/ ★´ 星 空 入 門  ★ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━      初心者向け天文マガジン 〜宇宙の神秘を考える〜  Vol.000   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Y.Iwaki ★  星空入門サンプル版をお届けします。 毎週1回、天文について初心者向けの解説をお届けします。 今回はサンプル版です。 いろいろな天文現象や天文知識を、一緒に考えてみましょう。 取り上げる内容は、今後、どんどん充実させていきたいと思っていますので、 宜しくお願い致します。 《目次》    ★星座神話 … 太陽の馬車で天を駆けるフェートン(エリダヌス座)    ★話題   … チコの超新星    ★彗星雑話 … 地球に史上最接近したレクセル彗星    ★太陽系探訪… 月面観測〜静かの海    ★二 重 星 … みなみのうお座β星    ★変 光 星 … こいぬ座R星 ■ 星座神話 ------------------------------------------------------------ 【太陽の馬車で天を駆けるフェートン】  日の神ヘリオスの子フェートンは、ある日、友人に「僕のお父さんは日の神様 なんだ」と自慢げに言ったところ、「証拠もないくせに」と笑われました。 それを悔しく思ったフェートンは、母の許しを得て遠く日の昇る東の果てに住む 父親に会いに出かけました。  父の宮殿に着くとヘリオスは大変喜び、フェートンを抱きあげ「お前は間違い なく私の子だ。そうだ。折角はるばる訪ねてきたのだから、何か望みを叶えてあ げよう。」と言いました。 そこでフェートンは、迷わず「一度でいいからお父様の太陽の馬車を僕に走らせ て下さい」と頼んだのです。  さすがにヘリオスは困った顔をし、「あの車を走らせるのは、非常に難しい。 日の出に急な上り坂を駆け上り、昼頃には目も眩むような高い所を通り、夕方は 天の急な下り坂を一気に駆け下りねばならない。第一、4頭の馬の扱いが非常に 難しい。どれだけ馬が暴れても、毎日決まった道以外は通ってはならないので、 その手綱さばきが問題だ。」 「しかしお父様は、何でも望みを叶えてくれるとおっしゃいました!」 食い下がるフェートンに、さすがのヘリオスも、渋々許すことにしました。  さあ、夜明けです。 フェートンの姉妹は、太陽の馬車に4頭の馬を結んで彼を待っていました。 心配そうに見送るヘリオスに笑みを浮かべ、フェートンは黄金の馬車にまたがり ました。そして、あかつきの光と共に走り始めたのです。  はじめはゆっくりと天の坂を昇り始めました。しかし、しばらくすると4頭の 馬は、車が軽く、いつもと乗り手が違うことを悟りました。  さあ、大変です! それぞれの馬は思い思いに口から火を吹き険しい東の坂道を一気に駆け上がると、 勝手気ままに走り出しました。馬車の車輪からも炎が噴き出し、もうもうと燃え 上がったまま、馬はさらに走り続けました。 次第に雲は赤く焼け焦げ、地上にも大火が降り注ぎ、火山は地鳴りを上げて火柱 を立て始めました。  フェートンは必死で馬を立て直そうとしますが、言うことを聞いてくれません。 そうしているうちに、馬車はついに天の最上段まで昇りつめました。 そこでふと下界を見たフェートンは、あまりの高さに目が眩み、手綱を落として しまったのです。 ますます馬は勝手気ままに走り始め、天も地も猛火に包まれていきました。  その様子をオリンポスの神殿から見ていた大神ゼウスは、もう放っておけない と、雷電の矢を投げつけ、太陽の馬車を打ち砕いてしまいました。  かわいそうに、フェートンは長い炎の尾を引きながら真っ逆さまに下界を流れ るエリダヌス河に落ちていきました。       。 。 。  ○  。 μ ν ξ  β  ω       。 (クルサ)       ο1                          。                  。 。   。 ρ3 。                  δ ε   ζ    η               ○               γ                               。                               τ1                   。  。       。                。 τ5  τ4       τ2               τ6            。                            τ3        。       。υ1      υ2         。 ○        υ3 υ4    。σ                 。g                 。                 f                              。                           ○  ι                           θ                      。                      e                                。                                κ                                 。 。                                φ χ                                         α(アケルナー)●       エリダヌス座  川の水は、炎に包まれたフェートンの体を、やさしく受け止めてあげましたが、 二度と息を吹き返すことはありませんでした。  フェートンを見送った姉妹たちは、来る日も来る日も川べりに立って泣き続け、 やがてポプラの木に変わってしまったと伝えられています。 ■ 話題 ---------------------------------------------------------------- 【チコの超新星】  出来事は1572年11月11日の夜、起こりました。今から 400年以上昔の16世紀末 の事です。  望遠鏡が発明される前の最大の天文学者チコ・ブラーエは、この日ドイツから 故郷のデンマークに帰る途中、カシオペア座の中に見慣れぬ明星を発見しました。 彗星のように星雲上のコマに囲まれているわけでもなく、時間とともに天空上の 位置も変えていかない…どう見ても、普通の星です。 しかし、非常に明るく金星よりも明るくて、うす雲程度ならそれを透かして見る 事が出来ました。また、少しずつ光度が増し、一番明るくなったときは、昼間で も青空の中にこの星を見ることが出来たのです。        α        ●                    δ                    ○    ●        ●    β        γ                         ○         。               ε         κ        *    Super NOVA (SN1572)  カシオペア座にそのような星は存在していなかった! 突然星が現れたのだ! そのような事って、有り得るのだろうか? チコは混乱しました。それからというもの、この星の観測に全力を投入したので す。望遠鏡を使わず肉眼だけの観測ですが、すべてにおいてチコの観測は非常に 精度が高く、惑星の運動法則を発見したヨハネス・ケプラーもチコの助手を務め、 チコの残した観測結果を分析して有名な「ケプラーの法則」を発見したのです。  当時のヨーロッパ世界は大混乱しました。不吉な噂が流れ、世の終わりを悲観 して死を覚悟するものも現れました。 天文学者のチコですら大きく動揺したわけですから、やむを得ないことかも知れ ません。  その星は、発見から1年後の冬、5等級まで減光し、翌1574年2月に6等級まで 落ち、3月についに肉眼では捉えられなくなりました。 約17ヶ月にわたり、チコは熱心に非常に詳しくこの星の記録を残しています。  「チコの新星」と呼ばれるこの星は、その後、望遠鏡が発明されてからも、全 くその姿を捉えることが出来ませんでした。 チコはその星の正体すらわからず、またその弟子のケプラーにも説明できないま ま、彼らはその生涯を終えました。  時は流れ、20世紀初頭。 1925年、カシオペア座から強烈な電波が発せられている事が発見されました。 位置はκ星の北。まさに失踪したチコの星の位置です。  この電波源は、現在「カシオペア座B」と名付けられており、どうやら超新星 であったようです。 星の最後を飾る超新星爆発自体はそれほど珍しい現象ではありませんが、銀河系 内で起きる超新星爆発を目にする確率は人の寿命(人類の観測技術を有した以降 の期間)を考えると非常に低いものになります。  記録に残されている銀河系内の超新星爆発は、過去に僅か3回なのです。    1054年 明月記に記された新星(現在の牡牛座かに星雲)    1572年 チコの新星    1604年 ケプラーの新星  最近では、銀河系の隣りに浮かぶ伴銀河・大マゼラン星雲に超新星が出現し、 大きな話題となりました。(SN1987A/覚えている方も多いと思います)  時に1987年2月24日の事です。 宇宙時代を迎えて初めて人類が目にする超新星という事で世界中の天文台がこの 超新星に対する観測網を築き、宇宙空間からは日本のX線観測衛星ぎんがを始め、 米国の太陽観測衛星SMM、ソ連の宇宙ステーションミールにも急遽観測指令が 送られました。また、その後、ハッブル宇宙望遠鏡も爆発後徐々に広がっていく 星間物質の姿を映像に捕らえています。  また、超新星爆発の結果、大量のニュートリノが飛来し、地球自体を含む全て の物質を貫通し、捕らえる事が非常に難しいと言われる素粒子ニュートリノが、 岐阜県の地下1000メートルに作られた巨大な観測装置カミオカンデでキャッチさ れました。これが今年の小柴博士のノーベル物理学賞の受賞にもつながったわけ です。確率的に 300年に一度と言われる超新星爆発は、単に星の終焉の姿という だけではなく、私たちの生活や科学にいろいろと波紋を投げかけてくれるのです。  かくして、2008年。 すばる望遠鏡は、カシオペアBの「光のこだま」を捕らえました。1572年に爆発 した「チコの超新星爆発」の光が、宇宙空間に漂うチリに反射し「光のこだま」 となって 400年以上経て地球に届いていることを、国立天文台や東京大学などの 研究チームが確認したのです。 そして、詳しく分析した結果、1572年の超新星は「1a型」と呼ばれるタイプで、 白色矮星が爆発したものであることがわかりました。 さらに、地球からの距離が、12,000光年であることも求められました。 この新星爆発は、何度か生じていると考えられています。 すなわち、1572年の爆発の前に少なくとも、12,000年ほど前にも爆発をしている はずなのです。もちろん、12000年前の記録などありません。 しかし、新星周辺に観測されている残骸ガス雲を含め色々な観測結果から、その ように考えられていましたが、その距離には幅があり正確性に欠いていました。 チコの新星は、Ia型と呼ばれる、白色矮星が連星系を構成する相手の星から降り 積もったガスの重みで圧縮され暴走的に核融合反応を起こし新星爆発するタイプ である事が知られていて、かつ最大光度時の絶対等級が、ほぼ一定であるという 特徴があるため、遠方の銀河までの距離を測定するための標準光源としても用い られる新星でしたが、最近の観測から、標準光度よりも明るい、若しくは、暗い Ia型が発見され始めました。 今回、「こだま」が観測される事により、距離がかなり正確に求められました。 同時に、チコの新星は標準的なIa型であることもわかりました。 こうした背景もあり、話題となっているわけです。 今後の更なる解析に期待したいものです。 ■ 彗星雑話 ------------------------------------------------------------ 【地球に史上最接近したレクセル彗星】  前回124号でも記載した通り、史上最も地球に接近した彗星は、18世紀後半 1770年のレクセル彗星(D/1770L1 Lexell)です。 その距離、僅か0.0151天文単位、すなわち、約226万キロという至近距離でした。  この距離を聞いてもピンと来ない人も多いと思いますが、大変な至近距離なの です。あの有名なハレー彗星が1910年に回帰したとき、地球はハレー彗星の尾の 中を通過するという珍事が起きました。 世界中の人々は彗星の尾に含まれる有毒ガスで人類の多くは死傷(あるいは滅亡) するのではないかと恐れたとの事です。 このときのハレー彗星の最接近時の距離は0.14天文単位でした。レクセル彗星は さらに1桁近い距離を通過したことになります。  レクセル彗星は、メシエカタログで知られるフランス・パリのメシエによって 発見されました。(1770年6月14日)  彗星は太陽に接近した後、7月始めに肉眼でもハッキリとわかる明るさで輝き ました。彗星頭部は2分半角(満月の約5倍)にもなったと言われています。  その後、周期5年半の短周期軌道が求められ、7月1〜2日には地球に大接近して いたことも判明しました。前述の如く巨大な彗星頭部は大接近していた為だった のです。  ロシアのレクセルは、この彗星の軌道計算を厳密に行いました。彼は彗星軌道 に初めて「楕円軌道」を適用したのです。 そして過去の軌道も求め、長周期だったこの彗星が木星に接近したために短周期 彗星となって地球に接近してきたことも突き止めました。  その後も多くの人々によって、この彗星の軌道計算が繰り返されました。 そして、元々11.4年周期だったこの彗星は、1767年に木星に大接近して周期5.6年 の短周期軌道に変えられ、1779年7月に再び木星に0.0015天文単位という至近距離 まで接近して大きく軌道が変えられ、現在は公転周期256年で、2035年頃、地球に 回帰してくるものと考えられています。  この彗星はメシエにより発見されましたが、その後「レクセル彗星」と呼ばれ ています。  レクセル彗星は私たちに多くのことを教えてくれました。 特に、次の2点について意識させてくれるようになった功績は大きいと言えます。  1.いつかは地球に衝突する彗星が現れるかも知れない。  2.太陽系外の空間で誕生した彗星が太陽に接近したとき、惑星の引力の影響    で太陽系内を公転する軌道を描くことになる「捕獲説」。 ■ 太陽系探訪 ----------------------------------------------------------- 【月面観測〜静かの海】  月を見ていると白く明るく見える部分と、少し黒ずんで見える部分があります。 後者は玄武岩質の土壌で黒っぽく見えるのですが、その模様を「ウサギの餅つき」 「蟹のハサミ」など昔から色々なものに例えられてきました。 皆さんは一体何に見えるでしょうか? ちなみに私には「蟹のハサミ」に思えて 仕方ありません。  さて、その黒っぽく見える部分を「海」と呼んでいます。もちろん海水のない 海ですが…。  月の赤道部、中央よりやや東側に「静かの海」と名付けられた海があります。 西暦1969年7月20日、アメリカのアポロ11号の着陸船が、この静かの海の南の端に 人類史上初の月面着陸を果たしました。        ○カタリナ         ○キルリス         ○テオフィルス      11号着陸地点            +  。サビン                。リッター  月面を跳ねるように歩くアームストロング船長とオルドリン飛行士の姿はテレ ビでも中継され、世界の人々を驚愕させました。    2つ並んで接しているクレーター「テオフィルス」と「キルリス」を目印にす ると良いでしょう。 静かの海の南の端に近いところに目立ちませんが、やはり 2つ並んだ「サビン」と「リッター」と呼ばれるクレーターの近くが、アポロ11 号の着陸地点となります。  上弦の前、月齢5〜6頃から見えてきます。人類が歩いた月面の風景を想像し ながら見てみるもの良いものです。 ■ 二重星 -------------------------------------------------------------- 【みなみのうお座β星】  初心者にも観測しやすい二重星です。 白と黄色のコントラストも美しいのですが、光度差があり伴星が非常に暗く小さ く感じるのですが、角距離が離れている(約30秒角)ため小口径でも十分に観測 でき、観測技術に自信を感じさせてくれる好対象です。             7.9等(白) ・             ○      S           4.4等(黄)     ↑                  W← ■ 変光星 -------------------------------------------------------------- 【こいぬ座R星】  1月1日、脈動変光星R星が極大を迎えます。 「一年の計は元旦にあり」今年こそ変光星観測を本格的に始めてみようと考えら れている方には最適の星でしょう。    種類(型):脈動変光星  変光周期 :338日  変光範囲 :7.2〜11.6等  位  置 :赤経 07h 09.2m 赤緯 +10°00’ (2009.5)  観測機材 :口径65mm以上の望遠鏡で観測可能                    * R CMi           ε。          γ。 。β        。α         プロキオン ★ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━   星 空 入 門   初心者向け天文マガジン 〜宇宙の神秘を考える〜    ===========================================================    当メールマガジンの内容について、『転載・複写を禁止』します。   ===========================================================  当マガジンは、等倍フォントでご覧下さい。   また、掲載情報及びリンク先のサイト情報について如何なるトラブル・損失  が生じても、当方では一切責任を負えませんので、あらかじめご了承下さい。     ・週1回発行 水曜日     ・購読料 月315円(税込み)     ・購読の申込み・解除、バックナンバーの購入        http://www.h2.dion.ne.jp/~y_iwaki/magpre.htm  宇宙の神秘さを感じつつ、星空について学びましょう。    by Y.Iwaki ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★