青髭忌憚
青髭忌憚 barbe bleue.
ここは、嵐の中のブロードブリッジ。
両儀式と浅上藤乃は、死闘をせんと対峙していた。
突然、橋全体が大きく揺れた。
「地震? 台風? いえ、どれでもない」
何が起きたのか藤乃には見当もつかなかった。そして、それは式にとっても同様だった。
「一体、何がどうしたっていうんだ?」
周囲を見回した式は、床の死の線が微生物の大群のように爆発的に増えだしたのに驚いた。
「この床、崩れるぞ!」
式が慌てて後ろに跳んだ瞬間、モルタルの床が天井で向かって吹き飛んだ。
「崩れたんじゃない?」
橋の中に充満する粉塵が薄まると、そこには予想外の存在がうごめいていた。
「な、なによあれ・・・・・・」
藤乃が怯えるのも、無理はない。海洋生物のような形をしてはいるが、人間を用意にからめ取れる位に大きい触手が無数に床から生えていたのだから。
密集していた触手の森に、隙間が生まれた。その隙間が徐々に広がると、中から人の手が出てきた。
「誰かいるのか?」
そこから現れたのは、式の知らない二人組みだった。革ジャン姿の男のほうはまだ現代人だと思えるが、黒い姿の大男は中世ヨーロッパの外套のようなものを羽織っていた。
大男は、ギョロ目を式に向けた。
「な、何だ?」
式が言葉を漏らすと、突然大男がひざを着いて頭を下げた。秋隆だってこんなにうやうやしくないという、慇懃とした態度だ。
「おお、ついに見つけましたぞ。聖女様」
「せ、聖女様?」
勿論、式はこんな風に呼ばれた事は初めてだ。
藤乃といえば、目の前のあまりに不可解な情景に何をすべきか判らず、呆然と自体を見守っていた。
「オ、オレは聖女なんかじゃない!」
式の言葉に、男はすこし首をかしげた。
「おお、聖女よ。どうやらこの時代に転生した時に記憶を失ったみたいですね。ですが貴方は、正に聖女の生まれ変わりです。その証拠に、一致しています」
「一致? 何が一致するんだ?」
「声紋です。貴方の声紋は、聖女と完全に一致します」
「はあ?」
開いた口が塞がらない式を尻目に、大男は今度は藤乃に向き直った。
「そして貴方は、聖女の親友。二人はかつて、戦場で共にくつわを並べていたのです」
「ええ? わたしが?」
「そうです。貴方の声紋が、それを証明しています」
大男の隣に立っていた若者が、ようやく口を開いた。
「青髭の旦那、俺に会わせたい人ってあいつらなのか?」
「そうですよリュウノスケ。マスターも、前世では私達と一緒に戦ったではありませんか。私は、リュウノスケの声を聞いて、すぐに判りました」
青髭の言葉に、リュウノスケは首をかしげた。
「旦那の言いたい事は、なんとなく判るけどさ。でもおかしいじゃないか」
「おかしい? 何がです?」
「だって旦那の声って、平田じゃないじゃん」
「うおっ! しまった!」
青髭は、頭を抱えた。
「流石は我がマスター、鋭い指摘です。今日の所は退散いたしましょう」
そう言って触手の中に戻ろうとした青髭だったが、殺し合いを台無しにされた式は許さなかった。
「もう二度と来るなーっ!」
二人の絶叫が、荒天に響き渡った。
/青髭忌憚・了
(後書き)
今回も、声優ネタです。
ちなみに、PSPの「ジャンヌ・ダルク」のキャストが元ネタです。
劇場版の矛盾螺旋が、今から楽しみです。
私の場合、遊佐キャラといったらウラタロスになります。
「君も、ボクに釣られてみる?」
「答えは、聞いてない!」
感想、一応募集しています。
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