結成以来50年余り
山岡鉄舟を鑽仰して『鉄舟会』
本会のあらまし
◎わが『鉄舟会』が結成されて約50あまり年が経過した。現在は会報である本誌『鉄舟』の発行部数450部。会員はそれぞれの場で鉄舟先生を鑽仰している。この混沌の時代にこそ、鉄舟精神が必要であろう。
◎本会の道場は、旧・中野小淀町の山岡鉄舟の屋敷のあとである。山岡鉄舟は侍従時代にここから宮中へ通い、竹橋兵営の反乱の際にはいち早く大混乱の皇居のなか、明治天皇のもとへかけつけ、天皇の深い信頼を得た(護皇洋刀の記)。
また通勤路の淀橋に住む角谷彦三郎から蘭渓道隆の「全生庵」の額を譲り受けた由緒ある地である(谷中「全生庵」の縁起)。
◎戦時中の昭和18年、縁があって小寺院が建立された。開山は京都天龍寺の関 精拙老師(精拙元浄禅師)である。名を鉄舟先生に因んで「鎮国山高歩院」という。正規の禅寺としては日本で一番小さな寺であろう。昭和22年の暮れに、二代目住職として坐禅と書と剣の達人であった大森曹玄老師が京都から移り住んで、本会が開設された。
もとより檀家が一軒もない寺である。山岡の屋敷跡のかなりの部分は終戦のどさくさにまぎれて勝手に人が住むなどして人手に渡り、寺として残ったのは僅かに200坪ほどである。寺族の生活が成り立たないのは当然である。大森老師は弁護士会の法曹禅話会や裁判所の調停委員として生活を支えるようになる。またありあまる時間を利用して執筆に講演に、と活躍を始める。初期の本会の役員は以下のとおりである。
顧問=石井光雄、井田磐楠、閑牧翁、山田無文、松本洪、横山雪望、安岡正篤、真崎勝次、福原俊丸、石井光次郎。理事長=納賀雅友。理事=三根忠作、工藤九郎、久保田達三、深沢貞堆、進藤一馬、橘喜朔。常務理事=阪本雅城、山田英、笹野大行、岡田雄山、森田大耕、大森曹玄人。
◎大森老師は「剣と禅」「書と禅」「参禅入門」など数十冊の名著を残し、晩年には京都・花園大学の学長を努めた。途中では南方の遺骨収集に参加したり、べトナム戦争のときにはチ・チクアン師と和平を協議するなど、平和の推進に努めた。
大森老師が禅の国際化を願って創始した「国際禅道場」は、その理念を宝積玄承老師が引き継ぎ、亀岡に移ってますます盛んに活動を続け、そしてハワイに種を蒔いた超禅寺も活発な活動を続けている。
◎カトリックとの交流を深めるために開始した「東西霊性の交流」は現在も天龍寺に引き継がれて20年余にわたり継続している。
法嗣の一人である門脇佳吉神父(上智大学名誉教授)は「私のような(別宗教の)神父にも参禅を認め、禅の室内を終了させてくれたのは大森老師であった。他の老師ではこうはいかなかったろう」と語っている。現在では門脇神父はミサをたてる傍ら、坐禅をもってキリスト者を導いている。
◎大森老師の病臥中の約10年、没後の6年は本会も活動が低調となったが、第三代住職・平田祖英老師に代わり平成9年から第四代住職に大森老師の法嗣である高田玄中老師を招請して坐禅会を継続している。現在は大森老師の高弟が直心影流の組太刀「法定(ほうじょう)」を教え、また書道も「筆禅道」の実修を欠かさずにいる。
◎大変革の非常の時代を迎え、鉄舟精神はますます求め続けられている。これからもこの灯を消さずに同人一同、精進していくことを誓い合っている。