新シリーズ!井戸谷の生き物
古寺山の山頂から南へ少し下り、平清盛が建立したという多聞寺の本堂跡(といってもタケ林だけ)、石段跡(ただの坂道)を通って行くと井戸谷の頭に出る。すこし掘れた溝には水が滴っていて、そこから水の流れが少しずつ増して所々にたまりを作り、滝となって流れていく。やがて六甲から流れてくる長尾谷へ注ぐが、その手前では伏流となっている。この距離わずか数百メートル、高度差百メートルあまり。この小さな沢にどんな生き物がいるのか、水の中の生き物を中心に四季を追って紹介していくことにする。

濡れた岩の上を、スルスルスルッと黒い虫が滑るように動いた。
岩に張り付くような平たい体にでかい頭。2本の尾でヒラタカゲロウのなかまとわかる。
追いかけると水の中にも入るし、水際からも出てくる。水生昆虫のなかでは変り種だ。
「滝や急流部の岩盤上の飛まつ帯に生息し濡れた岩面であれば陸域にも歩み出る(日本産水生昆虫)」というオビカゲロウだ。
これまで沢の水量はあまり変化がなかったが、この日は水量がみため多く、だんだんと階段のように大きな石で段差をつくっているところも濡れている。
この種は腹部にあるエラは葉っぱの形の鰓と房のような鰓が対になっているが、第一節のエラは房の鰓のほうが大きいのが特徴だ。
腹部の背側中心線上に刺があり、頭部の前縁や各肢の脛節に長毛がないなども、ヒラタカゲロウ属との区別になる。
日本のほかは韓国にのみ分布、1属にこの種のみ(同上)。
↓頭部背側 ↓頭部腹側

10月20日の日が落ちてすっかり暗くなった谷。ほぼ垂直の岩を石粒の巣がのぼっていく。もう70cmくらいの高さ。まさに岩壁に挑むロッククライマーそのものだ。
粗い砂利を寄せ集めて円筒状の巣を作るヨツメトビケラ(以下ヨツメ)の幼虫だ。円筒の前端から体を出して前肢、中肢、後肢で岩の細かなでこぼこにしがみついてすこしづつ上っていく。石粒の巣は体にぶら下がっている。左右のバランスがずれると円筒状の巣が振られる。はらはらしながら見ているとやはりバランスをくずして落下してしまった。暗闇の中でライトを照らして探したがこの後、登ってくる巣を見ることはなかった。いったいこのヨツメは何のために、自分の体の3〜40倍もの高さまで登ってきたのだろう?

ヨツメトビケラの幼虫はふだん、砂利底にまぎれていてすぐには見つからない。スコップですくって砂利を薄く広げてみるとまもなくごそごそと動き出すのでわかる。蛹化まぢかになると岩壁に寄り添うようになる(右の写真06年6月30日)。

蛹になった巣はちょうど口が閉じるくらいの石粒で蓋されている(07年5月26日)。
オオカクツツトビケラを探していると同じようなたまりにオオカクツツは堆積した葉の中にいて、ヨツメは砂利のなかにいる。ヨツメもオオカクツツもトビケラ幼虫のなかでは大型で同じくらいの大きさだ(下の写真06年10月9日)。

成虫も大型で、黒い翅に大きな白い紋がはっきり見える。おそらく翅を広げるとこの紋がよっつあることが名前の由来だろう。(左と下の写真はいずれも07年6月10日)
ヨツメ幼虫の頭には大きなV字模様がある。石粒を与えると執着するが気にいったものでなければ脇へどける。前へ進むときは長い後肢をボートのオールのように左右同時に掻いていく。だから断続的に進む。巣は粗い石粒でお城の石垣のように組みあがっているが隙間は埋められず、内張りもないので水はあちこちから漏れるし、巣も指で簡単につぶれる。トビケラの巣のバラエティにはあきることがない。

昼なお暗いこの谷は、夜ともなると目をいっぱい開けても真のくらやみ。この真っ暗な闇のなかで動物たちが活動している。
この闇の中に、虫たちが好む紫外光を放つブラックライトを灯すと、どこからこんなにと思うくらいいろいろな昆虫が集まってくる。
圧倒的にガの仲間が多いが、ふだんなかなか目にすることが少ない水生昆虫の成虫も集まる。
ヒョウモンエダシャクとオニベニシタバ

トビケラのなかま

カゲロウのなかま 金色の地に紋が並んだガのなかま ミヤマクワガタ(♀)
フタスジモンカゲロウ(亜成虫) ハヤシノウマオイ アオクチブトカメムシ
カレハガかエダシャクガか

あまり陽が差さない井戸谷は草花はほとんどみかけない。花崗岩質の石がごろごろして落ち葉が所々に堆積しているだけの殺風景なところだ。今はヤブツバキの落花が彩りを添える。沢筋の岩壁や大石の苔の緑が鮮やかさを増す。
そんな谷にあってひときわ輝いて花をつけたのが、シロバナショウジョウバカマだ。
谷の中ほど、3メートルほどの細い滝(その名も3メートル滝と名づけた)の滝下の壁にロゼットの葉がしがみつくように付いている。その中心から細い茎がひゅっと伸びて、先端に白い花を3個つけている。薄暗い滝の下でその花が浮かび上がっている。

先がややとがった花弁は6枚、おしべは6本で葯も白、めしべは中心に1本で先端は3つに分かれてこれも白い。葉はショウジョウバカマと違って縁にきょ歯(ざらざらした棘)がある。

つい3週間まえの3月31日にはまだこの茎はめばえの中だった(左と下の写真)。いつのまに茎を伸ばしたのだろう?ひょろひょろとした茎だから案外一気に伸びるものかもしれない。どれぐらいで伸びて、花がいつ開くのか見てみたい。
この花の根付いているところは、苔むした岩の割れ目だ。ほぼ垂直な壁にへばりついている。1年中こんなかっこうだ。この花のクライマックスである白い花にめぐり会えたのは幸運なことだ。


このところの晴れ続きで井戸谷も涸れ気味だ。水がたまっているところも落ち葉で埋まっている。水生昆虫は成虫になってしまい、サンショウウオも姿を見せなくなっている。
涸れた沢を下りながら、何気なく石を持ち上げたらヘビトンボ幼虫が丸まっていた。体長は3cmほど。ややくすんだ灰色。石の下は湿り気はたっぷりだがこんな砂利に埋もれていては移動しにくいだろう。もう冬支度だろうか。手にとって写真を撮っていたら生き返ったように動き出し逃げ落ちた。

幼虫は水中で2〜3年すごし、夏に羽化するという(「アニマNo.213,1990/6」より)。今年の2月(左下の写真)と5月(右下の写真)にはりっぱな幼虫をみていた。終齢では6cmにも達するという。水生昆虫なかでは例外のがっちりした大型種で、りっぱな大顎をもっていて、手に乗せていたら咬みつかれて結構痛い思いをしたこともある。井戸谷でこんな獰猛(どうもう)な肉食昆虫が生きていけるだけのエサが十分あるのだろうか?サワガニとでも対決しているのでは?

こんな強そうなヘビトンボも死ぬときがくる。これは昨年の10月にみた幼虫だが、外見は傷もなく、上陸して蛹になる機会を失ってしまったのだろうか?

ヘビトンボは完全変態をする昆虫のなかではもっとも原始的だそうだ(「日本産水生昆虫−科・属・種への検索」より)。ヘビトンボの仲間には本州ではヘビトンボ属とクロスジヘビトンボ属がいる。昨年の6月に採集した幼虫を調べたところではクロスジだった(体長47mm)。体側にある棘(側棘)は8対あり、この棘にはヘビトンボ属の特徴である毛のようなもの(総状鰓)がない。そのかわり腹部第8節背側に呼吸管が1対ある。雑誌「アニマ」(前掲)にクロスジの種のひとつであるヤマトクロスジが逆立ちしてこの呼吸管を水面上に出している写真が掲載されていた。井戸谷の水たまりでは逆立ちするような水深のあるところはあまりないので、こうした場面には出会えないかも知れない。

一見して生きものなど見当たらないような井戸谷の水の流れ。這いつくばって水の中をのぞいているとようやくさまざまな生きものが目についてくる。そんななかでよく目についてくるのがクモ類だ。ひょっとすると最も種類が多いかもしれない。ありふれていて目に入っていなかったのかもしれない。今日はすこしクモ類に眼をやってみよう。
水面に浮かんで手足をばたばたさせているクモに出会う。体長5〜6mm。ハエトリクモの仲間か。水の流れに翻弄されてようやく岩にとりつく。急いでかけあがり枯れ葉2枚の間におさまって周囲をうかがっている。しつこくカメラを近づけているのでピョンと跳んでいってしまい見失ってしまった。

苔むした石のうえにマツバが1本立っていた。その先に体長2mmほどのまん丸いクモがいた。よく見るとマツバの先に送電線のように糸がかけられている。ミニチュアの世界の微妙なバランス。


水面をクモの脱皮殻が浮いている。風に飛ばされたものだろうか。水面上で脱皮したのだろうか。まだ生々しい。そばに堆積物のうえによく似た大きさのクモがじっとしていた。

「小猪鼻の滝」と名づけたチムニー(狭い岩のすき間)状の場所にクモの巣がかかっていた。円形の網を垂直に作るコガネグモの仲間だろうか。ほかにも水平にかけた網の中心部に細かく糸を張り巡らしたものもある。



網をかけているものはおそらく水の中から羽化してきたり水面を行くカゲロウやトビケラの成虫をねらっているのだろう。網をかけない徘徊性のクモはどんなものが獲物なのだろう。以前に水の底を平気で歩いているクモを見たことがあるから、水生昆虫も獲物にしているのかもしれない。

井戸谷にいくつもある滝にぶら下がる指のような袋状のもの。はじめはなにかの卵かと思って興味津々つついてみたら、しぼんでしまって汚い紐になってしまう。流れてくるごみがからまっているだけなのかとがっかりしていた。
あるとき川虫図鑑を見ていたらあの袋が何本もぶらさがっている写真があるではないか。あれはタニガワトビケラの巣だったのだとはじめて知った。さっそく本物の巣を調べてみると袋のなかから白い小さな幼虫がでてきた。

袋の巣は最上部が開いていて長靴下がぶら下がっているようになっている。上から流れてくる水が入り袋は膨らんで水といっしょに流れてくる植物の破片や微小な生きものを漉す。幼虫はこうしてひっかかったものを食べているらしい。袋のなかでこの幼虫は下向きにいるようだ。袋を指で押さえて上部の口から追い出すと必ず尾のほうから後ずさりして出てくる。しかし移動するときは頭を前にして尺取虫のような動きで進む。
ところで袋の巣はどんなところに作られるのだろうか? 井戸谷でこの巣が見られる場所は滝に限定されている。下の写真は"水呑み"と名づけた調査場所で、巣の多く集まっている場所のひとつだ。2メートルほどの幅の岩全体を水が表面を伝って流れている。

袋の巣は、A、B、Cの各場所に集中している。いずれの場所も上側が張り出している切り立った壁になっている。このうちでも特にCに多く、そのなかでも1ヶ所に数本が重なり合うように集中しているところもあり、タニガワトビケラの好む場所とそうでない場所の条件があるのではと想像できる。
もう1ヶ所、別のところでは滝本流から少し離れた割れ目のややオーバーハングした場所に集中している。(下の写真左手)
どうやら水の流れの条件の適当なところに袋の巣を取り付けているようにみえる。その条件とは水量が多すぎず、しかし水が途切れることのない場所ではないか。
幼虫の体は、前肢の付いている前胸と頭が褐色のキチンで覆われているだけで残りの部分は乳白色のうじ虫様で、12〜3mmの長さである。
頭の先端にはかなり頑丈そうな大あごが付いている。こうみるときゃしゃな体だが巣の中に入ってきたものは何でも裁断してしまえるような気がする。また尾端にはするどい鉤爪が2本付いていて流れのなかでもしっかり引っ掛けることができると思われる。巣の中で下向きの姿勢をとっているのはひょっとするとこの鉤爪でぶら下がっているためではないか。
袋の巣は、なかなか丈夫にできている。表面についた泥や細かな葉の破片を洗い流してやると白っぽい繊維で編んだものが出てくる。100倍の顕微鏡で覗いても、非常に細かな繊維がからみあったように見え、編んだ目の大きさはわからない。それで袋は水が流れていると膨らんで指のように見えるが、水を遮断するとしぼんだ状態で紐のようになってしまう。この袋をどのように織り上げるのか非常に興味深い。

沢遊びで子供たちがもっとも喜ぶのがサワガニだ。生活環を通して一度も海に下らず淡水だけで過ごすのは日本ではこのサワガニだけで、しかもきれいな川にしかすめないカニ。体色は淡灰青色、茶褐色、紫黒色の3種類あるそうだ。(「神戸の身近な生きもの地図」より)
井戸谷でも岩や石のかげに隠れているのをたまに見かける。サンショウウオの幼体を観察していたら1頭のサワガニがハサミをふりふり歩き回ってサンショウウオに近づいてきた。おどろいたサンショウウオはそれまでのほとんど動きのない姿勢から一転してひらりと逃げる。サワガニはさかんにハサミを動かし口を動かしている。夜行性なのだろうか、ふだんみるのと違って活発に動き回ってエサを摂っている。サンショウウオは近づいただけではじっとしたままだが、サワガニはあの飛び出た眼でよく見えるとみえて(あるいは気配?)非常に敏感に察知して逃げ隠れする。
ハサミの一方が大きく、おなかの三角部分がせまいのがオスで、ハサミの大きさが左右同じで、おなかの三角部分が広いのがメスだ。(「滋賀の水生動物」より)これから子ガニが見られるようになる。
<オス> <メス>
New!<追補 2006年09月10日>
サワガニは愛嬌者のようにみえるが、意外と獰猛(どうもう)だ。20cmはあるかと思われる大ミミズと格闘しているところに出会った。
抵抗するミミズをハサミでしっかりつかんで離さない。まずミミズの太くなっている部分(環帯)を徹底的にハサミと顎で咬んで痛めた。それから口の部分を何度も何度も咬み、あるいは咬んだまますばやく引きずり回し、ミミズの尾が引き離しにかかるのを防いでいた。
壮絶なバトルを息を呑んで20分間観察し、写真を取りまくってたいへん疲れた。そのあとどうなったか見届けることなくその場を離れてしまった。最後まであきらめてはいけないと反省している。
井戸谷の流れは小さな滝とたまりの連続。たまりの水の中には枯れ葉の堆積した中や砂底にかならずトビケラがいる。こうしたところにいるトビケラはカタツムリのように巣のなかに入ったまま移動する。砂粒や枯葉でさまざまな形をつくり、これが種ごとに違っているというユニークさがある。
なかでも私のお気に入りはオオカクツツトビケラだ。


巣は枯葉を切り取ったものをならべて繋げてある。その1枚1枚にカーブがついている。形も独特で、体の両側についたてを立て、腹側は両側に大きく張り出している。丸や四角の筒形が多いトビケラのなかで異色の巣を持つ。この形は生活のなかでどんな利点があるのだろう。腹側が広いということは転がりにくく安定しているようにも思えるが、水の抵抗を受けやすい形でもある。
巣のなかにはこんな体をした虫が入っている。
巣作りをしているところを観察したことはないが、水に堆積している落ち葉にはさまざまに切りぬかれた跡が残っている。使用する葉っぱの硬さや厚さなども重要だろう。簡単に壊れないようしないといけないし、しかし噛み切ることができるだけの柔らかさも必要だろう。若い幼虫の巣はまだ緑色の残る落ち葉を利用したものもある。
巣から出されたトビケラは何時間後にはいびつながらも巣をまとっている(下左)。そして翌日には枯葉をくりぬいて巣を復旧してしまっていた(下右)。ただし元のばらばらになった材料は使っていないようだ。葉っぱをくりぬいて巣を作るというのが本能なのだろう。
New!<追補 2006年10月14日>
オオカクツツトビケラは1年1世代で夏に羽化するらしい。脱皮を繰り返して5齢(終齢)幼虫になると、巣の材料を枯れ葉から樹皮の硬い材料に変えるそうだ。巣の材料を変えることもはるか昔からの進化によるものだろうが、たいへん興味深い。

圧倒的な落ち葉(植物リター)の堆積している沢だけれど、この沢に棲む動物どうしはどんな食う食われる関係なのだろうか。
サワガニやら昆虫の幼虫やらが死んで沢の水のなかに投げ込まれるとトビケラ幼虫が寄ってきてむさぼり始める。トビケラって肉食だった?それとも死骸の周りについているものがめあて?この谷でよくみかけるミルンヤンマは水の落ち込むところで何かを待ち構えているけれど、何を待ち構えて何を食べているのだろう。その場面に出くわしたいものだ。
水生昆虫自身も何者かの餌食になる。肉食のヘビトンボ幼虫も誰かに食われるのを待っていた。
沢の水の中だけでなく大型の動物もこの谷に供給される。ある日野鳥が滝の落ち口で死んでいるのを見かけた。1週間後に行ってみるとあとかたもなく消えていた。持ち去ったのは哺乳動物かカラスか?

沢沿いの石には哺乳動物の糞が目じるしがわりにつけられているのもよくみかける。これはイノシシの糞?

12月に入って冷え込む日が続く。長尾谷でタヌキが死に絶えていたのを発見。


谷の下流の方に切り立った崖にはさまれた小さな滝があり、自分勝手に「3メートル滝」と呼んでいる。その滝の下のかたわらに、細い茎が3株ほどしゅっと立っていた。高さ30cmほどの小さな草だ。この谷は樹木が密生して昼なお暗く、あまり草本類はみない。まして沢筋は岩が露出し石や木の枝などが流れ土壌が安定していない。この草は切り立った崖の中間にわずかにできた棚の上にかろうじて生育できているのだろう。植物の先生に教えてもらったところ、キッコウハグマというそうだ。

キク科の多年草で、葉は茎の地面のところから柄をのばしている。葉の形が亀の甲羅のようで、そこから名づけられているそうだ。葉の表面には棘のような毛が生えている。葉裏の脈は浮き出て、やや紫がかっている。

9月にみつけた時には花柄が伸びて、数個の細長いつぼみが間隔をおいて左右についていた。11月の初めに見たときにはもうすでに花が終わって、茶褐色の毛(冠毛という)に変っていた。日陰に生えるものは閉鎖花になりやすいそうなので(神戸・六甲山系の森林HPより)、ひょっとすると花が咲かなかったかもしれない。9月18日には米粒のようなものが茎の表面にならんで付いていた。昆虫の卵?
<追補 2006年10月09日>
昨年は見過ごした花はもうじき?それともやっぱり閉鎖花?この株たちの下方の段と、もうひとつ下段のわずかな場所に若葉がしっかりと根付いていた。
New!<追補 2006年11月03日>
今年も茎の頂部から順につぼみが開いて、1ヶ所から3本の冠毛がでていた。
やはりここの花は咲かないようだ。

”リター”とは周りにある樹木から落ちてくる葉や枝が堆積したものをいう。もちろんすでに生き物ではなくなっているが、沢の生き物にとっての、餌であり棲みかでもある。またトビケラの仲間には枯葉を巣の材料にしているものもいる。どんな樹木がまわりに生きていて、どんなリターが供給されているのか、この井戸谷の生き物にとっての重要関心事かもしれない。
井戸谷の周辺はアカマツ−ヒノキ林を基本にして、リョウブやタカノツメ、コナラなどの落葉樹が密生している。谷の上部は左右の尾根との高さの差が少なく、さまざまな樹木の落葉落枝が大量に堆積している。谷の中ほどには胸高直径46cmのコナラの大木が沢の真ん中にそびえる。

水の流れている沢沿いにはヤブツバキやヒサカキの低木が生えている。下るにしたがって溝がだんだん深くなり、谷の下部では深く切れ込んでくる。左右の岸から樹木が斜めに張り出して谷の上空を覆っている。倒木が沢をさえぎる所もある。沢は小さな滝とたまりが交互に連続して、たまりには長年の枯葉枯れ枝が底に堆積している。すこし大きめのたまりでは葉が堆積した底をちょっとかきまぜると腐敗臭がただよいガスの泡が浮き上がってくる。清流の沢のなかでもたいへん汚れた箇所も存在する。

9月になるとコナラの枝先がハイイロチョッキリに落とされ、10月にはタカノツメの三出葉が離層から落下して新しい落葉を供給していた。

最下部で長尾谷に近づくにつれてゆるやかながれ場となってやがて伏流する。このあたりはもうアカマツとヒノキの林のなか。


なにやら水底にビニル製の紐が落ちているのかなと思って拾い上げてみると、微妙に動いているのがわかる。体節はなくやや硬い。太さ1mm程度で長さはからまっていて正確にわからないが20cmほどありそう。インターネットで調べてみると、話によく聞くカマキリに寄生するハリガネムシのようだ。
たしかに名前のとおり針金のように固くてあまりくねくねとはしない。木の枝につかまらせてもねじれるように輪っかをつくる。インターネットでみるハリガネムシは全身黒かったが、白いのもいるようだ。よくみると頭(のように思える方)がすこし色が濃くなっている。その頭を砂底に突き立てて体を起こしたりしているようにみえる。水中から引き上げて石の上に載せてみた。そうすると頭を石の表面に押しつけたりしながら何かを探っているような動きを見せた。しばらくすると頭は水面のほうへ向いて体を水面上の宙に浮かした。すこしその場を離れていたらもう石のうえにはその姿はなかった。
カマキリに寄生したハリガネムシは成熟するとカマキリを水際へ誘い、みずからカマキリの肛門から這い出してくるそうだ(あまり気持ちよいものではない)。くわしい仕組みはよくわかっていないようだが、生き物の世界は不思議だらけだからおもしろい。
カマキリのほかにカマドウマなどにも寄生するという。そういえばこのハリガネムシをみつけた場所のすぐそばにカマドウマが水の流れる石にはりついていた。こんなところに何でかなと思っていたが、このカマドウマもハリガネムシに誘われてきたのかな。

クモに似ているがどことなくきゃしゃな感じのするザトウムシの仲間。足はクモと同じ8本だが体に比べてひょろ長い。頭と腹部にくびれがなく全体に丸い形をしてまるで火星探査機のようにみえる。糸を吐くこともしない。肢8本のうち2本がとくに長く釣り糸のようにしなり、ちょうど手探りをするように歩く姿から座頭虫と名づけられたようだ。しかし頭のうえには目があって、つかまえようとしてもすばしこく逃げる。
長尾谷の林の中のザトウムシ
井戸谷で見るザトウムシは古寺山のアカマツ林などの林のなかでみるのと少し違う。体がごつごつした感じで、肢もやや太く頑丈そうだ。林でみるザトウムシはガクウツギなどの低木や枯葉の堆積したところにいる。井戸谷では岩の表面や、岩穴のなかなどにいる。
8月のあるときに、がれ場にある岩と岩のすきまが洞穴ようになったところでこうもりのように天井にぶら下がっているグループを発見した。黒滝と赤滝とかってに命名した谷筋で、たまに岩肌でもみかける。ザトウムシは数頭またはペアでいることが多い。林のザトウムシは敏感だが捕まえるのに苦労はいらない。谷のザトウムシは岩肌を滑るように移動するので、捕まえられないことも多い。
ザトウムシは生きた小動物も捕らえて食べるそうだが、この谷でいったい何を食べているのだろう。この谷でよくみるクモやサワガニと競合しているのでは。それにしてもたまに行う体を上下に小刻みにふるわせる動作はなにを示しているのだろう。
<追補>
9月18日 谷のあちこちでみかけるようになった。同じ種類のようだ。1匹捕らえて腹側を見る。やや前方にあるのが生殖口とのこと。これが開いている塞がっているかで生体か幼体かを見分ける。
いつものとおり長尾谷のテントからマツ林に入り井戸谷のがれ場を登る。昨夜みつけた岩かげにザトウムシの集団がいるところを再び確認するためにやってきた。顔を岩にへばりつけるように身をかがめて左手にある岩穴を覗き込んだ。その時右手のほうから、ブルルルルという聞きなれない音が聞こえてきた。

気配のようなものを感じて顔を右へ回すとすぐそこにマムシの顔があった。反射的にのけぞって離れていた。みるとこっちのほうを見て尻尾をはげしく震わせブーという音を発している。明らかに威嚇している。こちらも身構えながら写真を撮る。マムシは何回も見たが、こんな音を聞いたのは初めてだ。恐怖を感じながらすこしその場から離れて見守る。マムシのすぐそばに置いたスコップが取りにいけない。
マムシの視界(赤外線感知範囲)から外れると、マムシはゆっくり顔を上げる。しかしカメラを持ち上げたりのわずかな動きにも反応して動きを止める。しばらく動かない。10分間くらいしてようやく動き出す。またかすかな物音に動きを止める。こんな繰り返しでどのくらい時間を費やしただろう。

マムシはゆっくりと山のほうへ帰っていく。どこへ帰っていくのか。すこし追いかけてみる。しかしマムシ山の尾根をめざしどんどん滑るように登っていく。途中で姿を見失ってしまった。井戸谷に通うにはマムシと付き合っていかなければならない。
<追補 2006年08月13日>
ちょうど1年ぶりの再会。やはりマムシと出会う時期はこの谷ではきまって、タゴガエルの変態したての成体がピョンピョン飛び跳ねる頃だ。
沢を登っていくとおもわず踏みそうになった足場にとぐろを巻いていた。一瞬びくっとしたようにも見えたがじっとしたまま一点を見据えてる。1.5メートルの距離をおいて、動いたり、音をたてたり、ライトを照らしたりしても、びくともしない。しばらく眺めていると、きゅうに首をあげて舌をぺろぺろ出して動き出した。沢の水の中を横切り、斜面を登っていく。後をついて急斜面を登っていくと気配を感じたのか動かなくなった。また顔を右左と向けて動き出し、樹の根元まできてとぐろを巻いてこちらをみて動かなくなった。

今年2月、サンショウウオの成体が滝を一生懸命登っているのに遭遇した。ほぼ垂直の壁をたどたどしい動きで登ろうとするがバランスが崩れて落ちてしまう。何度も試みるがそのたびに小さな滝つぼに落ちる。そのけなげさに心打たれた。うすい小豆色の地に金粉をまぶしたような体の色彩もこの谷の住人には異色だった。(右の写真)
サンショウウオの幼体は去年の初夏はじめてみていた。成体に遭遇してから、産卵などの行動をみるため夜間観察を月に一度行っていたが、見ることはできなかった。そして6月11日、偶然にも水底の砂利をスコップですくうとなにやら黒くうごめくものがあった。今年はじめてみる幼体だった。
その後は小さなたまりごとにエサを待ち構えているサンショウウオの幼体に出会うことができた。滝のように水が流れ込んでいるところでは水の落ち口の近くの砂利底にじっとしている。あまり枯葉が堆積しているようななかにいることは少ない。水のたまりになったところなら15cm四方程度のところにもいる。エサを捕らえたところは見たことはない。ただひたすら目の前をエサが通るのを待っているようだ。1匹でいることもあるが、2匹ペアでいるところを多くみる。
もっと詳しく観察するために、2匹だけ自宅で飼うことにした(7月2日)。さっそくプラスチック水槽に石や枯葉などと一緒に入れ、2〜3cmの深さで水を張った。2匹の体長は38〜39mmとほぼ同じ。体のまだら模様の疎密に違いがあった。

頭のつけ根にあたるところ、前肢のすぐ前に鰓があり横に広がっている。体の腹側をみると心臓が透けて見える。前肢、後肢とも指は4本で、よくみると先端に黒い爪がある。源流に棲むヒダサンショウウオと思う。
数日後、1匹は死んでしまっていた。屋外で雨が振りこんでいたが、原因はわからない。その後は部屋におき、夜間はテラスに出したりして温度が上がり過ぎないようにしたが、日中の部屋のなかは北側の部屋といっても30℃近くなっている。
6月の前半は雨が少なく、谷の水も干上がる箇所が増えてサンショウウオの生息が心配だったが、その後の梅雨で持ち直した。7月半ばで体長を測った例では40mmになっていた。初めて幼体をすくった6月11日の実測では36mmだった。体色も最初は黒っぽい色だったのがまだら模様がすこしはっきりしてきたように感じる。捕まえてノートの上にのせるとしっかり爪をたてて体をくねらせる。
水から陸へ上がるのはいつだろう?去年は8月に急に姿を消してしまって訳がわからなかった。今年はもう少し生活ぶりを追ってみたい。

1ヶ所に8匹が集まるたまり(2005.7.17)
<追補>
7月18日には谷の下流部から遡って小さな水たまりもくまなく調べ全部で47匹を確認できた。それが7月後半からどんどん数が減っていき、とうとう8月15日には谷の上流部にあたる石標のある地点で4匹がかたまっているのを確認しただけになってしまった。

この間で谷を流れる水は15〜18℃から17〜19℃に上昇しているが、もっとも著しい変化は水のたまりが少なくなってきたり、なくなってしまったりしていることだ。サンショウウオの幼体にははっきり鰓がまだ残っているし、体長も40mm程度の大きさにしか育っていない。水の干上がりとともに伏流部の奥深くに移動したのだろうか?そのかわりに目につくのは大小のサワガニがあちこちに増えていることだ。
一方、飼育サンショウウオにはたいへん残念なことをしてしまった。8月16日まで元気にいたのに、夜間テラスに水槽を出してそのまま翌日出勤してしまい、昼の真夏の太陽にさらされ死んでいた。谷のサンショウウオの行動をある程度推察できるかもしれないと期待していたのに、たいへんなミスを犯してしまった。最近は乾燥赤虫をさしだすと不器用ながらも手肢で水を掻いて泳いで食べにきていたりして愛着がわいてきていたのに。
<追追補>

年が明けて、そろそろ成体のサンショウウオが繁殖に出かけてくる頃。2月11日の日没後、長尾谷から遡っていった。月明かりの明るい夜。赤滝と命名したポイントのすぐ上流側、石が庇となったいるところの枯葉をひっくりかえしていた。突然、石の上からどさっと何者かが落ちてきた。それがなんと探しているサンショウウオだった。
小豆色の地に金箔をまぶしたような、この谷の地味な色合いに似合わない華やかさだ。すぐに枯葉の下に逃げ込む。手にとってもゆったりと逃れようとする。石の庇の奥の石の下にもぐりこもうとするが、体半分ははみだしている。なんとも愛嬌がある。すぐそばにもう1匹を見つけたがすぐに石の下にもぐりこんでしまった。しっぽの先しか写真に撮れなかった。これからも観察を続けていこう。
<追追追補>

春先までずっと探していた卵のうに突然出会えた。
水の中でガラス細工のような鮮やかさで浮かび上がるブルーの色におもわず息をのむ。

手に取ると大きさは片手でちょうど持てるくらいで、ずっしりと重さを感じる。なかには孵化してどれくらいたっているだろうか、サンショウウオの形に育った幼体が3匹動いている。
まだ体色は淡い。眼ははっきりとして、えらはくし状に枝分かれしている。

幼体があちこちに姿をみせる日は近い。
<追補 2006年06月24日>

6月24日 サンショウウオの幼体が数え切れないくらいになっている。推定数百匹はいる(伏流水に隠れているものは除く)。
そのうちの1匹が何かを飲み込んだ。何かよくわからない。白く輝いている。ライトのせいだろうか?肢のようなものが見える。
すこしずつ飲み込んでいくのがわかる。完全に飲み込むまでに5分間かかった。自分の口幅と同じくらいの大物だ。はじめてサンショウウオの捕食を目撃できた。
<追補 2006年07月08日>

7月8日 堆積した葉をすくっているとサンショウウオの幼体が乗ってきた。いくぶん小太り気味だ。
前肢と後肢のあいだにみられるサンショウウオに独特な肋条を観察したり、これも特徴な鋤口蓋歯列をのぞこうと口をあけさせたりしていた。するとなにやら口から出てきた。それはなんとカエル、おそらくタゴガエルのオタマジャクシだ。もう四肢はちゃんと生えている。指もはっきり見える。先月にみた捕食の相手もたぶんタゴのオタマにちがいない。ヒダの幼体とタゴの幼体が同じ時期に同じような場所で孵化し、食う食われる関係なのは興味深い。
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New!<追補 2006年10月09日>

サンショウウオの幼体は8月になると姿を見せなくなると信じ込んでいたが、10月になってその姿を谷の下流部の赤滝のたまりで確認した。大きさや形にそれほどの違いはなかった。しかしすこし近づくと敏感に堆積葉の下に隠れるようになった。8月以降は捕食されてその数が激減するのか、伏流の奥にかくれてしまうのか。この幼体のままで陸に上がってしまうのは考えにくい。

水が流れる小さな岩が重なったその奥で、「ンゴ、ンゴ」と鳴き声が聞こえる。片手大の平たい石を持ち上げると、その下に薄汚れたカエルが平たくなって身動きひとつなくじっとしていた。この谷ではおなじみのタゴガエルだが、ふだん目にする褐色の体ではなく、どろにまみれた色をしていた。(5月29日B点)
タゴガエルは沢のながれが伏流していたり、岩が重なり合ったところに棲む。一見するとアカガエルに似ているが、口の下側に黒い斑点が目立つ。岩のなかから鳴き声はするが、カエル自身が鳴いてるところは見たことがない。後ろ足の水かきはあまり発達していない。
まだ今年生まれのカエルには出会っていないと思っていたら、C点の枯葉が堆積しているところをすくうと白っぽいオタマジャクシが入ってきた。家へ持って帰ってビンで飼うことにした。6月5日に後肢が生えているのに気づいた。6月11日には前肢が生えて後肢はがっしりしてきた。カエルらしい体色にもなってきたが尻尾はまだ長く、体全体の長さは23mmで変っていない。
<追補 2005年06月30日>
6月20日夜間観察を行った。21時半ころ、岩がひさしのようになった奥の割れ目でイカそうめんのような透明で細長いものがうごめいていた。付近に肢の生えだしたオタマジャクシが弾んでいる。自宅で飼っていたオタマジャクシは6月13日にビンから飛び出してミイラになってしまっていた。指の吸盤が発達してビンを這い登ったようだ。しかし皮膚はまだ発達していなかったのだろう。
<追補 2006年07月08日>
今年もタゴのオタマジャクシが堆積した葉の下で育っている。谷の上流のほうはまだ後肢がはえてきたところなのに、下流のほうではもうすっかりカエルの姿に近づいてきている。ずいぶんと生育に差があるものだ。
New!<追補 2006年08月13日>
一人前のからだになって体色も茶色が濃くなったタゴ成体。だが体の長さは10mmくらいのかわいらしさ。沢を歩いていくとクモの子を散らすように逃げまどう。ちょうどこの日はマムシ2頭に出会った。このあらたな世代のタゴ成体をねらっているのか?
春が過ぎて初夏の感じになって、井戸谷の気温も日中は15℃近くに上がってきた。しかし水温は10℃程度と真冬のときより2,3℃上がった程度。水量もそれほど変っていない。水の中の生活はあまり変化が少ないのかもしれない。けれど岩の奥から「ンゴー、ンゴー」とカエルの鳴き声が響くようになり、確実に季節を感じさせるようになってきた。特に感じさせられるのは虫が飛び交うになってきたことだ。カやアブがまとわりつく季節になってきた。井戸谷の小さな流れやたまりのなかを覗いてみるとカゲロウやカワゲラの幼虫が枯葉のなかや砂底に潜んでいる。
5月3日、快晴の日の昼近く、小さな滝つぼの壁に小さなうす黄色のカワゲラが次々に這い登ってくるのを見つけた。小猪鼻滝と呼んでいるE地点だ。体長(翅の端まで)10mmほどの小さな体で両目とその間にある斑が黒いのが目立つ。30cm四方に5,6匹は目に入ってくる。1匹飛び立ってはまた登ってくる。おそらくこのカワゲラの仲間は短い期間で一斉に羽化しているのだろう。
幼虫、成虫とも採集していないのでカワゲラの種類はわからないが、幼虫の肢の基部には鰓はなく体は細くスマート。
カワゲラの羽化
<1>10:38
幼虫が片手大の石の水面上に上がってくる。
<2>10:47
気がつくと殻を破って中から成虫が出てきた。

<3>10:50
翅は下向きに曲がって出てくる。

<4>10:51
体を大きく反らして腹部を抜け出そうとする。

正面からみると。

<5>10:53
腹部も完全に殻から抜け出て向きを変える。

<6>10:58
縮んでいたいた翅が少しずつ伸びてくる。

<7>11:03
ほぼ完全に翅が伸びきる。

<8>11:04
両側の翅を重ねないでしばらく乾かしているようだ。

<9>11:10
ようやくこれでカワゲラの特徴である
両側の翅を重ねた状態になる。

<10>
できるだけ壁を高く上っていき飛び立つ。

2月、山にはときどき雪が降る。井戸谷はやや東を向いているため午後になると陽が差さず空気が冷たい。
まず井戸谷のプロフィールを紹介をしよう。

<A地点>
もっとも源流。張り出した石から水が滴っている。溝のなかの廻りは土が祠のようになって苔が付いている。

<B地点>
溝のなかに流れができている。枯葉が多く堆積しているところを流れる。気温が零度でも水温は8℃ある。この水温が流れを下るごとに下がっていく。

<C地点>
大きな石が多くなり、石の間からの流れが小さな滝のようになる。滝つぼの底は細砂がたまりその上には枯葉が堆積する。

<D地点>
大きな岩全体に流れが広がったり、また集められたり。ここは格好の水飲み場にしているところ。小さなたまりがあちこちにできて、カワゲラなど動き回る水生昆虫が増えてくる。

<E地点>
細長くて落差1.5mくらいある滝(ひそかに小猪鼻滝と呼んでいる)。この滝をサンショウウオが必死に登ろうと試みては滝つぼに落下していたのが今年の2月。

<F地点>
このあとは大小の石がごろごろしているところを流れ、マツ林の緩やかなところで伏流となる。

<長尾谷>
やがて長尾谷の水量豊かな流れに合流する。この川にはカゲロウ、カワゲラ、ヘビトンボなどいろんな水生昆虫がいる。

ワラジムシの仲間-----ミズムシ
この凍えるような沢の中には一見して何もいないようにみえる。枯葉が堆積したところをすくってみるとすぐ目につくのがワラジムシの仲間。ミズムシというそうだ。地面にいるワラジムシとはすこし形がちがう。薄っぺらくてやや透けて見える。脚は7対で長く折れ曲がる触覚があり、尾端にY字形の棘を1対持つ。少し汚れた水に棲む指標とされているが、この谷のようなきれいな水でも流れが少なく枯葉が堆積しているところにも多い。
びっくりしたのは親子(?)が結構みられることだ。はじめは脚の多いのがいると思っていたが、親(?)の腹にぴったりくっついたもう1匹小さめの同じ形の子(?)がいた(写真左側・・・わかりにくいかも)。一度引き離しても、しばらくするとまた元の腹に納まっていた。何のためだろう?
このミズムシは枯葉をこなごなに砕く。シャーレに枯葉とミズムシを入れておくとよくわかる。機会があればこの変化を追ってみたい。生息密度からみても水中の枯葉の分解にとって果たしている役割は大きいと思う。