第七百二十七 後編Aパート
第七百二十七
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事後処理に奔走する羽目になったのは、シエルだった。
何しろ、沢山の人間がフェルナンデスとの戦いを目撃していたのだ。魔眼を使って記憶を消して回るだけでも、大変な労力だったのだ。
その他にも幾つかの不始末と違反行為がシエルにはあったのだが、アルクェイドとスラッシュが教会に弁護して貰ったのでシエルには功績と処分を合わせて相殺するというお達しが下るだけでどうにか済んだ。
実際、シエルに言わせればロストトゥエルブが生きていたのは教会の先輩達の不始末であり、シエルは尻拭いをさせられただけという感がしていたのだが。
凛の方にも、協会から今回の件に対して申し開きをするようにと連絡が入っていたが、春休みが終わるまで無視する事にした。
なにしろ、凛には協会の命令よりもっと大事なことが残っていたのだから。
そう、今日は絶好のお花見日和だったのだ。
◇
ダンディのジープとポリタンクZに重箱を積むと、士郎達は衛宮邸を出発した。
ゆるやかな坂道を、凛がこんなに晴れやかな気分で下るのは、一年ぶりだった。再会を楽しみにしてこの坂道を登って来たのが、遠い日の出来事に思えた。
「おっす、士郎。お先に!」
ライとアリーナの乗った自転車が、砲塔に腰掛けている士郎を追い抜いた。凛達三人はジープの後ろに乗っていた。
「こりゃ! 二人乗りはやめんかい!」
ハッチから顔を出して、署長が怒鳴った。
「はっはっは。相変わらずライは威勢がいいな。だいたい署長さんの戦車も、わくわくシティでしか通行許可がないはずだろ」
ダンディが、振り向いて署長に笑いかけた。
「一本取られたでやんすね、署長」
車体の中から、ハム助の声がした。
「うぐぐぐぐ」
憮然な顔をした署長は、また戦車の中に籠ってしまった。
去年は公園の花を見に行ったが、今年は違う場所に行く事になった。確かに、今年の花見の面子は異様で公園に集まるのは無茶だった。
「それにしても、遠野家って気前がいいわね。庭を貸してくれる上に、桜まで用意してくれるなんて」
かつての桜の家で、今年は花見をする事になった。桜の木も、秋葉が調達した木をアルクェイドが花を散らす事無く移植したものだ。それどころか、家主の留守中の管理まで桜に任せるというのだ。尤もそれは、普通の人間があの地下室に迷い込んだら大変だという理由だったが。
「いらっしゃいませ」
遠野の別荘となった元間桐家では、門前で二人のメイドが待っていた。翡翠と、ティセだ。
今のティセは、士郎の現状に近い。本来の身体は確かに英霊とは完璧に相性が良かったが、それでも英霊の魂を人形の身体に定着させるには生命力が必要だった。その為、たまに生命力を補給する必要があって、アルクェイドと取引をしていた。
満開の桜の並木道をくぐると、そこには志貴達がいた。
今の志貴は、定期的にティセの世話になっている。真祖であるアルクェイドの生命力を、ティセを介して与えられているのだ。ティセも、その時にアルクェイドから生命力をわけてもらっているのだ。ティセが実家に連絡を取ったら生みの親が病気になっていると判った時も、その生命力で見事に治した事もあったのだ。
体調不良の根本的原因が無くなったわけではないので志貴が治ったわけではないが、それでも寿命はかなり延ばせる筈だった。
「バウ」
「あはははは」
一足早く遊びに来ていた麦とまるるんは、桜の木の下で手を繋いで回っていた。両親と連絡がついた麦は、お母さんが迎えに来た後も、暫くこの町でまるるんと遊ぶ事にしたのだ。
「桜にカレーとは、風情が無いな。オレを見習え」
「天丼の何処が風情があるというのですか!?」
シエルとスラッシュは、互いの趣味について言い争っていた。スラッシュの周りでは、解放された妖精達が宙を舞い踊っていた。
ローラは、わくわくボールが消えた事で自由の身になった。もう、人間達の願いを聞かなくて良くなったのだ。
「いい加減、うちから出て行きなさい。兄さんへの生命力の補給は、わたしだけで充分です!」
「わたしだって志貴の役に立ちたいのよ、妹」
「妹というのは、やめなさい!」
秋葉とアルクェイドは、今日も言い争っていた。きっと明日も言い争うだろう。
「皆さん、お待たせーっ!」
庭に敷かれた絨毯の上に士郎が重箱を並べていると、琥珀が自分の用意した料理とお酒をメカ翡翠たちに運ばせてきた。フェルナンデスとの戦いで殆どが破壊されたが、使えるパーツ同士を組み合わせて十体程度に再生したのだ。
「こりゃー! 未成年は酒を飲んじゃいかんぞ!」
署長が、ポリタンクZの上から怒鳴っていた。
「今日は、無礼講だよ。固いことを言わないでよ」
そう言って、夏美が署長に缶ビールを投げて渡した。
「サクラ。あまり五月蝿く言うなら、あの署長を暫く黙らせましょうか」
「やめて置きなさい、ライダー」
咲き誇る桜を見上げながら、桜はライダーに答えた。
「さて、飲み物は全員に行き渡ったみたいね」
家主である秋葉が、花見の席の幹事として皆の前でジョッキを掲げた。
「にゃあ」
何故か、ランプーまでカップ酒を抱えていた。
マグカップを手に持ったティセは思った。人々の輪の中に入るのが、本当はこんなに簡単な事だったなんて知らなかったと。
皆の手が、一斉に掲げられた。
「カンパーイッ!」
どこまでも広がる青空に、士郎達の掛け声が響き渡った。
END
(後書き)
最終決戦で出現する英霊には、アーチャーやセイバーにしようかとも思ったのですが、登場人物が多すぎたのと意外性のある英霊という事でこうなりました。
本当は、こんなに長い話になるとは思っていませんでした。やっと終わりました。
フェルナンデスの眷属というのは、スラッシュエンドに出てくるアレです。最終決戦に相応しい敵という事で、画面で確認出来ている十一体全部に出て貰いました。
感想をいただけたら、幸いです。
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