[月姫SSSS]

ぎゃふん

 俺が繁華街をぶらぶらしていると、向こうから見慣れた顔が走って来た。
「おや、アキラちゃんじゃないか」
「あ、志貴さん。御久しぶりです」
「何か、急いでいたみたいだったけど?」
「ええ、まあ……」
「もしかして、また同人誌?」
「実は、そうなんです。新機軸にチャレンジしようと頑張ったら、印刷所の締め切りギリギリになってしまったんです」
「新機軸といっても、またヤオイ本なんだろ?」
「今度のは、キャストが一味違うんですよ。だって、TYPE−MOONのヤオイ本ですから」
「それこそ、いつものパターンじゃないのか? 俺と有彦とか、俺とシキとか」
「違いますよ。誰がTYPE−MOONの『キャラクターの』ヤオイ本と言いました?」
「……」
 ナイフを取り出した。メガネはとっくに外してある。俺は、彼女が抱えている原稿に向かって……。

かぐや姫戦争

 昔々、でもない昔。遠野さんと軋間さんが山の上に住んでいました。遠野さんは七夜の村に血祭に、軋間さんは森に黄里を狩りに行きました。
 軋間さんが黄里を狩っていると、そこに可愛らしい男の子が現れました。二人は、男の子を連れて帰る事にしました。
 空を見上げると、真っ赤な月が煌々と輝いていましたとさ。

 月日が流れ、男の子はとても可愛らしく育ちました。
 そんな可愛く育った男の子をモノにしようと、五人の公家達が次々にプロポーズして来ました。
 男の子は、結婚の条件に五人の姫君に宝物を要求しました。一人目には、蓬莱の珠の枝を。「なんだ、志貴ってそんな物が欲しいんだ。だったら、すぐに出すからね」
「ちょっと待て、アルク。蓬莱の珠の枝は『蓬莱山』から取ってくるから、蓬莱の珠の枝なんだぞ。今ここで空想具現で作っても、蓬莱の珠の枝にはならないよ」
「えーっ。そうなの? 面倒くさいなあ。出来るだけ早く帰ってくるからね」
 そう言って、最初の公家は屋敷の窓から出て行きました。男の子は、要求する宝物を慎重に考えて良かったと、胸を撫で下ろしました。それでも、本当に持ち帰って来るかもしれないと、一抹の不安は消えません。

 二人目は、仏の御石の鉢を探す旅に出ました。目指すは、仏教発祥の地です。そして、彼女は帰ってきませんでした。風の噂では、本場のカレーを修行する為に居座ってしまったという事です。
「どうして、わたしの出番はこれだけなんですかっ!」
 ごめん、先輩。きっとインドに行ったらこうなると思っていたよ。男の子は、心の中で詫びました。
 双子の姉妹も、宝物を手に入れる為に右大臣涅呂造の家にやって来ました。
「一体私に、何の用なのかね?」
「はい、実は龍と火鼠を出して欲しいんです」
「龍と火鼠だと? そうか、龍の首の珠と火鼠の皮衣が欲しいのか」
 涅呂造も、婿取りの試練の噂は聞いていました。
「よかろう。ただし、俺は出すだけだ」
 宮廷衣の下から、涅呂造は龍と火鼠を出現させました。
「G3ガスです」
「暗黒翡翠拳!」
 二匹の怪物は、呆気無く倒されました。そして、龍も火鼠も混沌に戻りました。
「こんな所だけ、元ネタに忠実にしないで下さい」
「いくらパロディでも、この辺はきっちりしないとな」
 こうして、二人とも涅呂造の家から手ぶらで出てきました。
 最後の公家は、燕の子安貝を探し求めて、夜な夜な街中を徘徊して、そこかしこにあるツバメの巣に、手当たりしだいに手を突っ込んでいました。しかし、目的の物は、なかなか見つかりません。
 街の人々は、その姿を見て、百鬼夜行の伝説を語り継いだと言う事です。

 五人の公家達がなかなか宝物を発見できないでいる間に、男の子の噂は帝の耳にまで届きました。
 当然、帝は、男の子に会いに来ました。
「あ、あの、志貴さん。おはようございます」
 小動物系の、とても可愛い帝を見て、公家の一人は激怒しました。
「遠野家当主の私でさえ、只の公家なのに。どうして瀬尾が帝なんですの! 兄さんも、何か言ったらどうなんです」
「いや、俺に言われてもなあ」
 帝は、男の子を顔を見るなり、青ざめました。
「月に帰っちゃ駄目ぇ!」
 そうです、男の子は、来月十五日に月に帰ることになっていたのです。
「そんな事、私が許しません!」
 帝とその場にいた公家達は、一致団結して月からの迎えを迎撃する事に決めました。
 八月十五日、ついに男の子が月に帰る夜になりました。帝達が月を見上げると、空から何か輝く物体が接近して来ました。それは、だんだん大きくなり、ついには……。
 ズウゥゥゥン!
 空から降ってきたのは、巨大な山でした。帝も公家達も、その下敷きになりました。
「志貴ぃ。蓬莱山を造って来たわよ。ここから取ってきた珠なら、問題ないでしょ?」
「それはそれで、大問題なんですけど……」
「ほら、これで志貴と結婚出来るでしょ」
 男の子の言葉なんて、聞いちゃいません。蓬莱の珠の枝を取り出した公家は、男の子を脇に抱えて連れ出そうとしました。
「遠野君は、渡さない!」
 危うく、忘れられそうになっていた月からの死者、もとい使者が止めに入りました。
「今日は、私の誕生日なのよ。遠野君は、私が貰うわ」
 そうです。今日は、使者の誕生日でもあったのです。元々『竹取物語』でもかぐや姫は八月に月に帰っていくんですよ。旧暦だけど。
「それなら、わたしも今日を誕生日にするわよ」
「いくら自称でも、誕生日というのは勝手に変えちゃだめっ!」
 公家と使者がもめている隙に、男の子はその場から立ち去ろうとしました。
 ズッ。
 男の子の服の裾を、何かが引っ張りました。それは、蓬莱山の下から伸びてきた赤い髪の毛でした。
 ふかぶかと溜息を吐くと、男の子は山を解体しました。
「さっさと助けなさいよねっ!」
 山の瓦礫の中から出現した黄金の足は、見事に男の子の脳天にヒットしました。
「ばたん、きゅー」
 続いて、他の公家たちや帝も、瓦礫の中から出現しました。
「先輩の影に隠れる未来が、間一髪見えて良かったです」
 続いて、この後に繰り広げられる惨劇が見えた帝は、そそくさとこの場を立ち去りました。
 公家たちと月よりの使者との戦いが始まりました。その戦いは、地軸を揺るがす大決戦となりました。
 目を回していた男の子が目覚めた時、そこは全てが死に絶えた荒野と化していました。
 その後の事は、記録に残っていません。男の子は、最後に荒野に立っていたオンリーワンと結ばれたとも、一人で月に帰ったとも言われています。
 全ては、時の流れの中に忘れ去られたのでした。

対決七夜の森

 ついに、あいつは言葉を喋り始めた。
「ウ、ウォーター……」
 サリバン先生ーっ! やりましたーっ!

クイズ「ヒントでピント」

「司会はわたし、ドイ・マサルです」
 挨拶もそこそこ、男は問題を読み上げた。
「十六分割、問題スタート!」
 画面に、何か髪の毛らしいのが、映った。
「あれは、カツラかしら」
 ナカジマ・アズサがつぶやいた。
「いえ、あれは頭部のパーツです」
 司会の言葉に、一人の男が何か閃いた。
 ピンポーン!
「アサイさんっ!」
「アルクェイドっ!」
 ピンポンピンポンピンポンッ!
「そう、これは分割されたアルクェイドですっ」
 正解画面には、分割された十七個目のパーツとナイフを振り回す志貴の姿が映っていた。

ウルトラ7夜

「いいからかけなさい。別に度は入ってないんだから」
 先生は強引にメガネを僕にかけさせた。
 とたん−−−
「デュワッ!」
 ギュルルルルルッ!
「うわあ! すごい、すごいよ先生! て、違ーうっ!」
 身長57メートル体重550トンの巨体がうなった。
 ブチッ!

あったら嫌なレイズナー

 あいつが四人、仮面をかぶって出現する『シキ隊』。こりゃ、エイジは勝てんわ。

ドーバーに行け、ドーバーに

無限に往復する25mプールと
永遠に逆行して留まる流れるプール。
はたして、そのどちらが遠泳と言えるのか

金庫の秘密

「うっ―――い、いいからあけますよっ。えーと、こっちと、こっちと……」
 二つの鍵穴に鍵を挿しこむ。
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
 しばし、二人して黙り込む。
 鍵を挿し込んだとたん、金庫の中から腕が飛び出し足が飛び出し、ババンバンと姿を変えていったのだ。
「トランスフォームッ!」
 最後に頭部が出現して、金庫はトランスフォーマーに変形を完了した。
「ふっふっふ、やっと目覚める事が出来たぞ。俺様はデストロンの……」
 そういえば、錠前がしゃべる映画も、どこかで見たような気もするなあ。あいつも、トランスフォーマーなのかな。ロボットの言葉など気に留めずにそんな事を考えていると、背中からロケットを出現させて天井をぶち破って金庫は飛び去った。
 二階をぶち抜いて日光が降り注ぐ天井を見上げて、琥珀さんが重苦しいため息をついた。
「志貴さん、なんてことをしてくれたんですかっ」
 ええっ? これって俺のせい?
「こうなったら、志貴さんには責任をとって貰いますからね」
 琥珀さんはぐい、と紐を引っ張った。俺の足元がばたん、と開いた。
「ああっ、やっぱりこの展開ですかあぁぁぁぁぁ!」
 いつの間に紐が出現したのか考える暇も無く、俺は闇の底に落ちて行った。
 くそう、これじゃあオリジナルと同じオチじゃないかと、俺はこのSSの作者を恨んだ。

 ――そんなこんなで、またも俺は地下牢にいた。
 ただ、いつものパターンと違って、俺は天井を見上げていた。いや、天井しか見られなかった。俺は、ベッドに仰向けに寝かされて両手両足を固定されていた。いや、これはベッドじゃないぞ。手術台?
「あらあら、もうお目覚めですか? 志貴さん」
 琥珀さんが、階段を下りてきた。
「また注射器で……」
 俺は、絶句した。琥珀さんが右手に注射器を持っている所は、おんなじだ。しかし、左手には……。
「そ、そのメスはなんですか!」
 ニコニコと近寄ってくる割烹着の悪魔。……もとい、割烹着を脱いだ悪魔。
「志貴さんにはこれから、デストロンと戦うサイバトロン戦士になってもらいます」
 ええっ! サイバトロンって、人間が成れるモノなのですか? て、いうか、成りたくないっ!
「やめろおっ! 琥珀! ぶっとばすぞおっ!」
「うふふふ。呼び捨てにするなんて、久しぶりですね」
 だめだ。全然会話になっていない。
 琥珀さんの持っているメスが光った。
「そ、それに、俺を戦車やライオンに改造しても、また天井をぶち抜かれるだけだぞ」
「嫌ですね。そんな物騒な代物に改造するわけ無いじゃないですか。志貴さんと合成するのは、これですよ」
 そう言って、琥珀さんは金属製のタライを取り出した。
「え? それって?」
「そうです、明日から志貴さんは『洗面貴』となって、悪とたたかうのです」
 せ、洗面貴? それって、文化祭の夜寒鶴とどうちがうんだ。
 俺の頭の中では、喋る金庫と歩く洗面器が戦う姿がぐるぐると回っていた。そこに、南京錠まで加わって踊り出した。しかも、コピー機までくるくる回ってやってきた。
「も、もしかして」
 南京錠が、教えてくれた。
「複製機と同じだよ」
『複製騎』! お前まで改造されたのか!
 そして、日本に上陸するブリュンスタッド城。迎え撃とうとする、遠野邸。勿論、両者ともロボットにトランスフォームした。

―――私を含めて損は六人。条件付けも素晴らしい。
   これならば―――団体割引が発動する。

 ゴオー、とか黒い風が吹き荒れて画面はまた一変。
 なにゆらごにょごにょと細かい文字が浮かんだ後、バーン!と派手に脳裏にタイトルが浮かび上がる。

 月姫2/The Park Six

 じゃじゃじゃじゃーん、と決めの音楽が流れて人生が止まった。

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