第2節
北陸新幹線における技術革新


 前述したように、建設上の重要テーマに対して、日本鉄道建設公団は、次々に新技術を採用していった。橋梁・路盤などでも、数々の新技術が投入されたが、それらにも増して特筆すべき技術は、上越新幹線との分岐を行う分岐器(切り替え線)と、トンネルの掘削技術である。また、碓井峠越えのために、新型車両が導入されたことも、見逃せない。

 新型分岐器は、38番高速分岐器と呼ばれ、135mの長さを持つ分岐器で、160km/hでの通過が可能である。これは、従来の新幹線で採用されている、18番分岐器の長さ64m、通過最高速度80km/h採用の場合と比べると、スピードダウンによる時間ロスを省くことが出来る。同時に、上越新幹線軌道を長い区間共用することが可能で、下り高架橋の約2.2kmを新設しないで済むようになった。この38番分岐器は、日本鉄道建設公団と、JR東日本、鉄道総合研究所の共同開発で開発された。

 トンネルの掘削技術も、新技術が導入された。安中榛名駅の西方に存在する、秋間トンネルの東工区では、「掘削覆工併進工法」が採用されると共に、「空気カプセルずり搬送システム」が、トンネル工事において、初めて採用された。前者は、切刃(直径1.3m、ブームカッター)で岩盤を削りながら、内側に覆工コンクリートを構築していく工法である。後者は、掘削工事の際に出る、残土(ずり)を、本坑内に設置された、高さ・幅90cmの管路の中を、3両編成のトロッコで、ずりを坑口から、約3km離れた土捨場まで運び出すものである。この方式の採用により、従来のようにダンプカーを使わず、クリーンなずり搬送が可能となった。また、新線区間の最長トンネルとなる五里ヶ峰トンネルは、陸上トンネルとしては、わが国で4番目のロングトンネルだが、工事工程上、平成3年11月の着工から、3年半で掘削を完成させる必要があった。従来の新幹線トンネル掘削工事の場合は、平均月進100mを越えるのは難しかったが、最適発破パターン設計技術、長孔発破技術の開発、6ブームガントリージャンボや、30tダンプ等の大型機械導入など、施行法のシステム的改善によって、平均月進150m以上を可能にした。これらの技術導入により、新幹線トンネル掘削工事の日本記録を次々に塗り替え、平成6年10月の戸倉工区では、月進281mの驚異的な記録を達成した。また、同工区では、平均月進は160mというものであった。

 上記のような新技術の他に、「上田市都市景観賞」を受賞した、第二千曲川橋梁(愛称「上田ハープ橋)や、騒音・振動対策のためのロングレール(最長は高崎〜軽井沢間の上り線、約40.3km)など、景観、環境等にも配慮した工事が行われた。

 碓氷峠越えの対策としては、新型新幹線用車両E2系が投入された。このE2系は、急勾配対策のための交流モーター駆動車両(VVVF車両)として開発されており、このため、従来の新幹線最急勾配規格である、15‰の2倍に当たる、30‰の急勾配を連続22kmに渡って採用することができた。更に、列車が高速でトンネルに突入する時に発生する圧力衝撃波が伝搬し、出口側で破裂音のする、「トンネル微気圧波」と、騒音に対する対策として、従来の新幹線車両よりも、更に滑らかな流線型にし、そして、低屋根化、車体平滑化がなされている。また、パンタグラフカバーも、新幹線試験用車両「STAR21」で培った技術を流用し、低騒音化を実現した。その他にも、軽井沢付近で変わる交流周波数への対応(50/60Hz、2周波数対応)、連続勾配降坂用の抑制回生ブレーキの搭載、通常線区用の回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ搭載など、新技術が山盛りとなっている。更には、東北・上越新幹線用車両200系に比べ、約25%の軽量化がなされており、定員乗車時の車軸重も、200系の17t以下に比べ、13t以下となっている。これらの新技術投入や、軽量化の結果、通常線区では、最高速度260km/h(東京〜大宮間は騒音対策のために240km/h)、勾配区間でも210km/h(下り列車は、登坂するため、約180km/hまで自然減速する)の運転が可能となっている等、これまでの新幹線とは、違った新型車両となっている。


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