染色工房  鳴瀬 着物、帯、半衿、ハンカチ、ストール、スカーフ、染めアートなどを制作する染色工房です



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染色の知識

染色品の手入れや管理、問題点などを私のこれまで経験や知識に基づいて書いています。

[付け下げと訪問着の違い][色数を限定した配色][ガード加工について]

[染色の道具][普段着とおしゃれ着と礼装着][着物の価格について]

付け下げと訪問着の違い

皆さんは付け下げと訪問着がどう違うと思われますか。もとは戦時中に訪問着の着用が禁止されたとき、派手な絵羽模様の代わりに考えられた着物だといわれています。現在では訪問着の代わりに着られる着物ですが、「付け下げ訪問着」「付け下げ小紋」など、ややこしい言い方をしているものもあります。

作り手の私の考えはこうです。付け下げは、第一に訪問着でもなく小紋でもないというように、違いがはっきりしていることが大事で訪問着よりは気軽に着れて、着ていける範囲が広く、小紋よりは社交性があり、価格は訪問着より安く購入できることが付け下げの良いところだと思っています。柄は訪問着よりは少なく、あまり豪華な印象がしなくて、絵羽付けになっているが、合い口(生地と生地を縫ってある所)に柄が少ないことが付け下げの特徴だと思います。

こうした柄付けをすることにより安価に制作できて、帯び合わせによっては着ていける場所が広がり、合い口に柄が少ないので体型の違いによる仕立てが可能になるのです。

このように付け下げは訪問着に比べて購入しやすく、自由に着られて手描染めの着物の中でも色無地と同じく、多様性のある着物でないといけないというのが私の考えなのです。ですから、「付け下げ訪問着」「付け下げ小紋」つけさげというような、細かく分類しないほうが「付け下げ」と他のものとが比較しやすく、着物を購入される方もそれぞれの用途に応じて、迷わずに選ぶことができると思うのです。


色数を限定した配色。

友禅染をする過程で配色という工程があります。配色の中でも難しいのは使う色数を決定することです。色数は、原色を調合して色を作る場合は無限といっても良いかも知れません。当然何百色もの色を使えるわけがないので何十色とか数色に絞るわけです。何を基準にして色数を決めるかが難しいのです。最初は何か参考本みたいなものから色を探して決めるのも良いかもしれませんが、自分の図案とその参考にした色数がピッタリということはまず不可能なので、何色かを足したり省いたりしないといけません。

初心者の場合、色数は多いが使える色が少ないということがよくあります。たとえば同じ面積で5箇所に色を彩色するとして、5色使う場合は5色が均等に入ってしまいます。6色の色数だと一色余ってしまいます。

今は簡単な図案と色数で説明していますので1色余ることが誰にでもわかりますが、模様ということになれば形も複雑で面積もいろいろです。それで若いスタッフなどは多く色数をだしすぎたり、色数はあるものの、面積の大きなところに彩色できる色がなかったりするのです。

3色使うとすれば当然同じ色を複数で彩色しなければならなくなります。ここで配色ということが必要になってきます。赤、緑、青の場合は多配色によるハデな感じに仕上がり、赤、オレンジ、黄の場合は暖色系でまとめた明るい感じに仕上がります。茶、ベージュ、黄土の場合は温かく落ち着いた感じになり、統一感のある配色になります。この配色の中に一色、ブルーを入れると、この色がポイント色になりこの色と他の3色をどのように使うかがその人の個性になってくると思います。このように単に茶系のトーン上げにするか、一色ポイント色を入れて統一感を持たせながら多配色に見せるということもできます。

無用な色数はまとまりのない配色になるか、色数のわりには多く使っているようには見えないということになります。

色の面積が大きいところは仕上がりに大きく影響されるので、そのようなところの色を決定して、その色から細かな配色をしていくと失敗が少ないかもしれません。

草花であれば、葉、枝の色を先に決定します。花を全部、白花にしたとすると葉、枝の色が自分が表現したい色の基準となり、白花を多く使った場合は落ち着いた明るさのある仕上がりなり、色花を多く使った場合は若々しく豪華な感じになりそうです。

実際は図案の善し悪しも影響しますし、他に色々なことを考えなければいけないのでこのように簡単にはいきませんが、良い配色ができればそのイメージが自分独自の配色パターンのひとつになるわけです。


ガード加工について

みなさんは、撥水加工(はっすいかこう)という言葉を聞いたことがありますか。言葉どおり、「水をはじく加工をする」という意味です。最近ではこの撥水加工がいろいろなものに、加工されるようになりました。着物も例外ではなく、よく手入れが簡単ということで、進められるのではないでしょうか。

一般に知られている名では「パールトーン」「スコッチガード」など、その他に違う名前でもたくさんあります。(現在、スコッチガードは製造中止です)名前は違っても基本的には「水をはじく加工をする」ものです。しかし、それぞれ違う会社?製造元?が違うので、同じ効力、同じ持続性というわけではありません。価格もそれぞれ違うし、加工後のメンテナンスもそれぞれです。

そこで問題になるのが本来、絹がもっている風合いとか、天然繊維のよさ、というものが加工することによって損なわれるか?ということです。

私がいままで経験してきたり、着物のお手入れの専門家に聞いたことを総合するとそのような状態になったことはありませんし、ないそうです。ただ、加工するわけですから、絶対ということは言い切れませんし、前述したようにメーカーがそれぞれ違うわけですから、そのメーカーの努力の違いでその信用性は大きく左右されます。

それではなぜわざわざ、そのような加工をするかというと、着用後のメンテナンスが非常に楽なのです。出かけた時の安心感もあります。お手入れにかかる値段も最小限にとどめることもできます。

しかし、問題もあり、撥水加工をした着物の、染め替えです。染色を専門の私の考えでは染め替えはあまりお勧めできません。無理だということではないのですが、完璧に撥水加工を取り去ることはできないと思っています。着物の地色を染める引き染め、浸し染めなどは、いろいろある加工のなかでも非常に微妙で難しいものなのです。そして、染めの難がでると直しが難しくなります。結果的に直っても最初のイメージとはかなり違ったものになりやすいのです。何の支障もなく、うまく染まることもあると思います。そのパーセントまではわかりません。

撥水加工の技術ができてからまだ年数が浅いので、加工された絹のサンプルの50年後、100年後、またはそれ以上経過すると、どういう状態になるかは、現在の時点ではまだわからないのではないでしょうか。

ですから、着物に撥水加工をするか、しないかは購入された方の使用度や使用目的、着物の価格、お手入れにかけられるか値段、後にその着物をどういうふうに利用するかで考えていけばよいと思います。

最後に私の考えでは、その着物をよく着られるのであれば、加工はしておいたほうが良いと思います。購入しても頻繁に着ない、お手入れがよくできる方、何年か後に、染め替えの予定がある方は加工をしないほうが良いと思います。これらも考慮して判断してください。


染色の道具

先日、糊伏せに使う道具(画像がないのでわかりにくいと思います)を買いに染色材料店(長谷川繪雅堂、染織関連にあります)に行きました。そしたら在庫があるだけでもう作っていない、作る職人さんがおられないということでした。今回はその在庫の分で間に合いましたが次はわかりません。染織という仕事が特殊になりつつある証拠でしょうか。私達、着物を作る人、道具を作る人は一度そこで技術が途切れてしまうと次の方が、なかなか育たないのが現実です。技術の進歩、コンピュータ−の進歩によりプリント染色がこれからは伸びていくと思われます。

そこで私たち、手描きの作り手は、プリント染色と共存しながら着る方の要望を早く取り入れ、手描きの良さ、図案の新鮮さや面白さ、色、時代にあった対応の早さで、すすめていくのが最善だと思いました。そして若い作り手を育てることも必要です。


普段着とおしゃれ着と礼装着

服ということで着物を考えた場合、だいたい普段着とおしゃれ着と礼装着の3タイプに別れると思うのです。そして当工房はおしゃれ着と礼装着を制作するところです。着物を着て家事をしたり、近所に買い物に行ったりする日常に着る普段着は作っていません。おしゃれ着や礼装着ですから普段に着ないような絹の生地を使い、小紋と訪問着(色無地や付け下げもこの中に入れます)、留袖、振袖というようなスタイルになります。

しかし、ここで間違ってはならないのがおしゃれ着や礼装着といっても、お嫁入り道具として箪笥の中に入れて置くだけの小紋や訪問着、留袖ではないのです。お洒落を楽しみたいときの小紋。自分の好きな柄や華やかな雰囲気を味わいたいときの訪問着。式典などでは華やかさある訪問着、留袖、振袖。そのときどきで一番合っている着物でショッピング、パーティー、コンサート、式典へ出かけことが着るということのお洒落です。もちろん普段着でもお洒落はできますが、根本的に機能性が違いますからも素材や着ていける場所、お手入れの方法、着る方法などが違ってきます。(自分が着る服ですからあえて着付けとはいいません)

価格も普段着とおしゃれ着とでは違いがでてきます。価格についてはそれぞれのタイプで適正価格があり、それより高すぎても安すぎてもいけないと思っています。どちらの場合でも、度がすぎるとどこかに支障がきます。何年かたってわかることもあります。ただ、価格を抑える努力は必要です。

普段着は着物の出発点なので勉強することが必要です。そして当工房では染めのおしゃれ着や礼装着をみなさんに服として着ていただけるように考えていきたいと思います。

ネットの普及でいままでよりダイレクトに着る方と交流ができ、そして話ができるようになって数多くあった問題点が少しづつですが、解決しています。(新たな問題点もありますがそれはそれで考えていけば良いと思います)安価な着物も高価な着物も着る服として、無理をせず着たり着なかったりでいいと思います。

そしてながーく着物を楽しみたいものです。


訪問着の価格について

最近よく低価格の着物がでていますが、価格には大きくわけて4タイプあると思います。
・特別な加工、特別な人(人間国宝など)の高価格なもの――150万以上
・良い生地で、高度な技術で加工をした高価格なもの、―――100万前後
・国産の生地を使い、国内で加工した中価格なもの、――――30万前後
・海外などで、低価格を目的につくられたもの、――――――10万前後
これらの価格の着物はそれぞれの目的、ニーズにわけられて適正価格で販売されています。問題は、ほんとうは30万前後のものをそれ以上で売ったり、低価格のものがほしいのに高価格のものを強引にすすめたりして、適正な価格のものが正常に販売がされないことです。よく
上代価格60万位が特別価格20万位にというように値下げされているのを見かけますがほんとうは最初から、それくらいの価格だったりする場合もあります。

一般の消費者の方は価格とその着物とがあっているかどうかの、違いがよくわかりにくいと思います。対処の仕方は、呉服屋さんでも、直接工房などで作る時も、いろいろなことをたくさん質問してください。そしてわかりやすく答えてもらいましょう。いいものですよ、とか、有名な作家物だというだけではだめで、どこがどういいものなのかを説明してもらいましょう。実際に本などに掲載されているのを見せてもらいましょう。普通、染色作家といわれる方は作品が作家協会などが出している本に、または一般誌に載っているものです。呉服展示会用のパンフレットとか、落款など(着物の下前オクミにある名前とハンコのようなもの)だけではその着物がほんとうに作家物かはわからないことが多いです。作家物とそれ以外の着物の違いはまた、機会をみて書きます。そしてゆっくりと時間をかけて購入するかどうかを考えてください。




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