
2002年4月
2005年6月16日一部更新
2008年9月11日更新