破〇瓜祭 red crimsonc.

 休日だというのに、式の部屋に行っても誰もいなかった。しかも不思議な事に、部屋にあった置手紙は、鮮花の字だった。
「伽藍の洞にいるって?」
 どうして、鮮花が式を連れて行くのか? 疑問はつきなかったが、ここにいても答えは出ない。僕は事務所に向かう事にした。

「一体、どうしたと……」
 扉の向こうは、赤かった。事務所の中が、赤い飛沫で染まっていたのだ。
「な、何が起きたんだ?」
 僕は、唖然としながら部屋の中に足を踏み入れた。赤い液体は、床にも流れていた。一歩歩く事に、靴が床を舐めているかのような音を立てた。
「こんな、莫迦な……」
 部屋を見回すと、中央に立っていたのは式だった。僕は、背中を向けている式に近付いた。
「式?」
 僕の方を振り向いた式は、三尺程度の長さの棒のような物を握っていた。その棒は、真っ赤に染まっていて、この事務所の惨状が何で起きたのかすぐに判った。
 式は、その棒を振り上げると僕に向かって振り下ろした。
「何!?」
 僕は、よける事も出来ずに棒立ちになった。
「式、右だ!」
 橙子さんの声と同時に、棒の軌道は左にそれた。
 勢い良く振り下ろされた棒は、机に向かった。机の上に置かれていた、西瓜が砕け散った。
「何だ、幹也か」
 目隠しを取った式が、やっと僕に気が付いた。

 鮮花が、冷たい麦茶盆に乗せてキッチンから出てきた。
 僕の目の前には、砕けた西瓜が山積みになっていた。
「一体、なにしてたんですか? 橙子さん?」
「何って、西瓜割りに決まっているだろう?」
「僕が言いたいのは、事務所でやる必要はないだろうという事です!」
 式と並んでソファーに座っていた僕は、テーブルを強く叩いた。
「近所の八百屋で一個百円で安売りしていたのでな、西瓜祭りでもしようかと思ったんだ」
「西瓜祭りって何ですか?」
「夏の風物詩だ」
 橙子さんは、祭りの必要性を話し出した。
「決められた習慣や風習を定期的に行う事で、結界の内側に外側と切り離された法則が生まれる。それによって、結界は益々強固になるのだ」
 橙子さんが本当の事を言っているのかホラなのかは、僕には判らない。
 それにしても、事務所一面に西瓜の汁をぶちまけて、明日から青臭くて大変だな。
「秋の風物詩も考えてある。南瓜祭りは、どうかな?」
「それって『魔術師の宴』の『ハローウィンの夜に』の一連の作品の盗作じゃないか」
「いや、式。確かに盗作はいけないけど、突っ込むべき所はそこじゃないよ」
 まだ夏も始まったばかり。きっと、夏本番にはまた何かやらされるのかと思うと、僕は深い溜息をついた。

破西瓜祭/了

[後書き]
このSSが、須啓さんのHPを見ていて思い付いたのは、言うまでもありません。
ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ。
コレでも、三万ヒット記念作品です。
感想、一応募集しています。

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