紀伊山地の霊場と参詣道


2004年 7月 1日、中国蘇州市で開かれた国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第28回世界遺産委員会は 新たな世界遺産として、和歌山、奈良、三重の3県にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道(さんけいみち)」 の登録を決めた。

2000年に登録された「琉球王国のグスク(城)と関連の史跡」以来4年ぶりの登録であり、 さらに和歌山県、奈良県、三重県の29市町村にまたがる日本最大面積の文化遺産で、 国内で12番目の世界遺産となった。
(同時に北朝鮮初の世界遺産「高句麗古墳群」、および、同種の古墳群を有する中国の「高句麗の首都と古墳群」 も登録が決定)

「紀伊山地の霊場と参詣道」は、「自然崇拝を起源とする神仏習合・熊野三山」、「空海弘法大師が開いた真言密教の高野山」、 「山岳修行の拠点、吉野・大峯」の3霊場に加え、これらを結ぶ中辺路、大辺路、小辺路、伊勢路といった熊野古道(くまのこどう)や、 大峯奥駈道(おくがけみち)、高野山町石道(ちょういしみち)などの参詣道で構成されている。

「道」が世界遺産として登録されているのは、スペイン・フランスをまたがる巡礼道「サンディアゴ・デ・ コンポステラへの道」だけで、「紀伊山地の霊場と参詣道」は、「道」の世界遺産の2例目となった。
800kmに及ぶ過酷で厳しい自然環境が続く"サンディアゴ・デ・コンポステラへの道"と違って、紀伊山地に おける霊場への道は、四季折々の花が咲き誇り、熊野川が悠々と流れ、あるいは広大な太平洋を眼下に、小鳥の さえずりに導かれながら、ゆっくりと自然を満喫しながら歩ける道である。
しかし、部分的に歩くのならともかく、全行程を歩くとなると、山あり谷あり、非常に厳しい試練を課せられる 事になるのだ。そこはハイキングコースではない。かつて、多くの人々が祈願成就を胸に、ひたすら聖地を目指した 参詣道なのである。

  熊野について

熊野の「熊」の原義は「隈」と言われ「奥まったところ」を指し、「野」は「未開の地」を表すという。
古代、都から見て紀伊半島の奥地の未開の地、すなわち秘境とされ、そこに「神が宿る」とされたという。
熊野は、律令制下において、紀伊国牟婁(むろ)郡(室郡)と呼ばれる非常に広大な郡であったが、 明治に入り4つに分割された。
現在の東牟婁郡、西牟婁郡はいずれも和歌山県。そして、北牟婁郡、南牟婁郡は三重県となっている。

  熊野古道



現世の利益を求め、来世への願いを込めるのは今も昔も変わらない。 熊野は現世の浄土とみなされ、身分を問わず、男女の区別もなく、身体の障害の有無も問わず…と、 神は不浄を嫌わず、広く人々を受け入れたが、徒歩を原則として、難行苦行しながらひたすら聖地を 目指すことを要求したという。 「蟻の熊野詣」と称されるほど多くの人々が聖地を目指し、その先達(せんだつ)として道案内や道中の作法を 指導したのが山伏(やまぶし)であった。

熊野に向かう道には、紀伊路、伊勢路、大峯道(おおみねみち)などがあった。
京の都から大坂を経て紀州入りする紀伊路には、道標や休憩所の役目も果たす熊野の分社「熊野九十九王子」 が祀られ、天皇や上皇たちの御幸(ごこう)ルートとなっていた。 その紀伊路の中のメインルートは、中辺路(なかへち)で、田辺から山中を直接、本宮(ほんぐう)に向かうルート である。 他に海岸線に沿って南下し、串本を経由して那智、新宮に向かう大辺路(おおへじ)と、高野山から竜神を経由して 本宮に向かう小辺路(こへじ)があった。
一方、東方から熊野に向かうメインルートは伊勢路で、ツヅラト峠、馬越(まごせ)峠、始神(はじかみ)峠、 二木島(にぎしま)峠、松本峠と多くの峠を越えていく東紀州街道で、七里御浜を経由して新宮に向かうルート (浜街道)と、風伝(ふうでん)峠を越えて本宮に向かうルートがある。  また、吉野の山中を大峰山系の渓谷を超えていく山伏の修験道が大峯奥駈道であった。

  熊野三山

熊野三山は、熊野三所権現とも呼ばれ、本宮の熊野本宮大社、新宮の熊野速玉大社、勝浦の熊野那智大社の 総称である。
すべて東牟婁郡に位置し、本来は別々の神を祀っていたが、平安時代に三神を相互に祀り合う形で 一体化し、仏教色も加わって熊野三山と呼ばれている。

多くの山々を越え、川を越え、滝を越えて熊野までの長い長い道のりを平安の貴族や皇族は京の都から熊野御幸を 繰り返したという。そして、白河天皇、鳥羽天皇、後白河天皇、後鳥羽天皇の頃には熊野詣も最盛期を迎えている。  吉野に桜を植林し歌に詠んだ西行、南朝から移り住んだ後醍醐天皇、信仰のお札を配り歩いた一遍上人など、多くの歴史に 名を残す人々が、この地に生き、この地で何かを悟っていったのである。

  日本の世界遺産リスト

日本の世界遺産は、次の通りである。
No. 世界遺産登録遺産名称 種別 所在地 登録年
1白神山地 自然遺産秋田県・青森県 1993
2屋久島 自然遺産鹿児島県 1993
3法隆寺地域の仏教建造物 文化遺産奈良県 1993
4姫路城 文化遺産兵庫県 1993
5古都京都の文化財 文化遺産京都府・滋賀県 1994
6白川郷、五箇山の合掌造り集落 文化遺産岐阜県・富山県 1995
7原爆ドーム 文化遺産広島県 1996
8厳島神社 文化遺産広島県 1996
9古都奈良の文化財 文化遺産奈良県 1998
10日光の社寺 文化遺産栃木県 1999
11琉球王国のグスク(城)と関連の史跡文化遺産沖縄県 2000
12紀伊山地の霊場と参詣道 文化遺産和歌山県・奈良県・三重県2004
13知床 自然遺産北海道 2005

  祝・知床世界遺産登録

2005年7月14日、南アフリカで開かれた国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第29回世界遺産委員会は、知床(北海道)を、
次の世界遺産として、しかも日本国内3例目となる自然遺産として登録した。
現在、約38,000ヘクタールが国立公園に指定されている知床半島は、流氷が接岸する最南端の地でオホーツク海と太平洋
の接点となっており、こうした複雑な地理が独特の気候と生態系を育み、そこにはオオワシやシマフクロウ等の絶滅危惧種が
多く生息している。また一方では、流氷とともに海の妖精クリオネもやってきて人気を呼んでいる。
今回の世界遺産登録は、単に日本にとって久しぶりの自然遺産と言うだけではなく、日本初の海洋域も含む登録となる。
地域住民(特に漁業関係者)の理解が得られて初めて実現した価値ある世界遺産である。

  リンク

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