100 STORIES<不幸中の幸い>
■旅が好き上富良野町営自炊宿1999 06

噴煙を上げる十勝岳がすぐ後ろに見えて、広々とした内湯にいつでも入れて、設備もよくて清潔。その上安い。歩いて数分の林の中には、すごくワイルドな、もちろん無料の露天風呂もあったりして、楽しい。上富良野町営吹上温泉白銀荘をお忘れなく。
ただ、自炊なんてまっぴら、という人にはちょっと無理かもしれない。ここでは食事を出さないし、この宿の周囲には店どころか家一軒ないから、外食だって出来ない。
でも自炊室には炊飯器や電子レンジも揃っていて、自炊といってもべつに薪で飯盒めしを炊くわけではない。早い話が、上富良野の町のコンビニかスーパーでレトルトカレーとごはんを買ってきてチンすれば、それも一種の自炊。あと館内の売店には小さいパックの調味料とか、ちょっとしたものは売っている。
ぼくが行ったときは、東京から来たバイクのお兄さん、旭川から写真を撮りに来たというカメラマン、それに旭川の物静かな中年夫婦、といった人たちが自炊で泊まっていたが、それぞれつかず離れず、適当に距離を置きながら、それとなく助け合ったりして、なかなか居心地のよい滞在をしていた。
台所や食堂はパートの叔母さんが掃除してくれるのだが、たいていはみんなできれいにしていたし、そこいらのユースなんかよりずっと自然な感じで「自分のことは自分で」しながら、快適に過ごしていた。
寝室は十二人用の二段ベッドだが、空いてる限りは他人との相部屋にはしない方針らしく、みんな別々の部屋だった。多分夏場などは相部屋になるのだろう。
浴室は広々としていて何種類もの湯船があり、サウナや露天風呂もある。泊まっているのはわれわれ数人だったが、一家で車を乗り付けて湯に入りに来る地元の人々の多さには驚いた。日曜日でもないのに、浴室は一日中にぎわっている。

宿から数分のところには、木立の中に露天風呂があって、天気がよいとこっちもにぎわう。「北の国から」のスペシャル版で、田中邦衛と宮沢りえの雪中の入浴シーンを撮ったのはここだそうである。りえちゃんが先に入って、田中邦衛が、長いズボン下がうまく脱げなくてあせる演技で笑わせてくれた、あのシーンだ。
山の中の一軒宿だけれども美しく清潔だし、そんなふうにお風呂も楽しめるから快適な滞在だったが、しいて言えば歩行者用の遊歩道がほしかった。宿の裏の方には細い山道がついていたが、熊でも出てきそうな感じでとても入る気にはなれない。で、宿の人に聞いたら「熊ですか、ええ、出ますよ」だと。
上富良野駅から町営バス30分。
1泊2,600円、素泊まりのみ。
山側から見た宿の全景。右の建物はかつて登山者に愛された旧館で、記念のために残された。手前のグリーンはキャンプ場。
2002年7月
