歯科トピックス

  歯科最新情報を、ここで取り上げます。
歯科医は、情報が多数入りますが、このなかには歯科医以外の方にも役にたつものがあります。情報を共有することは、とても大切なことです。


フッ素摂取量とフッ素症発現率
日本における歯に対するフッ素の考え方の変化
歯周病は冠動脈性心疾患の原因か?
糖尿病を悪化させる歯周病
歯科樹脂に環境ホルモン
マウスガード
高齢者の歯と健康
甘味料について
水道水のフッ素化



フッ素摂取量とフッ素症発現率 - -2007/02/04--

 水道水にフッ素添加することに反対する方々の根拠は、フッ素症の危険性です。
 この議論には、フッ素がどの程度の量でフッ素症が発症するのかを知っておかなければ科学的とは言えません。
 ミズリー大学カンザスシティ校とアイオワ大学の共同研究チームが、2006年に、このことを発表しました。
 628人の被験者にたいして、「水、飲み物、特定の食品、サプリメント、歯磨き材、他」からフッ素摂取量の情報収集し、体重(BW)1kg当たりのフッ素摂取量(mg)を推定しました。
 この結果、生後36ヶ月まで1日当たりのフッ素摂取量が
0.04mgF/kgBW以下ならばフッ素症の発現リスクは相対的に低かった
0.04〜0.06 mgF/kgBW に達すると、そのリスクは明らかに高くなった
0.06 mgF/kgBWを越えると、フッ素症の発現リスクはさらに高くなった
との結論となりました。

 以上から1日当たりのフッ素摂取量が0.04mgF/kgBW以下になれば、フッ素症の発現リスクが低く、齲歯になりづらくすることができることになります。
【注】上記の数値を引用するときは、必ず下記の文献を確認してからにしてください。
参考文献:DENTAL TRIBUNE
The World's Dental Newspaper・Japan Edition 2007.2 Vol.3 No.2 p.6

日本における歯に対するフッ素の考え方の変化

 今から約25年前に、予防歯科学の授業で、フッ素の水道水添加の重要性についての講義を受けました。当時、イギリスで水道水へのフッ素添加の実践に成功した英国人の某教授による英語による報告は感動的でした。
 当時は、フッ素に対する風当たりが強く、歯科医の説明に対し耳を貸す者がいない状態でした。最近の、フッ素に対するマスコミ論調の好意的な変化には、驚きます。
 この状況で、日本におけるフッ素に対する時代の変化をしるのも意義があるかもしれません。
 幸い、日本における歯科のフッ化物応用の第一人者である榊原 悠紀田朗 愛知学院大学名誉教授による論文が発表されましたので、引用させていただきます。

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 1946年(昭和21年)京都大学美濃口玄教授が京都市の第一錦林小学校でフッカ物歯面塗布を開始、1947年(昭和22年)1月から、室町、北白川、京極の3小学校で学校給食へのフッ素添加を始めた。
 1946年(昭和21年)の「学校歯科予防衛生振興についての通牒」には、学校歯科におけるフッ化物の歯面塗布の実施が盛り込まれていた。
 1948年(昭和23年)全国24の府県から保健婦を東京杉並保健所に集め、歯面研磨、フッ化物歯面塗布の指導講習を行った。
 1948年厚生・文部両省次官通牒として「弗化ソーダー塗布実施要領」が出された。
 1949年(昭和24年)厚生省歯科衛生課課長の大西栄蔵氏は「水道水弗素化に必要な経費」を予算に盛り込んだが、大蔵省査定で果たせなかった。
 1951年(昭和26年)大西課長はフッ化物添加の要求をし、大蔵省は認め1952年から京都山科地区の上水道フッ化物添加が実現した。

 大津市では歯科医師会が上水道フッ化物添加に熱心に推進し、市議会の承認も得られたが、医師会の反対で昭和38年に中止された。

 昭和39年に埼玉県南水道企業庁長の橋郁雄氏が、所管の大宮、浦和、与野を含んだ人口約21万人地区の上水道のフッ化物添加を計画し歯科医師会との弗素投入協議会を設立した。歯科医師会は賛成したが、医師会の反対で中止となった。

 昭和40年に、名古屋商大の千島喜久夫氏が「迫りくる飲用水弗素化の危険を防止しよう」との意見を述べた。

 昭和41年に三重県朝日町の柿地区での上水道への添加が決まった。昭和46年に中止となった。

 昭和43年に厚生省は「弗化物溶液の洗口法によるう蝕予防について」をだし、千葉で弗素含有錠剤の噛み砕き法が始まり、岡山でフッ化物洗口が始まった。

 昭和46年に兵庫県宝塚市の西山小学校の児童40%以上が歯牙フッ素症を持っていることが報告された。これがきっかけとして全市的な「斑状歯から子供を守る会」が結成された。

 昭和49年に岡山大学医学部の青山英康氏は学校保健におけるフッ素の応用と斑状歯の関わりから警告し、これに連動し日本教員組合は昭和51年の「健康白書」で小学校におけるフッ化物応用について否定的な見解を示した。

 昭和51から昭和53年にかけ、東京大学医学部高橋晄正氏はフッ化物応用にたいして批判を行った。

 日本歯科医師会は昭和52年に「年少者のう蝕抑制にためのフッ化物応用の考え方」を出し、有用性を強調した。

 このころ各地で、フッ化物応用の反対運動が起こった。

 昭和52年に「フッ素によるむし歯予防全国協議会」が発足。
 昭和59年に「宮崎県子供の歯を守る会」がフッ化物応用の推進の動きが活発となった。

 以上はわたくしが、まとめた文章であり、詳しくは、下記の文献で確認してください。

榊原 悠紀田朗 「私のフッ化物応用遍歴」 『歯科医展望2003年11月、12月号』 医歯薬出版

歯周病は冠動脈性心疾患の原因か?

 "Floss or Die" は、「糸ヨウジを使わないと死にますよ」との意味になりますが、本当のことでしょうか。
 これは、「口腔内細菌が、血流に侵入し、冠状動脈内の脂肪性プラークに付着し、血栓形成に関与するとき心臓に影響を与える」に基づくものです。
 "Foss or Die"(フロスか死か)は、1997年にアメリカの新聞に掲載されたものですが、その後、アメリカでは、テレビの特集番組などで広がりました。
 日本では、1998年頃から、新聞に口腔内細菌と心臓病の関係が掲載されはじめました。
 
 以上の口腔内細菌と冠動脈性心疾患(CHD)の因果関係は、本当の意味での証拠に基づくものではありませんでした。
 2000年に発表されたHujoelらの論文は、歯周疾患とCHDの関連が認められないことを示しました。
 また、歯周疾患によってCHDが発症するという因果関係があるのなら、歯周治療という介入を行うことで、CHDが少なくなるはずです。
 ところが、Hujoelらによって否定されました。

文 献
佐々木好幸「歯周疾患は冠動脈疾患の原因か?」(『日本歯科評論』2002.10月号p.171)

 糖尿病を悪化させる歯周病

 肥満は、糖尿病を悪化させるものとして良く知られていますが、歯周病も糖尿病を悪化させるものです。

肥満と糖尿病
 脂肪細胞は、過剰なエネルギーを貯蓄するだけのものではなく、種々の生理活性物質(アディポサイトカインと総称される)を産生・分泌する『生体最大の内分泌臓器』です。
 このように認識されるようになったのは「レプチン」の発見によるものです。
 レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンであり、主に脳内視床下部の弓状核に存在するレプチン受容体に作用し、強力な摂食抑制とエネルギー消費亢進をもたらし、体重調節に関与します。
  ところが、肥満患者ではレプチンの濃度は高くても、効果的に機能していません。この現象を「レプチン抵抗性」と言います。

 肥満が関与する糖尿病は、2型糖尿病です。
 2型糖尿病は、全糖尿病患者の90%を占め、インスリン分泌低下またはインスリン抵抗性を主体とするものです。

 肥満は、インスリン抵抗性を示すことで、2型糖尿病の危険因子となります。
 肥満糖尿病患者でインスリン抵抗性を起こす原因物質は、脂肪細胞が作る生理活性物質(アディポサイトカイン)の一つである「炎症性サイトカイン腫瘍壊死因子(TNF-α)」です。
 
 以上のことから、肥満はレプチン抵抗性を示すことでさらに肥満を助長します。肥満が進めばTNF-αが多く作られ、インスリン抵抗性を示し、2型糖尿病を悪化させます。

歯周炎とインスリン抵抗性

  歯周炎は、局所の感染症として発症し、慢性の経過をたどる炎症性の疾患です。
慢性化した歯周炎は、恒常的に一過性の菌血症をおこし、生体側では活性化された免疫担当細胞が、多様な生理活性物質をたえず産生します。
 このような状況下ではTNF-αをはじめとする炎症性サイトカインがたえず産生されます。
 このため、歯周炎を放置すると、恒常的にTNF-αの産生量が増加し、インスリン抵抗性を介して、2型糖尿病を病状を悪化させる可能性があります。
 
文 献
 
岩本義博、他 「肥満・糖尿病と歯周病」(『歯界展望』p.181 2002年1月号)


   歯科樹脂に環境ホルモン 2002年1月10日

 平成13年12月15日の北海道新聞朝刊に「歯科樹脂に環境ホルモン」との見出しにて、大阪大学歯学部 恵比須繁之教授グループの学会発表を記事にしています。この記事からは、歯科用の樹脂(コンポジットレジン)は、とても危険な印象を受けます。
 上記の新聞記事に対し、同教授はとても驚き、以下の見解を発表しました。

  平成13年12月15日の北海道新聞記事に対する見解
          大阪大学大学院歯学研究科 口腔分子感染制御講座
                       恵比須 繁之  、  樽味 寿
@ 学会発表の全体象と新聞記事での「言い回し」との間には大きな差異を感じ、発表者としては困惑を覚えております。

A 紫外線吸収剤の人体への影響について
 紫外線吸収剤は、コンポジットレジンが、黄色く変色することを防止するために添加されています。
 我々の実験では、コンポジットレジンから、同剤が溶出する事が分かりまししたが、この溶出量は、人でリスクがあると考えられる量の1億分の1です。
 人体への実際的な影響という点では、紫外線吸収剤の溶出は大きな問題とはならないことが予測されます。

B コンポジットレジンは、国民が質の高い歯科治療を受ける上で、非常に重要なものであります。

 【上記の文章は、簡略化して書いてあります。詳しく知りたい方は、北海道歯科医師会のホームページを、お読み下さい。】


   マウスガード  2001年9月18日

 一般には、マウスピースと言われますが、歯科ではマウスガードと言います。
 ボクシングや、女子ラクロス、国際空手道連盟、極真会はマウスガードを義務化しています。
最近、関東ラグビーフットボール協会メディカルソサエティでは、マウスガードの装着を義務化したそうです。
 他に、義務化はされていませんが、高校のラグビーでは全国大会に出るようなチームはほとんどいれているそうです。
 
 マウスガードは、脳震盪(のうしんとう)の発生を減少させます。また、歯や顎の骨、唇、舌、頬などの保護に役に立ちます。

マウスガードには、以下の2種類があります。
 @スポーツ用品店で購入できる物
 A歯科医師によって制作されるカスタムメード

文献〜『GC CIRCLE No.98』 2001年8月号


  高齢者の歯と健康  2001年6月29日

 日本は他国に比べ急速に高齢化社会となってきています。高齢期まで、多くの歯を残すことは、どのような利点があるのかをここに記載します。

  歯と身体的健康状態
 施設入居の高齢者での6年間の追跡調査では以下の結果となったそうです。
20本以上の歯を持つものが身体障害の発生率は13.6%。
歯が1本もなく、しかも入れ歯の使用をしていない人は、身体障害の発生率は69.6%でした。
 つまり、歯が多くの残っている人は身体的傷害の発生率が低くなります。

  歯と痴呆
 施設入居の高齢者での6年間後の追跡調査では以下の結果となったそうです。
歯が20本以上残っていた方は、痴呆の発現は13.2%でした。
歯が1本もなく、入れ歯のない方は、痴呆の発現は44.2%でした。
歯が1〜19本あり、入れ歯のない方は、痴呆の発現は40.0%でした。
 上記のことは統計的な差を言うことはできなかったとのことです。

 Kondoの研究では、歯を半数以上ない方は、アルツハイマー病のリスクが高いことを統計で示しています。

 上記のことは、直接的な因果関係を示すものではなく、今後さらなる研究が必要な事項だそうです。

 文 献
島崎義浩「高齢者の歯と健康」(『歯界展望』p.1086 2001年5月号) 


甘味料について      2001.6.28記

 虫歯の予防には、歯磨きとフッ素入り歯磨き剤の使用が大切なことです。また、食物と虫歯の関係を知ることも、大切なことです。
 ここでは、甘味料のなかで、ソルビトールとキシリトールについて記載します。

ソルビトール
 ソルビトールはプラーク(歯くそ)のほとんどのばい菌では、代謝されませんが、一部の菌は代謝し酸を作ります。
  しかしながら、ソルビトールの発酵速度は遅く、砂糖ほどプラークを酸性にしません。また、細菌の代謝は、より簡単に代謝できる方からしますのでソルビトールはなかなか代謝されません。しかも、酸素が少ない状態では、ソルビトールはエタノールとギ酸塩を多くり、虫歯の原因となる乳酸は少ししかできません。
 以上のことから、ソルビトールは虫歯予防に効果があります。

キシリトール
 ソルビトールとは異なり、キシリトールは虫歯原因菌に対し制菌的な作用があります。これは、キシリトールが細菌内に侵入、菌体内にキシリトール5リン酸が蓄積することによるものです。
 キシリトールを頻回に長期間にわたって摂取するとプラークの酸を作る能力が下がると言われています。
 キシリトールの最大の特徴は、虫歯の原因菌を減少させる効果です。
歯磨き剤に10〜20%のキシリトールを加えると虫歯の原因菌を減少させますが、3%のキシリトールを加えたものでは効果がありませんでした。
 キシリトール入りチューインガムでは、キシリトールだけでなら、効果はありますが、砂糖などと混ぜて入っているものでは効果がありません。

文 献
 
Dowen Birkhed、他 「臨床医のための甘味料概論」(『歯界展望』p.811 2001年4月号)

水道水のフッ素化    2001.6.27記

 虫歯の減少にフッ素が役にたっていることは、広く知られていることです。また、外国では水道水にフッ素が添加されて、虫歯の減少に貢献していることもよく知られていることです。
 しかしながら、水道水のフッ素化の作用機序がよく知られていません。ここでは、このことについて記載してみます。
   水道水のフッ素化地区と、非フッ素化地区の比較
 水道水のフッ素化地区で育った子供が、非フッ素化地区に移り住むと、非フッ素化地区の子供と同じ虫歯の発生率になります。
 逆に、非フッ素化地区で育った子供がフッ素化地区に移り住むと、その後の虫歯の発生が減少します。
 このことは、フッ素の局所作用を示し、全身効果に疑問を持たせます。
つまり、水道水のフッ素は、体内から吸収され歯に移り、歯に蓄積される事に疑いがあり、単に、水道水のフッ素が口に入ったときに、歯の表面に接したときだけ効果が出るように思われます。
    Limeback氏の再検討
 Limeback氏は、水道水のフッ素化を局所作用と明確に区別した研究がないとしています。また、歯の萌出前の効果について科学的に立証されていないとしています。
    キューバの例 
 キューバのLa Salud町では、1990年に水道水のフッ素化を中止しています。その後、学校で0.2%NaF溶液洗口(年15回)のみとなりましたが、水道水のフッ素化時代より良好な成績となっています。

参考文献
 小松久憲、他「フッ素の全身応用は効果的か」(『歯科医展望』p.186 2001年1月号)