六万ヒット&三周年記念SS『平行世界の奇跡2』

『平行世界の奇跡2』


 俺は、イリヤと一緒に土蔵の中にいた。
 これから、イリヤの中にある記録をたぐって、宝石剣を投影するのだ。

 そこには、リズライヒがいた。彼女が従える二人の魔術師も。
 そして何より、宝石の翁が手にしている品こそは……。
 届け――――――――――。
 届け――――――――――――。
 届け――――――――――――――――――――――――――

 ……投影、出来てる。
 出来てるんだけど、どうにもコレは『宝石剣』とはいえないような……。
「どうなんだよコレ」
「それはそれでいいのよ」
 本当にいいのか?
「ええ。そもそも宝石剣は、多重次元に存在するからね。次元によって、その外見の可能性も無数に存在する。それは、その可能性の一つが顕在化しただけなのよ」
 俺には理解できないが、イリヤの理屈を信じるしかなかった。
「――――――――」
 ――――と。
 油断、した。
 目の前が霞む。
「衛宮くん、これは一体なんなのよ?」
 悪寒がする。
 記憶を理解したくない。
「ぐーーーー」
 しょうがないので、寝てごまかした。


 ここは、柳洞寺の地下洞窟。
 黒セイバーは士郎とライダーに任せて、凛は桜と対峙していた。
 黒い高波が凛に迫る。
 だが、桃色の一線がそれを許さない。
 凛は、士郎の投影したアレを振るって、呪文を唱えた。
「プリチー、ウィッチー、ゼルレッチーッ!!」
 六対目の巨人が吹き飛んだ。
 最初は恥かしがっていたが、三体目からは、なかばヤケになってのシャウトだった。
「な―――」
 桜が驚くのも当然である。
 凛が魔法のステッキを手にした、猫耳魔法少女になって戦っているのだから。
 魔法のステッキが光を放つ。
「プリチー、ウィッチー、ゼルレッチーッ!!」
 大空洞を、眩いばかりの桃色で照らし上げる……。
 こうして、影は一掃された。
「うそ――そんな、はず」
 そりゃ、信じたくはないだろう。
「姉さんがさっきから放っている光は、まるで」
 昔はやった、魔法のアイドルそのものだった。
 間桐桜は怯え、混乱していた。
 それ故に気付かない。
 一撃ごとに自らの羞恥心とプライドを打ち砕く、ステッキからの代償に。
「わたしの理性がどこまで持つか、か――」
―――素敵なステッキゼルレッチ。
 それは、マジカルステージに路を繋げる”遊戯”。
 事ここに至って、ようやく敵の正体が判ったのか。
 大きく肩を揺らし、間桐桜は悠然と佇む姉を睨む。
「こんなの不公平です、姉さん、姉さんだけがどうしてそんなに可愛い格好をしているんです!」
 突っ込み所は、やっぱりそこだった。
「どうして姉さんだけ、そんなに楽しんでいられるんですか」
 どうやら桜には、凛が戯れているように見えたらしい。
「姉さんが――姉さんが、そんなだから――!」
「そ。じゃあ、わたしからも一つだけ言っておくわ。そんなにプリチーになりたかったら、あなたがなりなさいよ!」
「――え?」
 ――瞬間。
 遠坂凛は、あっさりとステッキを投げつけた。
 何事にも耐え難い、魔術師の遺産を、ぽーん、とキャッチボールのように投げて、
「プリチー、ウィッチー、ゼルレッチーッ!!」
 大空洞は、一面の光に包まれた。
 光に目が眩んだ桜が視力を取り戻すと、彼女の姿は変わっていた。
「プリチー、ウィッチー、サクラッチー!」
 桜は、魔法少女に変わっていたのだ。
 少女は強く、自身を祝い始めた。



 時計塔に連行された凛を被告にした裁判の席に、彼は現れた。
「――いや、弟子の不始末は私の責任でもある」
 宝石の翁に向かって、凛の右ストレートが飛んだ。
「アレはお前の仕業だったんかーっ!」
 弁護している筈の弟子からの意外な一撃に、魔法使いは箒も使わずにロンドン上空まで飛んで行った。



後書き
「お前のせいで、久しぶりにFateをプレイしたら、ハイライトシーンで思い出し笑いしちまったじゃねーか!」
と、言われるようなSSを目指しました。
いつもソレを狙って書いているのも確かですが。
これでも、<TAKE ZER0>十一万ヒット記念SSです。
感想、一応募集しています。

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