中高年のためのオートバイ選び

 5.カワサキ車の乗り方


中高年でこれからオートバイに乗ってみたいとおっしゃる方を対象に、どんなオートバイに乗ったらいいのかについて、お話しさせていただくことにする。今回はシリーズ第5回目で、カワサキ車の乗り方について述べることにする。なお、しつこいようだが、私には多少の偏見があることは否定するものではない。
(^^;
 

 

カワサキ車の乗り方


ZRX1200R 出所:川崎重工業


カワサキとは川崎重工業のことである。船舶から鉄道車両、プラント、発電機など、バカでかいものばかりつくっている会社である。ボーイングの協力企業として、飛行機だってつくっている。戦時中は「飛燕(ひえん)」などという戦闘機もつくっていた。下のグラフは、川崎重工業の売上構成比である。これでみると、オートバイの占める比率は、ごく一部であることがわかるだろう。
 

 川崎重工業の売上高構成比  出所:川崎重工業有価証券報告書
 

 
なぜ、こんな会社がオートバイなどというセコい製品をつくっているのか。じつは、川崎重工業は、1964年にメグロ製作所というメーカーを買収しているのである。現在でこそ、オートバイをつくっているメーカーは国内で4社だけであるけれど、その昔は20〜30社もあったらしい。メグロは、そのなかで最大手のメーカーだったのである。


ま、そんなハナシはどうでもいい。


カワサキは、国産4社のなかで、もっとも個性的なメーカーである。そのことは、ほとんどのオートバイ乗りにとって異論はないだろう。私が若い頃、他の3社、ホンダ、ヤマハ、スズキのオートバイを買った者は、その足でオートバイ用品店に行ったものだ。ヘルメットやライディングジャケットなどを選びに行くのである。しかしながら、カワサキのオートバイを買った者は、その足で、特攻服を買いに行ったものである。
特攻服というのは、“特殊なツーリングチーム”に所属する者たちの制服である。どこに買いに行くのかというと、意外なことに、体育会系や応援団の学生たちが着る学生服を売っている洋品店に行くのである。白い長ラン(丈の異常に長い学生服)に菊の刺繍や「夜露死苦」とか「男闘呼」などといった当て字で飾り立てるのであるが、いったい誰がどうやってデザインするのかは、私は知らない。
とにかく、ああいった特殊なツーリングチームに所属する者にとっては、カワサキは唯一無二のオートバイメーカーであった。ていうか、彼らにとっては、そもそもカワサキ以外のオートバイメーカーは、この世に存在しないのである。
「CB? XJR? なにそれ?」
という感じなのである。
 
 
私はノーマルのままのカワサキ車というものを見たことがない。まず、マフラーはモリワキに変更。これは、カワサキに乗る者としては絶対であった。だったら、工場出荷段階からモリワキ管をつけておけよ、と私は思うのだが。
  
また、かつてのカワサキ車の設計は、どことなく変であった。たとえば太いボルトの多用。普通、オートバイには6ミリの小型ボルトを使うもんである。が、ある時代のカワサキ車は、やたらと太いボルトを使っていた。これについて、われわれ古くからのオートバイ乗りのあいだでは、

「船舶事業部門の購買部がミスって、太いボルトが明石工場内に大量に余っているのではないか。」

という根も葉もないウワサが流れたものである。あるいは、

「いや、戦時中に飛燕をつくるのに買ったボルトの在庫を処分しているのだ。」

という憶測まで飛び交った。とにかく、かつてのカワサキ車は、やたらと太いボルトを使っていたので、なんだかちょっと変、であった。
 
 
かつてのカワサキ車は、よく壊れた。これについてカワサキは根も葉もないウワサである、と否定するけれど、われわれ古くからのユーザーのあいだでは、そんなの常識であった。たとえば、エンジンをかけて、ギアをローに入れた瞬間、エンジンがストンと止まってしまう。われわれホンダユーザーだと、いったいなにごとかと思ってしまう。けど、長年カワサキ車に乗り続けてきた者は、少しも動じないのである。だまって、オートバイから降りて、なぜか、ポケットのなかに入っているプライヤーを取り出し、サイドスタンドのところにあるスイッチを引き出すのである。そういったところにカワサキ車に乗る者のダンディズムを感じるのは私だけではないだろうけど、ごくふつうにオートバイを使いたいユーザーにとっては、たまらないものがあった。
 
 
あるいは、かつてのカワサキ車は、よく錆びた。これについてもカワサキは根も葉もないウワサである、と否定するけれど、われわれ古くからのユーザーのあいだでは、そんなのあたりまえである。国産車のうち、塗装が丁寧なのは、なんといってもヤマハである。また、アルミなどの金属の表面処理については、ホンダの技術は他の追随を許さないものがある。それに対して、かつてのカワサキ車は塗装面がヤワで、表面処理はあまり丁寧ではなかったように思われる。
 
現在のカワサキ車は、他のメーカーにくらべて品質面での差はない。塗装も金属の表面処理もそれなりによくなっている。2000年において、128年におよぶ川崎重工業の歴史のなかで、初めて二輪車部門出身の社長が出たのだが、以来、カワサキ車の品質とか信頼性は飛躍的に良くなったように思われる。われわれ、古くからのオートバイユーザーのあいだには、「できるんなら、もっと早くやれよ。」という、恨みが半分混じった声もあるのだが、なんにしても品質が向上したことは、われわれユーザーにとっては歓迎すべきことである。
 

 
カワサキは、かつての自社モデルをパクる。

 Z1→Zephyr1100
 Z2→Zephyr750
 ローソンレプリカ→ZRX
 W1→W650


というように、かつて名車といわれた自社モデルのコピーを繰り返しつくるのである。これをカワサキ車の輪廻の法則という。カワサキのアイデンティティなのかもしれないが、同じところをくるくるとまわっている感じがしないでもない。現在のカワサキは、この閉鎖的なサイクルからの脱却をめざし、かなり大胆なデザインを取り入れている。ER-6n などは、少々、大胆すぎるように思えるくらいだけど、保守的になりすぎているオートバイの世界において、新しいデザインの流れを創り出すことはいいことであり、私としては歓迎している。
 
 
カワサキ車には熱烈なファンが多い。とりわけW1、W3とかZ1、Z2などは、我々の世代にとっては、憧れの的であった。古い世代のファンのなかにはいまだに大文字の KAWASAKI というロゴに異常なこだわりを持っており、新車のZephyrを買って、ロゴだけ付け替えたりするのである。
 

 
まとめると、カワサキはホンダやヤマハのように、レースの世界で活躍するメーカーではないし、スズキのように市販車にあたらしい技術を採用することに熱心なメーカーでもない。けれども、カワサキは常に国産オートバイのなかでは、「伝説」をつくってきたような気がする。ある意味では、カワサキがなかったら、日本のオートバイはずいぶん退屈な世界になっただろうし、こんなに多くのユーザーがオートバイに乗っていることもなかったのではないか。そういった意味では、日本のオートバイの発展においてカワサキが果たしてきた役割というのはきわめて大きいものがあると、私は思うのである。
 

なお、蛇足であるが、自衛隊関係者はカワサキ車が1割引というウワサは本当だろうか?
そういえば、私の住む立川には、大きな自衛隊の基地があるのだが、カワサキ車のシェアが異様に高いように思う。全国でもめずらしいカワサキ車専門のショップが2軒もあるし...。カワサキに問い合わせても、どうせ根も葉もないウワサであると否定されるだろうけど、筆者としては、限りない疑惑の目で見ているのである。

 


この「中高年のためのオートバイ選び」はBlog「国道な日々」に掲載していた記事を再掲したものです
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