プルタブ集めて車椅子!?
迷走する安易な善意
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(02年3月10日)

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奇妙なリサイクル
 親戚がですね、集めてるんですよ、缶飲料のプルタブ。
 「何にするの?これ?」と訊くと
 「集めると車椅子になるんだって」との回答。
 なんだそりゃ、と思ってちょっと調べてみた。
 Googleで「車椅子 プルタブ」で476件(02年3月10日時点・以下同)。
 
  かいつまんで言うと、貴金属リサイクル業者にプルタブ(アルミ片)を売却、そのお金で車椅子を購入する、という理屈らしい。 じゃあプルタブじゃなくてアルミ缶そのものでもいいじゃないか、という理屈になるし実際そうしてるところもあるんだけど、あくまでプルタブにこだわる人の意見によると缶の胴体とフタとではアルミの純度が違うんだと。 あと、スチル缶でもフタ部分はアルミだからリサイクル可能とか。
 
 ちなみにレートは700〜800Kg(ドラム缶2杯ほど)で1台(スチール製標準タイプ)。
 
 ただ検索結果を見ると「噂」「都市伝説」などの言葉も目に付き、この「プルタブで車椅子」問題、非常に興味深いです。

なぜプルタブを集めはじめたのか
   調べてみると、もともとプルトップが缶から取り外せた時代、道路や草むら・砂浜などにプルトップが飛散して怪我したり野鳥が飲み込んだりというのをどうにかしようというところから、美化運動の一環として大阪で始まった運動らしい。
 つまり、第一の目的は環境美化。
 その名残は現在もこの運動を推進している団体の名称(環公害防止連絡協議会http://www.people.or.jp/~kazuo/enkaku.htm)に見て取れる。 「プルトップ集めたけどこれ、どうしよう?」「リサイクル業者に売ろう」「売ったそのお金はどうするの?」「(うーん、拾ったもの売って財産にするわけにいかないしな)そうだ、ボランティアに使おう、車椅子なんてどうだ」…て感じでしょうか。

 今はプルトップはステイオンに変わり、運動の理由は無くなったはずなんですが。 しかしこの運動の、簡略化しすぎた要約「缶のフタを集めると車椅子になる」が、口づてで伝わる絶妙な遅さも相まって、元々の運動が忘れられたタイミングで新しい人に伝わるのでしょう(3年も“潜伏”していれば中学/高校は全生徒入れ替わりますしね)。
 
 そして後は一定周期で現れる。

「できる」のではなく「できることにした」システム
   ところでそれじゃあ、そもそもプルタブで車椅子に交換、てのはできるのか?て話。
 結論だけいうと、できます
 できますが「やめたほうがいいんじゃないの?」てのが私の見解ですね。
 
 そもそもこの運動、「割に合わない」んです。
 
 まず運送費ですが、環公害防止連絡協議会は「クロネコヤマト」を使用することを推進してます。
 全国一律で20〜25Kgを特別価格600円で引き受けてくれるということなんですが、これはヤマト運輸http://www.kuronekoyamato.co.jp/(←※ここには、この特別定価についての記述はありません)の“ご好意”のうえ、ヤマト運輸の公式サイトには一切明記がありません。 ボランティア価格を抜きにすれば本来は、隣県エリアで1790円がかかるはずのものです。
 当然、全国ならもっとかかります。
 
 次にアルミのリサイクルの実情ですが、アルミの交換レートを見ると、某業者の買取価格はkgあたり公園回収が65円、袋込みが100円、一番高いのがCAN to CANで105円、とあります。
 あれ?純度はどうなるの?
 残念ながらCAN以上の高純度アルミを別枠で回収している業者はGoogleでは見つかりませんでした。
 別枠が無いってことは、高純度アルミで別枠処理されることもないと考えるほうが自然でしょう。
 
 そもそもアルミ缶リサイクル協会http://www.alumi-can.or.jp/は、プルタブを分離しないでくださいと明言しています
 
 そして車椅子そのものについてですが、そもそも、車椅子って不足してるんですか? と疑問系で書きましたがGoogleで調べると、年末年始で病院の老人が一時的に家に帰るとか、そういう時以外はむしろだぶついてるようです。
 さらに車椅子の寄付先ですが、公営の老人ホームとか病院とか、あるいは自治体そのものというのが多いようですがこれも妙な話で、だって自治体だって資源ごみ回収ってやってるじゃないですか。 だったら自治体に直接「アルミの回収分は車椅子にしてください」て嘆願書を出せばいい話で、なにも自治体が回収するごみの一部かすめとってヤマト運輸の手間金かけて車椅子にして自治体に寄付する必要なんてない。 無駄が多すぎる(=高くつく)。
 
 最後に肝心の環公害防止連絡協議会ですが、一度「代表者の病気を理由に」活動を停止しています。
 そんな理由で中断する全国規模運動もどうかと思うんですが、今は2代目つーか別の人がやってます。 で、再開に際してサイトに書かれていたのが
 「全国的要望の高まりに応じるように種々検討され」
という言葉。
 
 なんだ「要望」って。
 
 すくなくとも「車椅子が不足しているのでプルタブ集めてください!」て要望ではなさそうだし、
 「プルタブのボランティアの話を聞いたんですけど」
とか
 「とりあえず集めたんですけどどうすればいいんですか?ずっと置いておくわけにいかないし」
てなところが実情のような気がする。
 
 つまり、必要があって実施するボランティア、じゃなくて、ボランティアがしたいという要望が先にあってそれに合わせて受け皿を用意する形ですね。
 ・・・それって変だよ。

迷走する安易な善意
   結局、プルタブを集めて車椅子にというこの運動、明らかに効率が悪い。
 それに、他人を巻き込むってところが(700kgものプルタブ、純粋な有志だけで集まるもんか)非常にたちが悪い。 断るとまるで悪人のように見られるし、やってる本人が自己満足を得られる以外、誰も得をしない。
 
 身勝手な自己満足に浸るまえに、ちゃんと自分の行動内容を理解してもらいたいものだ。
 
 実際は迷惑をかけているだけかもしれない、事実、ヤマト運輸は自らの意図にかかわらずボランティアを強いられているのだ(今更値上げなんてできまい?)。 そういうところに気がつかないというのは、「人のため」という考え方が、どこかズレていると思う。
 
 それでもこのボランティアつづけるならヤマト運輸への“お礼”として、獲得した車椅子にヤマト運輸のステッカー貼って宣伝にするなんてどうかな、企業イメージアップにもなるし、とか思ったのだが、利用者が「私ぁお荷物かい」なんて思うといけないなぁ。却下。
 
 中には「よーし、がんばってジュースを飲むぞ!」なんて掲示板に書き込んでいる本末転倒な高校生がいて、これをオチにしようと
 
 したのだけど上には上がいて、
 
(以下、某ページの全文)
ボランティア委員会
目標    車椅子の寄付をする!
そのために・・・・
プルタブや1円玉を集める。
   必要な量と枚数はなんと!
プルタブは800kg! 1円玉は8万枚!
現在のプルタブの量は・・・・・約88.8kg
目標まであと 711.2kgです。

 
 1円玉…8万枚…
 なんかいろいろ間違いすぎている気がするぞ。 落ち着け。

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