南国少女 tropical memory.



               /0

 コタローは、ガンマ団の基地の最上階に幽閉されていた。強力すぎる力を持ってしまった少年は、同じ力を持つ一族の中でも危険すぎたのだ。
「つまんないよ、こんなの」
 遊び相手もいない毎日に、コタローは退屈しきっていた。
 重い鋼鉄の扉が、突然開いた。部屋に入って来たのは、コタローの知らない男だった。
「コタローだな」
「そうだけど……。小父さん、パパの知り合い?」
 黒いコートの男は、質問には答えず、変わりに違う事を話し掛けた。
「おまえに会わせたい少女がいる。彼女はいずれ、この部屋に来る事になるだろう」
 コタローには、判った。少女がコタローに会いに来る理由が。コタローの表情が、花が咲くように明るく変わった。
「有難う、小父さん。ボクに遊び相手を紹介してくれて」
 交渉は、成立した。何度か会話を交わした後、男は、彼には不似合いな子供部屋から立ち去ろうとした。
 その男の裾を、少年は難なく掴んだ。
「ねえ、小父さんは、誰?」
 男は、裾から手を振りほどきながら、問い掛けに答えた。
「魔術師―――荒耶宗蓮」
 男が立ち去った後には、侵入者の痕跡は一切残っていなかった。



               /1

 両儀式が、険しい顔つきで蒼崎橙子の事務所に押しかけてきた。
 今日の彼女は、何故か紺色の袴の巫女服を着ていた。
「幹也、早く教えてくれ!」
 四人の六つの目が、同時に部屋に入ってきた少女に視線を向けた。式が知っている顔は、その中の三人だけだった。
「あいつは?」
 式は、事務所にいる見知らぬ人物を顎で示して、橙子に尋ねた。部屋にいる他の二人、黒桐幹也と黒桐鮮花の知りあいとは、到底思えなかった。
 その男は、身長は二メートル程度の長身で、金髪を背中まで伸ばしていた 。日本人では、なさそうだ。前髪を伸ばして右目を隠している理由は、左目を隠している幹也と同じく隻眼のせいだろう。黒づくめの服を着ている所まで幹也とおなじだが、幹也があの男位の年齢(三、四十代と式は思った)になっても、二人は似ても似つかないだろう。むしろ、白純の方がイメージに近いかもしれない。
「あいつを連れて来たのは、黒桐だよ」
 信じられないという表情で、式は幹也の方を振り向いた。
 あの男は、とても危険だった。初対面でも、すぐに判る。幹也は彼が何者か知っていて、連れてきたのだ。
 睨みつけている式を怖れずに、幹也は来客を紹介した。
「この人の名前は、サービス。ガンマ団の幹部さ」
 ガンマ団と聞いて、式は右手のナイフをサービスに向けた。
「成る程、幹也の言った以上の早業だな。手ぶらの状態から、一瞬で臨戦体制か」
 そのサービスは、式の後ろに立っていた。速いのは、お前の方だろう。式は、相手に戦う意思が無いのを確認してナイフをしまった。
「それで、兄貴をさらった連中が、何の用だ?」
「別に私は誘拐していないよ。彼がガンマ団に入ったのは、自分の意思だ。それと、私は正確にはガンマ団はやめている。今でも深く関わっているのは、認めるが」
「……。お前達は、何者なんだ」
「悪の組織さ。世界征服を企む」
「本気で言って……いるようだな」
「世界征服は、不可能ではないぞ。ガンマ団を支配しているのは、秘石眼の一族だからな」
 橙子の言葉に、サービスの頬が僅かに痙攣した。
「秘石眼の話をする必要が、あるのか?」
「避けて通れない話題なのは、お前も判っているだろう。自分から話したくないのなら、私から話そう。ウィローから、秘石眼の一族の事は聞いている。そういえば、あいつは元気か?」
「彼なら、パプワ島に行ったきり、行方不明だ」
「パプワ島だと? あそこに魔術師を送るとは、人選を誤ったな」
 橙子は、咥え煙草を噛んだまま低く笑った。
「ガンマ団の構成員には、魔術師や能力者も少なくない。その頂点が、秘石眼だ。その眼に宿る力は、他の能力者が束になっても叶わない。
 秘石眼の一族、彼ら自身は青い一族と言っているが、は、遠い昔に南の島から日本に移り住んで来た。その頃の日本には既に特殊能力を持つ家系がいくつか存在していたが、彼らとの接触は不可侵の約束を結んだ一度だけだった。
 しかし、秘石眼の一族は今の代になるとガンマ団を立ち上げて世界征服に乗り出した。
 ガンマ団自身は、自分たちの能力を隠さずに積極的に活動している。その事が、逆に各国政府がガンマ団の存在をひた隠しにする原因となっている。この国の何処かに世界征服を企む組織があるなど、殆どの日本人は知らずにいるのも、そのせいだ」
「そんな組織、どうして兄貴が知っているんだ?」
「その秘密は、これさ。式がガンマ団を調べて欲しいと言うから、検索エンジンにかけたら、一発で見つかった」
 幹也が、机の上にあるノートパソコンのディスプレイを見せた。そこには、ガンマ団のホームページが映っていた。
「はあ?」
 式の巫女服の襟が片方、ずるりと肩から下にずれた。
 そこには、いい年をした金髪の中年男性が、黒髪の男の子の縫いぐるみを抱えてにっこりと微笑んでいる姿が映っていた。
「彼が、私の兄、マジック総帥だ」
「総帥……。一番偉いのか?」
 返事は、聞くまでも無かった。
「このホームページは、殆どの人は冗談としか思っていないんだ。だけど、一部の人間、魔術や特殊能力が実在すると知っている者だけは、その恐ろしさが判る筈だ」
 次のページには、不思議な能力で幾多の戦場で景気良く勝利を繰り返すガンマ団の姿が映っていた。中でも特筆すべきは、マジックの放った秘石眼の威力だった。
「あれ、この街は?」
 マジックの両目から放たれた光が都市一つを消し飛ばした光景に、鮮花は見覚えがあった。テレビのニュースでは、工業プラントが爆発した事になっていた都市だ。テレビのニュースとこのホームページのどちらが真実かは、鮮花には判っていた。
「式の兄さんがこのホームページを見たのは、アドレスの入力ミスか何かのせいだろう。そして、真実を知った彼は、ガンマ団に入隊した」
 どうして式の兄が入団を決意したのかは、本人しか知らない。サービスも、履歴書に「ガンマ団の活動内容に共感したため」という御決まりの言葉を書いてあったのを見ただけだ。それが本心とは、五人とも思っていなかった。
「僕は、早速ガンマ団と連絡を取った」
 ホームページには「ファンレターの宛先」と書かれていた。そこをクリックすると、主だった団員のメールアドレスがリストアップされていた。
「話せば判ってくれそうな人を選んでメールを出したら、すぐに返事が返ってきた。そこで、彼に来てもらったんだ」
 数ヶ月前に失踪した兄から、ガンマ団にいると書かれた手紙が届いたのが、昨日。たった一日で話ここまでが進むとは、式は思っていなかった。
「それで、兄貴は帰ってくるのか。帰ってこないと、両儀家の年中行事を全部俺が仕切らなきゃいけなくなる」
 それは、とても面倒な事だった。しかも、御盆まであと十日しかなかった。急がなければ、秋隆に何をさせられるか。秋隆自身は、義務と親切心からしている事なだけに、質が悪い。
 今、式が巫女服を着ているのも、年中行事の主催者をやらされそうになっているからだった。
「私には、甥がいる。彼は、私の兄の息子だ」
 突然、サービスが自分の家族の話を始めた。彼が無意味な事をするような男では無いと判っていたので、式はそのまま耳を傾けた。
「我が一族の者は、全員生まれた時から片目に強力な力を宿している。マジック兄さんに至っては、両目だ。所が、甥だけは秘石眼を持たずに生まれてしまった。通常の社会では、能力者の方が異端だ。しかし、秘石眼の一族の中では、異端が逆転してしまう」
 浅上藤乃の逆か。式は、去年の夏の出来事を思い浮かべていた。
「ガンマ団は、一つの社会だ。我々は、秘石眼を肯定する社会を、自分達で作り上げた。こんな落とし穴にも気付かずに。しかし、それで良かったと、私は思う」
 サービスが前髪をかき上げると、右目が無くなっていた。
「私は、秘石眼を捨てた男だからな」
 式は、憮然とした顔をした。
「なんだ。街を吹き飛ばす力は、無いのか」
「死合うつもりだったね。式」
 サービスは、携帯電話を取り出した。
「兄は甥を溺愛し、甥も私の期待に応えようと己を鍛えた。だが、結局甥はガンマ団を裏切ってしまった。秘石眼を両目に持つ者の宿命と、秘石眼を持たない者のコンプレックスを、二人は克服出来なかった。だが、きっとあいつは私達の所に戻ってくると信じている。一族のさだめを変えなければ、自分の運命も変わらないのだから。お前の兄も、同じだ。あいつが居るべき場所も、両儀の中にある筈だ」
 ガンマ団に電話をかけたサービスは、両儀を出すように取り次いだ。
「なんだって!? くっ、一足遅かったか!」
 サービスは、それきり電話を切った。
「一体何があって、兄貴がどうしたんだ?」
「任務で、留守だそうだ。場所は、パプワ島!」



               /2

 ヘリコプターが、橙子の工房の屋上に着陸した。
 最初にサービスが、次に式がヘリコプターに乗りこむ。続いて、幹也と鮮花も搭乗した。
「どうして、お前達もついて来るんだ?」
 自分達が同乗するのは当然といった様子でいる二人を、式はヘリコプターから追い出そうとした。
「友達は、大事にした方がいいぞ。後悔したくなければな」
 サービスの言葉で、式は渋々と座席に座った。元々、パプワ島へはサービスの部下が行く筈だったのを、式が時間がないから自分が行くと言って聞かなかったのだ。式は、僅か数時間でヘリコプターを調達してくれたサービスに従うしか無かった。
「幹也は兎も角、どうしてお前まで同行するんだ?」
「わたしは、パプワ島に興味があるだけです。行くなら、魔術師になる前に行った方がいいそうですし」
 幹也の妹の本心を見抜けない式ではない。きっと、自分が知らない所で幹也と式が南の島で二人きりになるかもしれないと不安になったのだろう。
 サービスも橙子も、鮮花がパプワ島に行く事に反対しなかった。幹也も、夏休みに何処にも行かない妹の唯一の我が儘を止めきれなかったらしい。式も、諦めるしかなかった。
 全員が着席すると同時に、ヘリコプターは離陸した。幹也が窓から見下ろすと、事務所にいる橙子が 窓に背中を向けて月見うどんをすすっていた。見送りするつもりは、やはり無いようだ。
「へえ、あいつは最初に黄身を割るタイプだったんだ」
 幹也の後ろから、式が意外そうな顔で窓を覗き込んだ。
 サービスの話では、まずガンマ団の基地に向かい、それからパプワ島に行くとの事だ。パプワ島へ直接行かないのは、サービス自身がまだパプワ島に行くべき時ではないかららしい。
「甥は今、ガンマ団に帰るべきかどうか、迷っている。私が島に行くのは、彼が決断してからだ」
 しかし、秘石眼の一族が乗っていないと、機械を使ってはではパプワ島に行けないらしい。そこで、ガンマ団の基地にある別の移動手段でパプワ島に行くのだ。
 サービスの用意したヘリコプターは、ガンマ団のVIP専用機だった。基地までの数時間、式達の空の旅は快適だった。
「こんな要塞が、日本にあったとはな」
 機内のバーから持ち出した一升瓶を抱えて、式はヘリコプターから飛び降りた。
「さあ、早くオレをパプワ島に連れて行け」
 サービスは、ゆっくりとタラップを降り来た。
「そう慌てるな。準備を整えてからだ」

         ◇

 少年は、来賓の存在に気付いていた。
「ほら、あの小父さんが言っていた、お姉ちゃんが来たよ」
 物言わぬ縫いぐるみに、少年は話し掛けていた。
「ずいぶん遅かったよね。呼んでみようか?」
 遊び相手を見付けた少年は、小父さんに言われていた事を実行した。

 サービスは、賓客達を更衣室みたいな部屋に案内した。
「絶海の孤島にいくのだからな。式の実力なら服装は好きにしていいが、そっちの二人はそうはいかないだろう」
 そう言って振り返ったサービスは、大変な事に気がついた。
「式は、どうしたんだ?」
 式が、はぐれてしまったのだ。

 その頃式は、ガンマ団基地の中をうろついていた。
「一体、何者なんだ?」
 誰だか判らないが、自分を呼んでいる者がいる。式は、導かれるように鉄の扉の前までやって来ていた。
 電子ロックなんか、関係無い。式は、懐のナイフを使って扉を裁断した。不快な音を立てて、扉は崩れ落ちた。
「これは、どういう事だ?」
 扉の向こうは、子供部屋だった。ガンマ団基地の外観や鉄の扉とはおよそ似つかわしくない景色だった。
 散乱しているヌイグルミを踏まないように注意しながら、式は部屋に立ち入った。
「いらっしゃい、お姉ちゃん」
 部屋の中央には、小学生に入るか入らないか程度の子供が立っていた。
「ボクはコタロー。サービスは、ボクの叔父さんだよ」
「おまえが、オレを呼んだのか?」
 少年は、上目使いで式を見上げながら、顎を引くようにして首を縦に振った。
 鳴り響く警報を無視して、二人は会話を続けた。
「やっと会えたね、お姉ちゃん」
「オレを知っているのか? どうしておまえみたいな……」
 式の目が、青く変わった。式は思い出したのだ。式の知らない誰かが、式を知っているという事実に、前例があったのを。
「おまえも、あいつに会ったのか」
「うん。荒耶小父さんが言ってたよ。お姉ちゃんは、ボクの遊び相手だって」
 荒耶宗蓮。式が最も不快に思っている男の名前を、少年はあっさりと口にした。
「そうか、おまえも秘石眼の一族だからな」
 異端の血統を、あの魔術師が見落とす筈が無かった。
「ボク達は、石ころに作られた偽の人間なんだって。だから”起源”が無いって小父さんに言われたの。起源が虚無のお姉ちゃんとは、気が合うんじゃないかな」
 そう言ってコタローは、あどけない笑顔を式に見せた。
「だから、ね。遊ぼうよ」
 少年の瞳が、青く輝いた。邪悪なまでに愛くるしいコタローの笑顔を見て、式は笑顔でこたえた。
「ああ、そうだな。おまえとは、楽しめそうだ」
 式は、ナイフを取り出した。

 ガンマ団基地が、激しく揺れた。
「うわっ。地震なのか?」
 式を探していた幹也が、壁に手を突いて体を支えた。
「いや、これはコタローが……。式の居場所が判ったぞ」
 振動する床をものともしないで、サービスは駆け出した。

 コタローは、笑っていた。
「ワーイ! 楽しいよ、お姉ちゃん」
 対照的に式は、がっかりしていた。
「オレは、楽しくない。おまえ、最低だな」
 式は、コタローに失望していた。
 コタローは、殺し合いを楽しんではいなかった。只、思い切り力を使って遊びたいだけだった。それで、誰が死のうが何が壊れようが構わなかったのだ。殺人を自覚しないで殺人を楽しむ少年を、式は絶対に認めない。
「こんなクダラない戦い、もうやめた」
 壁にできたいくつもの大きな穴の一つに手を掛けた式は、それを手掛かりに一気に壁を駆け上った。
「むだだよ、お姉ちゃん」
 コタローは、目で式を追いかけながら、秘石眼の力を使った。
「それこそ無駄だ」
 式の目には、コタローの力は狂ったように踊っている青い不規則な破線の束に見えた。天井近くで壁を蹴って跳躍しながら式が振り回したナイフは、正確に線を断ち続けた。
「どうして、ボクの力が効かないの?」
 泣きそうな顔をしているコタローの目前に着地した式は、右の平手一発でコタローを張り倒した。
 それきりで、戦いは呆気なく終わった。
 サービスが部屋に到着した時に見たものは、年相応に泣きじゃくるコタローと、不愉快な顔で佇む式の姿だった。

 コタローとの戦いで和服をボロボロにされた式だが、怪我は特にしていなかった。
 幹部クラスのガンマ団のメンバーは、様々な格好をしている。和服好きも結構多く、サービスは式の着替えを何着か見繕った。
 白い袴を選んで着替えた式は、ついでに赤いフライトジャケットもサービスから頂いた。
「一体、あいつは何者だったんだ?」
 ジャケットのファスナーを上げながら、式が尋ねた。
「コタローも私の甥、マジック総帥の次男だ。あの子には、先天的に善悪の概念が無いんだよ。人は、善悪の区別がついた悪を憎む心がないと、悪い事が出来ない。だから、あの子は問題児なんだ。可哀想に」
 総帥でさえも手に余る少年を、部屋に封印したのだという。どうやら秘石眼の一族にも、込み入った事情があるみたいなので、式はこれ以上尋ねなかった。

         ◇

 式が幹也達と合流すると、二人とも既にガンマ団の戦闘服に着替えていた。
「ガンマ団の戦闘服は、色が何色もあって自分で選べる」
 そういうサービスの背後のクローゼットにも、ブティックのように様々な戦闘服が吊るされていた。  紫色に白い線が入った制服を、鮮花は選んでいた。サービスが言うには、これは本来は一族に名を連ねるグンマ博士の直属部隊が着る制服らしい。幹也は、予想通り黒い制服を着ていた。
「それから、これを持って行くといい。一週間の食料と、サバイバルセットだ。おまけもついている」
 三人に渡された背嚢には異なるオプションがついていた。式には職人手製のコンバットナイフ、幹也にはガンマ団基地と連絡がとれる通信機に予備の眼鏡、鮮花にはピストルと予備マガジンがついていた。
「島の動物を狩って食おうなどとは思うな。あそこの生活によっぽど慣れていないと、そんな事は出来やしないからな」
 三人が、意味深なサービスの言葉の意味を知るのは、もう少し後の事だった。

 準備が終わると、三人は武器庫みたいな部屋に案内された。
「さあ、好きな移動手段を選びたまえ」
「選ぶったって、乗物なんか無いぜ」
「私は、移動手段だと言ったのだ。例えば、ウィローはこれだ。持ち主は未だに行方不明で、これしか回収出来なかった」
 サービスは、倉庫の隅に立てかけてあった竹箒を取り出した。
「もしかして……」
 鮮花の思った通り、掃除の為に置いてあるわけでは無かった。
 本当に、魔法の箒にまたがってパプワ島まで飛んで行ったのだ。
「それから、今までにこんな方法があった」
 サービスが壁にあるスイッチを押すと、スクリーンがズンと落ちてきた。
「うわっ!」
 スクリーンには、忍者やら金色の鎧やらと、奇妙な格好をした男達が映っていた。
「島まで水遁の術で海中を泳ぐ者、丸木舟に乗って行く者、ハングライダーで飛ぶ者。皆、自分が身に付けた能力を活かした手段で島に向かった」
「マジですか?」
 幹也の感想も、もっともだった。勿論、全部本気だった。
「ちなみに君の兄さんは、風船を沢山結び付けて風に乗って島に向かった」
「そうなのか?」
 数ヶ月の間に、式の兄は何を身に付けたのだろうか?
「君達も、好きな手段を選びなさい」
「選ぶも何も……」
 幹也には、何の能力も無い。鮮花の火なら、まだ使い道はあるだろうが、式の能力は殺す事に傾斜していて汎用性に欠ける。
「オレから行くぞ、幹也」
「早っ」
 その式は、倉庫の中央に鎮座している大砲の銃口に潜り込んだ。どうやら式は、スピードを選んだようだ。幹也や鮮花の身体能力では、これは使えない。
 鮮花は、サービスが持っていた竹箒に決めた。
「わたしだって、魔術師ですからね」
「幹也も、さっさと選んだらどうなんだ?」
 式にせかされて、幹也は潜水艦らしき乗物を選んだ。乗ってみると、百七十の背丈にはかなり窮屈だ。
「それは、回天だ」
 幹也は、慌てて降りようとしたが、ハッチが突然閉められた。
「何で、海軍の特攻兵器があるんだ!?」
 幹也の言葉に、誰も答えてくれはしなかった。
「火薬は抜いてあるから、安心しろ」
 そういう問題では無い。
 サービスがスクリーンをしまって違うボタンを押すと、天井と壁が開いて青空が見えた。
「ここからどうやって潜水艦が発進するんだ?」
「喋るな、舌をかむぞ」
 そう言うとサービスは、潜水艦の背後に回って両腕を広げた。
「眼魔砲!!」
 カッ! ドッカーン!
 サービスの両腕から発せられたエネルギーは、潜水艦を吹き飛ばした。幹也の悲鳴が聞こえない所を見ると、どうやら気絶したらしい。
 青空に向かって飛び立った潜水艦は、だんだん小さくなっていき、最後には雲の切れ間に一瞬残光を輝らして消えた。
「お前、結構ヤルな」
「言っとくが、私と死合っている時間はないぞ」
「ああ、そうだな」
 何処から取り出したのか、サービスの手にある松明が、大砲の導火線に火を着けた。
 ドーン! 轟砲一発、式は水平線の向こうに消えてしまった。
 続いて、鮮花が竹箒にまたがる。突然、箒から勢い良く炎が噴出して、鮮花は箒ごと飛ばされてしまった。
「な、何よ、一体これはどうしたの?」
 先の二人にも負けない勢いで、鮮花は飛び去った。
 サービスは、青空を見上げながら呟いた。
「そういえば、帰って来る手段を考えてなかった」
 天井が、ゆっくりと閉じられた。



               /3

 パプワ島に朝が来た。
「テヅカくーん、どこ行きはりましたかー」
 何処かに飛んで行った友達(のつもり)の蝙蝠を追い掛けて、アラシヤマが海岸を駆けていた。最近のテヅカ君は、同じ蝙蝠の友達と遊んでばかりで、全然構ってくれない(最近どころか始めからそうだという自覚は、アラシヤマには、無い)。
 海岸にテヅカくんと友達の蝙蝠(ウィローのなれの果て)がいた。何かキィキィ騒いでいて、どうも様子がおかしい。
 アラシヤマが旋回している二匹の真下まで走ると、そこには誰かが倒れていた。
 紫色のガンマ団の制服を着ている少女は、背嚢を左腕に抱えて右手には竹の棒を握っていた。竹の棒は、何故か片方が焼け焦げていた。
「テ、テヅカくん。もしかして、これは……」
 砂浜に打ち揚げられた少女を抱え上げたアラシヤマは、テヅカくんを見上げた。
「わてに新しい友達を紹介してくれたんどすな!!」
 それは、絶対に違う。

         ◇

 既に太陽は、水平線から離れていた。
 ゴーンッ!!
「あいててて」
 今まで気絶していた幹也は、衝撃で目を覚ました。
「到着、したのか?」
 破壊されたハッチからは、青空が見えていた。足元からは、何故か水が跳ねる音がした。
 自分が乗っている潜水艦に穴があいている事に気付いて、幹也は慌てて逃げ出した。それでも、背嚢を忘れないだけの余裕はあった。
 どうやらここは、磯の岩場らしい。一番近くの海岸線まで水を切って全力疾走した幹也が振り返ると、潜水艦は完全に沈んでいた。
「痛っ!」
 幹也は、医者に全力疾走を止められていた事も今更ながら思い出していた。走らなければ溺れ死んでいたのだから、仕方無いが。
 両膝の痛みに耐えかねて、幹也は手ごろな岩に腰を落とした。
「鎮痛剤も、あったよな」
 背嚢を下ろして、膝の上に置く。何故か、軽い。
「食料が、無い?」
 ガツガツという効果音に振り向くと、洗い熊とカンガルーネズミがCレーションを食べ散らかしていた。
「わっ!」
 満腹になったのか、カンガルーネズミ達は寝転んでしまった。
「あーあ。一週間分の食料が……」
 カンガルーネズミ達は、暢気に寝息を立てている。
「こうなったら、こいつらを料理……」
「ムニャムニャ、もう食べられないよ」
「え?」
 今、誰かが喋った?
「クボタくんの意地悪……」
「ね、寝言か?」
 信じられないが、この二匹は寝言を喋っている。
『島の動物を狩って食おうなどとは思うな』
 幹也は、サービスの言葉を思い出した。成る程、確かに日本語を話す動物は、食べにくい。すると、この島の動物は皆、言葉を話すのか。
「あーら、見なれない顔ねぇ」
「シンタローさん程じゃないけど、結構イケてるわね」
 ペタペタと、幹也の顔を魚のひれが撫でまわした。
「うわっ」
 腰を抜かした幹也が見た物は、人間サイズの蝸牛と矢張り人間サイズで足まで生えている魚だった。どうやら、カンガルーネズミの寝言に驚いている間に接近していたらしい。
「イ、インスマス?」
「やーねー。私は網鯛よ。鱒じゃないわ」
 二匹は、イトウにタンノと名乗った。
 気色悪いが、コミュニケーションが取れるのは有り難かった。食料の問題を何とかしようと、幹也は相談してみた。

         ◇

 パプワ島に無事に着地した式は、一晩中密林をさまよっていた。ナイフで邪魔な木を切り倒しながら進んでいたのだが、この島の木々はとても健康で死ににくかった。
「これでは、幹也達は大変だな」
 正午近くになって、開けた場所に式は出た。
「建物?」
 ドーム状の一軒家を発見した式は『PAPUWA HOUSE』と書いてある看板を見つけた。
「すると、家なのか?」
 バンっと、勢い良くドアが空いた。
「ガンマ団! また新しい刺客か!」
 ランニングシャツに黒いズボンを履いた青年が、式の前に現れた。そういえば、式はガンマ団のジャケットを羽織っていたのだった。
「待て、オレは別にガンマ団ではない」
「昼飯前だ、一気に蹴りをつけてやる!」
 青年が大きく広げた掌から、光が出てきた。
「あれは、サービスやコタローと同じ!」
 すると、あいつがサービスの甥という事らしい。式は、コンバットナイフを取り出した。
「一度戦った能力だ、負けはしない」
 秘石眼の能力に対しては力自体を殺したが、エネルギーその物が飛んでくる眼魔砲の場合は、そうはいかなかった。
 コタローとの戦いの時は、式は自分の直前の空間を殺す事で眼魔砲に対抗していた。どんなに強力なエネルギーでも、進むべき空間が無ければ、そこで力は途切れてしまう。
 それよりも気になったのは、青年のほうだった。
「命が三つ? どういう事だ」
 こんな人間は、この眼を持ってから今まで、見た事が無かった。シンタロー本人も知らない魂が隠されているせいで、三人分の死の線が入り組んでいたのだ。
 シンタローも、式を見て緊張した。
「なんて眼をしていやがる」
 式は、眼魔砲を睨みつけていた。まさか、眼魔砲を攻略出来るというのか?
 今にも死合いが始まろうとしていた、その時。
「シンタローッ! メシ!」
 バキッ!
 家の中から飛んできたオタマが、シンタローの後頭部を直撃した。彼の手中の光は消滅し、シンタローは地面に倒れた。
「え?」
 式のジャケットが、右肩からズリ落ちた。
「さっさと、昼メシの仕度をしろっ!」
 ひょっこり家から出てきたのは、上半身裸の少年だった。
「何者だ、あいつ?」
 こんなに簡単に、あの男を仕留めるとは。
 少年は、シンタローの足を持って引きずって行った。家に戻ろうという直前、少年は式に向かって振り向いた。
「お前も、食うか?」
「え?」
 式は、少年に誘われるまま、昼飯に付き合う事になった。
 これが、式とパプワの初対面だった。

         ◇

 式がパプワと出会っていた丁度その頃、鮮花が目を覚ましていた。
「あんさん、よう寝はりましたな」
「は?」
 聞きなれない言葉は、一瞬意味が判らなかった。簡素な寝床から上半身を起こすと、目の前に男が立っていた。黒いショートカットに右目を隠す前髪は幹也に似ているが、目つきというか顔つきというか、どこか暗かった。
 寝床があるのは、洞窟の中だった。天井からランプでも下がっているのか、男の背後でオレンジ色の光が揺らいでいた。
「ここは……」
「この島は、パプワ島どす」
 パプワ島? どこかで聞いたような……。
「兄さんっ!」
 鮮花の頭は、一気に鮮明になった。早く、兄さんに合流しないと。
「あいつと兄さんを二人きりになんて、絶対にさせない!」
「はぁ? あんさん、ガンマ団ではおまへんのか?」
 そう言われて、は自鮮花分がガンマ団の制服を着ていたのを思い出した。
「この服は、サービスさんから借りたものです。わたしは、先を急ぎますので」
 寝床から立ち上がった鮮花は、アラシヤマを押しのけようとした。
「まちなはれ、お昼でも食べて行きまへんか」
「そんな暇は、有りません。一刻も早く兄さん達と合流しないと、大変な事に……」
 アラシヤマの背後で飛んでいるオレンジ色の存在に、鮮花は言葉が詰まった。それは、炎で出来た蝶だった。炎の形や出現する場所を、この男が自在に操っているのだ。
「この人、炎使いなんだ。それも、かなり高位の」
 あまり印象の良い男では無かったが、彼と知り合いになるのは損な話では無さそうだ。鮮花は、寝床に座りなおした。
 自己紹介をすました鮮花は、Cレーションと焼き魚で昼食を取りながら今までのあらましをアラシヤマに話した。
「成る程、友達のお兄さんどすか」
 うんうん肯いて、アラシヤマは耳を傾けた。親身になっての事ではない。友達のいない彼は、世間話というものを一度でもいいからしてみたかったのだ。
「それで、竹箒に乗って島に向かったのです」
 先に行った二人は、それこそ矢のような速さで(砲弾だけど)パプワ島に向かった。式と幹也を二人きりにさせたくない鮮花も、負けられなかった。
「所が、突然箒から勢い良く炎が噴出して、わたしは箒ごと飛ばされてしまったんです」
 焼け焦げた竹の棒が自分の箒だと知って、ウィローはキィキィわめき出した。勿論、人間二人には言葉は通じない。
「それは、簡単な勘違いどすな。その箒の能力は、空を飛ぶのでは無かったんどす。きっと、空を飛べる魔力の持ち主の為の、増幅装置だったんどすな。あんさん、火を使うのが得意でっしゃろ」
「アラシヤマさん程じゃ有りませんが」
 ガンマ団の士官学校にも、ペーパー試験はある。こう見えても、アラシヤマはシンタローと主席を争った仲だった。しかもアラシヤマは、火に関しては専門家だ。彼の推測は、ほぼ間違い無いだろう。
 こうして、二人は一緒に行動する事になった。



               /4

 タンノくん達に連れられた幹也がパプワハウスを訪ねると、シンタローと式が昼食を作っていた所だった。
「客人にまで手伝わせて、悪かったな。全く、こいつがグズグズしているから」
「何、自分も食べる食事だ。別に構わないよ」
「俺を気絶させたのは、お前だろ」
「シンタロー、五月蝿い! 行け、チャッピー」
「ワオーンッ」
 ハプワの愛犬のチャッピーが、シンタローの頭に噛み付いた。
「ギャアーッ! ゴメンナサイー!」
 何とも、騒々しい風景だった。
 無事に合流した式と幹也は、昼食をとりながらこれまでの事情を話した。
「成る程、兄さんを探しに来たのか」
「最近、風船に乗った男と戦った事はないのか?」
 式の質問に、シンタローは首を横に振った。
「そんな奴は、見掛けないな。第一、叔父さんが訪ねて来てからこっち、新しいガンマ団員には出会っていない」
「そうなのか……」
 これは、一体どういう事なのか?
「何処かで、追い抜いちまったのかなあ」
 風船と人間大砲だ。両者のスピードの違いを考えれば、それは有り得る。
 そんな事を考えていたら、幹也の荷物からコールが鳴り出した。
「あれ? サービスさんかな」
 幹也が荷物から無線機を取り出すと、出てきたのは矢張りサービスだった。向こうから連絡してくるなんて、一体何の用なのだろう?
「実は……両儀が保護された」
「はあ?」
 何でも、式の兄の風船は、風に大きくあおられてパプワ島を大きく外れてしまったそうなのだ。本土にまで流された風船は、そこで力尽きて墜落したらしい。
「その墜落した場所というのが、両儀家なのだ」
「ええっ?」
 式の兄の怪我は大した事は無く、墜落した場所も本人の実家なので大きな事件にはならなかったらしい。
「結局、それが彼の運命という事だな。彼は、両儀家からは離れられないという事だ」
 サービスは、そう結論付けた。
「良かったな、兄さんが見つかって」
 無線が切れると、シンタローが話しかけてきた。彼もサービスと話したかっただろうに、気を使って式のすぐ近くに居る事を黙っていてくれたのだ。
「ああ、有難う」
 兄の居場所も判ったし、もうこの島には用は無い。シンタローの本当の実力を体験できないのは心残りだが、元々死合いをする為にパプワ島に来たわけではないのだから。
「帰ろう、幹也」
「その事なんだけどさ……」
 大事な事が、二つ残っていた。一つは、鮮花と合流出来ない事。そして、もう一つは……。
「帰る手段が、判らない?」
 サービスに聞こうと思ったら、彼はさっさと無線を切ったらしい。
「きっと、叔父さんも帰る手段を考えていなかったんだな。安心しろ。叔父さんは迎えをよこさない程無責任じゃないから」
 シンタローの言葉に、式は黙って肯いた。
「こうなったら……寝る!」
「はあ?」
「考えたら、昨日の朝からこっち、オレは一睡もしていないんだ。明日まで、寝る」
 そう言って、式はさっさと横になって、それきり動かなくなってしまった。
「シンタロー。後片付けは、お前がやれ」
 パプワは、食べ終わった食器を全部、シンタローの前に積み重ねた。

         ◇

 幹也を探しに島を散策している間、鮮花はアラシヤマと炎の使い方について談義していた。
「元々、わては熱うなったら炎を発する能力があったんどす。ガンマ団でお師匠はんに鍛えられて、炎に形を与えられるようになったんや」
 密林を探索中、アラシヤマは聞いてもいない事を向こうから教えてくれた。よっぽど友達が出来たのが嬉しいのだろう。
 アラシヤマのように天性の能力があるわけではないが、鮮花は炎を操るコツを聞き出すことで少しでも彼に近付こうとしていた。友達だと思っているのは、アラシヤマだけだが。
「今のわたしなら、道具無しでも……」
 鮮花は、炎を積み木のように組み立てる様子をイメージしながら魔術を行使した。
 何かが、鮮花の掌の中で輝いた。それは、炎で出来た蝶だった。飛び立つ事は出来ないが、形は様になっていた。
「あんさん、なかなかやりまんな。これなら、平等院鳳凰堂極楽鳥の舞も出来るようになるかもしれんどす」
「はあ?」
 何だかよく判らない言葉を発したアラシヤマは、鮮花の蝶に手をかざした。すると、どうだろう。炎の蝶はしだいに大きくなって、火の鳥へと姿を変えた。二人の力が混ざり合うのが、鮮花に感じられた。
「これを、体全体から発した炎で作るのが、平等院鳳凰堂極楽鳥の舞どす」
 アラシヤマの解説を聞きながら、鮮花はこの力を使えば式にも勝てるのではないかと、考えていた。

         ◇

 既に夕飯時になっていたが、式は目を覚まさなかった。無理矢理起こして、彼女の機嫌を悪くさせる事も無いだろうと、幹也はそのまま式を寝かしておく事にした。
 夕飯の用意をしていたシンタローが、土鍋をちゃぶ台に置いた。
「いただきまーす」
 式を寝かせたまま、三人は鍋をつついた。
「パプワ、今夜は狸鍋だ」
 そうか、鍋物か。ん? 狸鍋って……。
「パプワくん。一つ聞くけど、この狸もパプワ島に住んでいたのか?」
「そうだ」
「すると、この狸も言葉を喋るって事?」
「この島の動物は、皆喋るぞ。狸のシラズミくんは、落語が得意なんだ」
「ブウッ!」
 言葉を喋る動物を食べて、彼らは平気なのか?
『あそこの生活によっぽど慣れていないと、そんな事は出来やしないからな』
 サービスの言葉を思い出した幹也は、自分も慣れれば食べられるのか考えた。
 しかし、偶然とは言え、妙な名前の狸を食べてしまった。これも、何かの巡り合わせというのだろうか。
 流石に食欲が無くなったので、幹也は御飯と野菜しか食べなかった。

 この島には東京みたいな娯楽が無いので、夕飯を食べた幹也は、後は寝るしかない。言葉を喋る動物同士で互いに食べ合うと判ったら、式と一緒でないと迂闊にこの家から出られない。
「鮮花は、大丈夫かな」
 彼女なら、多分大丈夫だろう。橙子の弟子になって、もうすぐ一年。彼女の能力も発火と言うよりは放火と呼べるレベルになっていた。鮮花の身に何か起きれば、この島の何処かが火事になるだろう。
 この島に辿りつけないという事は、ないだろう。幹也の潜水艦よりも、熱気球の方が確実な筈なのだから。
 天井を見上げながら、ぼんやりと妹の事を考えていた幹也は、だんだん自分が眠くなるのを感じて、そのまま眠ってしまった。

         ◇

 その頃鮮花は、アラシヤマと密林を探索していた。
「この樹の断面、新しいのに変どすな。樹というもんは、挿し木が出来るように、切ってもすぐには枯れないはずやのに。切り株も、枯れていなはる」
「樹を殺したのよ。間違い無い、式の仕業よ」
「あんさんのお友達は、けったいな技を使いますな。こんな技、ガンマ団でもお目にかかりまへん」
 友達。式との関係は、アラシヤマには友達とだけ言っておいた。本当の関係を話すのは、憚れたからだ。鮮花の言葉を、本当の友情を知らないアラシヤマは全く疑っていなかった。
 二人は、倒木を辿るとパプワハウスに出るという事をつきとめた。



               /5

 深夜のパプワハウス。この家は、ドーム状の部屋が一つだけの簡素な作りだった。四人と一匹も、全員この部屋の中で枕を並べていた。
 誰もが眠りに就いている筈の闇の中で、人影がむっくりと起き上がった。式だ。
 ふらふらした足取りで、それでいて幹也達を踏まないように巧みにまたいで、式はシンタローの枕元に辿りついた。横を向いて寝ていたシンタローは、左側の横顔しか見えなかった。
 式は、シンタローの横に腰を下ろすと、そっと彼に顔を近付けた。
「起きてるんでしょう?」
 シンタローの左目が、パチリと開いた。
「ふふっ」
 式の顔から、微かに笑みがこぼれた。
「一目惚れって、いうのかな。こんな気持ち、あたし初めて。……当たり前、だよね」
 シンタローの耳元で、式が囁いた。
「それを言うなら、俺の方こそ一目惚れだよ」
 隣で寝ているパプワを、シンタローの左眼は注視していた。
「パプワのは、目覚めないわよ。よっぽど寝心地がいいのね。羨ましい」
「羨ましいのか? 今、起きなかったら、俺と話す事だって出来ないのに」
「ええ、そうね。実は、以前あたしは殺されかけた事があるのよ。邪魔されなければ、間違い無く死んでいた」
「サービスに殺られた、あいつみたいにか? いや、まだ活きているか。痛みしか感じられない存在となってな」
「あたしは、あのまま殺された方が良かったとも、思っているわ。あんな恐ろしい思いは、二度としたくないもの」
「それなら、君の幸せは、どうなる? 君にも、俺にも、幸福を手に入れる権利はあっても良い筈だ」
 式は、シンタローの左耳に唇を近づけた。
「生まれてから今まで、あなたはずっと閉じ込められていたんだものね。あいつと一緒に」
「俺達は、この出会いをもっと大事にするべきだ。今からでも、遅くない。これからもずっと、俺は君と一緒にいたいんだ」
「その言葉だけでも、嬉しいわ」
 二人の瞳は、お互いを見詰め合っていた。自分達が見られている事にも気付かずに。


 時間を遡る事、数分。鮮花とアラシヤマは、パプワハウスに到着していた。
「お友達は、きっとあそこや」
 そう言うと、アラシヤマは建物の裏側に回った。
「玄関から、入らないの。友達の家でしょ」
「わてとシンタローはんは、友達どす」
 それだけ言うと、アラシヤマは壁にへばりついて明り取りの窓まで昇って行った。
「成る程、ね」
 友達と言い張ってはいるけど、アラシヤマとシンタローの関係も複雑みたいだ。鮮花は、背嚢からサバイバルセットを取り出すと、ロープを放り投げた。
「一体、何が見えるの?」
 窓に昇ってからこっち、ずっと固まっているアラシヤマを押しのけて、鮮花は室内を覗きこんだ。
「…………」
 しばしの絶句。
 二人が見たのは、式とシンタローが仲良く寄り添っている姿だった。
「シ、シンタローはん……。わてという友達がおりながら」
「兄さん、貴方はあの女に騙されています。兄さんが寝ているすぐ近くで、他の男に言い寄るなんて……」
 アラシヤマの背後から炎が出現した。
「AzoLto―――――!」
 鮮花も、炎を出現させた。
 もう少し二人が冷静なら、式もシンタローもいつもと何処か違うという事に気付いただろう。だが、もう遅かった。
「わてからシンタローはんを奪う奴は、女でも許しまへん!」
「今こそ、あの性悪女を退治します!」
 二人の炎が、混ざり合って巨大な鳥の姿に変わった。
「平安京朱雀大路!!」
「双頭極楽鳥の舞っ!!」
 二人の合体必殺技が、式を襲った。
 ドッカーンッ!
 即興で出した合体必殺技は、パプワハウスに大きな穴を空けた。
「これが、友情パワーや!」
 式の実力を知っている鮮花は、用心深く穴を覗いた。瞬間、ナイフが一本鮮花の頬をかすめて飛んで行った。それは、サバイバルキットに入っていたクラフトナイフだった。
「やってくれたわね」
 コンバットナイフを構えて、彼女は立っていた。
「火傷もかすり傷も、全く無し?」
 あの合体必殺技は、いくら式でも殺しきる前に焼かれる筈だった。どうして、無事でいられるのだ?
「アラシヤマ。なめた真似をしてくれるじゃねぇか」
 シンタローが、式に寄り添うように立っていた。アラシヤマは、シンタローの青い左眼に睨まれた瞬間に弾け飛んだ。
「こ、これは秘石眼? シンタローはんは、使えないはずや」
 地面に激突したアラシヤマは、よろよろと立ち上がった。合体必殺技から式を守ったのは、シンタローの秘石眼だったのだ。
「な、何が起きたんだ?」
 この爆発で目を覚ました幹也は、辺りを見回した。やはり目を覚ましていたパプワが、赤く輝く瞳でシンタローを見上げた。
「お前、シンタローじゃないな」
「いや、シンタローだよ。俺だって、今迄ずっとお前と寝食を共にしていたんだ。シンタローを名乗る資格はある」
 シンタローは、式の手を引いた。
「行こう、式」
「行くって、何処へ?」
「何処へだって、いい。お前と一緒なら」
「……はい、あなたと行きましょう!」
「そんな事、わたしがさせない!」
 鮮花が、背嚢からピストルを取り出して立ちはだかった。
「兄さんとあなたが付き合うのは、許せない。でも、兄さんをあっさり捨てて他の男に乗りかえるのは、もっと許せない!」
「あたしの、魔眼の力に勝てると思ってるの」
 式は、コンバットナイフを振り回した。鮮花は、迫り来る式に向けて何発も撃った。
 しかし、殆どの弾丸は的から大きく外れ、正確に式に向かった僅かな弾丸も、ナイフで切り裂かれた。青ざめた鮮花の喉に、ナイフが今にも刺さろうとする。
「君も、式じゃないな。いや、式の脳内の人格じゃない」
 幹也の言葉に、式がナイフを止めて振り向いた。
「そう。確かに今のあたしは、脳からは知性しか借りていないわ。でも、あたしだって式よ。あたしがいなければ、今の式だって有り得ないのだから」
「それでも、君は式を名乗るべきではない。だって、君達は……」
「五月蝿い! 脳を肉体と切り離して存在させられるなら、あたしだって肉体から切り離された存在になってもいいでしょ」
 式は、シンタローと一緒に走り出した。深夜の密林の奥深く、二人の姿は消えて行った。

         ◇

「ちいぃぃッ! 我が番人を連れて行かれてたまるか! こうなったら、あいつを出すしかないか。あいつを再び創り出すのに、何千年もかかったというのに」



               /6

 一夜明けて、朝になった。
「メーシ、メシメシ!」
 パプワは、箸で茶碗を叩いて騒ぎ出した。料理を出来る人間が二人、手に手を取って駆け落ちしてしまったので、鮮花が代わりに包丁を取った。
「えーい! このっこのっこのっ!」
 幹也が気に入る淑女になろうと努力していた筈の鮮花だったが、現在の彼女のテンションではまともな料理は無理だった。
「今のわてらは、悠長に朝飯食うとる場合ですかな? あ、そこ抑えといてや」
 アラシヤマは、幹也と一緒に壁の修理をさせられていた。
「あの二人だって、状況を把握しきってはいないだろう。今の二人の人格は、この島の力が目覚めさせたんだから」
「兄さんは、二人が変になった理由を知っているの?」
 料理と思われる物体をちゃぶ台に並べながら、鮮花が尋ねた。
「ああ。多分、今の式の体は、魔眼の人格に支配されている。シンタローの場合は、秘石眼という事になる」
「ええっ。眼に人格があるなんて、兄さんは本気で言ってるんですか?」
 幹也は、ちゃぶ台に座りながら黙って肯いた。
「これは、とある人からの受け売りなんだけどね」
 幹也は、肉体にも人格が有るという話をした。
「ここで問題なのは、肉体に宿る人格が多重になった場合だ。二人は、目の部分だけが肉体の中で別人格になっていたんだ。脳が肉体を統括している間は、肉体が何重人格でも構わない。肉体の一部が統括者の立場を脳から取って代わろうとしない限りは」
「でも、どうしてパプワはんの秘石眼は、何ともならないんや?」
「パプワくんの秘石眼は、生まれた時からの能力だからね。物心つくよりも早く、肉体の主人格と同化していたんだろう。式の魔眼は、去年生まれたばかりだし、シンタローの秘石眼に至っては、何らかの理由で今まで封じられていたからね。生まれたばかりの人格で、同化するまでに至っていなかったんだ」
「でも、シンタローはんは今までずっとこの島で暮らしてたんどすよ。どうして今ごろ?」
「魔眼の人格が呼び水となって、封じられていたのが解けた。そんな所だろう」
「成る程。事情は大体判りました。兄さんは、二人を助けたいのですね」
 鮮花にとっては、シンタローは完全に赤の他人だし、式に至っては恋敵だ。しかし、こんな形で三角関係に決着がつける事を、鮮花は望んでいなかった。鮮花も、幹也に協力するつもりだった。
「でも、どうやって二人を助けるんですか? 魔眼も秘石眼も一筋縄ではいかないですよ」
 鮮花の言う通りだった。『殺す』と『壊す』の頂点を極めた能力と正面から戦うのは、自殺行為だった。
「そうや、あいつらにも協力してもらうんどす」
「誰か、心当たりがあるのか?」
「東北ミヤギと忍者トットリくんどす」

 東北ミヤギと忍者トットリくんは、川原で野宿していた。最近、三食を西瓜ですませていた二人に、鮮花が握った具の無いお結びを差し出しながら、アラシヤマは協力を願い出た。
「わての友達がピンチなんどす!!」
「友達って、シンタローのことだっちゃ?」
「こいつ、まだ利用されているだけって事に気付いてねーべ」
 実際問題、シンタローがどうなろうと、二人にとっては他人事のつもりだった。
「もうすぐ、サービスがシンタローを迎えに来るんどすえ」
 ピキッ! 二人は一瞬で凍りついた。
「そォ言われっと、恐いべェ」
 シンタローを見捨てたとサービスに思われたら、とばっちりで処分されかねない。
「トットリ! シンタローを助けるべ!」
 お結びを口一杯に頬張りながら、ミヤギが叫んだ。
「ぼくは、ミヤギくんに従うだわや!」
 トットリも、お結びを平らげながら後に続いた!
「トットリ、オラたつはベストフレンドだべッ!!」
「そうだっゃわいや!」
 ガッチリスクラムを組んでいる二人を見たアラシヤマは、横目で鮮花と幹也をチラチラと見ていた。
「も、勿論、わたし達も友達よね」
「そ、そうだよ」
 二人は、アラシヤマと握手をした。
「アラシヤマ、いつの間に友達が出来たがや?」
 トットリのいぶかしむ眼を、鮮花は見ないようにした。

         ◇

 その頃、海岸では動物達が大騒ぎをしていた。幹也達とは同行しなかったパプワも、ここにいた。
「どうしたのよ、ヨッパライダーッ!」
 タンノくん達は、海岸に打ち揚げられた巨大生物を介抱していた。
 全高二十メートルはあるパプワ島の海の守り神が、どうしてこんな大怪我をしているのか、誰にも判らなかった。
「あ、あいつが蘇った……」
「あいつって、誰よ?」
 イトウくんの問いかけに、ヨッパライダーが搾り出すような声で答えた。
「ア、アルハライダー……」
 謎の言葉を残して、ヨッパライダーは意識を失った。
「じいちゃなら、何か知っているかも」
 パプワは、墓参りをする事にした。



               /7

 ここは、ヨッパライダーが倒れた海岸とは島の反対側にある砂浜。
 魔眼と秘石眼は、砂浜に腰を下ろして愛の語らいをしていた。自分たちの足元から、竹筒が伸びているのも知らずに。
「愛してるよ。世界中の誰よりも」
「ああ、嬉しい。あたしもよ」
「あの太陽を、君にささげよう」
「あたしも、この青い海をあなたに差し上げるわ」
 そんな二人を、遠くから見ている五人の九つの目。空蝉の術で盗み聞きしたトットリが、二人の会話を仲間に教えた。
 式もシンタローも、あんな歯の浮く事は絶対言わない。五人は、笑いをこらえながら作戦会議を始めた。
「わてらの切り札は、ミヤギの筆どす」
 アラシヤマに言われて、幹也達はミヤギガ背中に差しているのが剣で無い事に初めて気が付いた。
「こいつで生き物に漢字を書けば、相手を文字で書かれたものにする事が出来るべ」
 これで、本来の人格を呼び覚ますのが、アラシヤマの作戦だった。
「眼の人格が身体と同化するまで、これで時間を稼ぐんどす」
 片仮名で書くシンタローは『新太郎』と漢字に置き換えればいいらしい。式の場合は、正しい綴りで書かないと本来の人格を呼び出せない。
「シキは、葬式の式です」
 鮮花の説明は、確かに間違ってはいないが……。幹也は、何も言えなかった。
 ドーンッ!
 突然、水柱が海から上った。
「な、何だアレ?」
 水柱の中から、巨大な青い怪獣が出現した。魔眼と秘石眼に、怪獣の影が覆い被さる。
「ヨッパライダー? いや、色が違うな」
 秘石眼は、かつてシンタローの眼として見た記憶の中に、似たような怪獣がいたのを思い出した。
「ワシの酒が呑めんのかーっ!!」
 でも、言っている事は同じだった。
「うぇっぷ。げげげー」
 怪獣の吐き出した酒が、二人に降り注いだ。慌てた二人は、後方に跳んだ。
「うわっ。こいつの顔色って、青ざめてるせいね」
 怪獣の両腕が、二人を掴もうとした。
「させるかっ!」
 秘石眼は、力を行使した。魔眼も、ナイフで巨大な腕を切断した。
「なんの!!」
 両腕を失った怪獣が気合いを込めると、腕がまた生えてきた。
「切断面が、死んでいない?」
 鮮花は、怪獣が再生したのを見て不思議に思った。
「やっぱりそうか。昨晩、鮮花もアラシヤマも殺されずに済んだのは、あいつらの力不足のせいだったんだ」
「なんやて?」
 幹也は、簡単に説明した。
「二人は、自分で力を使えないんだ。脳を経由して、力を使うように命令させているんだ。当然、タイムラグや力の収束不足が発生する」
 怪獣に追い掛けられている二人は、幹也達に向かって走っていた。逃げ道は、こっちにしか無いのだから、当然だ。
「どうすっちゃわいやーっ!」
「落ち着け、トットリ! 字を書くチャンスだべ!」
 確かに、向こうから来るのは有る意味好都合だ。
「あの怪獣から逃げながらだと、精々一文字だべ」
「それでいいよ。式が本気を出せば、怪獣より強いから」
 ミヤギは、茂みに隠れて魔眼を待った。
「三、二、一。今だべっ!」
 ミヤギは、全神経を集中した早業で、彼女の胸に字を書いた。
「やったべ!」
 そう喜んだミヤギと裏腹に、幹也と鮮花は呆然としていた。
「字が、違う」
「何処が違うべ? ちゃんと『組織』の織と書いたべ」
「そしきじゃ無くて、そうしき! 弔いの葬式よ!」
「え? おめぇ、なしてそんな不吉なんに、友達の名ぁさ例えるだ?」
「あ……」
 全部、わたしが悪いのね。式を友達だとたばかったり、葬式に例えたりしたから、こんな勘違いが起きたのだ。鮮花は、後悔した。
 幹也は幹也で、まだ呆然としていた。
「久しぶりだな、コクトー」
『織』が、出現したのだ。
「なにボヤッとしてんだよ」
『織』が、幹也の肩を揺すった。幹也は、織に話しかけられて、やっと正気に戻った。
「コクトー、お前のその顔……」
「この左目の事か?」
「どうして落書きだらけなんだ?」
「何?」
 どうやら、織にも『線』は見えているらしい。二年間の眠りは織の記憶に無いから、線の意味を知らないのだ。
「わ、こら。指でなぞるな。後で教えるから」
「二人とも、何をグズグスしてるっちゃ!」
「そ、そうだ。急いで逃げないと」
 幹也は、織の手を引いた。怪獣が、そこまで来ていたのだ。
「双頭極楽鳥の舞っ!!」
 鮮花とアラシヤマの合体必殺技でも、怪獣にとっては一時の足止めにしかならなかった。火達磨になった身体が、たった一回の貧乏ゆすりで鎮火してしまうのだ。
「追いつかれるっちゃーっ!」
 これにて、一巻の終り。誰もがそう思った時、突然白い影が怪物の前に立ちはだかった。
「生爪スプラッシュ!!」
 影から発射された何本もの爪が、怪獣の目に刺さった。怪獣が怯んだ隙に、影は幹也達の前に舞い降りた。
「みんな、クボタくんで空に逃げるんじゃ!」
 一同は、巨大な空飛ぶ鶏クボタくんの背中に乗った。全員乗り込んだのを確認したクボタくんは、空に舞い上がった。
 クボタくんの背中には、既にパプワが乗っていた。皆のピンチにクボタくんで駆け付けたのだ。助っ人に、武者のコージとナマヅメハーガスも乗っている。
「どうして、コージまでいるんだっちゃ?」 「わしも、出番が欲しいけんのー」
 怪物の正体を突き止めたパプワは、皆を車座に座らせた。 「あいつは、アルハライダーだ」
 パプワは、カムイの霊から聞いた島の伝説を皆に話した。
 その昔、赤い玉の一族と青い玉の一族が争った時、海の守り神ヨッパライダーも海の破壊神アルハライダーと戦ったのだ。
 ヨッパライダーの得意技『火山花火』が、アルハライダーの体内のアルコールに引火して、アルハライダーは灰になってしまったらしい。
 復活したアルハライダーは、火山花火が出来ない水中戦でヨッパライダーを倒し、今度は何故か二人に襲いかかったのだ。
「なんだか判らないが、あいつがヤバイというのは、判った」
 織は、そう言って肯いた。
「どうして君は、男みたいな口調で話すんだ?」
 秘石眼が、織に尋ねた。
「オレは、元から男だ」
「なぬ?」
 自分が男性人格なのだと、織は秘石眼に伝えた。
「シンタローッて、男とばかり縁があるべ」
 そう言って、ミヤギ達は笑い出した。
「で、コクトー。オレはどうしてここにいるんだ?」
 織は、今更ながら式の代わりに自分が死んだ事を思い出した。
 織がどうしてここにいるのか、幹也は簡潔に話した。
「余計な事を。でも、またコクトーに会えて良かった」
「そ、そうかい」
「兄さんっ! どうして、そこで顔を赤くしているんですかっ!」
 鮮花に突っ込まれて、幹也は恥ずかしげにうつむいた。
「それで、この落書きは、なんなんだ?」
 そう言って、識は幹也の顔をいじった。
「だから、線をなぞるな!」
 幹也は、ナイフと十円玉を使って織に簡単な線の使い方を教えた。織は、線をオモチャのように面白がった。ナイフは深々と線に刺さっているのに、十円玉を貫通していないのだ。それでいて、周囲の人達には、ナイフは十円玉に刺さっていないように見えているらしい。
「そうか。だったら、あの怪物を倒すのは簡単だ」
 織は、クボタくんをアルハライダーの真上に飛ばすようにパプワに頼んだ。
「クボタくん、もう一ふんばりしてくれ」
 定員いっぱいのクボタくんを、パプワは上に向けて誘導した。
「織、一体どうするつもりなんだ?」 「知りたいか、幹也。こうするのさ!」
 クボタくんがアルハライダーの頭上に来た時、いきなり織はクボタくんから飛び降りた。
「俺も行く!」
 秘石眼も、続いて飛び降りた。
「あいつ、まだ未練があったんどすなぁ」
 織は、ナイフを構えてアルハライダーの頭上に舞い降りた。
「オレは、あいつの破壊衝動だからな」
 これが初めての実戦とは思えない早業で、織はアルハライダーを切断した。頭部、胸、腹、腰の順に解体されたアルハライダーは、砂浜に崩れ落ちた。
「織っ!」
 幹也が砂浜を見下ろすと、秘石眼が織を抱きかかえていた。
「流石はガンマ団ナンバーワンの肉体だべ。加えて下は砂地。無事なのも当然だべさ」
 秘石眼は、織を抱えたまま走り出した。織としても、シンタローの身体を殺すわけにはいかず、ただされるままになっていた。
「こりゃあかん、海で墨を洗い落とすつもりじゃけん。早く止めねば」
「僕が行くっちゃ!」
 布を広げたトットリが、ムササビの術で急降下した。
「天変地異ゲタ占いの術!」
 トットリの下駄が、砂浜に突き刺さった。表になっている天気は『吹雪』!
 突然の吹雪によって、たちまち海が凍りついた。これでは、墨を落とせない。
「てめえ、何て事を!」
 秘石眼は、トットリに力を行使した。吹き飛ばされたトットリは、そのまま墜落した。
「トットリの気持ち、無駄にはしないべ!」
 何かが、秘石眼の脇を通りすぎた。すると、抱えていた織がいなくなった。空を見上げると、胸に『鳥』と書かれていたミヤギが織をかついで空を飛んでいた。
「お前も、許さん!」
 織を放り投げたミヤギの方が、秘石眼の力よりも一瞬早かった。吹き飛ばされたミヤギから、織はクボタくんに向かって一直線に飛んだ。
 秘石眼は、今度はクボタくんに標準を合わせた。
「させるか!」
 そう言って、コージは思いきりクボタくんの頭を蹴った。勢いで加速がついた代わりに、コージが空中に投げ出された。そして、コージがクボタくんの身代わりに秘石眼の餌食となった。空中で四散する、コージの甲冑。
 アラシヤマが、織をキャッチした。
「みなはん、わての友達のために、そこまで!」
 いつの間に、お前の友達になったんだ?
「鳥を下ろしてくれ。オレが、あいつと決着をつける!」
 織の言葉に、パプワは黙って肯いた。
「決着って、織はどうするつもりなんだ?」
「見ていて判った。あいつには、善悪の区別なんてついていないんだ。だから、秘石眼の人格だけを殺す!」
 雪が積もった砂浜に、クボタくんは舞い降りた。
「秘石眼は、オレにだけは力を使えない。コクトー達は、来るな」
 そう言って、織だけがクボタくんから飛び降りた。歩き出す直前、織は幹也の方を振り向いた。
「すまない、コクトー」
 かすかに震えた織の唇が、幹也にはこう言っているように見えた。織は、何かを覚悟している。そう悟った幹也は、織を止められなかった。
 コンバットナイフを握りしめて、織は歩みを進めた。
「お前は、俺を殺すつもりなのか?」
 織は、うっすらと笑うことで秘石眼の問いかけに答えた。
 秘石眼に向かって歩きながら、識はフライトジャケットのファスナーを下ろした。幹也達は、織が何をやるつもりなのか判って驚いた。
「オレは、お前を殺したりしない」
 そう言って、織はジャケットを投げ捨てた。当然、胸の文字も一緒に風に舞って飛んで行った。
 織は、消えてしまったのだ。
 魔眼の人格に戻った式は、ナイフを投げ捨て秘石眼に向かっての歩みを続けた。
「お前、元に戻ったのか?」
 魔眼が黙って肯くと、秘石眼も魔眼に向かって歩き出した。
「おかえり」
 両腕を広げた秘石眼の懐に、魔眼は飛びこんだ。秘石眼は、魔眼を強く抱きしめる。魔眼は、秘石眼の頬を指先でなぞった。
 スッ。
 それだけだった。秘石眼の左目の前を、何かが通りすぎた。
「ま、魔眼?」
『シンタロー』は、砂浜に倒れた。既に秘石眼が死んでいる以上、彼はシンタローだった。
「ごめんね、秘石眼。善悪の区別もつかずに力を使い続けるあなたを許せるのは、あたしだけだから。あなたの代わりに罪を背負えるのも、あたしだけなの」
 シンタローを見下ろす魔眼が手にしていたのは、ナマヅメハーガスの生爪だった。織は、クボタくんから降りる直前に、一枚貰って懐に忍ばせていたのだ。
 魔眼はシンタローに背中を向けると、投げ捨てたナイフを拾い上げた。
「あいつ、死ぬつもりだ!」
 幹也は、慌てて走り出した。魔眼が、自分自身の線を見られるわけが無い。それはつまり、眼そのものを潰してしまうという事だ。
 クボタくんから飛び降りてからの織の言動の意味は、これだったのだ。織は、全部判ってて、そうなるように仕向けたのだ。
「やめろっ! そんな事をしたら、式は失明してしまう」
 魔眼は、ナイフを止めようとしない。
「あいつは、一度あたしを殺そうとした!」
 ナイフが、右目に刺さった。
「あたしが生まれて初めて見た景色は、式の両手だった」
 右目に刺さったまま、切っ先は横に滑る。
「瞼が閉じられた時、あたしはこの闇の中で死ぬんだと思った。恐い、怖い、コワい。死にたくないと思った。身体がとっさに指を止めさせなかったら、あたしは死んでいた。あたしは、死ぬのも生きるのも、自分で決めさせて貰えなかった」
 切っ先は、小鼻の上を通りすぎた。
「こんな不自由な世界に、戻りたくない。だから、あたしを取り巻く世界を、全部、壊してやるっ!」
 それは相対的にいえば、自分自身を殺すという事に他ならない。最後まで言い終った時、ナイフは左目の中も横切っていた。
 幹也は、倒れ掛かった『式』を受け止めた。

         ◇

 青の秘石は、番人を奪われるのを阻止したが、アルハライダーを失ってしまった。せめて魂だけでもルーザーに移そうとしたが、魂も残っていないと知って、断念せざるを得なかった。
「不確定要素が、大きすぎたか。だが、そのままでは絶対すまさないぞ」
 青い玉は、取り戻したアスを有効活用するチャンスを待つことにした。



               /8

 海の破壊神アルハライダーが倒された。その話は、パプワ島全体にまたたく間に広まった。
 島のナマモノ達は、御祝いの準備に大忙しだった。
「一番忙しいのは、ワシじゃよ」
 海岸の戦いから、三日が過ぎていた。医者のミミズク爺さんは、つい昨日まで怪我人の治療にてんてこ舞いだった。
 秘石眼の直撃を受けたトットリ達の怪我は、それ程でも無かった。秘石眼の力不足もあったが、降り積もった雪が墜落の衝撃を和らげてくれたのだ。コージなどは、ナマヅメハーガスと一緒に鎧のパーツを拾い集めている最中だった。
 ヨッパライダーも、暫くは戦えないが、宴会をやる程度の体力は快復していた。
 そして、式……。
 式は、元気だった。眼は見えないが、他に怪我している場所も無いので立って歩く事も出来る。それどころか、眼の怪我だって東京の病院で治療すれば秋までに治るそうだった。何の事は無い。魔眼の人格は死ぬつもりはあったが、眼を潰すつもりはなかったのだ。目にナイフを突き立てたのは、自分の死を確認する為の最低限の儀式に過ぎなかったらしい。
 何しろ、幹也が一番困っているのは、式が始終怒っている事だった。眼を潰されたせいではない。結局自分が戦えなかったからだ。
「オレが知らない間に、織のヤツが怪獣を倒しやがって!」
 どうやら、自分がアルハライダーを倒したかったらしい。確かに、怪獣と戦う機会なんて、金輪際来ないだろう。
「んばば、んばんば、めらっさめらっさ」
 パプワハウスで式が寛いでいると、外から祭囃子が聞こえてきた。
「幹也」
 式がそう言って右手を前に差し出すと、すかさず幹也は式の手を掴んだ。式が失明してからこっち、幹也は式にずっと付き添っていた。式に言わせれば、春に幹也が退院してから一週間の間松葉杖の代わりをさせられた借りを返してもらっているとの事だ。
 式は、どうも魔眼を恨んでいないらしい。彼女の言い分を幹也から聞かされて、納得したようだ。破壊行為の究極的に行き付く先が自滅か世界の消滅しかない以上、式には魔眼の自殺を間違ってるとも言い切れなかった。
 魔眼を恨んでいるのは、むしろ鮮花の方だった。
 かいがいしく式の身の回りの世話をしている兄を見て、鮮花は心中穏やかでなかった。それでも、眼の不自由な相手に嫉妬を爆発させるのは、ぎりぎり踏みとどまっていた。
「魔眼が、余計な事をしたせいで!」
 彼女の心の叫びは、誰にも聞こえない。
 海岸前の広場に出ると、祭りはまだ準備中だった。もうすぐ、日が沈む。祭りは夜になってからだ。
「いよう、御二人さん」
 キャンプファイヤーで料理をしていたシンタローが、幹也達に声をかけた。シンタローは、自分に何が起こったのかを知らない。秘石眼に身体を乗っ取られた事を、皆で秘密にすると決めたせいだ。だから、秘石眼を使えたという事も、知らされていない。
「あの歌は、パプワだな」
「ああ。室戸市名物シットロト踊りだってよ」
 ズンドコ聞こえるのは、チャッピーの太鼓の音らしい。
 魔眼のした事は記憶にないが、自分が彼と恋に落ち姿たというのは、想像しただけで背中がむず痒くなる話だった。
「なあ、幹也」
「なんだい。式?」
「サービスが、幹也達を大事にしないと後悔するって言っていた理由が、判ったよ。二人がいなかったら、今でも魔眼の人格に乗っ取られたままだった」
 人それぞれに役割があるという事を、式は改めて実感していた。
「ワシの酒が呑めんのかーっ!!」
 ヨッパライダーは、既にできあがっていた。
 日が沈み、ついに祭りが始まった。
♪んばば んばんば んばば んばば んばんば んばば〜
「パプワくんとチャッピーが、櫓の上でファイヤーダンスを踊っているよ」
 幹也が、両眼に包帯を巻いている式に祭りの様子を教えていた。
「ああっ。あんなにくっついて」
 少し離れた席から二人を見ていた鮮花は、正直嫉ましかった。魔眼の人格が眼を潰したのは、本当は式に対する罪滅ぼしのつもりではないかとさえ疑ってしまう。
 式の口元に料理を持って行く兄の姿を見て、鮮花は眼をそむけてしまった。
「鮮花はん、こんな所におましたか。ほな、いきまっせ」
 アラシヤマが、鮮花に声をかけた。
「行くって、どこへ?」
「この祭りの醍醐味どす」
 パプワ島の祭りの恒例である、隠し芸大会が始まった。トップバッターは、イトウくんだ。
「出産しまーす!」
 雌雄同体のイトウくんは、体内で卵を孵化させて蝸牛の子供達を一瞬で何十匹も産み落とした。
「よーし、エスカルゴのムニエルだ」
 シンタローが、生まれたそばから蝸牛の子供達をフライパンに放りこんだ。
「キャーッ! あたしの天使達!」
 音声しか判らない式は、何が起きたのか判らずに首をひねった。
「エスカルゴ、食うか?」
 幹也は、自分の分まで式に食べさせた。味だけはいけるらしく、式は席を外している鮮花の分まで食べてくれた。
「あら、フランス料理もいけるわね。あたしも、料理教室で習おうかしら」
 式の女性っぽい言動に、幹也は食べなくて良かったと思った。
 続いて出た芸は……。
「あ、鮮花。アラシヤマも一緒に?」
 二人は、炎を両手に収束させた。
「平安京朱雀院!」
「分身極楽鳥の舞い!」
 まるで、クス玉から飛び立つ鳩の群れのように、小さな火の鳥が大量に発生した。オレンジ色に輝く夜空に、皆は拍手喝采した。
「やった! 初めてウケましたどす。これも友情パワーのお陰どすなぁ」
 友情かなあ。幹也には、鮮花はアラシヤマを利用しているだけに見えた。
 鮮花の芸が受けたと聞いて、式が突然立ち上がった。
「幹也、蝋燭は何処かに無いかしら?」
「テーブルの照明用があるけど、どうするんだ?」
 幹也に織台を持たせて、式は会場の真中に引きずり出した。式は、織台を頭にのせるように幹也に命じた。式は、トットリから忍者刀を借りると、精神を集中させた。
「キエェーーイッ!」
 式が居合抜きをすると、刀の切っ先に蝋燭の頭が乗っていた。蝋燭は、刀に乗ったままで火が消えていなかった。眼に包帯を巻いたままの居合抜きに、拍手が鳴り響いた。
 その後も、ナマヅメハーガスの血の水芸やら、茸のナスくんとヤカンを背負った鶴のタケウチくんのジョグレス進化やら、数々の芸で祭りは大いに盛り上がった。
「ヨッパライダーは、アノ芸はやらないの?」
 ミミズのシミズくんに聞かれて、ヨッパライダーは首を横に振った。
「右腕の傷が治らなくてな。ワシ一人の力では出来んのじゃ」
 すると、突然海が二つに割れた。海から出て来たのは、ヨッパライダーロボだった。
「シンちゃーん! 客人を御送りするように、サービスおじ様に言われて来たよー」
「おお! こいつは丁度良い。お前も手伝え」
「へ?」
 グンマのヨッパライダーロボは、ヨッパライダーに連れられて一緒に火山を昇った。
「いくぞー!」
「おー!」
 ヨッパライダーとヨッパライダーロボは、同時に山頂を叩いた。すると、島中の火山が噴火して、でっかい花火を吹き出した。
 ドッカーンッ!!
 これが、祭りを締めくくるヨッパライダー得意の火山花火だった。



               /9

 祭りの夜が明けて、式達は出発の時が来た。
「わてら、離れてても友達どすな!」
「エ、エエ」
 鮮花の笑顔は、どこか引きつっていた。
「御土産に、エスカルゴの詰め合わせセットをこしらえたんだが……」
「そ、そうか」
 土産をシンタローから受け取った幹也は、式が五月蝿い時に食べさせようと考えた。
 式は、パプワと握手をしていた。
「この島には、まだまだ美しい自然がいっぱいあるぞ。眼が見えるようになったら、また来るか?」
「いや、もうここには来る事はないだろう」
 三人は、ヨッパライダーロボに乗りこんだ。
「さようならーっ」
「元気でなー!」
 島の生物達も、思い思いに手を振って三人を見送った。

         ◇

 東京に帰ると、式は病院に直行した。秋隆の説教には耳にタコが出来そうだったが、眼の怪我を口実に、御盆の切り盛りを兄と秋隆に全部押しつけられたのは、不幸中の幸いだった。
 鮮花の方は、アラシヤマから習った必殺技を橙子の前で実演しようとしたが、それは不発だった。
「あの島にいたから出来たのよ。あそこは、地球の生命発祥の地『エデン』でないかと唱える魔術師もいる特殊な環境だから、鮮花の魔術もパワーアップしたのね。パワーアップはしても、その強力な魔術を制御する力までは強くならないから、強力な術者程あの島では自滅することになるわ。式の魔眼人格が目覚めたり、黒桐が解説者モードに入ったのも、あの島の成せる技よね」
 眼鏡を外している筈の橙子の口調に悪い予感がした幹也が、台所の冷蔵庫を開けると、中の御土産は無くなっていた。
「何やってんだ、幹也?」
 ソファーで休んでいた式が尋ねた。彼女は、まだ目が見えていない。
「エスカルゴを全部食われた。それだけさ」
 それから橙子は、式の兄がどうしてガンマ団に入ったのかについても説明してくれた。わざわざ自分で調べてくれたらしい。これも、エスカルゴの副作用だろうか?
「まさか、これも荒耶の陰謀だった、てオチですか」
「あら、判っちゃった?」
 荒耶がガンマ団に入隊させるつもりだったのは、式の方だった。インターネット回線やら新聞の折りこみチラシやら、両儀家の色々な場所にガンマ団の情報が紛れこんでいた。一ヶ月もすれば、式はガンマ団に入る気になっただろう。肝心の式が一人暮しを始めたので、失敗したのだ。
 式にコタローをぶつけるつもりだったのは、疑う余地が無かった。荒耶にすれば、戦えたら戦わせる程度にしか考えていなかったのだろう。だから、手駒の数にも入っていなかった。
「それで、ほったらかしになっていた洗脳システムに、式の兄が引っかかったというわけ」
 元々、予定外の洗脳だったのだから、今頃になって効果が出て来たのだ。
「それにしても……」
 式は、何か言いたげだった。
「どうした、式?」
「どうして噛み契りやがったんだ」
「はあ?」
「手錠を外す方法が他にないというのは、判る。だが、ワタシの方を噛んだのは、何故だ?」
「ま、まさか、式……」
「ワタシは作り物だから、右手よりも価値が無いというのか? 今まで散々尽くしたというのに! ワタシがいなければ、日本刀は振るえないのにいっ!」
「うわっ! 今度は、左手の人格に支配されてる!」
 こうして、式達の夏は、騒々しいまま過ぎ去って行った。
 パプワ島が沈んだのは、それから暫く後の事だった。

/南国少女・了

[後書き]
この作品は、一年近く前に連載したSSにコタローのエピソードを追加し、随所を修正した物です。
全話まとめても、並のSSの中篇並の文章量ですね。
パプワサイドの時間設定は、アニメ版の四十話前後(サービスが一旦島を離れた直後)です。
連載開始した頃は、まさか本当にパプワくんが復活するとは思っていませんでした。
元々、志貴か七夜モードの琥珀さんを、ミヤギの筆で記憶を戻そうというネタが発端でした。それを式に変更したのは、志貴をパプワ島に行かせる理由が思い付かなかったからです。
よもや、本家の話で、ミヤギがコタローに同じ事をするとは思いませんでした。
ミヤギが筆を使う為に考えた魔眼人格の設定が結構気に入っているので、そのうちスピンアウトさせて主役にする話を書こうかとも思っています。
魔眼人格の最後の科白は、元々幻視同盟の志貴の言葉からヒントを得ているせいか、割と好意的に捉えてる人が多いですね。
後、掲載写真は上から順番に、魔眼、サービス、幹也、シンタロー、アラシヤマ、鮮花、トットリ、コージ、ミヤギ、式です。東映アニメによくある、劇場版だけ衣装デザインが違う登場人物を意識しながら、それっぽい服装をオモチャ屋をハシゴして探し出しました。
それでは皆さん、感想をいただけると、幸いです。

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