第5章
日本の鉄道網について


 これまでふれてきたように、整備新幹線計画は、鉄道旅客の時間短縮という、大きなメリットもあるが、それは、あくまで大都市中心の考え方であり、その地域のことを考えた地方交通に関しては、疎かになってしまう。今後、整備新幹線が計画されている沿線には、政令指定都市はなく(長野も含めて)、この傾向は、ますます強まると思われる。また、地方交通線を経営分離化することによって、日本の鉄道網が、破壊されていくのである。

 鉄道網ということに関して言うと、敢えてこの章までふれずにいたが、貨物輸送に関しての問題がある。今回の信越本線は、もともとの貨物需要が少ないことから注目されていないが、今後、盛岡〜青森間、博多〜西鹿児島間、そして、北陸本線が、整備新幹線開業に伴って、第3セクター化される線区となる予定なのだから、もっと注目されるべきである。旅客列車6両では、大体300t前後であるが、貨物列車は、平均して1100tぐらいになる(その編成、貨車数にもよるが)。この重量の違いは、もちろん、路盤を傷める度合いが大きい。ただでさえ、経営が楽とは言えない第3セクターに、貨物列車を頻繁に通した場合、路盤整備のコストが馬鹿にならなく、結局は、貨物列車の通行が不可能になるであろう。今までのような支線レベルの第3セクター化では、大きな問題にならなかった(信越本線も含めて)が、整備新幹線計画における平行在来線の第3セクター化では、大きな問題になるであろう。極論を言えば、国内輸送の一手段である、鉄道貨物輸送が衰退し、当然他の交通手段にしわ寄せがいくのである。現段階でも、鉄道貨物輸送は微減傾向にあるが、今後、一層の拍車がかかることになるであろう。

 1997年末、世界的な環境会議である、京都会議が開かれたが、鉄道輸送の減少は、正に時代に逆行している。輸送手段としては、低公害手段である、鉄道輸送が減少し、その結果として、おそらくは、CO2・NOx・石油の枯渇といった問題の大きい、トラックによる自動車輸送が増加するのである。今後、国内輸送需要が増加していけば、そのまま、自動車輸送が増えていくことになるであろう。JR貨物では、トラックをそのままボギー貨車に載せ、輸送するという「ピギーパック」のサービスを実施している。長距離輸送は鉄道輸送によって移動し、短距離を各自で自走するという、極めて低公害のシステムである。残念ながら、その知名度は低く、利用者も多くはない。この方式を全幹線に適用すれば、高速道路を走行するトラックの数は減り、長距離ドライバーの精神的障害も低減されるに違いない。国が奨励、補助すべき輸送手段である。

 整備新幹線計画は、遠距離旅客輸送の面では優れているが、地方交通の細分化、鉄道網の分断による貨物輸送の衰退といったことに関しては、ほとんど、何の措置も取られていない。「地方分権」や、「環境問題」が取り沙汰される昨今において、ほんのわずか一部ではあるが、これらの問題の解決手段となりえる鉄道輸送を、JR各社、及び政府が一体となって有効活用してほしいものである。


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