塩屋天体観測所|買わないほうがいい望遠鏡・双眼鏡
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買わないほうがいい望遠鏡・双眼鏡(β)
「天体望遠鏡が欲しいのですけれど、どんなものがいいですか」
星見の趣味を続けていると、こんな質問をされることもあります。私もよくやるのですが、うっかり衝動買いをしてしまわないよう、頭を冷やして、一週間経っても欲しかったら、ぼちぼち考えてみましょう。
お薦めの品となると、フトコロ具合などの事情によっても違うのですが、買わないほうがいい望遠鏡・双眼鏡は確実にあります。しかもまともなものよりはるかに多くの粗悪品が出回っているというから大変です。
でも、意外に簡単に判別できるので、さくっとその方法を記しておきます。
まずは望遠鏡と双眼鏡の基本
とりあえず2点だけ押さえておきましょう。あとの話がスムーズになります。
- 基本性能は倍率でなく、レンズの大きさ
- 星を見るときの望遠鏡・双眼鏡の一番の役割は、より多くの星の光を集めることです。光を集めることで、より暗い星の姿も見えるようになります。ですから望遠鏡の基本性能は、レンズや反射鏡の大きさ(口径)で比べます※1。→詳しくはこちら
けれども一般には、倍率が高いほど高性能な望遠鏡・双眼鏡だと誤解されています。ここに粗悪品の光学機器がつけ込むスキがあります。
※1 そのほか、口径が大きいと、対象のより細かい部分を見分けることが出来ます。
- 望遠鏡の使い勝手は、三脚と架台で決まる
- 天体望遠鏡を手持ちで使うわけにいかないので、ふつうは三脚と架台(望遠鏡を上下左右に動かす装置)とセットにします。そして実は、望遠鏡の使い勝手は三脚と架台で決まります。
足廻りがグラグラしていては、望遠鏡に手を触れるたびに、星もグラグラ。高倍率をかけたら、そのぶん揺れも倍増します。望遠鏡の筒より架台にお金をかける人もいるくらい、足廻りは大切です。
買わないほうがいい双眼鏡
いよいよ本題。まずは双眼鏡編。最初の一台としては、望遠鏡より双眼鏡をお薦めすることが多いです。でも、その中でも避けた方がよい品物たち。
- 高倍率双眼鏡(10倍を越すと手持ち不可)
- 双眼鏡はふつう手持ちで使うので、7〜8倍くらいがちょうどいいです。慣れた人でも10倍が限度。20倍とか30倍とか50倍というのは、天体望遠鏡の倍率です。120倍なんて常軌を逸しています。
- ズーム双眼鏡
- 便利そうで、使えない。ズームといっても見かけの視野の大きさが変わるだけだったり、レンズの枚数が無駄に多く、無理にコストダウンしているので、見え味は単焦点の双眼鏡にかないません。
- 高倍率ズーム双眼鏡
- 困ったことに、高倍率でズームという、どうしようもない製品が世の中に出回っています。上記の2つの欠点を兼ね備えていますので、何の役にも立ちません。
- レンズが赤い双眼鏡
- 赤外線や紫外線をカットするのが売り文句。でも本当に眼に害が及ぶ危険性があるのなら、世の中の双眼鏡と望遠鏡はみんな赤いレンズのはず。
- 値引率がやたらと高いもの
- 新品で定価の50%以下で売られているような品物は、もともとその価格で売ることを前提に製造されたと考えて良いでしょう。双眼鏡に限りませんが、割安感だけで購入意欲をあおる手法の見識を疑うべき。
買わないほうがいい望遠鏡
- 倍率を売り物にしている望遠鏡
- 最初に書いたとおり、望遠鏡の性能はレンズや反射鏡の大きさ(口径)で決まります。これを無視して倍率をキャッチコピーにしている望遠鏡は、粗悪品の可能性が高いです。200倍や300倍なら即、却下。※2
※2 「望遠鏡の口径をmmで表した数字×2」が最高倍率の目安。口径50mmなら100倍、口径80mmなら160倍。私の経験では入門機で150倍を越えるような倍率はあまり使う機会がありません。
- 安くてフルセットの望遠鏡
- 安い値段で一式揃うような望遠鏡は、架台と三脚が手抜きされていることが多いです。ものによっては望遠鏡本体が使い物にならないことすらあります。1万円以下のものは手を出さない方が無難※3,※4。2万円クラスも要注意(ダメなものが多い)。3万円前後になるとボチボチ使い物になるものが出てきますが、玉石混淆の価格帯なので、情報収集が大切です。
※3 望遠鏡本体(鏡筒)のキットなら1万円以下でも良品があります。オルビィス社のコルキットシリーズ、星の手帖社の組立望遠鏡シリーズなど。工作も簡単。でも三脚は別に必要。
※4 1万円以下のセット望遠鏡でほぼ唯一、使い物になるのはスコープタウン社のラプトル50(2009年現在)。
- 値引率がやたらと高いもの
- 双眼鏡で書いたとおりです。割安感だけで購入意欲をあおる手法の見識を疑うべき。
- テーブル(卓上用)三脚の望遠鏡
- 卓上用の三脚はコンパクトな分、強度が不安です(実物に触れて試せたら良いのですけれど)。それと、ちょうどよい高さの頑丈なテーブルが、そうそう都合良く屋外にないんですよね。
- (番外)安くて自動導入の望遠鏡
- 自動導入といっても、初期設定は人間の手で行う必要があります(オートでやってくれるものは高価)。指示された星に自分で望遠鏡を向ける必要があるので、全くの初心者では使えず、むしろ空に出ている明るい星の名前が分かるくらいの天文知識が要求されます。
すでに買ってしまった場合
- 使える部分を有効活用
- 架台が弱くて使いにくい場合は、望遠鏡本体(鏡筒)だけ外して、カメラ三脚に乗せ換えてみます。また鏡筒の作りが貧弱で使い物にならない場合は、分解してレンズだけ抜き出して自分で望遠鏡を作り直しましょう。塩ビ管や紙パイプを利用して、それほど難しくなく仕立て直すことができます。
→工作の参考:星を見る道具の工房(YAMACAさん)、ちょっとそこまで,星を見に(なかをさん)
せっかくですから、骨の髄までしゃぶり尽くしてあげましょう。
- どうしても我慢できない場合
- どうにも我慢できなかったら、国民生活センターに届け出ましょう。ちなみに望遠鏡・双眼鏡はクーリングオフの対象品目です。このリストに上がっていること自体、トラブルが多い(多かった)証左です。
結局、損をしているのは
粗悪品を買ってしまった人は、二度と望遠鏡や双眼鏡を買おうとは思わないでしょう。粗悪な光学製品を市場に供給するのは、目先の利益だけを見て、将来のユーザーを自ら切り捨てているに等しい行為です。
なにより、こうした粗悪品で、星空への興味が失われてしまうとしたら、これほど悲しいことはありません。
(2007.6.21記 福田和昭)
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