第4節
ミニ新幹線の問題点



 ミニ新幹線には、上記のようにメリットがあるのだが、実は、新幹線誘致を考えている地方公共団体からは、あまり人気がない。これは、山形新幹線の失敗が関係しているように思える。

 山形新幹線は失敗した、と私は思っている。その理由は新幹線らしくない点にある。もともと、前述したように、正式には新幹線でないものに、JR東日本や地元が「山形新幹線」という名称をつけてしまった(時刻表にも『山形新幹線』と記載されている)のだが、新幹線というネームバリューとは程遠いために、今後新幹線が導入される予定の沿線自治体に嫌われることになった。

 新幹線らしくない点として、先ず、その速度が挙げられる。山形新幹線は、奥羽本線の福島〜山形間を標準軌化することによって、基準速度を130km/hに向上させる目的であったが、、この区間に限って言えば、前述の最速列車「つばさ101号」でさえ、表定速度(駅停車時間も含めた平均速度)は、85.6km/h(※現在の最速列車は「つばさ127号」で、表定速度はほぼ変わらず)で、北陸本線の在来線特急「サンダーバード1号」(大坂〜富山間)の表定速度106.0km/h(※現在は104.4km/h)よりも遅いのである(※実は在来線表定速度最速は、気動車特急である、「スーパー北斗17号」(札幌〜函館間)だったりする。106.2km/h)。この「つばさ101号」も、東京〜福島間では、「やまびこ101号」に併結されて、表定速度194.8km/hを記録しているのである(※「つばさ127号」の東京〜福島間は、188.1km/h)。これでは、山形新幹線、換言すれば、ミニ新幹線の遅さと、フル規格新幹線である東北新幹線の速さが人々にイメージされて仕方がないであろう。ちなみに、この「やまびこ・つばさ101号」は、7時26分に東京駅を出発し、「つばさ」の方は9時53分に山形駅(東京駅から359.9km/h)に到着するが、その一方で、福島で「つばさ」を切り離した「やまびこ」の方は、9時19分に仙台駅(東京駅から351.8km/h)に到着し、10時21分に盛岡駅に到着するのである。ミニ新幹線である山形新幹線に比べ、フル規格新幹線である東北新幹線は、山形とほぼ同距離の仙台に30分以上早く到着し、山形新幹線が、終点山形駅に辿り着いた30分後には、170km/h以上も遠い盛岡に到着しているのである(※「やまびこ・つばさ127号」の場合、東京発19時36分、山形着22時06分、仙台着21時36分【仙台止まり】)。

 もう一点は、その運賃にある。東京駅からほぼ同距離の仙台駅までと、山形駅までの運賃を比較すると、東北新幹線の仙台駅まで10590円(通常期)であるのに対し、山形新幹線の山形駅までは11030円(通常期)である。ほぼ同距離で到着時間が 30分以上も遅いのに、料金では、若干高めに設定されているのである。ちなみに東海道新幹線では、東京駅からの距離が近似値をとるのは名古屋駅(東京駅から366.0km)で、東京駅からの運賃は、「のぞみ」11340円、「ひかり・こだま」10580円である。運賃は、JR本州3社は走行距離に応じて上昇する、共通運賃制度なので(山形・仙台が5780円、名古屋が6090円)、特急料金だけで比較すると、山形新幹線で山形まで行った場合は5250円、東北新幹線で仙台まで行った場合は4810円、東海道新幹線で名古屋まで行った場合は「のぞみ」5250円、「ひかり・こだま」で4490円である。こうしてみると、山形新幹線の割り高感は否めず、基準速度が2倍以上である、「のぞみ」と同料金を徴収していることになる。利用者からすれば、納得できないであろう。これは、山形新幹線が、正式には新幹線ではなく、高速化在来線であるために、一貫した料金体制ではなくて、在来線接続特急料金制度が適用されているためである。つまり、一般に長距離になればなるほど、1kmあたりの運賃・特急料金が低くなるJRの料金制度において、福島で分断されて、個々の料金制度になってしまうために、このような現象が起きるのである。さらにサービス向上を理由に、在来線特急であった旧「つばさ」と比べて、若干の特急料金引き上げがなされている。

 山形新幹線は、少なくとも基準速度を160km〜180kmに設定すべきであった。その低速の原因は、踏切と勾配で、勾配区間を高速で走行するのは難しく(特に下り)、踏切がある区間は、「600m以内に停止できなければならない」という規定がある。勾配区間はともかく、盆地区間は、道路を立体交差化して踏切を無くし、最低限、北陸本線並の表定速度を確保すべきであったと思う。東海道新幹線の各駅停車「こだま」並(表定速度約110km)の速度を確保できれば、料金の点は勿論として、沿線地方公共団体のミニ新幹線に対する不満もさほどではなかったであろう。


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