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パラ輝砒鉱は大分県向野鉱山を原産地として報告された新鉱物である。パラ輝砒鉱は化学分析により砒素の元素鉱物である事が判明。天然の砒素の元素鉱物としては自然砒と輝砒鉱(Arsenolamprite・アーセノランプライト)の2種がこれまでに知られていた。これらとは別に人工的に1種の物質が砒素の同位体として知られていたが、国立科学博物館を中心とするグループの研究により既知の砒素同位体とは構造が異なり“第4の砒素”であることが確認された。
自然界では自然砒・輝砒鉱に次いで3番目のAsとしてIMAにて新鉱物承認(2000)。輝砒鉱に類似することからパラ輝砒鉱と命名された。Arsenolamprite・輝砒鉱とは元素鉱物らしからぬ命名であるが、これは記載が1800年代と古いことが理由の1つとして考えられる。鉱物の組成及び体を表す命名である。
本邦からの元素鉱物に分類される新鉱物の発見は、1974年に北海道幌加内より記載された自然ルテニウム[Ru](Urasima
et al.)に次いでパラ輝砒鉱が2例目である。
| Native As |
| 英名 |
和名 |
組成 |
結晶系 |
空間群 |
比重(実測) |
| Arsenic |
自然砒 |
As |
三方晶系 |
R¯3m |
〜5.3-5.5 |
| Arsenolamprite |
輝砒鉱 |
As |
斜方晶系 |
Bmab |
〜5.63-5.78 |
| Pararsenolamprite |
パラ輝砒鉱 |
As |
斜方晶系 |
Pmn2 or P21nm |
5.88(5) |
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パラ輝砒鉱・・・ |
自然砒・輝砒鉱と同質異像の関係 |
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輝砒鉱は本邦未報告種 |
Chemical composition
of pararsenolamprite from Mukuno mine.
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重量比
(wt%) |
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元素 量比
(mol%) |
| As |
(砒素) |
91.89% |
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94% |
| Sb |
(アンチモニー) |
7.25% |
⇒ |
5% |
| S |
(硫黄) |
0.48% |
|
1% |
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| total |
99.62% |
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100% |
| ※化学組成 実験式 : (As0.94, Sb0.05, S0.01)Σ1.00 |
※重量比データはMatsubara et al.(2001)より
(Means of eight sets of electron microprobe data.) |
パラ輝砒鉱は前述の通り自然砒とは同質異像の関係にある。しかしその外見は著しく異なる。向野鉱山は中新世の安山岩を切る浅熱水脈鉱床を金・銀を目的として稼行した鉱山であり、副産物として自然砒を多産する。この自然砒は石英脈中に輝安鉱などを伴って球状〜層状の微細結晶集合体で産し、集合体は中心部から幾重もの同心円層状構造を成している。自然砒の球を割るとその破断面では年輪様に内部構造が観察できる。パラ輝砒鉱の産状はこの年輪層の一層分を置換えた形で産する。球顆が完全な場合、パラ輝砒鉱部は環状に見える。
パラ輝砒鉱は鉛灰色の金属光沢を持ち、微細な長板状結晶が球顆中心方向より放射状集合体を成す。一方向に完全な劈開があり、条痕色は黒である。向野鉱山のパラ輝砒鉱は多くの場合1mm以下の結晶長であるが稀に4mmを超えるものも観られる。向野鉱山から自然砒は多産するが、パラ輝砒鉱は常にこれ伴って観られる訳でなく、寧ろパラ輝砒鉱が伴なわれている事は稀である。
自然砒は新鮮な破面では強い銀白色の金属光沢を持つが短期間での黒変が観られる。これに対しパラ輝砒鉱は光沢に変化が観られず大気中での安定度が高いと思われる。自然砒は水などとの反応により分解し、方砒華[As2O3]やクロード石[(As,Sb)2O3]を生ずる。パラ輝砒鉱は自然砒と比較して分解速度は極めて遅く、自然砒が消失した後も残っているケースも多い。パラ輝砒鉱は外見的に輝砒鉱に類似する。パラ輝砒鉱と輝砒鉱は肉眼的に判定が困難かと思われるが、『The
mineral species of Japan. Fifth Edition(2002)』 (S.Matsubara,2002)による限りでは向野鉱山及び本邦で輝砒鉱はこれまでに記載されていない。
画像の標本は原産地、大分県向野鉱山のものである。強い金属光沢をもつ部分がパラ輝砒鉱。石英脈中に産する自然砒に密に伴っている。このサンプルの場合、自然砒の多くは分解し失われている。一部にクロード石の微細結晶を伴っている。
向野鉱山(時期的には日野地鉱山の名称も用いられた。)は大分県北部、国東半島の付根に位置し中新世の安山岩を切る浅熱水脈鉱床を金・銀を目的に稼行した鉱山である。付近の地域には中小規模の鉱山が多数稼行した。代表的な鉱山に馬上・新馬上・三井大高などがある。
向野鉱山からは肉眼的な鉱石鉱物として輝安鉱・自然砒・ミアジル銀鉱などを産する。アンチモンや砒素の二次鉱物として鉄黄安華・カニュク石・クロード石などの記載もされている。
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参考文献
(References) |
●「Pararsenolamprite, a new polymorph of native As, from the Mukuno mine,
Oita Prefecture, Japan.」 S.Matsubara・R.Miyawaki・M.Shimizu・T.Yamanaka 『Mineralogical Magazine』 vol.65(6) (2001)
●「大分県向野(日野地)鉱山−パラアーセノランプライトの経験と2,3の産出鉱物」 山中勉 『福岡石の会会報』 (1999)
●『日本の新鉱物 1934‐2000』 宮島宏 (2001)
●「・・Uber Asenolamprite.」 Hintze.C 『Zeits.Kristakkogy.mineralogy.』 (1886) (子)
●『The mineral species of Japan. Fifth Edition(2002)』 Satoshi Matsubara (2002)
●『日本の地質・九州地方』 唐木田芳文・早坂祥三・長谷義隆(代表編集委員) P274・P283-284
●「Ruthenium, a new mineral from Hokkaido, Japan.」 Y.Urashima・T.Wakabayasi・T.Masaki・Y.Terasaki 『Mineralogical Journal』 (Japan.) vol.7 p.438-444 (1974) (子) |
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