ハート・ブルー
-POINT BREAK-









「サーフィンの神髄を知りたいか?
波の中で自分を捨て、
別の自分を見出す事だ…
お前ならそこに到達できる」




監督

キャスリン・ビグロー

キャスト

キアヌ・リーブス/「スピード」「チェーン・リアクション」
パトリック・スウェイジ/「ゴースト」「「シティ・オブ・ジョイ」
ロリ・ぺティ/「ブロード・キャスト・ニュース」「フリーウィリー」
ゲイリー・ビューシィ/「沈黙の戦艦」「ザ・ファーム」


1991年 アメリカ映画
カラー 122分


  キアヌ・リーヴスと言えば「スピード」での精悍なスポーツ・カットでの活躍が記憶に新しいが、この作品はそれより以前に制作された彼がまだ大ブレイクする前のものにあたる。「スピード」でのホレボレとする様な彼のりりしい姿が印象が強く残っているがゆえ、この作品のエリート然として髪をキチッと分けた彼はなんだか”変”と言う印象が拭えない。それでもFBI捜査官に扮する彼が、ジーパンにラフなシャツ姿で髪を乱して犯人を追跡するシーンともなればまだ何とか観れるかもしれないが。この作品を傑作の部類に位置づけているのは、何より大胆なストーリーと、犯人グループのリーダー格でカリスマ的な魅力を放つピカレスク・ヒーローに扮する、共演のパトリック・スウェイジの存在そのものに尽きる。
  「スピード」で熱血漢の快男児を演じるキアヌがこの作品では何だか御坊ちゃん風のエリート捜査官を演じたのと同様、この作品で野生味溢れるキャラクターを演じるスウェイジは、デミ・ムーアと共演した「ゴースト」では逆に都会的なエリート証券マンを演じていて、その時は個人的にさして印象には残らなかった。しかし金髪の髪と無精ひげを無造作に伸ばし、日焼けした精悍な体で波に乗り、その上スカイ・ダイビングまでこなしてしまう彼をこの作品で観て、改めて見直してしまった次第である。実際この作品は敵役である共演者の役割がかなり重要なウェイトを占める作品で、その役にピッタリとハマリ、新しい魅力を存分に開花させたスウェイジの存在は非常に大きい。

  優秀な成績で訓練学校を卒業し、ロスのFBI支局に特別捜査官として赴任したジョニー・ユタ(キアヌ・リーヴス)は、銀行強盗部門に配属される。強盗のメッカとして年間1220件の犯罪件数を数えるロス。おりしも、元大統領の覆面を付け、金庫は狙わずカウンターの金だけを奪って90秒で仕事を片づけ瞬く間に行方をくらます、四人組みの銀行強盗団の捜査が難航しており、ジョニーはヴェテラン刑事のパパス(ゲイリー・ビューシー)と組んで捜査に当たる事になった。
  彼らの犯行は素早くいつも殆ど証拠らしい証拠は残さない。しかしパパスは、ビデオカメラに収められた犯人の肌の日焼け跡、彼らの犯行時期が夏に集中している事、及び彼らの一人の足から残された物と思われる泥からサーフ・ボードの手入れに使うオイルが検出された事で、この強盗団はサーファー仲間であるという大胆な仮説を立てていた。ジョニーはその仮説を証明する為にボードを買い込みサーファーに紛れて囮捜査を開始する。
  しかし高校時代フット・ボールで鳴らしたジョニーであったが、海を相手にするのは少し勝ってが違った。サーフ・ボードから落ちてあやうく海で溺れそうになった所を、タイラー(ロリ・ペティ)に助けられ、ジョニーは彼女にサーフィンを教わる事になる。彼女に付いてサーフィンの特訓を重ねる日々を送るジョニー。そんなある日、彼はタイラーの前の男であるボーディー(パトリック・スウェイジ)とその仲間に出会う。最初はカンザスの田舎者扱いされたジョニーであったが、彼が有名な名クォーター・バックだった事がきっかけで、サーフィン中毒のような彼らの仲間に加えられる事になる。
  彼らは単なるサーファーと言うより、海に人生の全てを捧げているいわば探求者と言って良かった。薪を囲み、「セックスより快感だ」とサーフィンの神髄を思い思いに説く、海に魅せられたアウトロー達。タイラーはそんな彼らについて行けずボーディーと分かれた言う。しかし、ジョニーは次第に彼等、いやボーディーの生き方に魅せられていく自分を感じ始めており、ボーディーもまたジョニーに同類の匂いを嗅ぎ取っていた。究極の波を捜し求めてる彼等の夢はその波を掴む事であり、ボーディーは翌年に50年に一度の大嵐が訪れると言うオーストラリアの北岸で、世界最大の波を狙う事を公言してはばからないのであった。
  一方、ジョニーが囮捜査と称して呑気にサーフィンに興じてる間にも、例の強盗団が更に2件もの犯行を重ねていた事で、ジョニーとパパスは上司から追求される。しかし彼らは現場に残された髪の毛という新たな証拠を掴んだ。科学捜査で犯人一味の縄張りと思われる特定のビーチを割り出し、強盗・麻薬などの前科を腐るほど持っている四人組のグループを突き止める事に成功したジョニーとパパスは、翌朝手入れを決行する。しかし壮絶な銃撃戦、そして格闘の後、手傷を負いながらも犯人一味を逮捕した二人であったが、一味には前回の強盗事件時の完全なアリバイがあり、捜査は振り出しに戻ってしまう。  意気消沈しながらもタイラーと夜を過ごすジョニー。しかしそこにボーディーが現れ、これから直ぐに波に乗るのだと誘う。苦笑まじりに彼等の後を追い、浜辺を歩くジョニー。しかし彼は、夜の波に乗って舞うボーディー達の一糸乱れぬ姿とその統率ぶりを目の前にした時、今になって一つの結論に思い至るのであった…。

  通常、スカイ・アクション、あるいはサーフィンのどちらかをモチーフにした作品は結構見かけるが、その両方に加えて銀行強盗がからんだポリス・アクションも盛り込み、まさに陸海空にこれだけ見所の多い作品も珍しいと言える。 スカイ・ダイビングを題材にしたアクション映画にウェズリー・スナイプ主演の「ドロップ・ゾーン」があったが、無理矢理スカイ・アクションを話に結びつけている感が無くもなかったように思える(ただ共演のヤンシー・バトラーはなかなかセクシーな女優で、彼女が主演しているカー・アクションもの「ブロークン・マネー(原題ファースト・マネー:1995年・日本未公開作品)」はお勧めです)。しかしこの作品のアクション・シーンには必然性があると言うよりも、それそのものがストーリー上の重要なモチーフにっている事はご覧になった方は分かるはずだ。
  銀行強盗団の動機が金そのものでない事は、大金庫を狙わずカウンターの小金だけを奪ってリスクを最小限に留めている事からも分かるはずだ。彼らが銀行を襲うのはあくまでも世界中の波を追って旅する資金を稼ぐためであり、生きている実感を追い求め続ける一種、崇高な生き方を貫くための手段でしかない。
「鉄の棺桶に乗ってハイウェイを走っている、生きた屍達に本当の生き方を教えてやるんだ!!」
と語り、最後まで自己を偽らず自分の欲するもの求め続けたスウェイジ扮するボーディーの生き様に、誰しも共感を覚えるに違いないし、畏敬の念すら感じざるを得ない。この作品の主役は彼らを追う正義の捜査官役であるキアヌではなく、むしろ悪役であるボーディーとその仲間達であると言っても差し支えないのではないか。ラスト・シーンでキアヌ扮するジョニー・ユタが取った行動は、彼らの生き様に一時でも共感し、そしてそれを認めざるを得なくなった事の証とも取れるのではないか?
  まあ、そういう難しい事は抜きにしても、この作品が爽快な映像とアクションたっぷりの文句なしの娯楽作品である事に間違いはない。最近すかっとするアクションに縁がなかった方にお勧めの一本です。





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