     
テナガエビ属 1 

このえびリストには、琉球淡水エビ約40種を、オリジナル写真にて掲載予定です。まだ、一部画像しかありませんが、今後も逐次掲載したいと思います。
1、テナガエビ科 Palaemonidae
海水産を含むと多くの種類がいるが、淡水性のものはテナガエビ属とスジエビ属に分類されている。
(1)テナガエビ属 Genus Macrobrachium (Bate,1868)
日本産テナガエビ属は、15種、そのうち14種が琉球列島に生息。
鹿児島県を除く九州以北には3種(テナガエビ・ヒラテテナガエビ・ミナミテナガエビ)が生息。
琉球列島に生息していないのはテナガエビ(Macrobrachium nipponense)のみ。
(注)
当サイト開設時(2001年)には、日本産テナガエビ属は12種、そのうち11種が琉球列島に生息でしたが、その後下記経緯で3種増えましたので、現在は15種、そのうち14種が琉球列島に生息しています。
2003年 諸喜田茂充先生らの研究者が石垣島で、カスリテナガエビの生息を確認。
2005年 宮古島で発見されたウリガーテナガエビを新種記載。
年度不明 西表島および石垣島で、チュラテナガエビ(仮称)を発見。
えびリスト (小画像をクリックしますと、拡大写真がご覧になれます。)

(1) コンジンテナガエビ Macrobrachium lar (Fabricius,1798)
日本産最大のテナガエビ。尾からハサミの先まで長さが40センチを超えるものもあり、成体の雄はその体側がブルーに輝き、大変迫力がある。
インドから西太平洋の熱帯・亜熱帯地域に広く分布し、琉球列島でも主に湧き水や小河川において見かける種で、先島諸島では食材に用いることも多い。
国内では他に、九州南部、静岡県浜名湖、伊豆半島、千葉県房総でも採集されているが、黒潮の流れに乗って移動した可能性が高く、生息(抱卵と再回遊)には該当しないと思われるため、上記九州以北の種類に含めていません。ただし、薩摩・大隈半島の一部河川においては生息が確認されているようです。
両側回遊性について
淡水エビの多くは、卵から孵化して稚エビになるまでの期間(ゾエア期)に塩分を必要とします。そのため川で産卵した卵は海へ流れ、そこで成長し、稚エビとして親のいた元河川又は他の河川へ遡上していきます。これが両側回遊性と呼ばれる形態で、コンジンテナガエビはそのゾエア期が長いため、本州まで流れ着き川を遡上します。
太平洋沿岸の河川であれば、コンジンテナガエビが見つかる可能性がありますので、機会がありましたら探してみてはいかがでしょうか。

参考文献 かごしま自然ガイド 淡水産のエビとカニ 西日本新聞社 1994
浜名湖で採集したコンジンテナガエビについて 日本甲殻類学会 : 会員連絡誌4号 伊藤円 1995

(2) ショキタテナガエビ Macrobrachium shokitai (Fujino & Baba,1973)
西表島固有種。 甲殻類研究者である琉球大学名誉教授、諸喜田茂充先生の名前がついたエビ。浦内川、ヒナイ川、前良川等の河川上流部に生息し、ミナミテナガエビと似ているが、額角(がっかく)の歯の数やハサミの形状に違いが見られる。
このエビの最大の特徴は、海には回遊しない完全な陸封型の特殊なテナガエビで、かつて西表島がユーラシア大陸と陸続きだった頃大陸から移動してきたエビの子孫と考えられています。
西表島の特定河川にしか生息しないため個体数は少なく、2007年版環境省レッドリスト(準絶滅危惧) 2005年版沖縄県レッドデータブック(絶滅危惧U類)に指定されています。
画像サイト 琉球大学 風樹館 http://fujukan.lib.u-ryukyu.ac.jp/ja/rdb/details.php?id=ZC-00008&lang=ja
最近このショキタテナガエビに寄生するヤドリムシと呼ばれる甲殻類の一種が、新種の淡水産ヤドリムシであることが判明しました。詳しくはこちら 新種ヤドリムシ
参考文献 2005年版沖縄県レッドデータブック ショキタテナガエビ

(3) ザラテテナガエビ Macrobrachium australe (Guerin Menevill,1838)
やや小型のテナガエビで、特徴としてオスのハサミ(正式には第2胸脚)は左右で形が大きく異なり、いずれか片方のハサミが長く伸びます。またハサミには小さな突起状のトゲがあり、そこに手を触れるとザラザラするためこの名前が付いたようです。
河川中流域から下流域に生息し、琉球列島ではミナミテナガエビ、ヒラテテナガエビ、コンジンテナガエビに次いで生息数が多いとされるが、前3種と比較すると個体数はだいぶ少ないようで、探しても簡単には見つかりません。


(4) オオテナガエビ Macrobrachium grandimanus (Randall,1840)
ハサミは左右不対称で、いずれか片方のハサミがよく発達し、そこがうぶ毛状の毛で覆われている小型のテナガエビである。
名称からは大型を連想するが、体長に比較してそのハサミが大きく目立つため、この名前が付いたものと思われる。
日本では種子島から石垣島に分布し、国外ではハワイ諸島・トンガ・フィジー・海南島が知られているが、近年の研究により、原記載種であるハワイ諸島産のオオテナガエビと琉球列島産のオオテナガエビでは額角の歯数やその他の形態に違いがみられ、今後の研究次第では琉球列島産は別種して記載される可能性もあるようです。
河川下流の感潮域又は塩分を含む水域に生息し、限られた分布域のため個体数は少なく、2005年版沖縄県レッドデータブック(準絶滅危惧)に指定されています。

(5) コツノテナガエビ Macrobrachium latimanus (Von Martent,1868)
インドから西太平洋、琉球列島にかけて広く分布し、大隈半島南西部の一部河川でも採集例があるようです。
名前のように額角は短く小さめ、雄のハサミは通常左右相称で扁平形、成熟した雄は大型で立派なハサミを持つ。
河川上流域や流れの速い瀬に生息するが、先島諸島でも個体数は少なく、沖縄県レッドデータブック(準絶滅危惧)に指定されています。

(6) ミナミテナガエビ Macrobrachium formosense ( Bate,1868)
琉球列島で最も数多く見られる種類。県内でタナガー(テナガエビの方言名 又はタナゲー)捕りといえば、この種か下記のヒラテテナガエビを指す。
主に河川中流域から下流域に生息し、食用として美味。(唐揚げ、天プラ、 ラーメンの具など) 繁殖研究データも揃っており、食用資源として最も有望な種です。
日本本土産テナガエビ(Macrobrachium nipponense)との相違点は下記サイトさんが大変詳しく解説されています。ご参照ください。
「蝦三昧」 テナガエビの見分け方

参考文献 サンゴ礁域の増養殖 緑書房 諸喜田茂充 編著 1990

(7) ヒラテテナガエビ Macrobrachium japonicum (De Haan,1849)
別名 ヤマトテナガエビ

ジャポニカンの学名が示すとおり、台湾、琉球列島から本州中部域、房総半島まで広く分布する。
沖縄本島ではミナミテナガエビに次いで生息数が多く、食用としても美味である。
流れの速い場所を好み、主に河川中流域から渓流部に生息。体型も水の抵抗が少ないよう、やや流線型をしている。
ヤンバル地区にある大宜味村では、ミナミテナガエビを(タナゲー)と呼びこのヒラテテナガエビを(山タナゲー)と呼ぶようで、両種の棲み分けを表現した非常にピッタリな名前だと思う。
余談
大宜味村や国頭村では、昔からタナゲーを貴重な蛋白源としていましたが、太平洋戦争終戦直後の食糧難の時代、那覇近郊から疎開してきた人たちが、米軍払い下げのバッテリーを用いて、このタナゲーを大量に捕獲し食用にしました。 しかしその際に用いたバッテリーが軍事車両用の大発電であったため、多数の人がタナゲーと共に感電死したという話があります。
せっかく戦争を生き延びても、テナガエビのため命を落としたという笑えない話ですが、それだけ深刻な食糧難だったようです。
今の時代、コンビニ・スーパーでいくらでも食料が手に入りますので、タナゲー捕りは食べられる最少の範囲にして、資源保護に努めましょう。
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