    
スジエビ属・その他の属

テナガエビ科 スジエビ属 Genus Palaemon (Weber,1795)
スジエビ属とテナガエビ属の特徴的な違いは、眼の後ろの「肝上棘」(かんじょうきょく)と呼ばれる棘(とげ)の有無です。
テナガエビ属にはその棘があり、スジエビ属にはその棘がありません。
そうは言っても、小さなテナガエビですと、虫眼鏡でのぞいた位ではその棘は見えません。
(スジエビには鰓前棘と呼ばれる別の棘があります。)
日本のスジエビ属のうち、純淡水に生息するのは下記スジエビのみ。他の多くは汽水又は海水域に生息しています。

(1) スジエビ Palaemon paucidens (De Haan,1844)
北方系のエビで、樺太、サハリンから琉球列島の一部である種子島、屋久島にかけて広く生息しています。
テナガエビ属のような大きなハサミはなく、体側に筋が入り、容易に区別がつきます。
奄美大島以南には自然分布していないものと思われるが、沖縄本島首里城近くの龍潭(りゅうたん)池にて確認。うなぎの放流等に伴い、移入生息したものと思われます。
近年、琉球列島の河川は、外国産移入種(ティラピア、グッピー、プレコ、ハブクロミス等)が、その勢力を拡大し従来から棲息している種(特に、彼らのえさになりやすい淡水エビ。)に深刻な影響を与えています。
清流には棲めないと思われたモザンビークティラピアが、ヤンバル河川でも繁殖、年々その数を増し、ヌマエビやテナガの稚エビを捕食する状況です。
赤土汚染、ダム建設による棲息環境破壊、外敵の進入。琉球列島淡水エビは今、多くの苦難に遭遇し、リュウキュウアユが辿った絶滅の道を、彼らも歩んでいます。
また、御承知のように名護市辺野古地区に大規模な米軍基地の建設が計画されています。
その近くには大浦川という沖縄本島では数少ない淡水エビの生息最適河川があります。
皆さん訴えましょう。これ以上のダム建設反対、米軍基地建設反対と.。

(2) イッテンコテナガエビ Palaemon concinnus (Dena,1852)
体長3センチから4センチ。 東南アジア沿岸から琉球列島にかけて広く分布し、河川下流の汽水域やマングローブ域に生息しています。
透明なエビで次のスネナガエビとよく似ているが、背中に1つ又は2つの斑点があり、尻尾付け根にも黒いスポット斑点があります。
上記、大浦川河口には発達したマングローブ水域があり、イッテンコテナガエビも多く生息しています。画像のエビはそこで採集したものです。
(3) スネナガエビ Palaemon debilis ( Dana,1852)
体長4センチから5センチ。 インド洋から西太平洋沿岸、東南アジア、琉球列島にかけての広い地域に生息しています。
イッテンコテナガエビと同じく、河川下流の汽水域やマングローブ域に生息していますが、数は少ないようです。
姿形もよく似ているが、特徴的な模様はなく多少おおきめになり脚部が長く目立つためスネナガの名がついたようです。海水、汽水、淡水とその生息可能水域は広いが、純淡水での長期飼育は難しく、淡水生活をはじめて間もない種である。
(4) ユビナガスジエビ(別名フトユビスジエビ) Palaemon macrodactylus (Rathbun,1902)

体長約4cm。河口部汽水域から干潟や護岸近くに生息する。額角はほぼ水平で、先端の上面は下向きになり、体色はやや褐色を帯びている。。
日本国内に広く分布し、琉球列島でも種子島から西表島までの広範囲に分布生息している。

テナガエビ科 トサカスジエビ属 Genus Exopalaemon
(1) シラタエビ Palaemon Exoplaemon orientis (Holthuis,1950)
体長約4cm。汽水域から干潟に生息し、特徴として額角がニワトリの鶏冠(とさか)のように丸く盛り上がっていること、触角が綺麗な青色をしていることらしい。日本国内に広く分布するが、南限としては種子島までで、他の琉球列島には生息していないとのこと。
琉球淡水エビに含めることに多少疑問もあるが、「琉球列島の陸水生物 西島信昇監修 西田睦・鹿谷法一・諸喜田茂充編著 東海大学出版会2003)では琉球列島生息種としているため掲載しています。
なお、分類上スジエビ属とは別属のトサカスジエビ属に分類されています。属名は額角の特徴から来ているようだが、他の理由は不明。(以前はスジエビ属に含めて記述していたが訂正しました。)

テッポウエビ科
テナガエビ科やヌマエビ科と同じく、甲殻綱、十脚目、コエビ下目に属する科で、ハサミを鳴らして鉄砲のような音を出すためこの名がある。ほとんどが海水産であるが、下記オハグロテッポウエビはドウクツヌマエビと同じような環境に生息するため淡水エビに含めて掲載した。
ドウクツテッポウエビ属 Metabetaeus (Borradaide, 1898)
オハグロテッポウエビのみの1属1種
(1) オハグロテッポウエビ Metabetaeus minutus(Whitelegge, 1897)
ある程度の塩分がある薄暗い洞窟や地下水域に生息するエビ。
インドから西太平洋に広く分布するが、国内では南大東島、宮古島、伊良部島、八重山黒島、小笠原西之島など、ドウクツヌマエビ、チカヌマエビ、アシナガヌマエビなどと同じような地域で確認されている。
地下水系のエビは繁殖方法、その分散移動方法など不明の点が多く、研究はこれからのようです。
2007年版環境省レッドリスト(準絶滅危惧) 2005年版沖縄県レッドデータブック(絶滅危惧U類)に指定されている。以前は環境省レッドリストも絶滅危惧U類であったようだが、なぜか格下げされている。
このエビも写真撮影が難しいので、その姿は下記でご覧ください。
画像サイト 琉球大学 風樹館 http://fujukan.lib.u-ryukyu.ac.jp/ja/rdb/details.php?id=ZC-00005&lang=ja
沖縄カニあるき オハグロテッポウエビ http://blog.canpan.info/kani/archive/100
端脚目(たんきゃく目またはヨコエビ目)
テナガエビ科やヌマエビ科、テッポウエビ科は第1歩脚から第5歩脚までの5対十脚(付属肢としては19対の38本)あるということで、十脚目に属しているが、ヨコエビ科は、それとは違う足の形態なため、端脚目という分類がなされています。
エビというよりは、ミジンコを大きくしたような姿です。
ヨコエビ科
(1) シオカワヨコエビ Paracalliope dichotomus (Morino, 1991)
沖縄本島 本部町塩川で発見され、1991年に新種記載された体長約3ミリの、非常に小さなヨコエビです。
琉球列島産エビでは珍しく沖縄本島の固有種で、塩川と恩納村の一部地域のみで確認されています。シオカワヨコエビの和名はその発見場所にちなんだようです。
落葉や藻類の中に生息しているが,生態や生活史についてはほとんど解明されていないとのこと。
汽水域にのみ生息するヨコエビということで、本サイトの趣旨である淡水エビに該当するか疑問ではあるが、2007年版環境省レッドリスト(絶滅危惧T類) 2005年版沖縄県レッドデータブック(絶滅危惧TB類)の最高カテゴリーに指定され、最も絶滅が危惧されている種のため掲載しました。
塩川について
1972年、日本復帰の際に国の天然記念物に指定された「塩川」は、源泉の湧き水が地下海水と淡水の混合という大変珍しい川で、そのような例が判明しているのは、世界でもプエルトリコの1ヵ所と塩川の2ヶ所だけです。
海面潮位に比例して湧水量が変化しますが、その構造についてまだ詳しくは分かっていないようです。
全長約300mの、川としては沖縄県内で最も短いものですが、シオカワヨコエビのほか、希少淡水エビや希少藻類の宝庫で、生物学的にも貴重な場所です。
興味がおありの方は、名護から海洋博公園ちゅら海水族館へ向かう海岸道路の途中にありますので、ぜひ一度お立ち寄りください。
ただし、天然記念物に指定された地域では、動植物の採集が禁じられております。網を持ってうろつくと、警察のご厄介になる可能性がありますので、くれぐれもお気をつけください。
参考文献等
塩川の水生動物と塩水湧出機構 沖縄県天然記念物調査シリーズ第6集塩川動態調査報告
沖縄県教育委員会 諸喜田茂充・西島信昇 1976
2005年版沖縄県レッドデータブック シオカワヨコエビ
琉球大学 風樹館 塩川 http://fujukan.lib.u-ryukyu.ac.jp/ja/nature/details.php?id=EO-00137&lang=ja

( 結びとして )
以上、淡水エビリストを作成したところ、2012年2月現在 琉球列島産淡水エビ(汽水域を含むため、正確には陸水エビ。)はテナガエビ科3属19種類 ヌマエビ科7属20種類、合計39種類。これにオハグロテッポウエビとシオカワヨコエビの2種類を加えると、合計41種類となると思われます。
ただし、これは学術的調査発表等に基づく種類数ではありません、あくまで私的な判断での種類数です。誤解のないようよろしくお願いします。
琉球列島産淡水エビは未記載種、詳細不明種が多く、その種類数は常に流動的なものだと考えます。今後ともその方面の情報を集め、できるだけ当サイトに掲載していきたいと思いますので、よろしくお願いします。
なお、当方、甲殻類の生物研究専門家ということではございませんので、記述内容等に誤りがある場合もございます。
ご指摘をいただければ修正をしていきますが、当サイト内容を参考にされる場合は、ご理解御承知をよろしくお願いいたします。
参考文献等一覧
参考文献ページへ移動しました。
トップページへ戻る
|