第3節
しなの鉄道の現状


 「しなの鉄道」は、既に触れたように、本線(旧信越本線)が、第3セクター化された初の例であり、その輸送需要はもともと大きい。輸送体系を見ると、軽井沢〜小諸間と、小諸〜長野間(篠ノ井〜長野間は、JR線区乗り入れ)と分かれているが、これは、軽井沢〜長野間の通し運転ではダイヤを組むのに限界が生じること、長野・上田・軽井沢での新幹線接続を最大限考慮したこと、利用にギャップのできる小諸で運転系統を分けたことがその理由となっている。軽井沢〜長野間の通し運転は、朝夕で、上り列車(軽井沢行)が7本(JR時代は15本)、下り列車(長野行)は5本(同15本)と、消滅したわけではないが、激減している。地元新聞での投書欄にも、日中の直通列車がなくなったことへの批判があるが、実際は、小諸駅での同一ホーム乗り換え・接続が可能であり、不便性はあまり感じられない。「しなの鉄道」の輸送の主力となるのは、小諸〜長野間の26往復で(JR時代10.5往復)、この他にも、上田〜長野間に4.5往復(同9往復)、戸倉〜長野間に4往復(新規設定)、小諸→戸倉間に1本、戸倉→軽井沢間に1本、軽井沢〜小諸間に、上り列車15本、下り列車17本が設定された(いづれも新規設定)。これらの結果、軽井沢〜長野間は、往復で述べ115本の列車が運行されることになり、旧JR時代の述べ69本よりも、強力な輸送体系となった。

 また、駅に隣接するオイルターミナルへの貨物列車も、篠ノ井〜坂城(三井石油)間に2往復、篠ノ井〜西上田(三井石油、住友セメント)間に4往復、篠ノ井〜田中(コスモ石油)間に1往復、の系7往復が運行されている。これらは、地域の消費物資輸送であったため、地元の理解は得やすかった。この貨物列車は、JR貨物のEF64型機関車によって運行されている。

 ところで、「しなの鉄道」は、第3セクター化されるに当たり、軽井沢〜長野間をその路線として主張したのだが、結局は、軽井沢〜篠ノ井間となった。これは、篠ノ井〜長野間は、長野市街への通勤・通学者が多いこと、また、篠ノ井線(塩尻〜篠ノ井間)で、JR東海の昼間特急「(ワイドビュー)しなの」、夜行急行「ちくま」が、大阪・名古屋〜長野間を塩尻経由で運行しているため、その輸送需要から、分断できなかったためである。この問題はしなの鉄道開業に当たって、一番の問題となった。なぜなら、その料金設定が難しくなるためである。小諸〜長野間も輸送需要が高いのだが、篠ノ井以南(しなの鉄道)と篠ノ井以北(JR東日本)が別会社である場合、それぞれの初乗り料金が徴収され、旧信越本線だった頃に比べて、長野〜篠ノ井以南の運賃が高くなってしまい、第3セクター化のデメリットとなり、更に、鉄道需要が少なくなることが予想された。そこで、軽井沢〜長野間の中で、運賃を考えることにして、しなの鉄道とJR東日本との間で料金のすりあわせが行われた。しなの鉄道側は、通算運賃(JR時代と同じ料金制度)を要求したのだが、JR東日本側は拒否、調整割引を行うことになった。その調整割引も、通常JRは10円程度しか適用していなかったのだが、しなの鉄道側の粘り強い交渉の結果、ようやく、JR時代と同じ料金制度い近い状態までもっていくことができた。JR側としても、最大80円の割引を適用、定期券にも割引を採用するなど、かなり譲歩した内容になっている。

 この乗り継ぎ割引の適用区間は、田中〜長野間(JR信越本線)、戸倉〜松本間(同、篠ノ井線)、田中〜小海間(同、小海線)、御代田〜小海間(同、小海線)で、両者が割り引く区間と、それぞれが単独で割り引く区間に分かれる。この結果、上田〜長野間では、正規料金制度では640円となるところ、600円(JR時代は570円)となった。区間によっては、逆にJR時代よりも安くなったところもある(戸倉〜長野間など)。また、連絡運輸にしてもJR時代が考慮され、「しなの鉄道」の各駅から、JR各線では、豊野(信越本線)、松本(篠ノ井線)、小海(小海線)まで、長野電鉄では須坂まで、上田交通では別所温泉までが買うことができる。新幹線に限って東京まで購入できるようになっており、このため従来「みどりの窓口」があった7駅には、指定座席予約機「マルスM2」が導入された。


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