ある夏、台風一過で蒸し暑い南風が吹き込
んだ朝、庭先の花壇に飛来した黒い蝶。いつ
ものようにカラスかミヤマカラス、どうやらオナ
ガ…いや違う!
「クロアゲハだっ!」
すっ飛んでカメラを構えます。ストロボをセッ
トしたままだったので尚ラッキー!
「スゲエよ、軽井沢でクロアゲハなんて!」
その時の興奮は今でも忘れられません。と
ころが、失敗を恐れたあまり、絞り込んでシャ
ッター速度を上げたため、ストロボの同調範
囲を超えてしまっていたのです。仕上がった
画面にはシャッター幕の陰がかぶってしまっ
ていました。当時まだ機材にはうとく、失敗の
理由はストロボの誤作動だと思っていたこと
も、懐かしい思い出です。肝心な場面でのト
ラブルにがっかり。
クロアゲハ自体初めてではありません。町
外の親戚の家で子供の頃から馴染みがあり、
採集もしていました。ただ町内では記録がな
かったのです。
さて目撃例のみで未撮影の蝶は、再びチャ
ンスが巡ってくることは少なく、クロアゲハと
の再会を果たすまで実に7年の歳月が流れ
ました。軽井沢での蝶類観察30年で2例目。
実はその前日、他の未撮影種を撮りそこね
たばかり。傷心の私を救ってくれたのは皮肉
にもクロアゲハだったというわけです。出会っ
た瞬間、やはりカラスアゲハと思いつつ、何
となく尾状突起の短さが気になり、近付いて
見るとご覧の通り。長い道のりでした…。
夏型 ♂ フォーマルな黒が印象的。 8月25日 町内
データ
・分 類:アゲハチョウ科アゲハチョウ亜科
・初見日:春型データ不充分〜
夏型6月28日〜(2006年記録)
・終見日:〜春型6月12日(2007年記録)
〜夏型8月25日(2003年記録)
・化 性:年2〜3化
夏型 産卵。 8月3日 町内
春型 ♂ 川辺で吸水。 6月12日 町内


その後更に数年経ち、目撃例も増え、産卵
シーンまで撮影できました。サンショウの周り
優雅に舞う様子を見上げると、まるで海中を
泳ぐエイのようにスローモーでした。どうやら
森林性で、枝葉の繁った樹林内で姿を見掛
けることが多いようです。今では「カラ吸場」
にて、ミヤマカラス…らと共に吸水する個体
さえ見られるようになってきました。
