医療・介護を通じて考える

医療の現場で見聞したことを、とりとめもなく記してみましょう。


1.医療系への就職

医療系への就職を志す人は医療に従事する一員としての自覚と責任感をしっかりと持つ必要性を感じます。
病気や怪我を直接治すのは医師の仕事です。
しかし、医師だけの仕事でしょうか?
看護師や受付(医療事務含)など、医師以外の全ての医療従事者の患者に与える影響は大きく、 不安を抱えて病院を訪れる人たちの心を癒す事が出来るのは医師のみならずこうした全ての医療従事者に言えることです。
「病は気から」という諺通り、癒される事が免疫力の低下を防ぎ治癒を早めるのです。
自らの貢献のあり方を理解し、しっかりと責務が果たせる人材を抱える病院は間違いなく発展します。
なぜって、それを患者が望んでいるのですから。


2.気遣い

以前、次のような体験談を聞き考えさせられました。
ある患者がある治療のために一時的に別の病院に転院した時の事です。
転院して数日後、その患者のもとに一通の手紙が届きました。
それは元の病院で患者の世話に当たっていた看護師からでした。
「早く元気になって、またお世話をさせて下さい」
手紙にはそう書かれていました。
それを読んだ患者本人はもちろん、ご家族の方も涙が止まらなかったとの事です。
今、医療現場で一番求められていることは、こうした「気遣い」ではないでしょうか?


3.すみません

これは、ある病院でのある患者さんの話です。
採血後の固定が緩かったのか、しばらくしてシーツが真っ赤になっている事に気づき慌てて ナースコールをしたそうです。
駆けつけて来たのは別の看護師でしたが、その状況を見て、 「申し訳ございませんでした。許して下さい。すみませんでした」と 涙を流しながら何度も何度も頭を下げ、手当てを施し、シーツも寝着も取り替えました。
その謙虚な対応に「あなたのミスではないのだから、もう頭を上げて下さい。 気にしていませんよ」と逆に患者が慰めたとの事です。
心と心は、こうして通じ合っていくものでしょう。


4.第2の患者

子供や高齢者がご家族に付き添われて病院を訪れている姿をよく目にしますが、 単に「付き添い」と軽く考えるべきではありません。
負傷している子に付き添う親や、病んでいる親に付き添う子は、患者本人以上に 容態を気にしている事が多いものです。
よく「家族は第2の患者」と言われます。
それは重篤であればなおさらのことです。
医師をはじめ医療関係者の言動の一つ一つに、ご本人やご家族の方は敏感に 反応を示され一喜一憂するのです。
そうした気持ちを悟り、血の通い合う対応が必要です。


5.病院の顔

「受付は病院の顔です」とおっしゃる病院の人事担当者が数多くおられます。
全くその通りなのですが、その意味は患者として実際に病院に足を運んだ時に 体感することができます。
受付に歩み寄ると立ち上がって満面の笑顔で「こんにちは」と声をかけてくれ、 診察を終え支払いを済ませると「お大事に」と明るく応対してくれる所は気分も 良いものです。
よく「顔は心の窓」だと言われますが、人の心はそのまま顔に表れます。
良い心でなければ、良い顔にはなれないのです。


6.主治医への手紙

これは、当HPに寄せられたビジターの体験談(主治医に出された手紙)です。
少し長くなりますので一部割愛しながら紹介させて頂きます。(投稿者の承認は得ています)
気配りや、コミュニケーションのあり方の重要性を考えさせられます。

…前略…
家族がお世話になっております。
前の病院で貴院への転院の話が出たとき、輝かしい実績、最先端の設備、経験豊富な先生方等に惹かれ、 紹介状を書いて頂きました。
それでありながら、今回こうしてお手紙させて頂くことは、私自身予想すらしていなかった事で、とても 残念に思います。
はじめはこうしてお手紙を差し上げる事にためらいもあったのですが、日ごと耐えられなくなり、我慢の緒が切れる直前まで 追い詰められています。
先生には、病状の経過説明を殆どして頂けず、何度お尋ねしても、口頭で「良くなっている」とか 「現状維持」とか言われますが、それがどの程度のものなのか一切わからず、何の気休めにもなりません。
本人にとって、そして家族にとって、一日一日が不安の連続なのです。
良くなっているのなら「このように良くなっている」、悪くなっているのなら「この部分がこのように芳しくない」と データを示して説明してもらえれば、安心したり(逆に覚悟したり)して、気持ちの整理もできます。
しかし、情報が乏しすぎて、現状もそして行く末も見えず、連日暗夜の道程を手探りで歩んでいるような気分です。
新薬に対する臨床実験にも進んで参加させて頂いているのに、このように情報開示がなされない意図が 図りかねます。
思いつめ、問い詰めると、しぶしぶ、投げやりな短い答えを返してもらうだけで、それがかえって不安を煽って いるのです。
…中略…
もっと相談に乗って欲しい。もっと知識を与えて欲しい。もっと見通しを語って欲しい。
いつも願っていることなのです。
いたわりのある言葉や接し方を重ねて頂くだけでも、気持ちの面で救われると思います。
研究に治療実績のデータが必要であれば、お使い頂いて結構です。
私たちの願いは唯一つ。「治して欲しい」 ただそれだけです。
それが難しい病であることは十分承知しています。
だからこそ、相談に乗って欲しいのです。
こちらから頼んで頼み込んでようやく聞かれた質問にだけ答えるというのではなく (それでは医療の専門家ではない私たちは、先生方並みの知識を会得しなければ対等な会話が できなくなります)、積極的に先生の方から語って欲しいのです。
…中略…
貴院を選択させて頂いたことを後悔したくはありません。
心が傷つくだけの無駄な日々であったと回顧したくはありません。
貴院が研究至上主義の病院であると思いたくはありません。
血の通った心休まる場であると思いたいのです。
…中略…
決して実験をしているのではありません。
私たちは「命」を貴院に、そして先生に、お預けしているのです。
…後略…

この患者さんは、その後の便りによると、この病院を出て、別の病院に移られたそうです。
そして、そこでは、医師も看護師も皆が一体となって、治療も心のケアも情報開示も行ってくれ、 不安に対する相談には、時間・曜日を問わず、納得いくまで話し合ってくれるそうです。
その甲斐あってでしょうか、少しずつですが、回復しつつあるとの事です。

心に孤独を感じるとき。
それは周囲に人がいない時ではなく、いるのに話せない時だと思います。
そしておそらく、ヒトは孤独の中では耐えられない生き物なのです。

岩城 好高