上高地 the North Alps
北アルプスの南部・穂高連峰のふともを流れる清流梓川、そして焼岳の噴火で堰き止められて出来た鏡のように美しい大正池、・・・
下界と隔絶した天上の秘境・上高地は、訪れる人の心を癒し魅了する。冬の間、人の立ち入りを拒む厳寒地も、夏の間は表情を和らげ、
アルプスに抱かれた大自然の美しさを深く感じさせてくれるのである。
上高地 Kamikochi
上高地(かみこうち)は、北アルプス南部に聳える槍ヶ岳(やりがたけ)を水源として流れ下って
きた清流梓川(あずさがわ)が穂高連峰と霞沢岳に挟まれる付近に開けた平坦な谷間で自然の宝庫として人気がある。
特に、大正池や、河童橋(かっぱばし)から見上げる上流の景色は、日本の国立公園を代表する景観である。
河童橋から臨む穂高連峰と梓川
大正池 Taisyo Lake
自然保護のため、上高地はマイカー規制されているため、平湯温泉(ひらゆおんせん)か沢渡(さわんど)で、
バスかタクシーに乗る事になる。
そこから上高地バスターミナルまで乗っても良いが、少し手前の大正池バス停で降車することをお勧めする。
大正池から見上げる焼岳
大正池(たいしょういけ)は、大正4年(1915)の焼岳(やけだけ)の噴火で泥流が梓川を
堰き止められてできた池で、現在でも流れ込む土砂によって徐々に面積が縮小しており、下流の発電所の調整池としての
役割もあることから、懸命に浚渫(しゅんせつ)工事が行われているが、遠い将来、もしかしたら消滅する可能性をもつ
池である。
大正池
それにしても大正池は美しい。特に天気の良い日に見る大正池は絵葉書の写真そのものである。
そして梓川の美しさに、素直に感動を覚える。
白っぽい花崗岩の川床の上を、芸術的なまでに澄みきった水が音をたてて流れていき、人の手が及ばなければ、
ここまで水は透明になれるのかと、見とれてしまうのだ。
大正池から穂高連峰を臨む
梓川
田代橋 Tashiro Bridge
大正池から梓川の左岸を上流に向かって遊歩道が伸びている。
しばらく歩くと、三叉路があり、右に進むと田代池がある。霞沢岳(かすみさわだけ)から流れ出した
伏流水が水源となってできた池であるが、大正池と同じく流れ込む土砂により縮小傾向にある池である。
この付近は田代湿原となっている。
三叉路を左に折れると、遊歩道は川べりをゆく「梓川コース」と、植物群落の中をゆく「林間コース」に分かれる。
「梓川コース」を行くと、北アルプスの雪解け水を集めて流れる梓川の美しさが堪能できる。
一方、短い夏の高山植物を堪能するには「林間コース」がお勧めで、下界では目にしない種も多い。
2つのコースは田代橋の手前で合流する。
田代橋
河童橋 Kappa Bridge
田代橋からの遊歩道は梓川の左右にルートが分かれる。
右岸を行くと日本アルプスの名付け親であるイギリス人
宣教師ウェストンの碑がある。
彼は日本アルプスをこよなく愛し、近代アルピニズムをもたらした人物である。
一方、左岸を行くとカラマツ林に沿って遊歩道が伸び、穂高連峰の眺めも良い。
梓川左岸コースから眺める穂高連峰
大正池から歩いて約1時間。上高地で最も賑やかで、かつ、一番の人気スポットである河童橋(かっぱばし)に着く。
幅 3.1m、長さ 36.6mのカラマツ材を用いて作られた橋で、橋の中央から上流を臨むと蛇行して流れる梓川とその背後に
聳える穂高連峰が美しく記念写真を撮る人が絶えない。
河童橋
河童橋の周辺にはバスターミナル、診療所、ホテル、レストラン、郵便局、駐車場、・・・と、何でも揃っている。
ただ、ぜひ訪ねて欲しいのは「上高地ビジターセンター」である。ビジターセンターとは、国立公園の自然や歴史を
紹介する展示などを行う施設で、自然に対する理解を深め、利用者のマナーを啓発したりする自然保護教育の中核施設である。
ここ上高地でも、高地散策のアドバイスやトレッキングのガイドなどもスタッフから受けることができる。もちろん、
ここでしか手に入らないお土産品の販売も行っている。これだけ美しい雄大な大自然を目にすると、日頃、自然保護に
奔走しているパークレンジャーの方たちに頭の下がる思いがする。
また、ビジターセンターの奥には、小梨平(こなしだいら)キャンプ場があり、バンガローやケビンも充実している。
朝もやに霞む河童橋
明神橋 Myojin Bridge
河童橋からさらに1時間15〜30分歩くと明神橋(みょうじんばし)に着く。ここまでが、平坦な低地
(と言っても標高1520mもあるが…)で、軽装で歩いていく事ができる。
ルートはカラマツ林の中を行く「左岸道」と、梓川に沿って歩く「右岸道」の2本がある。
右岸道は、途中、湿生植物に覆われた幻想的な岳沢口湿原(だけさわぐちしつげん)や、
緑豊かな苔に覆われた渓流が楽しめ、明神岳から崩落した土砂により堰き止められてできた明神池や、
穂高神社を通って、明神橋に出る。
岳沢口湿原
明神橋の奥は、徐々に勾配が増し、徳本峠(とくごうとうげ)、徳沢(とくさわ)、横尾(よこお)、
涸沢(からさわ)と穂高連峰を登って行くルートとなる。
穂高連峰は、朝日岳・白馬岳・立山から乗鞍岳まで連なる北アルプス(飛騨山脈)の南部に
位置し、北穂高岳、穂高岳、涸沢岳、奥穂高岳、西穂高岳、前穂高岳などの山々が連なっていて、中でも奥穂高岳は
標高3190mで富士山、北岳に次いで日本で3番目に高い山である。
上高地は、こうした連峰の山懐に位置し、過ぎ行く時を忘れさせてくれ、再び訪ねてみたくなる場所の一つである。