FERRARI641/2徹底解剖


 

ボーテックスジェネレーターボーテックスジェネレーター

 

ボーテックスジェネレーターとは、フロントウィング翼端板の後ろに伸びている、
筒状の物体のことです。直訳すると、「乱流発生装置」とでもなりましょうか。

元々、ボーテックスジェネレーターとは、航空用語で、
飛行機の翼の下部についている物体のことを指しています。

高速で流れる空気は、翼状断面の物体によって、急激に進路を変えられると、
その翼状曲線に対応できずに、真空状態になる空間でできてしまう傾向があります。
航空機の場合は、翼の下部に乱流をわざと発生させ、翼から空気が剥離しないようにしています。

F1マシンの場合、同じ名前でも目的は違っていて、筒状の物体で乱流を発生させ、
フロントタイヤ後部の乱れた空気を外側に弾くようにしています。
タイヤがむき出しのフォーミュラカーでは、高速回転するタイヤによって、タイヤのすぐ後ろに、
不安定な乱流が発生してしまい、側面を流れる空気に大きな影響を与えるため、
これを防ぐために、「乱流でもって、乱流を制する」ことが考え出されました。

これにより、フロントタイヤ後部の乱流が、サイドポンツーン側面の流れに干渉することがなくなり、
コークボトル、ディフューザーの効果が大きく上昇したと言われています。

F1では、1990年の第5戦、カナダGPに、このフェラーリ641/2が初めて導入しました。
1990年シーズンは、それほど目立った進歩はしなかったものの、
翌1991年シーズンには、より大型化し、次第に各チームにも注目されるアイテムになります。
1992年シーズンには、完全に筒型のものが主流となり、横2列に配置するものもでてきました(ロータス107など)。

 

しかし、コーナリングスピードの上昇がピークを迎えた1994年シーズンは、
テスト走行・フリー走行で、J・J=レート、J=アレジ、R=バリチェロが重傷を負う事故が起き、
また、第3戦サンマリノGPにおいて、R=ラッツェンバーガー、A=セナが死亡する事故が起こってしまいました。

これらを受け、F1を統括するFIAは緊急にテクニカルレギュレーションの変更を行い、
主に、ディフューザーの短縮化と、ボーテックスジェネレーターの廃止を決定しました。
これにより、以後のグランプリでボーテックスジェネレーターを見ることはなくなりましたが、
言い換えれば、コーナリングスピード抑制の対象になるほど、空力上の効果が大きかったと言えます。

 

現在では、1993年に登場した、ディフレクター(バージボード)が、その代役を務めています。
元々、ノーズの外側に1枚の板を取り付け、サイドポンツーン前部の整流を目的としていたディフレクターですが、
次第に下部が後ろへと延長し、ボーテックスジェネレーターと同じような空気の流れを生み出しています。