ゲームブック大事典
 
今から20年以上前、80年代半ばに、パラグラフを選んで読み進めていくゲームブックというものがブームを巻き起こしました。ここでは当時、自分がハマった数々のゲームブックを紹介していきます。

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ファイティングファンタジーシリーズ1
火吹山の魔法使い
S・ジャクソン、I・リビングストン著 教養文庫
火吹山の魔法使い
 全部で33巻に渡って翻訳されたファイティング・ファンタジーシリーズの1作目にして、ゲームブックブームの火付け役ともなった記念すべき作品。冒険者である君の使命は、火吹山の洞窟に入りこんで、悪の魔法使いザゴールが隠し持っている宝箱を奪いとることにある。プレイヤーはまずサイコロを振って技術点体力点運点の3つを決定させる。火吹山の洞窟の中で、モンスターに出会ったら、自分の分と敵の分のサイコロを交互に振り、出た数値を互いの技術点に足して、上回った方が相手の体力点を削り取っていく。ここで自分の体力点が0になったらゲームオーバーとなる。おそらく冒険を始めた当初は主にオークと戦うことになるが、そいつらと戦っているうちに、戦闘方法はだいたい理解できるものと思われる。プレイヤーであるキミは、火吹山の洞窟の分岐点で、どちらに進むかを選び、ひたすら奥を目指して行くことになるが、いかに体力を温存しながら戦闘を勝ち抜いていくかが、運命の分かれ目になる。また、技術点は戦闘だけでなく鍵のかかった扉を開けられるかなどにも関わってくるので重要な要素である。
 冒険の前半ではオークやゴブリン、オーガといったファンタジーではおなじみといえるモンスターたちとの戦闘が続き、洞窟の中ほどを流れる地底の川を越えてからは、ザゴールが生み出したゾンビやグ−ルといった不死の怪物たちが襲いかかって来る。シリーズの1作目だけあって、出てくるモンスターの強さは弱めに設定されており、突如として死が襲いかかるトラップもほとんど無い。ダンジョンの奥深くに潜む龍は出会うまでにしかるべきアイテムさえ手に入れておけば楽勝だし、仮にアイテムを手に入れられなくても勝てない相手ではない。最後の敵であるザゴールですら、力技だけで戦っても勝つことは不可能ではなく、なぜか致命的なダメージを与えることができるアイテムが、彼のダンジョンに無造作に(いや、無造作ではないか…)置かれているというのも不思議な話である。なおザゴールが弱かったのは、自らの宝を守ることに専念し、魔法の修行を怠ったためという説がある。
 おそらく最初の冒険でザゴールを倒し、宝箱の前にたどり着ける冒険者も少なくないはず。ただし、宝箱を開けるためには冒険の途中で正しい鍵を入手しておく必要があるので、その鍵の入手が最大の難関と言えるだろう。たとえ鍵を手に入れたとしても、宝箱とは関係ないフェイクの鍵である可能性もあるので油断がならない。自分はソーサリーをプレイしてから、火吹山にチャレンジしたので、多少物足りない感じがしたが、ゲームブックというものが、どういったものだか分からない初心者にとっては、入門書として最適な1冊といえる。ちなみに火吹山といっても火山では無く、山頂に赤い植物が生えていることから由来されている。
お気に入りキャラ→洞窟拡張工事のために、休むことなく「ハイホー、ハイホー」と歌いながら、魔法で働かされているシャベルやつるはしに敬意を表して1票。冒険者はこいつらと会話を交わしたということだが、どんな話をしたのか聞いてみたいものだ。
ファイティングファンタジーシリーズ2
バルサスの要塞
S・ジャクソン著 教養文庫
バルサスの要塞
 前作の火吹山の魔法使いの主人公が剣で戦う一方だったのに対し、今作の主人公は魔法使いの弟子という設定。ただし、まだ修行中の身の上にて、使える魔法の数はサイコロを2つ振った数+6に限られていて、最初にどの魔法を選ぶかに冒険の成功の鍵がかかっている。その魔法の種類は、敵の複製を作り出す「妖怪うつし」、相手の考えや扉の向こうが見える「千里眼」、炎を操る「火炎」、幻の財宝を作り出す「愚者の黄金」、相手に幻を見せる「目くらまし」、自分や相手を空中に浮かび上がらせる「浮遊」、見えない盾を発生させる「防御」、一時的にパワーアップする「怪力」、敵の力を奪い取る「骨抜き」、減ってしまった技術点を戻す「技術回復」、減ってしまった体力を元に戻す「体力増強」、減ってしまった運を元に戻す「開運」の12種類。なお、この作品で生まれた魔法で窮地を切りぬけるという設定が、ソーサリーで活かされ48の魔法を生み出すことになる。ここで出てきた12の魔法のうち幾つかが、ソーサリーの魔法と似ているのはそのためである。
 冒険の目的は、モンスターたちをかき集めて柳谷を攻めようという妖術使いのバルサス・ダイアを、彼が攻撃を開始する前に要塞に忍び込んで暗殺することにある。バルサス・ダイアが待ち受ける要塞の中には、卑劣な罠の数々が待ちうけ、火吹山を簡単にクリアしたプレイヤーを完全に叩きのめしてくれる。要塞の入口を、猿の頭をした犬と犬の頭をした猿が守っているのを見ただけでも、このバルサスの要塞がただならぬところだと感じさせてくれるだろう。巧妙な罠と、個性的なモンスター、そしてそれを撃退するための魔法の数々が、この作品をより一層おもしろいものにしているのだ。
 おそらくプレイヤーはクリアするまで、何度と無く死に至ることになるはず。特に終盤に待ち受ける妖怪ガンジー(闇に浮かぶ顔のイラストも怖いが、剣も魔法も通じない相手というのが絶望的)、怪物ヒドラ(なんと、こいつにも剣が通じない)、そして最後のバルサス・ダイアとの3連戦を乗り越えて勝利するまでが長い道のりなのである。最後の敵となるバルサス・ダイアは火吹山の守護者であったザゴールよりも、はるかに狡猾で侮りがたい相手。その場に適した魔法を使い、機転を利かせた手段に打ってでないと倒すことは不可能であろう。少しでも手段を間違えればバルサス・ダイアの魔法の餌食になるか、剣で斬り捨てられてしまうのだ。
 ちなみに、息詰まる要塞の中で、少し寄り道して妖怪たちとギャンブルで遊ぶこともできる。ナイフ・ナイフ、呪文石、六選びなど、いずれも凝ったルールでなかなか楽しめるものだが、失敗した結果は、決して軽いお遊びで済むようなものではない。
お気に入りキャラ→回転しながらナイフで攻撃してくる円盤人や、ネズミが苦手なカラコルムなど、どれも捨てがたいキャラだが、バルサス・ダイアの妻ルクレチアは、きれいなバラには刺があるの例えのように、美しくはあるが彼女の炎の視線には要注意である。
ファイティングファンタジーシリーズ3
運命の森
I・リビングストン著 教養文庫
運命の森
 火吹山の魔法使いでゲームブックを世に送り出したS・ジャクソンとT・リビングストンの2人だが、S・ジャクソンがバルサスの要塞ソーサリーシリーズで魔法を駆使したゲームブックを出し始めたのに対して、I・リビングストンは本書からタイタンという一つの大きな世界を舞台にしたシリーズをゲームブックにおいて展開させていくことになる。
 善良なドワーフたちの村であるストーンブリッジを守っているのは、勇気を与えてくれる戦いのハンマーである。しかし、冒険者であるキミは傷ついたドワーフのビッグレッグから戦いのハンマーは危険なダークウッドの森の中に失われてしまったことを聞かされる。そこで、ダークウッドの森を縦断しながら、その途中で戦いのハンマーを見つけ出すことが目的となる。ハンマーは失われた時に、黒檀で出来た柄の部分ブロンズ製の頭の部分に分かれてしまったので、森の中から二つとも見つけ出す必要がある。危険な森の生き物たちを掻い潜り、ハンマーの柄と頭の両方を見つけ出すことが出来るのか…。
 バルサスの要塞での魔法使いから、再び剣だけが取り得の魔法の使えない冒険者となったが、ここで旅をサポートしてくれる魔法使いヤズトロモが登場する。この甘い物に目が無い魔法使いは、ダークウッドの森の入口で、危険な地に赴く冒険者の手助けをしてくれる。ビッグフットから手に入れた金貨30枚でヤズトロモが売っている魔法アイテムを購入して冒険に挑むことになる。この魔法のアイテムは、万能薬、植物封じの薬、静けさの薬、虫封じの薬、毒けしの薬、聖なる水、光の指輪、とび跳ねブーツ、するするロープ、からみ網、力の腕輪、投げ上手の手袋、水の探し棒、ニンニク玉、集中力のバンド、炎のカプセル、鼻用フィルターの全部で17種類。いずれも金貨2枚〜3枚の値段となるので、所持金30枚では7個〜9個しか買うことができない。いずれも1回切りの使い捨てアイテムなので、どれを購入するかが勝負の分かれ目となる。ダークウッドの森には、出会ったら即死になるような手ごわいモンスターはいないので、森を抜けること自体は簡単なのだが、途中でハンマーの柄と頭の両方を見付けだすことが最大の難関となる。
 基本的にはヤズトロモの塔がある森の南から入り、ストーンブリッジがある北に向かって進んでいく。森の中は何本かの道が南北に伸びており、互いの道はあみだクジの様に枝道でつながっている。どのルートを選んで進んで行くかが、冒険者の判断にゆだねられていくのだが、森を抜け出した時、キミはハンマーを手に入れているだろうか、もし手に入れることができなかったらゲームオーバー…ではなく、ヤズトロモの塔で魔法アイテムを購入し直して、森の入口から再挑戦となる。
お気に入りキャラ→こんな危険な森の中で自慢の筋肉をむき出しにしながら、腕相撲で勝負を挑んでくるクインは、悪いヤツじゃないにしても、まともな人間とはとても思えない。腕相撲の相手を見つけて笑顔を浮かべるあたりなんか、ある意味モンスターよりも怖いかもしれない。
ファイティングファンタジーシリーズ4
さまよえる宇宙船
S・ジャクソン著 教養文庫
さまよえる宇宙船
 ゲームブックといえば、真っ先に思い浮かぶのが剣と魔法のファンタジーの世界を舞台にしたものだが、S・ジャクソンがゲームブックの新しい方向を探ろうということで生み出したのが、初のSFゲームブックとなるさまよえる宇宙船である。その世界観はスタートレックをイメージしてもらえれば一番近いかもしれない。実は海外には70年代に発売されたトラベラーという有名なSFロールプレイングゲームがあるのだが、それが本書を生み出す原動力になっていると思われる。
 主人公のキミは宇宙船トラベラー号の船長で、船長以外には、科学官医務官技官保安官、そして警備員2名が乗り込んでいる。そのため今回は自分だけでなく各乗組員の技術点と体力点もサイコロを振って決める必要がある。ちなみに戦闘に向いているのは保安官と警備員だけなので、それ以外の者が戦闘する場合は、技術点から3点引かなければならない。また、宇宙船での戦闘が発生する場合もあるので、トラベラー号の武器力点防衛力点もサイコロで決めてからスタートとなる。宇宙船での戦闘は個人の戦闘とはルールが異なる上に、個人の戦闘も素手の場合とフェーザーを使う場合では変わってくる。それぞれの戦闘ルールは詳細に記載されているが、ファンタジーものよりも複雑なルールを、まずは頭に叩き込む必要がある。
 宇宙空間を航行していたトラベラー号はブラックホールとして知られるセルツィア空間に吸い寄せられてしまった。どうにか船は無事だったものの、気づいた時には別次元の宇宙に放り出されていた。この未知の宇宙をワープで進みながら、乗組員たちと力を合わせて元の宇宙に戻るための冒険を始めることになる。元の宇宙に戻るための手段は、正しいブラックホールに、正しい日に突入しなければならないのだが、その情報を入手するために、危険を犯しながらも様々な星に降り立つことになる。その未知の星では異星人と接触することになるが、この別世界の宇宙空間はファンタジー世界以上に常識といったものが通用しない。どの宇宙人が敵で、どの宇宙人が味方となるかの判断は難しいが、無事に元の世界に戻れるかどうかは船長であるキミの判断に任される。なお星には限られた人数しか降りることができないので、誰を連れていくかも重要な分かれ目となるのだ。
お気に入りキャラ→未開の星で雨神を名乗っていたブラン・セルは、取引に遅れて売れなくなった惑星制御コンピュータを使って天気を操っていた星間貿易商。こうしたキャラを見ると、どこの世界でも商売人は大変なんだなと思う。
ファイティングファンタジーシリーズ5
盗賊都市
I・リビングストン著 教養文庫
盗賊都市
 S・ジャクソンのSFゲームブックから一転して、再びT・リビングストンによる剣と魔法のファンタジー世界のゲームブックとなるが、異色作を出すS・ジャクソンとは対象に、あくまでもT・リビングストンは正攻法で攻めてくる。傭兵であるキミの依頼主は、シルバートンの市長オウエン・カラリフ。闇の王者ザンバー・ボーンから一人娘を嫁に差し出せと言われ、困っているとのこと。そこで、ザンバー・ボーンを倒すための冒険に旅立つのだが、不死身のザンバー・ボーンの倒し方を知っているのは、賢者ニコデマスただ一人。しかし、ニコデマスが住んでいるポート・ブラック・サンドは、盗賊都市と呼ばれる危険な街。果たしてニコデマスに出会ってザンバー・ボーンを倒すことが出来るのか…。
 街を舞台にしたゲームブックはソーサリーの城砦都市カーレもそうだが、魅力的な人物が数多く登場するのが特徴。それは盗賊都市でも例外ではなく、カギ職人のJ・Bラギンズをはじめ、薬屋、酒場、ブローチ屋など、様々な店にいかがわしい連中が集まっている。しかし、そこは盗賊都市というだけあってまともな買い物ができるとは限らない。油断していると命を狙われたり、有り金を全て奪われるなんてことになりかねないのである。そして、この盗賊都市の致命的な欠点としては、魅力的なポート・ブラック・サンドの住人を前にして、倒すべき相手であるザンバー・ボーンの影が薄くなってしまっていることにある。闇の王者ザンバー・ボーンよりも、街を支配している市長のアズール卿の方が、悪の魅力に満ち溢れているのである。このアズール卿とは正面切って出会うことは無いが、街の噂で聞いたり、馬車とすれ違ったりすることで、より存在感を強くしているのである。
 そして、お目当ての賢者ニコデマスは、何故か橋の下に居を構えている。そして彼から得たザンバー・ボーン打倒の秘訣は、催眠から身を守るために額にユニコーンの刺青を入れ、銀の矢で心臓を射抜き麻痺させたところを、黒真珠魔女の髪の毛ハスの花の混合物を塗りこむというものだった。さすが、盗賊都市ということだけあって、以上の条件を町で全て収集することが出来るのだが、危険な住人たちと渡り合い全てのアイテムを入手するのは命がけとなる。そして、苦労のはてに全ての条件を満たして、ザンバー・ボーンの居城に向かおうとすると、ニコデマスから混合物の一つは余分な物だったとの伝言が届く。しかも、どれが余分だったかは忘れたと伝えられるのだが、賢者だか何だか知らないが、しょうが無いボケじいさんなのである。
お気に入りキャラ→ポート・ブラック・サンドはならず者が集まっているだけあって、様々な賭けゲームを楽しむことができる。酒場ではドワーフとサイコロ賭博、市場では怪力男と砲丸のキャッチボールで一稼ぎできるが、港通りではベイという生き物が、ベイズ・ボールをやっている。ここはホームランをかっ飛ばして、褒美の品を手に入れたいところである。
ファイティングファンタジーシリーズ6
死のワナの地下迷宮
I・リビングストン著 教養文庫
死のワナの地下迷宮
 I・リビングストンの最高傑作との呼び声も高いのがこの死のワナの地下迷宮。それというのも高い難易度を誇りながらも、何度かプレイしているうちに確実にクリアすることが可能という絶妙なゲームバランスにある。冒険の舞台となるのは、誰も成功者が出たことが無い、ファングの町で毎年5月1日に開催される迷宮探検競技サカムビット公主催による、この競技を制したものは、金貨一万枚とチアンマイの永久統治権を手に入れることができる。今年の競技に挑戦するのは、キミ以外に、2人のバーバリアン妖精めいた女戦士鉄の鎧で覆われた甲冑の騎士、そしてもう一人は黒衣に身を包んだ東洋の忍者。彼らは互いに迷宮の出口を目指すライバルとなるのだが、迷宮のどこで彼らに出会うかは、入ってからのお楽しみとなる。
 とにかくすさまじいほどの難易度となっており、迷宮の通路は複雑に入り組んでるし、出てくるモンスターは魔法使いの丘でも苦しめられたマンティコアをはじめ、地底怪獣、ブラッドビーストなど強敵との戦闘が続く。さらに陰険なワナは、冒険者をいともたやすくあの世に誘う。そして、この迷宮をサカムビット公から任されている2人の競技監督がいるのだが、一人は迷宮の中盤で登場するドワーフで、彼が次から次へと出す難題をクリアしていく必要がある。そして、もう一人の競技監督が出口の直前で待っているノウムとなり、彼に出会う前に必要なアイテムを揃えておかないと、迷宮の最後に控える扉は開かず、二度と迷宮の外に出られることはないだろう。自分が最初にクリアした時の体力点は残り1といった状態で正にギリギリの勝利であった。
 ちなみに地下迷宮が存在するファングの町は、盗賊都市のポート・ブラック・サンドの北に位置する設定になっている。この頃からゲームブック全体を包み込むアランシアという世界が作り上げられ、火吹山、バルサスの要塞、ダークウッドの森などが、一つの世界に収まっていく。なお、この地下迷宮は後にさらにパワーアップして迷宮探検競技という作品になって帰ってくるのだが、それについては後述させていただく。
お気に入りキャラ→バーバリアンの一人であるスロムとは、迷宮の途中で冒険をともにすることになる。ゲームブックで仲間と一緒に冒険することはめったにないが、この殺伐とした地下迷宮の中で彼の存在に救われた思いがする。しかし、そんなスロムとは悲しい別れが待っているのだが…
ファイティングファンタジーシリーズ7
トカゲ王の島
I・リビングストン著 教養文庫
トカゲ王の島
 死のワナの地下迷宮で知られるファングの町の南にある漁師町オイスターベイで、ゆっくりと骨休みしようと思っていたキミは、旧友のマンゴから、オイスターベイがとんでもない状況に陥っていることを聞かされる。オイスターベイの沖合いにある火山島に住むトカゲ男たちが、襲撃をかけて若者たちをさらって行くというのだ。その火山島は支配者であるトカゲ王の黒魔術による実験により、次々と改造トカゲ男たちが生み出され、生物や植物も狂暴化しているという。そこで、マンゴとともに火山島に乗り込んでトカゲ王を倒すのが今回の使命となる。
 せっかく、一緒に冒険に出たマンゴは、島に乗り込むや否や、あっというまに無残な最期を遂げてしまう(巨大ガニにやられるか海賊にやられるかは選択肢次第だが…)。そこで、いつものごとく仲間のいない孤独な冒険となるのだが、今回は暗い迷宮を進むことになった死のワナの地下迷宮とは打って変わって、森や沼などの大自然を舞台にした大冒険が繰り広げられる。火山島での冒険の前半は、首狩り族やヒドラなどの危険な生き物たちとの戦いが続き、島中央部にある鉱山にたどり着いてからはトカゲ男たちの監視をかいくぐりながら、囚人たちを助け出さなければならない。こうして苦労の末に囚人を助け出して冒険成功と言いたいところだが、ここからが本当の苦労の始まりである。何と言っても諸悪の根源であるトカゲ王を倒さなければならないのだが、トカゲ王をパワーアップさせている寄生生物ゴンチョンを倒す手段を、島の呪術師から聞き出さなければならない。そして、運良く呪術師に会うことができたとしても、彼の出す運の試験恐怖の試験苦痛の試験忍耐の試験力の試験器用さの試験の中から3つをクリアしなければ、トカゲ王とゴンチョンを倒すためのアドバイスを受けることが出来ないのである
 本作では即死に結びつくような危険なトラップは少ないものの、火山島に登場するモンスターの強さが平均して高いので(必ず戦うことになるステラコザウルスや、トカゲ王のペットの黒ライオンなどが強すぎる)、最初に振ったサイコロの目が低いとクリアするのは困難と思われる。呪術師と別れてからは、助け出した仲間たちとともに、奴隷解放に向けたクーデターを起こすことになるが、これは正に勝利に向けての大攻防戦である。そのドサクサに紛れてトカゲ王との戦いとなるのだが、もしトカゲ王に勝利しても油断してはいけない。ゴンチョンに寄生されたら、今度は君が新たなる島の支配者となってしまうのだから。
お気に入りキャラ→子供の頃に火山島に一人で取り残され、サーベルタイガーをペットにして生き抜いて来た少女がいるのだが、言葉が通じないばかりに彼女を連れ帰ることができなかったのは、実に残念である。
ファイティングファンタジーシリーズ8
サソリ沼の迷路
S・ジャクソン(米)著 教養文庫
サソリ沼の迷路
 ゲームブックが発売された当初、多くの読者を混乱させたことに、本書の作者であるS・ジャクソンとバルサスの要塞さまよえる宇宙船の作者のS・ジャクソンは同姓同名の別人である。サソリ沼の迷路が発売された時点では、ゲームブック作家がI・リビングストンを含め3人しかいなかったのに、その内の2人が偶然にも同性同名だったことが混乱の元だった。しかもI・リビングストンがストレートな作風なのに対し、2人のS・ジャクソンが変化球タイプということで作風も似ていたため、完全に同一人物と思われていた。サソリ沼の迷路のS・ジャクソンがアメリカ人なので、当時の表記に合わせてS・ジャクソン(米)とさせていただきます。
 曲がりくねった道が縦横に交差し、磁石も効かないことから、サソリ沼は誰も踏み込むことができない地とされてきた。しかし、ふとしたことから常に北の方角が分かる指輪を手に入れたキミは、この危険なサソリ沼を冒険できる機会を得ることになる。特別な力を得た君の冒険の目的は、誰の依頼を受けるかで異なってくる。善の魔法使いのセレイターに仕えれば、沼のどこかに生えているアンセリカの実を持ち帰ってくること。悪の魔法使いのグリムズレイドからは、沼に住み付いた5人のあるじが1つずつ身に付けている銀の護符を最低でも3個持ち帰ってくること。そして中立の魔法使いと思われているが、実は商人のプームチャッカーからは沼を抜けて北に位置するウイロウベンドの町までの道のりを記録して帰ってくることを頼まれる。
 これまでの一方的にストーリーが進むゲームブックと違い、サソリ沼では通りすぎた場所を何度でも訪れることができるように双方向のパラグラムになっているのが特徴。ただし、1度訪れた場所で再び同じ人に出会えるとは限らない。前に訪れた時にとった行動によって状況は変わってくるのだ。そして、沼に住み付いた5人のあるじも、鳥のあるじ庭園のあるじカエルのあるじ狼のあるじクモのあるじと善から悪まで千差万別。接し方次第では敵にも味方にもなり、うまくすれば彼らから銀の護符を手に入れることができる。
 冒険を成功させるためには、それぞれの依頼主からもらった魔法の玉が必要になってくる。ただし、セレイターからは悪の魔法はもらえず、グリムズレイドからは善の魔法はもらえず、プームチャッカーからは中立の魔法しかもらえない。善の魔法は相手が好意を抱いてくれる「友情」、植物の成長を早める「繁茂」、自分以外を回復させられる「祝福」の3つ、中立の魔法は「技術回復」「体力回復」「開運」に加え、火をつけられる「火炎」、水を氷に変える「氷結」、幻影を作り出す「目くらまし」の6つ、悪の魔法は相手に恐怖を抱かせる「脅し」、植物を枯れさせる「枯らし」、何か恐ろしいことが起こる「呪い」の3つ。もらえる魔法の玉の数は限られているので、いかに魔法を駆使していくかがサソリ沼攻略のカギとなるのだ。
お気に入りキャラ→フェンマージの酒場で3人の依頼人を紹介してくれたグロナールは、一体何者だったのか。ローブには十字架が縫い取られ、善の魔法使いセレイターを勧めるグロナールの正体が気になって仕方が無い。
ファイティングファンタジーシリーズ9
雪の魔女の洞窟
I・リビングストン著 教養文庫
雪の魔女の洞窟
 これまでリビングストンは、死のワナの地下迷宮トカゲ王の島という作品を通じて、自分が描くファンタジーの世界を一つに繋げようとしてきたが、この雪の魔女の洞窟により、ついにアランシアという世界観が確立されることになる。今度の冒険の舞台は、アランシア北部の雪と氷の地。この極寒の地にある水晶の洞窟で雪の魔女シャリーラは、世界を氷河期にしてしまおうと計画を練っていた。その野望を知った君は雪の魔女を倒すための冒険に挑戦する。出てくるモンスターは雪狼や雪男、結晶戦士など雪や氷に関連したやつらばかり。そして、恐るべき支配者である雪の魔女は、手下たちに服従の首輪を付けさせ、絶対的な支配を行っている(魔女に逆らったものは首を締めつけられ死に至る)。
 そんな雪の魔女だが、驚くべきことに冒険の前半で倒すことに成功する。意外な展開だが、この雪の魔女の洞窟は、元々はアメリカのゲームブック雑誌に連載されたものにストーリーを加筆して、一冊のゲームブックに仕上げたものだからである。そのため雑誌では雪の魔女を倒して終わりだが、本書では雪の魔女を倒してからも冒険が進むという形になっている。その雪の魔女を倒した後の冒険がどうなっているかというと、魔女を倒したことにより支配から逃れたエルフの赤速ドワーフのスタブと共に、洞窟脱出に向けた冒険が始まるのである。RPGゲームのような3人組での冒険が、ゲームブックでは新鮮である。洞窟から出るまでは穴居人や頭脳殺しといったモンスターが待ち構えているが、いよいよ洞窟の出口となって登場するのが雪の魔女の亡霊である。死してなお命を奪いに来る雪の魔女の執念もすさまじいが、そのわがまま振りは強烈で、ジャンケンにも似た金属板遊びで勝負を決めようと持ちかけてきたくせに、こっちが勝ったら最後の力で洞窟を崩してしまった(おかげで洞窟から脱出できたが)。
 さて雪の魔女の亡霊を退けて洞窟を脱出したものの、それでも話は終わらない。続いてスタブの故郷であるストーンブリッジに赴くことになるのだ。しかし、ストーンブリッジは戦いのハンマーを奪われて大騒ぎになっていた。そのためスタブは君たちと別れて、戦いのハンマー捜しの冒険に旅立ち、物語は運命の森につながっていく。しかし、冒険はまだ終わらない。雪の魔女の洞窟を出る時に死の呪文が書かれた用紙を読んでしまったことから、呪文の効力を解くために癒し手と呼ばれる人を探すことになる。この癒し手は、運命の森に登場したヤズトロモ盗賊都市に登場したニコデマスと並びアランシアの3善人と呼ばれる存在である。そして、少しずつ減り続ける体力点を気にしながらたどり着いた癒し手の力により死の呪文から逃れることができたら、記念すべきシリーズ1作目の火吹山の頂上でエンディングを迎えることになるのである。
お気に入りキャラ→白ネズミに気をつけろという忠告が出てくるが、その白ネズミの正体は白龍という年経りた龍。まともに戦っても勝ち目は無いが、白ネズミから変身する前に食い止めてしまえば、この雪の魔女を守る最大の難関を攻略することも難しくは無い。それと本作のイラストとも相まって、バンシー夜歩きなどデザインが精神的にくるモンスターがかなり登場する。
ファイティングファンタジーシリーズ10
地獄の館
S・ジャクソン著 教養文庫
地獄の館
 さまよえる宇宙船以来久しぶりの登場となる本家スティーブ・ジャクソンの作品。ファンタジー以外のジャンルのゲームブックに果敢に挑むジャクソンだが、今回はホラーゲームブックに挑戦。時は現代、豪雨の中を車を運転しているうちに道に迷った君は、白髪の老人をはねたと思った次の瞬間、溝にタイヤを落としていた。しかし、はねたと思った老人の姿は見当たらず、車も動かなくなったことから助けを求めて不気味な館に入りこんだ。しかし、それこそがキミにとって恐怖の一夜の始まりだったのだ。館のあるじであるドラマーの伯爵ケルナー卿は邪教を崇拝し、館にも邪教の使徒たちが、生贄を求めて集まっていた。
 このゲームブックの最も変わった特色は、技術点、体力点、運点のほかに恐怖限界点が存在すること。館の中で恐ろしい目に遭うたびに恐怖点が増えていき、恐怖限界点を超えると体力が残っていてもショック死してしまうのである。火吹山の魔法使いをはじめとするファンタジー世界のゲームブックを体験していると、ゾンビが登場しても思わず倒してやろうという気になるのだが、本作の主人公は、その恐怖に耐えられずダウンしてしまうので、できるだけ怖いものを見ないように用心しながら進めていく必要がある。しかも、ファンタジー世界の主人公と違って武器を持っていないので、武器を見つけるまでは技術点から3点引いた状態で戦わなければならない。館内において死体を見つけたり、不気味な肖像画を見たりするたびに、恐怖点は次第に加算されていく。ブランデーなどを飲めば、気持ちを落ち付けて恐怖点を下げることも出来るのだが、この恐ろしい館にはそんな安らぎは多くは転がっていないのだ。
 本来ならば一刻も早く館を脱出したいところだが、脱出することは不可能なので、恐怖を抑えて館のあるじを倒さなければならない。そのためには館内の唯一の味方である、マン・イン・グレイ(灰衣の男)から情報を聞き出して、あるじを倒す唯一の武器となるクリス・ナイフを入手する必要がある。しかし、館内は執事のフランクリンズマン・イン・ホワイトなど信用できない連中ばかりで、ゾンビーや屍鬼といったモンスターまで徘徊している。館の間取りも複雑で「アスモデュース」「メフィスト」といった悪魔の名を付けられた部屋がいくつも存在し、クリス・ナイフを見つける前に多くのプレイヤーは恐怖点が限界に達しショック死してしまうだろう。
 手順としては最初に館の2階から巡り、続いて1階と地階を探っていく。その中でも2階は複雑に部屋が入り組み迷路のようになっているがマッピングすることは不可能ではない。実際に巻末には訳者である安田均氏による白地図が載せられているので、どうしてもクリアできないという人は、この白地図に部屋の名前を書き込んでいけば攻略することができるだろう。部屋の名前が幾つもあって混乱すると思われるが、後で拷問屋のオーヴィルに会った時のためにも、しっかりと覚えておいたほうが良いだろう。
お気に入りキャラ→館の召使いのシーコウは、敵であるのだが、その臆病さから主人に対して忠実な召使いとは言えず、脅したりすかしたりすれば貴重な情報を入手できるので、うまく接することが大切である。それとヒントをもらうためとはいえ、死んでいるはずのモルダナ婆さんと会話するのは怖すぎる。
ファイティングファンタジーシリーズ11
死神の首飾り
J・トムスン、M・スミス著 教養文庫
死神の首飾り
 ファイティングファンタジーシリーズといえば、前作の地獄の館まではS・ジャクソンI・リビングストンの2人による作品がほとんどだったが、この作品以降は若きゲームブックの書き手たちが、シリーズの作品を書き続けていくことになる。そのため、本作はファンタジー系のゲームブックでありながら、これまでのアランシアの世界とは異なる世界となっている。冒険の舞台となるオーブの世界では、死神の使徒たちが死神をこの世界に呼び覚ますための首飾りを作り上げていた。そこで君の使命は、この死神の首飾りを消滅させることにある。何だか指輪物語の冥王サウロンの指輪を彷彿とさせる首飾りだが、この首飾りを破壊することは不可能に等しい。地球という世界から呼び寄せられた君が、元の世界に持ち帰ることだけが、首飾りを消滅させる唯一の手段なのである。
 十字軍の生き残りが死神の使途たちから奪い取った首飾りを、君は託されることになるが、冒険を続ける間、常に首飾りは死神の使徒に狙われ続ける。こうして重大な使命を背負わされることになった君は、まずは元の世界に帰る手段を見つけなければならないのだが、そのために向かった学問の都である荒れ野のグレイギルドで待ち構えていたのは、フェル=キリンラの寺院の女巫頭ホーカナである。死神の首飾りを狙っているのは死神の使途だけでなかったわけで、首飾りはホーカナに奪われてしまう。一人で首飾りを取り戻すのが難しいと判断した君は、盗賊組合と組んで首飾りの奪還に向かうことになるが、悪いヤツラと手を組んで冒険を達成させるといったパターンがおもしろい。そして、貴重な財宝ともなる死神の首飾りは、盗賊さえも怖れをなす狂気と混乱の神アナーキルを崇拝するチュチェフカサンドラのコンビなど数々の強敵を呼び寄せる。こうした危険を掻い潜りながら、元の世界に戻る方法を見つけ出さなければならないのだ。そして冒険の途中で死んだとしても、場合によっては君をオーブの世界に送り込んだ神の手によって復活させられるが、これは死よりも残酷かも知れない。
 前半はグレイギルドの町での冒険がメインとなるが、モローとボローニアスが作り上げた、ゴキブリとワニとオーガーの合成怪獣など、あまりゾッとしない戦いも待ち受けている。そして町を出てからは元の世界を目指して荒野を進むことになるが、そこではプテラノドントリケラトプスなどの恐竜が襲いかかって来る。その他にも、この荒野に出てくるモンスターはグリフォンやロック鳥など体力点の高いやつらが多い。こうした戦いを乗り越えて、果たして死神の首飾りを死守することができるのか…。
お気に入りキャラ→元の世界に帰る直前に立ちはだかるレッドドラゴンは、最後の難敵。ファンタジー系のゲームブックには数多くのドラゴンが登場するが、ここまで老獪なドラゴンというのも珍しい。ゲームブックの中でも一、二を争う狡猾な敵と言えるだろう。
ファイティングファンタジーシリーズ12
宇宙の暗殺者
A・チャップマン著 教養文庫
宇宙の暗殺者
 死神の首飾りに続く若き書き手によるゲームブック第2弾。そして、さまよえる宇宙船に続くSFゲームブック第2弾。宇宙の暗殺者である君の使命は、狂気の科学者サイラスを倒すことにある。多くの惑星から人間をさらって実験台にしてきたサイラスは、生物学的実験として君の住んでいる惑星に放射性同位元素と悪性のウィルスを撒き散らそうとしている。それを阻止するために、サイラスの巨大宇宙船ヴァンダーベッケン号に潜入し、やつを探して倒さなければならないのだ。
 このゲームブックの大きな特徴は、戦闘が銃撃戦で行われることにある。最初に電撃銃熱戦銃のどちらかを選んで、相手にダメージを与えていく。電撃銃は相手に2点のダメージを与えられるが、熱戦銃ならサイコロを振った目の数だけダメージを与えることができる。しかし、冒険の最初に持っていけるアイテムは最初にサイコロを1個振って得た購入点の分だけなので、購入点が1点の電撃銃なら、手榴弾や重力爆弾が買えるのに対して、熱戦銃は購入点が3点もするので、あまり他のアイテムが買えなくなってしまう。また本作では通常の技術点、体力点、運点に加え、サイコロを1個振って6を加える装甲点というものが設けられており、相手の攻撃が命中したとしても、サイコロを2個振って装甲点以下ならばダメージを負うことが無い。もし、最初の装甲点が低かったとしても、アイテムを買う代わりに購入点を使って装甲点を高めることもできるのである。ちなみに、この装甲点は冒険を進めていくうちに弱くなっていくので注意が必要である。
 作者のチャップマンは、独特のユーモアセンスを持っているらしく、数学の問題が大好きなザルク人や、そいつを平方根の定理で煙に巻くセファロ・リスなど、奇妙なキャラを排出している。そんな彼のユーモアは、異次元転送機というアイテムにも反映されている。これを使えば、敵キャラを一瞬にして、異空間に葬り去ることが出来るが、魔神が現れ高い報酬を要求されるというシロモノ。あまりにも多くの敵を消し去ったりすると、それは高い代償となって返ってくる。このように初めて作り上げたゲームブックに多くのアイデアを盛り込んできたチャップマンだが、その中でも市街戦ウォーゲームは、自分の戦車を東西南北に進めて戦況指数をスコアシート書き込んでいきながら、敵の戦車を破壊するという複雑なものとなっている。これは良くできているものの、文章で表現するにはルールが複雑すぎたのではないだろうか。
 ヴァンダーベッケン号の中には、サイラスが生み出したミュータントや、ロボット監視員が存在しており、サイラスのもとに到達するのは容易ではない。その途中では、宇宙船の中にも関わらずドーナツ型の惑星に放り出されたりして、有翼サソリやミュータントとの戦いも強いられたりする。それでも、悪の親玉であるサイラスは、強化スーツを着用して戦いを挑んでくるものの、決して倒せないほどの強敵では無かったりする。
お気に入りキャラ→思考するキャラの中でも、ヴァンダーベッケン号のパイロットロボットは、意識と無意識とか従自我など、常に難しいことを哲学している変わり者。放っておく分には問題ないが、ヘタに相手をすると、安らかな死を提供してくれるかもしれない。
ファイティングファンタジーシリーズ13
フリーウェイの戦士
I・リビングストン著 教養文庫
フリーウェイの戦士
 S・ジャクソンに比べて、リビングストンはストレートな作風のゲームブックを出す作家だと思っていた。そのリビングストンが、こんな作品を出したのだから驚きである。フリーウェイの戦士は、火吹山の魔法使いから連なるファンタジー世界のゲームブックとは違い、かといってさまよえる宇宙船宇宙の暗殺者のようなSFや、地獄の館みたいなホラーといったわけでもなく、荒廃した近未来世界でのカーバトルを主体にしたゲームブックになっている。
 時は、2022年8月21日、サッカーのワールドカップの決勝が行われようとしていた日、ニューヨークで発生した原因不明の疫病は、たちまちのうちに全世界に広がり、全人類の85%が死滅した。人々は世界の復興をはかろうとするが、同時に無秩序と暴力を好む集団も生み出されていた。ニュー・ホープの町に住む君の使命は、かつて石油の精製所があったサン・アングロの町まで赴いて、食料と交換に1万リットルのガソリンを受取ってくることにある。このガソリンさえあれば、町は息を吹き返すことができる。はたして、無法者たちの手をかいくぐって、使命をはたすことができるのか…。
 目的遂行のために与えられたのは、最高の設備を備えた車であるダッジ・インターセプター。そのため自分の技術や体力だけでなく、車の火力点装甲点もサイコロを振って決めて行く。火力点は車に取り付けられている機関銃の威力を示し、装甲点は車がどれぐらいのダメージに耐えられるかを表している。仮に自分の体力が残っていても、車の装甲点が0になれば、車両が破壊されたということになり、ゲームオーバーになってしまう。ダッジ・インターセプターの武器装備は機関銃のほかに、敵を一撃で破壊できるロケットランチャー4発に、鉄びし投射機3回分と、オイル噴霧器が2回分である。この武器を駆使して、敵の車両とバトルを繰り広げて行かなくてはならない。また、戦いに勝利したとしても、途中でガソリンを見つけて補給していかなければ、ガス欠でゲームオーバーになってしまうというかなりシビアなゲームなのである。
 なお戦闘は車両戦だけでなく、車を降りて自分で戦う場合もあるが、これも素手での戦闘と射撃戦に分けられる。素手での戦闘は他のゲームブックとあまり変わらないが、体力点がゼロになったらではなく体力点を6点失ったら気絶したことになりゲームオーバーになってしまう。射撃戦も体力点を6点失った方が負けとなるが、素手での戦闘が2点ずつ体力を減らしていくのに対し(つまり3回ダメージを受けた方が負け)。射撃戦ではサイコロを振った目だけ体力を失う。つまり6が出たら致命傷ということで1回で戦闘終了である。そういう意味では装甲点が互いにゼロになるまで続けられる車両戦の方が、従来のゲームブックの戦闘に近いものと言えるだろう。
お気に入りキャラ→世界が滅亡してしまったため、至るところにイカレタ連中が溢れ返っているが、中でも無法者集団「呪いの野犬」のリーダーであるアニマルは、上半身は裸で顔に黒の覆面をかぶっている北斗の拳に出てくる悪党のような危ないヤツなのである。それと車にスーパーチャージャーを取り付けてくれる火の玉ピートは、こんな世界でも車を修理する技術で生き抜いている職人気質のおっさんである。
ファイティングファンタジーシリーズ14
恐怖の神殿
I・リビングストン著 教養文庫
恐怖の神殿
 リビングストンによる雪の魔女の洞窟以来となる久しぶりのアランシアを舞台にした正統派ファンタジーゲームブックである。雪の魔女の時の寒さと氷に囲まれた冒険とは打って変わって、灼熱の砂漠を舞台にした冒険で、暑さと渇きに苦しむことになる。運命の森でお馴染みのダークウッドの森に捨てられ、闇エルフに育てられた邪悪な心の持ち主マルボルダス。恐るべき力を持つ彼はどくろ砂漠の失われた都ヴァトスで、眠れる龍に命を吹き込んで悪の軍団を指揮するまでに成長しようとしている。君にかせられた使命はマルボルダスより先に、ヴァトスに向かって命を吹き込む前に5つの龍の飾りを破壊してしまうことにある。
 冒険を手助けしてくれるのは、ダークウッドの森と言えば、ヤズトロモの登場である。カギを開けられる開門の術、人間型の生物を眠らせる眠りの術、光の矢を発射させる魔の矢の術、どんな言語でも話せる言葉の術、どんな文字や記号も読めるようになる絵解きの術、暗い場所を明るくする光の術、火の防壁を作りだせる炎の術、ジャンプ力を高める飛躍の術、危険な罠を警告してくれる罠さがしの術、手の中に水を生み出す水の術といった10の魔法の中から4つだけ教えてもらって冒険に旅立つことになる。しかし。まずは砂漠を越えてヴァトスを見つけ出すまでが一苦労なのである。どのルートを通るにしても危険がつきまとうし、途中で水筒を手に入れなければ(水の術を覚えていない限り)、渇きで体力を失うことになる。
 そしてヴァトスに辿り付いた君を待っていたのは、マルボルダスが送りこんだ死の使者のワナ。このモンスターは戦闘能力は無いが、こいつに呪いをかけられると、冒険の途中で「D」「E」「A」「T」「H」の5文字を見てしまったら即座に死が訪れることになる。この文字は至るところに巧妙に仕掛けられていて、宝だと思って箱を開けると文字が出てくるので、一つ一つの行動に恐怖が付きまとう。見つけるべき龍の飾りは5つだが、それを探そうとするとDEATHの文字が目に入ってしまう。果たして死を迎えることなく全ての龍の飾りを見つけ出すことができるのか。そして龍の飾りを打ち砕くことができるのは、運命の森で苦労して見つけ出した戦のハンマーだけなのである。ちなみに全ての龍の飾りを見つけ出しておかなければ、マルボルダスは倒すことができない。ここはDEATHの文字を恐れずに龍の飾り探しに挑戦してほしいところである。
お気に入りキャラ→マルボルダスも恐ろしいが、ヴァトスを支配している女神リーシャも油断ならない存在となる。神殿の兵隊たちは、全てリーシャのしもべなのだから。また、砂漠で行商しているアブジェルからは金が許す限り、水晶のカギや黒檀の仮面などのアイテムを購入することができる。彼から得た物はヤズトロモの魔法に劣らないぐらい役に立ってくれるはずである。
ファイティングファンタジーシリーズ15
宇宙の連邦捜査官
A・チャップマン著 教養文庫
宇宙の連邦捜査官
 タイトル通り、主人公である君の職業は宇宙の連邦捜査官。目的はアレフ・シグニ星系で横行している麻薬セイトフィル−Dを取り締まることにある。いったい麻薬はどこで誰が精製しているのか。聞き込みなどの調査を進めながら、組織の正体を付きとめるのが君の使命だ。もし宇宙でなく地球を舞台にしていたら、そのまま本格的な刑事ものとして通用するような渋い作りのゲームブックなのである。戦闘方法は宇宙の暗殺者でも出てきた熱線銃による銃撃戦がメインとなる。素手での戦闘では相手の体力を2点ずつ引いていくのに対し、銃撃戦では負けるたびに4点ずつ体力点を減らすことになる。さらには、宇宙船同士で戦闘を繰り広げるパターンもある。この宇宙船での戦闘の場合、通常はフェザー砲を使って相手の宇宙船の防御力を1点ずつ削っていくが、スマートミサイルを使用すれば、一発で戦いの決着がつく。ただし、スマートミサイルは2基しか積んでいないので、よっぽどの時でないと使用を控えた方が無難であろう。
 しかし、捜査を進めていっても、麻薬組織の秘密を付きとめるのは容易ではない。惑星ケサールの警察機構ですら、組織に買収されており、味方になってくれないどころか、ウソの情報を流してくる始末。そこで、酒場や図書館で情報を収集しながら、数少ない味方から話を聞いてまわることになる。もちろん、お金を使って情報を集めることもできるのだが、所持金にも限界があるので、うまく使っていかなければならない。このように難解な事件の調査を進めるというのは、ゲームブックとしても向いているように思えるが、ファンタジー系のゲームブックと比べて、登場するキャラの個性が薄くなるためか、あまり作られなかったのは残念なところである。
 そうした苦労の果てにつきとめた麻薬組織の主犯格は二人の人物であった。一人は、ならず者連中を束ねている、下品で巨体な女のゼラ・グロス。そしてもう一人が、ケサ−ルを取り巻く小惑星に拠点を構え、麻薬製造を進めている諸悪の根源とも言うべき男ブラスター・バベット。彼が拠点にしている基地は、いくつもの危険なワナが仕掛けられているが、それを乗り越えて彼を捕獲することで目的が達成されるのである。
お気に入りキャラ→闘うのは麻薬組織の悪党連中がほとんどだが、宇宙が舞台なのでロボットや怪物も登場する。その中でも異教徒集団が神としてあがめている古代カイスの偉大なる古老のデザインの不気味さは格別。対応を誤ると丸呑みにされてしまう。
ファイティングファンタジーシリーズ16
海賊船バンシー号
A・チャップマン著 教養文庫
海賊船バンシー号
 それまで全て攻略してきたファイティングファンタジーシリーズの中で、ついに目標を達成できなかったのが、この海賊船バンシー号である。買ってから20年以上たった今でもハッピーエンドには至っていない。主人公の君は海賊船バンシー号の船長。ライバル海賊のアブダルと、どちらが優れた海賊か張り合ったことから冒険の火蓋が気って落とされた。互いにタクの港を出発して50日以内にニプール島に到着して、その時点で多くの財宝をかき集めた方が勝ちというのがルール。様々なルートでゴールにたどり着くことができるにも関わらず、規定の日数内でアブダルに勝てるほどの財宝を集めるという勝利条件をクリアするのが難しい。他のゲームブックなら間違ったルートを通ると死に至るので、何度かプレイしているうちに正しいルートを見つけることができるが、海賊船バンシー号はベストな選択でなくても、ゴールに着けてしまうところが逆に攻略を困難なものとしている。しかも、航海日誌が偶数日か奇数日によっても起きる出来事が変わってくるので、攻略に至るルートを見つけ出すのは容易なことではない。おもしろいことに、船が遅れたり運が悪くて戦闘になったりすると財宝が手に入る場合があるので、スムーズに航海が進めば良いというわけではないのである。
 自分の技術点や体力点の他に、乗組員全員の攻撃力にあたる乗組員襲撃力点乗組員戦力点をサイコロを振って決める必要がある。海賊らしく集団戦闘も頻繁に行われるので襲撃力点は重要なポイントとなる。集団の戦闘においては、襲撃力点が技術点、戦力点が体力点に相当するものとなる。そして、自分の体力が残っていても部下の戦力がゼロになったらゲームオーバー、また戦力が下がると船の速度も遅くなり、航海に時間がかかるので注意が必要である。ニプール島へは様々なルートが存在するが、楽な道のりだと財宝は集まらず、かといって多くの島を巡っていると規定の日数をオーバーしてしまう上に、体力や戦力がゼロになる可能性も高い。いかに、時間を取られず多くの財宝が得られるルートを見付けることができるかが攻略のカギとなる。
 危険な航海を続けているうちに乗組員が減って戦力が下がってくるが、途中の町で乗組員を補充することも可能。しかし、当然のごとく所持金は減ってしまうので、お金を大事に取っておくか、船員を買って後の航海を楽にするかは迷うところである。これまでゲームブックの主人公といえば正義のために戦ってきたが、今回に限っては海賊船の船長だけあって正義の側の人間というわけではない。さすがに主人公だけあって残虐非道な行為は行わないし、手下の海賊のことを気にかけたりはするものの、町を襲って奴隷を集めたりするなど、ゲームブックでは珍しいタイプの主人公と言える。
お気に入りキャラ→実はこの主人公、賭博に負けてジアミル・エル・ファズークには金貨1000枚の借金が有る。こいつに出会ったら借金のカタに船を取り上げられ、冒険どころじゃありゃしない。
ファイティングファンタジーシリーズ17
サイボーグを倒せ
S・ジャクソン著 教養文庫
サイボーグを倒せ
 ホラーゲームブックの地獄の館から久しぶりに帰ってきたS・ジャクソンが新たに打ち出したゲームブックのジャンルは、バットマンやスパイダーマンのようなアメリカンヒーローが活躍するというものだった。君の正体は恐怖結社であるヨーロッパ・アメリカ破壊連合の企みを阻止するために立ち上がったシルバー・クルセダー。組織の秘密会議が行われる日時を突き止めてボスのウラジミル・ユトシュスキーを逮捕しなければ、タイタン・シティは絶望に叩き落されることになる。そんな君には常人には無い、特別な能力がある。その特殊能力とは、空を飛びすさまじいパワーを持つスーパーマンのような超体力、人の心を読んだり操ったりできる思念力、ドラえもんのような秘密の科学道具を駆使する超技術、体内から強力な電気を発する電撃の4つ。この4つの中から1つを選んでスーパーヒーローとして活躍することになる。秘密会議の日時や場所を入手するルートは、4つの能力のどれを選ぶかで変わってくる。つまり、このゲームは選んだ能力によって最低でも4回は楽しむことができるのである。
 このゲームブックに登場する悪人連中は、電動のこぎりを振り回して暴れる電動のこブロンスキーや、アメフト会場を怪力で破壊しようとする虐殺鬼のイリヤ・カルポフ、水道に毒を流そうとする毒殺魔など、いかにもアメコミに出てきそうなヤツばかり。それぞれの怪人とシルバー・クルセダーが持つ特殊能力には相性があるので、最初に選んだ能力によって勝てる相手と勝てない相手がいる。自分の能力を活かして怪人を倒して行かないと秘密会議が行われる場所に乗り込むことができないのだ。なお敵のボスであるウラジミル・ユトシュスキーは強力なチタニウム・サイボーグで、回路妨害器が無くしては、とても勝てる相手では無いだろう。
 また、技術点、体力点、運点を決めるのは他のゲームブックと同じだが、超体力を選んだ場合のみ技術点は最初から13点となっている。そして、普通のゲームブックなら相手の体力をゼロにすれば戦闘は終わりとなるが、スーパーヒーローである君は、どんな悪人であれ殺してはいけないので相手の体力が1〜2点となった時点で気絶させたということで、戦闘は終了する。なお、このゲームブックには英雄点というものが存在し、ヒーローとして活躍するたびに英雄点は増えていき、相手を殺してしまったりすると英雄点は減っていく。ゲームをクリアするのに英雄点は関係ないが、ヒーローの資質をはかるポイントとなるのだ。
 このゲームブックが発売された当時は、バットマンも封切られる前のことで、アメリカンヒーローのことも良く分からなかったが、改めて読み返してみると、アメコミに登場するような狂騒的な悪人キャラが実にうまく描かれていると思う。さらに、怪人との戦い以外にも、ビーチに現れたサメ退治や、交通事故の処理などヒーローの活躍が満載されているのである。
お気に入りキャラ→本書で登場する悪人たちは実に魅力的な連中だが、拷問鬼のリチャードは彼女にふられた思いから飛行機をハイジャックしてしまった困ったさん。また、ブレイン・チャイルドは普通のあどけない少年であるが、彼の見た夢は全て現実世界に出てきてしまう要注意人物だ。
ファイティングファンタジーシリーズ18
電脳破壊作戦
R・ウォーターフィールド著 教養文庫
電脳破壊作戦
 2070年から始まった宇宙への植民計画。一番初めに人類が到達したのは惑星トロポス。この星では、地球ですたれつつある規律ある世界が築き上げられていった。そして次に人類が訪れたのは、惑星ラディクス。この星は気候が温暖で、働かなくとも暮らしていける状態であったため、怠惰な文化が形成された。さらに、遠くの世界を目指し人類がたどりついたのが、惑星ハルマリス。しかし、ハルマリスは寒風吹きすさぶ、人が住むには適さない惑星だった。そこで、人類はさらに遠い惑星を目指し、ついに西暦2285年、惑星アルカディオンという禁断の扉を開いてしまったのである。
 アルカディオンにはすでに先住民俗が存在していた。そしてアルカディオン人は、地球人がもたらした宇宙航法に目をつけ、地球に向けて侵略を開始したのである。アルカディオン人の意思は全て中央コンピュータで統括されており、人類とは比べ物にならないぐらいの統率力を誇っていたのである。たちまち、人類は敗北し、アルカディオン人の奴隷となった。しかし、人類にはたった一つ逆転のチャンスが残されていた。アルカディオン人の力の源である中央コンピュータさえ破壊すれば、全てのアルカディオン人は無力と化すのである。主人公の君の使命は惑星アルカディオンの中央コンピュータを破壊することにある。
 しかし、中央コンピュータは強力な監視体制に守られている、侵入するには二進数で9桁のコード番号を知る必要がある。そのためアルカディオンに向かう途中で、トロポス、ラディクス、ハルマリオンの各惑星に立ち寄り、協力者から3桁ずつコード番号を聞き出して行く必要がある。このコードを各惑星で、きちんと聞き出しておかないと中央コンピュータに潜入することが出来ず、ゲームオーバーになってしまうのだ。本作ではアルカディア人に敵意を持っていることを隠して行動しなければならないので、慎重な行動が要される。時には卑屈な態度を取らなければならないが、どんな手段を使ってでも各惑星で短い滞在期間内に協力者からコード番号を聞き出さなければならないのだ。
 戦闘方法は他のゲームブックと比べて大きな違いはないが、素手での戦闘の場合、君はアルカディア人の急所を熟知しているので、戦闘に勝った際にサイコロを振って6の目が出れば、相手の体力が残っていても即死させたことになる。なお持ち物が反重力パックに入る6つまでというのが、他のゲームブックとは大きく異なる。ちょっと変わっているのが、ハルマリスを出てからアルカディオンに向かう宇宙船の中で繰り広げられた中央アルカディア人との脳内戦闘。脳の中の幻想世界での戦いを勝利することで、洗脳から逃れることができるといったものだが、チャップマンにしろ何故かこの頃のゲームブックの書き手は哲学的なものを作品に取り入れようとする傾向があったようだ。地球の運命というシリーズの中でも、最も重いテーマを背負っている作品だが、果たして君は見事、コンピュータを破壊できるだろうか。
お気に入りキャラ→ラディクスの街を警備する円筒形のロボットであるストリート・ファイターは、その名にふさわしい、無機質の破壊者。学生デモを鎮圧するために作られた、この恐るべき物体はラディクスの街並みをズタズタにしてしまった。
ファイティングファンタジーシリーズ19
深海の悪魔
S・ジャクソン(米)著 教養文庫
深海の悪魔
 サソリ沼の迷路以来、久しぶりとなるアメリカのスティーブ・ジャクソンの登場である。七つの海を渡り歩いてきた主人公である君を襲ったのは悪名高い海賊のブラッド・アックス船長。そのブラッド・アックス船長に捕まってしまった君は、両手を縛られ重石をつけられたまま海の中に突き落とされてしまう。しかし、偶然にも落とされた場所の海底に特別な魔法がかけられていたため、1日だけ水中で呼吸できる能力を手に入れることができた。命を取りとめた君の目標は、海底に眠る特別なアイテムを手に入れて、その力でブラッド・アックス船長に復讐することである。
 久しぶりの正統派ファンタジーのゲームブックの登場で、戦闘方法などはシリーズの他の作品と同じだが、冒険の舞台となるのが海の中というのが変わっている。そうしたことによって起こったのが、金貨のデフレ現象。いつもの冒険ならば金貨が50枚や100枚出てきて、それで武器を買ったりするのだが、海底だけあって金貨が全く流通していない。冒険の終盤で金貨2枚を打ち鳴らせば海ドラゴンを呼び出せるというくだりがあるのだが、その金貨2枚ですら保持するのが一苦労である。そして、海の中では、海蛇やウツボなどの危険な生き物が君に襲いかかってくる。こうした生き物とは地上同様に剣で戦っていくことになるのだが、それ以外に手助けとなるアイテムが道具魚である。人魚から購入できる道具魚はノコギリ鮫オノ魚キリ魚ホタルイカの4種類。これらの道具魚が、それぞれ1度だけだが、君の冒険をを助けてくれる。
 水の中で息が出来る魔法の効力は1日だけなので、その間に海賊を倒す手段を手に入れて、海面に浮上しなければならない。さらに、海にいる間にブラッドアックス船長の海賊船は移動してしまっているので、海賊船までたどり着く手段を冒険の中で確保しておく必要がある。そして、ブラッドアックス船長の海賊船を見つけてから先のクリアする手段は1通りではなく、海ドラゴンを呼び出して襲わせても良いし、道具魚を使って海賊船を沈めても良いし、黒真珠を使って骸骨の軍団を召喚して戦わせても良い。また、ブラッドアックス船長を倒せなくても、生きて帰ることもできるので、そこそこのハッピーエンドというラストも用意されている。海の中とはいえ、グレイロックと名乗る不思議な老人や、イルカのキークウィートなど、協力者は少なくない。彼らの助けを得られれば、君のブラッドアックス船長への復讐も、きっと成功することだろう。
お気に入りキャラ→この作品で、お気に入りキャラと言えば、剣魚人シラノしか考えられません。シラノ・ド・ベルジュラックをモデルにした、このキャラから教えてもらった剣技は、必ず冒険の役に立ってくれるに違いない。
ファイティングファンタジーシリーズ20
サムライの剣
J・トムスン、M・スミス著 教養文庫
サムライの剣
 フジヤマ、ハラキリ、ゲイシャと、日本のことを何か間違って認識して作られてしまった外国の映画や小説は数多く存在するが、このサムライの剣は、そうしたテイストが感じられるゲームブックなのである。タイタンの世界には、これまでのシリーズの舞台となったアランシア、ソーサリーシリーズの舞台となたカーカバードと、暗黒大陸クールが存在する。そのクールの東海岸に位置するところにある八幡国は、将軍の長谷川喜平によって治められていた。しかし、将軍に力を授けていた鍔鳴りの太刀闇将軍イキルによって盗まれてしまった。剣聖である君の使命は、鬼軽城に赴いてイキルを倒して、鍔鳴りの太刀を取り返すことにある。
 いろいろと他のゲームブックと違う点の多い作品だが、何といっても異色なのが名誉点の存在。侍の名を汚すような不名誉な行いを取る度に、最初に3点あった名誉点が減っていきゼロになると切腹の儀式を行わなければならない。また、プレイヤーは侍の特殊能力を持っているという設定で、弓術、居合術、猿飛の術、二刀流の中から一つを選んで冒険に挑むことになる。弓術を選んだ場合は、柳葉の矢、威力の矢、鎧通しの矢、かぶら矢を3本ずつ全部で12本の矢を持って冒険に挑む。射合術を持っていれば敵との戦闘で真っ先に3点のダメージを与えることができる。猿飛の術があれば曲芸師のように高く跳躍できる。二刀流は敵との戦闘で第一ラウンドに限り、サイコロで9以上の目が出たらもう一度攻撃することができるのだ。
 鬼軽城までは様々なルートが存在するが、基本的には1から分岐する葉隠橋から処水山へ向かうルートと、浅瀬川から水グモ沼を通る2つのルートがメインとなる。葉隠橋コースでは将軍を裏切ってイキルに寝返った貞信公や亡霊武士との戦いが待っており、浅瀬川コースには夜になると村人が妖怪と化すろくろ首の村や河童が住む沼などが存在する。そして、それぞれの冒険を乗り切るたびに、様々なアイテムを入手するが、それらのアイテムは後で助っ人を増やすのに必要となってくる。
 敵の居城を前にして、強大な魔力を持つ大鬼との戦いになるが、その前に7つの扉を選んで味方になってくれる助っ人を得るチャンスが与えられる。この時に仲間となってくれるのは、剣歯虎キリン不死鳥大蛇黄金騎士団女魔法使いエリノアの7つ。どれを仲間にできるかは、これまでにどのルートを通り、どのアイテムを手に入れてきたかで変わってくる。大鬼と戦う前に、敵が送り出す大ガマ大カマキリ青銅の魔人ガルガンチュワとの三番勝負となるが、味方につけた仲間を、勝てる相手にうまくぶつけていかなければならない。その三匹を倒してからが大鬼との決戦となる。しかし、大鬼を倒しても亡霊武士が抜け出てくるって、風来のシレンみたいだな。そして、いよいよイキルとの戦いになるのだが、名誉点さえ高ければ、この最後の戦いは楽勝なのである。
お気に入りキャラ→謀反者である戸田公の家来の唯一の生き残りで浪人として生きる道を選んだ余呂銀斎は侍を憎む豪勇無双の剣士である。また、貞信公の城に乗り込む際に貞信公の家臣であった弓常茂市が裏切って仲間になってくれるのだが、ゲームブックで仲間になるキャラは短命に終わる宿命からは逃れられず、彼もまた非業の最期を遂げることになる(ただし死なないパターンもあり)。
ファイティングファンタジーシリーズ21
迷宮探検競技
I・リビングストン著 教養文庫
迷宮探検競技
 リビングストンの最高傑作として称された死のワナの地下迷宮の続編にあたる作品。あのすさまじく底意地悪く作られた悪夢のような迷宮が、さらにパワーアップして帰ってきた。主人公である君の不幸はファングの町の地下迷宮を作り上げたサカムビット公の兄であるカーナス卿の奴隷となってしまったことから端を発する。実は、この兄弟がものすごく仲が悪かったりするわけで、カーナス卿は弟のサカムビット公が攻略不可能と自慢する迷宮攻略を、自分の奴隷に攻略させて鼻をあかしてやろうと企んでいた。しかし、一度攻略された地下迷宮は、改造されて難攻不落なものに姿を変えていた。前回は金貨1万枚だった賞金も2万枚に倍増。もっとも奴隷である君は、それをもらう権利は無く、その代わりに命だけは助けてもらえるというのが条件だった。
 あまりにもくだらない兄弟げんかに巻きこまれ命をかけるハメになった君だが、この迷宮探検競技に参加する資格を得るまでが一苦労。同じ境遇の42人の奴隷と競い合って勝ち残った1名だけが参加を許されるのである。冒険の序盤は奴隷同士での迷宮探検の参加権を賭けた勝ち抜き戦となるが、骨くだきとの勝負や目隠しをしてのバトルロイヤルなど、過酷な殺し合いを乗り越えて、初めて迷宮に乗り込むことが許されるのである。そんな苦労の末に参加することになった今回の迷宮探検競技に挑戦者するのは、自分の他に、カオスの王者東洋の武将エルフの王子ドワーフの貴族の4人。彼らとは迷宮のどこかで出会うことになるのだが、敵か味方かどのような形で遭遇することになるかは、出会うまでのお楽しみ。
 そして、このゲームブックの最大の難点は攻略が難しすぎるということにある。前作の死のワナの地下迷宮があれほど難しかったのに、さらに難易度を上げたため、絶対に攻略が不可能と思えるほど難しいものとなっている。その最大の要因となっているのは、迷宮攻略に必要となってくる黄金の指輪の存在で、迷宮の出口にたどり着く前に9個も指輪を集めなければならない。さらに、9個の指輪をパネルに組み込む正しい組み合わせも、迷宮の中で入手しなければならないことを考えると、いかに攻略までの道のりが困難かがよく分かる。迷宮に立ち並ぶ幾つものドアを無視していけば、出口までたどり着くのは簡単だが、それでは指輪を集めることはできないのだ。幾多の罠を乗り越えて指輪が集まる正しいルートを進み、ゴールにたどり着くのは、奇跡と言っても良いぐらいの確率なのである。ゾロアや火炎魔人など技術点が10以上のモンスターが多いのも本作の特徴。果たして自分を迷宮に送り込んだカーナス卿に一泡吹かせてやることはできるのか。
お気に入りキャラ→前作も迷宮には中間と最後に競技監督が控えていたが、今回もサカムビット公の家来のノイが中間地点に、そして迷宮の最後に大魔術師レクサスが競技監督として雇われている。この二人の出す難題を乗り越えないと迷宮攻略は不可能なのである。
ファイティングファンタジーシリーズ22
ロボットコマンドゥ
S・ジャクソン(米)著 教養文庫
ロボットコマンドゥ
 機動戦士ガンダムから端を発する80年代後半のロボットブームはすさまじいものがあった。それは日本に留まらずアメリカにまで飛び火し、バトル・テックというロボットが大活躍するボードゲームまで誕生したくらいである。さらに、そのブームの後押しを受けて登場したのが本書「ロボット・コマンドゥ」。ファンタジーもののゲームブックと異なり主人公はロボットに搭乗して冒険を進めていくことになる。パイロットとなる君の技術、体力、運を決めていくのは他のゲームブックと変わらないが、それ以外にもロボットの装甲点や速度まで決まっている。また、それぞれのロボットには敵に2倍の攻撃を与えられるなどの特殊能力も設定されているので、どのロボットに乗るかによってクリアできるかどうかも決まってくるのである。
 冒険の舞台となるタロス国はロボットを製造できる技術を持ちながら、恐竜も生存しているという奇妙な世界。そこへ敵国であるカロシアンが攻め込んできたのだが、敵の攻撃によりタロスの全国民が眠りにつかされてしまった。不思議なことに眠りに落ちなかったのは主人公の君だけ。そこで、全員眠っているであろうと油断しているカロシアンの隙を突いて、たった一人のレジスタンスとなって立ち上がることになる。
 まず、冒険が始まって頑丈な歩行タイプ高速の飛行タイプの、どちらのロボットに乗るかの選択を迫られる。この、どちらを選ぶかによって、これからの戦いも変わってくるが、この最初に手に入れたロボットでは攻略することは不可能。冒険の途中で新しいロボットを見つけて乗り換える必要が出てくるのである。飛行タイプから歩行タイプへ可変できるものもあるが、そのロボットが国のどこにあるかは、自分で探し出さなければならない。さらに敵はカロシアンだけではない、タロス中にいる恐竜とも遭遇したら戦わなければならないのである。
 アメリカ人のスティーブ・ジャクソンが書いたゲームブックだけあって、自由度も高くエンディングも複数用意されるなど、かなり楽しめるゲームブックになっている。その代わり攻略に向けて、どれぐらい進んでいるかが判断しづらく何度もプレイしないと全貌が見えてこないという問題がある。ある意味、ゲームブックの新しい方向性を示唆した作品であったが、できれば同ジャンルで日本人が作ったものをプレイしてみたかったという思いが残る。
お気に入りキャラ→敵国カロシアンを指揮しているのは、ずる賢さでは右に出るものは無いと言われているミノス。たった一人でカロシアンを敵に回すのは無謀な行為に思えたが、カロシアンには独特の決闘ルールがあるので、1対1の戦いで彼に勝てば国が救われるのである。
ファイティングファンタジーシリーズ23
仮面の破壊者
R・ウォーターフィールド著 教養文庫

残念ながら未プレイです。
ファイティングファンタジーシリーズ24
モンスター誕生
S・ジャクソン著 教養文庫
モンスター誕生
 ファイティングファンタジーシリーズの舞台となるアランシアにはヴォルゲラ・ダークストームに師事し、魔法の教えを受けた忌まわしき3人の魔術師がいた。一人は火吹山の魔法使いと恐れられたザゴール。もう一人はバルサスの要塞でモンスター軍団を指揮したバルサス・ダイア。そして最後の一人が、エルフの宝である煙の謎を探りアランシアを支配しようとするザラダン・マーだった。今、最凶の敵が君の前に立ちはだかる。本書はイギリスのS・ジャクソンの作品だが、彼がファイティングファンタジーシリーズでファンタジー世界のゲームブックを手がけるのは2巻のバルサスの要塞以来。そして、この作品から完全に監修に回ってしまったので、彼にとってファイティングファンタジーシリーズ最後の作品となってしまったのである。
 さて、そんな冒険の主人公となる君だが、ゲームを始めてすぐに奇妙なことに気づくだろう。気がつくと目の前で恐怖に怯えているドワーフを、意思とは裏腹に殺してしまうのだ。何と主人公である君は人間ですらなく、額には鱗があり背中には棘が生えている1匹の恐ろしい怪物になっているではないか。相手の話している言葉も理解できず、知性すら持ち合わせていない。普通のゲームブックならば西へ行くか東に行くか判断するところを、本能のままに動くので全てはサイコロ任せである。こんな状態で、どのように冒険を進めていけば良いのか、不安に駆られながらもページをめくっていかなければならない。
 しかし、怪物であるがゆえの利点もある。あまりの強さに戦闘の際にサイコロでゾロ目が出れば、一瞬で相手を即死させられるのである。そのため戦闘では、かなり有利となるのだが、自分のキャラが思い通りに動かせないのは、かなりつらいものがある。そんな厳しい冒険の成功のカギとなるのは、ザラダン・マーが探しているエルフの煙。地下迷宮の中でエルフの煙をあびることができれば、理性が備わり言葉も理解できるようになるなど、人間に近づいていくのである。
 それでもゲームをクリアするのは、かなり困難である。最大の難関は冒険前半で展開される地下迷宮なのだが、複雑に入り組んでいるためマッピングをするのも難しい。そのため何度プレイしても正しいルートが見えてこないのである。しかも、あるアイテムやヒントを得ていれば、見ているパラグラフに特定の番号を加えろといった指示が多く、それを見落とすだけでクリア不可能となるので、迷宮の最後に立ちはだかるハーフ・エルフのゾンビであるダラマスを倒すのは至難の業となる。実は、モンスター誕生をクリアできなかった自分は、このS・ジャクソン最後の作品とともにファイティングファンタジーシリーズを打ち止めにしてしまったのであるが、これ以降の作品は入手する機会があったらいずれまた。
お気に入りキャラ→仲間へのメッセージを地下迷宮のサイ男から託されるのだが、後に出会った仲間のサイ男から、「妹は生きているのか」と言われて、さっきのサイ男がサイ女だったことに驚かされる。
ファイティングファンタジーシリーズ25
ナイトメアキャッスル
P・ダービル・エバンス著 教養文庫

残念ながら未プレイです。
ファイティングファンタジーシリーズ26
甦る妖術使い
T・リビングストン著 教養文庫

残念ながら未プレイです。
ファイティングファンタジーシリーズ27
スター ストライダー
L・シャープ著 教養文庫

残念ながら未プレイです。
ファイティングファンタジーシリーズ28
恐怖の幻影
R・ウォーターフィールド著 教養文庫

恐怖の幻影
 本作の最大の特徴は主人公が人間ではなく、森エルフのシャーマンだということにある。そのため魔法も使うことができるのだが、森エルフの最大の能力は夢をコントロールできることだ。夢を通じて活路を見出したり、危機を乗り越えたりすることができるのだ。冒険の舞台となるのは、サムライの剣でも登場したクールの地であり、森エルフの君が冒険に出ることになったのは、魔王子のイシュトラが怪物の大軍を集めて世界征服に向けて動き出したからだ。敵の勢力は強大だが、イシュトラによって統制されているので、イシュトラさえ倒してしまえば壊滅させることができるのだ。しかし、どんなに強い剣士でもイシュトラを傷つけることはできない。夢の世界に行くことができる君だけが、イシュトラ攻略のカギを握っているのだ。
 基本的には他のシリーズ作品と戦闘方法などは大きく変わらないが、技術点、体力点、運点に加えて、サイコロ2個の出た目に6を加えたものが魔力点となる。そして魔力点だけが原点を超えて、いくらでも増やすことができ、夢の中での戦闘や、現実世界でも魔法を使う際に必要になってくる。使える魔法は自分を透明にする幕を張る防御の術、あらゆるものの幻を作る幻影の術、敵の体力点を4点引く弱体化の術、空中に浮き上がれる浮遊の術、危険な罠や宝を感知する発見の術、指先から炎を出す火炎の術の6種類で、魔法を使うごとに魔力点が1点ずつ引かれていく。前半は君が生まれ育ったアフェンの森での冒険となり、後半はイシュトラが待ち受けるダンジョンでの冒険となる。そして、このダンジョンでは現実と夢を行き来しながら進むことができるのである。どういうことかと言うと、夢の世界を進んでいくと現実世界での自分の肉体は夢遊病のようにダンジョンを移動していく。その状態では敵から見えなくなるので戦闘を避けることができるというメリットがある。ただし、ダンジョンでの自分の位置が把握できなくなるという問題も発生する。*マークのついたパラグラフから夢の中に入ることができ、♯のついたパラグラフで現実に戻ってくることができる。夢の中を進むか、現実を進むかは君の判断に任されることになる。
 この夢の世界を取り込んだシステムは斬新であり、シリーズのマンネリ化を防ぐことに成功しているが、その反面、夢の中の冒険は抽象的であり、ともすれば冒険のカタルシスを下げてしまう傾向にある。後半のダンジョンも、それほど複雑でないにも関わらず夢と現実を行き来することにより、全体を把握するまで何度もプレイしなければならない。そんな苦難の果てに対面したイシュトラと戦う前に、悪夢の根源であるモルフェウスを攻略しなければならないのだが、こいつとの夢の中での戦闘は熾烈を極める。その後に待ち受けるイシュトラと夢の中で戦う場合は、さらに苦しい戦いとなるのだが、これまでの冒険で6つの重要なアイテムを全て集めていれば現実世界で一気に片を付けることも可能だ。なお、夢の中で出会う「幽霊たちの審判」の謎は解くのがあまりにも難しいので、そのパラグラフには行かないようにするのが賢明であろう。それと、冒険の序盤でピクシーに捕まった時に出される謎も難しいのだが、これは歌の最初の2行の文字を全て合計すると34文字なので34が正解でいいのだろうか。
お気に入りキャラ→アフェンの森で出会う野人は正気を失っているのだが、元は火吹山を攻略できずに挫折した冒険者で、名をエリック・ルーンアックスという。おそらく火吹山の魔法使いで、部屋を開けた途端に襲い掛かってきた、あの男ではないだろうか。うまくすれば一緒に冒険に付き合ってくれるのだが、ゲームブックで仲間になったキャラは長生きできないという運命から、彼も逃れることはできなかった。
魔術師タンタロンの12の難題
S・ジャクソン 著 ステファン・レーヴィス 画 社会思想社
タンタロン
 バルサスの要塞ソーサリーで知られるS・ジャクソンによるものだが、これも色んなジャンルに手を出すS・ジャクソンらしく、こうしてゲームブック大事典のコーナーで紹介しているものの、実はゲームブックではなく正確には絵解きパズルと呼ぶべき作品となっている。長らく戦争が続いたガランタリアに、ようやく平和が訪れたものの、戦いの中で王も王妃も命を失っていた。そこで王の代わりに国を治めることになったのは宮廷魔術師のタンタロンだが、老魔術師の体力は次第に衰えていった。まだ、国内には憂慮すべき問題が山積みとなっているにも関わらずだ。そこで一計を案じたタンタロンはガランタリアが抱える問題を解いたものに対して褒章を与えるとのお触れを出したのだ。こうして12の難題を解くために君は冒険に乗り出すことになった。それぞれの難題は見開きという形で、左のページに問題が書かれ、右のページには1ページ丸ごと使って、ステファン・レーヴィスによる美しい挿絵が描かれている。この絵をじっくりと見ていけば謎が解ける仕組みとなっている。恐ろしいほどに細かく書き込まれた挿絵の中から、正しい答えを見つけ出すのは楽しい作業だが、中には問題の意図を汲むことすら難しいものが混ざっているのが残念なところである。これは英語の問題を翻訳した際に日本語だと伝わりにくい表現になってしまうことが原因と思われる。
 一番目の難題は賊に捕らわれたダンスタブル卿を助け出すこと。ロープに吊るされ正に奈落に落とされる寸前になっているダンスタブル卿を助けるために、レバーを右か左のどちらに倒すべきか答えを出す。描かれている滑車の動きを追っていけばダンスタブル卿を助け出せるはずだ。
 二番目の難題は妖術師によってエーデ河口に放たれた悪魔魚を釣り上げること。この悪魔魚のせいで全く漁が出来なくなってしまったのだ。そこで悪魔魚を釣り上げるためには、どの餌を買えば良いか挿絵を見ながら判断する。
 三番目の難題はガランタリアの白魔術師に脅威を与えてきたウィア町の老魔女を捕まえること。虚像を生み出して逃げ出した魔女を捕まえるために、絵の中に何人の魔女がいるか見つけ出すのだ。
 四番目の難題は氾濫しては農作物をダメにしてしまうエーデ河の流れをせき止めること。8つの給水栓のうち3つを締めて流れを止めるが、締めるべき給水栓がどれなのか入り組んだパイプの絵を見ながら考える。
 五番目の難題はホワイトウォーター谷の人々のお金を奪い取って隠れ家に溜め込んでいるブリムストーン竜のもとに乗り込んで財宝を奪い返すことにある。絵の中に描かれているコインの数をひたすら数えていけばよいのだ。
 六番目の難題は夜の僧侶たちに捕らわれてカエルに変えられてしまったハムの四王子を助け出すこと。四匹の王子を見張るのは四匹の大ツノトカゲ。バックギャモンの要領でカエルと大ツノトカゲの場所を入れ替えるのだが、何回飛び越さなければいけないかを数えなければならない。
 七番目の難題はミノタウロスの迷宮の中に失われた王家の宝石を見つけ出すことにある。描かれた迷路をよく見て4つの入口のうち、宝石のある場所までたどり着けるルートがどれなのか探すことになる。
 八番目の難題は錬金術師モルファスが持っているとされる魔法の指輪を探し出すこと。変幻自在の指輪は姿を隠すようにモルファスの研究室のどこかにあるはず。絵の中から指輪を見つけ出して、指輪にはまっている石の数を答えればよいのだ。
 九番目の難題はガランタリア王を殺した張本人である偽王ターグを探し出すこと。カスパーとグリーンベックの間でターグが身を潜めている場所を指摘し、その座標上の数字を答える。
 十番目の難題は勇猛な指揮官として知られた今は亡きホルンヘルムの隠し財産である黄金の十字架を見つけ出すこと。未亡人に託した地図とメッセージから隠し場所を割り出し、メッセージに出てくる最も高い木の周りにある木の本数を答えればよい。なお、この難題に関しては挿絵を見る必要がなく、地図とメッセージだけで難題を解決できる。
 十一番目の難題はグレムリンの慰みものとされているレディ・カサンドラを助け出すこと。塔に監禁されているカサンドラは監視はつけられていないが、監獄の鍵がないと助け出せない。挿絵に描かれた鍵穴の形と合う鍵を探すのだが、この問題に関してはこのページだけでなく本全体の中から正しい鍵を探さなければならない。
 十二番目の難題はメデューサによって石に変えられてしまったデューク卿を救うこと。メデューサを倒したものの、石化をとく薬は一人分だけ。7つの石像の中からデューク卿を見つけ出して、デューク卿が立っている台座の番号を答えなければならない。
 そして全ての難題を解いた後に待っているのが十三番目の難題。これまで解いた十二の難題で導き出された数字を全て合計して、それと同じ数が書かれた石盤を本の中から見つけ出すのだ。その石版を見つけることができたらタンタロンが君に何を託したいかが明らかになるだろう。
お気に入りキャラ→魔女探しの絵の中で意気揚々と白馬に乗っている騎士が、どうもI・リビングストンに見えて仕方が無い。しかも、この騎士ときたら最後の難題では白馬にまたがったまま、メデューサによって石像にされているところが情けない。
 さて、本書には解答が載っておらず、答えは社会思想社のウォーロックに8回に渡って掲載されました。以下、ウォーロックVol.20に載った全ての解答を紹介します。文字を反転させてご確認ください。
 1.ダンスタブル卿を救うには「5」のレバーを動かせ、2.食物連鎖は鵜が持っている旗にある小魚に食べられているハエで終わっているので銅貨は「6」枚必要、3.老魔女は「13」人いる、4.閉じる栓は3と4と7で合計は「14」、5.竜は「102」枚の金貨を持っている、6.王子たちは「12」回とべば自由になれる、7.正しい入口は「5」、8.魔法の指輪は試験管台にあり宝石はないので「0」、9.ターグは東西5南北1の座標軸上のギャンビット・ダーク城にいるので「6」、10.正しい出発地点は地図の下方、真ん中より左の5本の木。上流はページの上で東は下。木の本数は「4」、11.カサンドラを救う鍵は「15」でダンスタブル卿の牢にある、12.デューク卿は双子で一人はウィア町の絵の中にいるので「14」、13.全ての難題の数字の合計は「196」。この数字の石版はハム王子のページにあり、そこに書かれている小さな文字を読むと正義の剣はホルンヘルムのページにいるタンタロンが持っていて、勇気の王冠はカバーをめくった裏表紙にあることが分かる。正義の剣と勇気の王冠にも小さな文字が書かれている。
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム 1
アルテウスの復讐
P・パーカー他 著 教養文庫
アルテウス
 様々なエピソードが存在するギリシャ神話の世界をベースに作り上げたゲームブックが、本書から始まるギリシャ神話アドベンチャーゲーム3部作。君がプレイすることになる本書の主人公アルテウスは、ミノタウロスを倒したことで有名な英雄テセウスの弟である。ただし実際の神話と違ってテセウスはミノス王の迷宮で非業の死を遂げている。そこで、弟であるアルテウスが兄の仇を取るべく、冒険に乗り出したのだ。
 その戦闘方法はサイコロを振って自分の攻撃力に足し、それが相手の防御力を上回ればダメージを与えたことになり、次に相手のサイコロを振って、その攻撃力の合計が自分の防御力を上回れば、ダメージをくらったことになる。そしてダメージをくらうたびに状態は、健康→軽症→重傷→死へと変化する。つまり相手に3回のダメージを与えれば倒したことになり(重傷を与えた段階で戦闘終了の場合もあるが)、逆にダメージを3回与えられると死にいたることになる。そして、戦闘が終了したら重傷であっても健康に戻るという設定になっている。なお本シリーズでは名誉点と恥辱点が設けられており、恥辱点が名誉点を上回るとゲームオーバーである。冒険を始めた時点では、名誉点7点、恥辱点0点となっているが、戦闘に勝利すれば名誉点は得られるし、敵を前にして逃亡すれば恥辱点が課せられる。つまり、ギリシャ神話の英雄としてふさわしい行動が求められるのだ。
 アルテウスとして冒険の旅に出たら、まず信仰の対象となる神を、アレスアテナポセイドンアポロアフロディテヘラの中から選ばなければならない。軍神アレスなら戦いが有利になるし、防戦の女神アテナなら防御力が高まる、海神ポセイドンなら危険な航海も怖くないし、アポロなら予知能力が身につき、美の女神アフロディテからは重要なヒントが得られ、そして神々の女王であるヘラはゼウスに絶大な影響力を持っている。どの神を選んでも攻略は可能だが、それぞれにふさわしい攻略の仕方があることを忘れてはいけない。また、ギリシャ神話の神々は、あまりにも気まぐれで、時には友好的になったり、時には敵対関係になったりする。どの神と友好関係を結んでいくかも、冒険を攻略する重要なカギとなるのだ。
 故郷のトロイゼンを出発したアルテウスは、まずはアテネへと向かうが、どういうルートをたどるかで出会うイベントが異なってくる。ギリシャ国内では、それほど危険な敵と出くわすことはないが、それでも盗賊や大イノシシなどには気をつけなければならない。そして、アテネでは実の父親であるアイゲウス王と対面することになるのだが、自分が息子だと信じてもらうまでが一苦労である。息子と認めてもらってからはクレタ島に向かうことになるのだが、その前にアテネに攻め入ろうとしている女王アンティオペが率いるアマゾンの女戦士たちを退けなければならない。
 そんな苦難を乗り越えて、ようやく父の親書を携えて船でクレタ島へ向けて出発するが、海には海ヘビをはじめ、海ならではの危険が待っている。しかし、最大の危険となるのはクレタ島を守っている青銅の巨人タロス。アルゴ探検隊の大冒険にも出てきた、この巨人には弱点は一つしかない。その弱点をついて倒さなければクレタ島に上陸することすら出来ないのだ。そしてクレタ島に上陸してからの冒険は2巻のミノス王の宮廷で語られることになる。各巻で一度ずつゼウスの助けを借りて死の淵から甦ることができるのだが、ゼウスの助けを借りることなくクレタ島に上陸できるだろうか。
 また、このシリーズでは<>のマークで囲まれたパラグラフが幾つか存在するが、ここでヒントがつかめると思ったら、20番先のパラグラフに進むことができる。そこで見事にヒントをつかんで、攻略への道が開ける場合もあるが、何を恐れてこんなところを見るのだと恥辱点が加えられる場合があるのも、理不尽なギリシャ神話の神々に支配されたゲームブックらしいところだ。
お気に入りキャラ→冒険に出たら宿屋に泊まるのは当たり前の行動だが、ティリンスの町の宿屋の主人であるプロクルステスは、宿屋のベッドから足がはみ出していたら、斧で叩ききろうとする殺人鬼。こいつにやられたら冒険を始めて、すぐにゲームオーバーになってしまう。
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム 2
ミノス王の宮廷
P・パーカー他 著 教養文庫
ミノス
 ようやくクレタ島にたどり着いたアルテウスだが、ミノス王に親書を渡すという大事な使命が残されている。この島の迷宮に巣食う怪物ミノタウロスに、アテネから多くの若者を生贄に捧げてきたが、若者を差し出す代わりに金品で許してほしいという内容が親書には書かれているのだ。ここで、前作のアルテウスの復讐からプレイしていれば問題ないが、本書から始めるという人は改めて守り神を選ばなければならない。この神を選んだ時点で、装備や他の神々との友好関係が強制的に決められることになる。またシリーズ3部作の中で本書にだけ存在するのが持久点情報点。持久点は作中に出てくるパンクラティオンという拳闘勝負で必要となるもので、情報点はいかにクレタ島の情報をアテネに持ち帰ることができるかに関わっている。
 このクレタ島だが君主であるミノス王の他に様々な人物がいて、複雑な人間関係が出来上がっている。有名なところではギリシャ神話でテセウスに毛糸玉を渡したとされるミノス王の娘アリアドネだが、本書でも彼女は重要な役どころとなっている。その他にも、ミノス王に匹敵する力を持ちつつある高僧パングリオン衛兵隊長のポリクラテスいいかげんなラクトリス伊達者のオプリスのほか、皮肉屋のディプティス牡牛跳びのクラビアなど、アルテウスの力になってくれる人物も少なくない。このように本書では、神々の介入が少ない代わりに、クレタ島に滞在している間に、どのような交友関係を結んでいくかが重要なポイントとなる。また、滞在中はアルテウスの世話はタイジアという女性に任されるが、彼女もアルテウスの運命を握っている一人である。
 しかし、最大の問題児はミノス王の息子クレムトン。ミノス王の策略もあって、この粗暴なクレムトンとパンクラティオンの勝負をするハメになるのだが、パンクラティオンは互いに持久点が0になるまで、頭、ボディ、内股のどこを攻撃するか決めてサイコロを振っていく。ヘッドは防御される確率が高いが当たればダメージ大きく、内股は当たる確率は高いが当たってもダメージは低いといった具合である。
 こうしてクレムトンとの戦いに勝利したアルテウスは、王の息子の血を流した罰としてミノタウロスが待ち受ける迷宮へ投げ込まれる。ランプや糸玉、あるい武器を持っているかが、ミノタウロスを攻略するカギとなるのだが、それらのものを全て持っていたとしても迷宮のルートは複雑で自分の位置を把握していないと、同じところを延々と回り続けることになる。そして、強敵ミノタウロスを倒せば迷宮を脱出し、アリアドネを連れての帰還となるが、まだアルテウスの冒険は終わらない。最終巻となる冒険者の帰還では、さらなる苦難が待ち受けているのだ。なお、冒険の進め方によってはミノス王まで殺してしまうストーリーに持っていけるのがおもしろいところだ。
お気に入りキャラ→クレタ島の住人の中でも謎の人物とされているのが、アテネから来たとされるボロリス。謎の人物だけに出会う確率の方が少ないが、うまくお目にかかれば迷宮では欠かせないランプを入手することができる。
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム 3
冒険者の帰還
P・パーカー他 著 教養文庫
冒険者
 ミノタウロスを倒し、クレタ島を後にしたアルテウスだが、英雄と呼ぶには程遠い仕打ちが待ち受けていた。まず、一緒にクレタ島を旅立ったアリアドネとは、冒険が始まるとすぐに別れなければならないし、アテネに帰って来た途端に父親であるアイゲウス王が亡くなってしまったため、不幸をもたらした張本人としてアテネ追放の憂き目にあう。傷心のアルテウスは故郷トロイゼンに帰る前に、トロイに寄って従兄弟のアグノステスと再会を果たすが、円盤投げの競技でアルテウスが投げた円盤が当たってアグノステスは亡くなってしまう。なお、円盤が当たって亡くなるという逸話はオイディプスの神話が元ネタである。こうして父親に続き従兄弟の死までもたらしたアルテウスが、穢れを払い落とすというのが冒険の目的となってくる。
 思わぬことから歯車がくるい出したアルテウスの運命だが、本書では地中海を股にかけての大冒険となる。イタリア半島のアイアイエでは魔女キルケと出会い、アフリカ大陸ではヌビア人の襲撃を受け、ナイル流域ではエジプトの皇帝ラムセスと親交を深めることになる。そして、ついには黄泉の国まで出向き、亡くなった兄のテセウスから肉親殺しの汚名のそそぎ方を聞き出すことになる。時の流れも何十年にも及ぶ大冒険となり、前作ミノス王の宮廷までなら単なる怪物退治の英雄物語に過ぎないが、本書の存在により神々に翻弄される哀れな男の物語というゲームブックとしては異色のコンセプトになっている。
 そして、本書で重要な役どころとなってくるのが、フェニキアの商人マルコス。クレタ島からアテネに帰ってくると同時に出会うことになるのだが、彼のちょっとしたいたずらが、アルテウスに死をもたらしかねない。基本的には悪いヤツではないのだが、あまりにも冗談がキツすぎるトラブルメーカーなのである。彼さえいなければ、ここまで厄介な目に遭わずに済んだのかもしれない。長い冒険の至るところでマルコスに顔を合わせることになるが、黄泉の国までやってくる商売根性には頭が下がる。
 シリーズ最終巻といっても、それほどすごい強敵は出ないのだが、運命に翻弄される主人公にふさわしく、些細なことで死に至るバッドエンドが待ち受けている。ページをめくった瞬間にアルテウスの死が書かれていて、あっけにとられることも多い。なお、トロイではボートレースにチャレンジできるが、これはサイコロの目で風向きが変わるというミニゲームで、ゲームブック内のゲームとして、中々うまく出来ている。
お気に入りキャラ→フェニキアの商人マルコスがお気に入りのキャラであるのだが、この巻のメインキャラなので、それを除けば女神ヘラの伝令を持って現れる虹の女神イリスが、神とは思えないほどのおしゃべりで異彩を放っている。
モンスターの逆襲
山本弘 著 教養文庫
モンスターの逆襲
 ゲームブックのブームが華やかなりし頃、社会思想社から発行されたゲームブック専門の月刊誌がウォーロックである。他にゲームブック専門誌が無かったこともあって、ファンの間では人気を博したウォーロックだが、S・ジャクソンとI・リビングストンが監修にあたっているだけあって、海外の短編ゲームブックを翻訳して載せることが多かった。しかし、日本版ならではの目玉企画はほしいところである。そこで第3号から第6号まで4号に渡って連載されたのが、オリジナルアドベンチャーゲームであるモンスターの逆襲である。その著者である山本弘という名前を聞いてピンとくる人もいるかもしれないが、いまやトンデモ本を紹介する「と学会」の会長として、すっかり有名になってしまった。しかし、山本氏といえば本来はSF作家であり、ファンタジー作家。ウォーロックにも初期から関わっており、第2号ですでにバルサスの要塞のプレイ記録を漫画として載せている。
 さて、物語の方はかなり異色なゲームブックとなっている。何しろ主人公は本来ならば冒険者によって倒されるべき存在の一匹のゴブリンなのだから。その主人公であるゴブリンが狩猟から帰ってきて見たものは、魔法使い、剣士、僧侶、盗賊によって殺戮された家族や仲間たちの無残な姿だった。そこで、復讐を誓った君は憎き人間たちを倒すための冒険に出発したのだ。戦闘方法は、それぞれのキャラに殺傷力防御力耐久力が決められていて、最初にサイコロを2個振って出た数を自分の殺傷力に足し、その数値が相手の防御力を上回ればダメージを与えたことになる。上回った数字の分だけ相手の耐久力を削り、これを繰り返しながら、どちらかの耐久力がゼロになったら戦闘終了である。
 しかし、殺傷力2、防御力8、耐久力4のゴブリンでは戦闘に勝利することもままならない。そこで、必要になってくるのが冒険者によって奪われたゴブリンの宝である12個の黒いヒスイ。これを持って呪文を唱えると、別の生き物に生まれ変わることができるのだ。しかし、ゴブリンから一気にドラゴンに生まれ変わるというのも無理な話で、その種族に近しい生物に変身するのがルールとなっている。例えば最初に手に入れた黒ヒスイでゴブリンから変身できるのはオーク、コボルド、ホブゴブリン、人間の4択である。ここで何に変身するかによって、その後に変身できる生物も決まってくる。どういう進化をたどるかは君の自由だが、選ぶ生物によっては攻略が不可能になるので要注意。なお、ゴブリンからしたら人間に変身することは、頭からは気味の悪い黒い毛が生え、肌はミミズのようなピンク色になる吐き気を催す現象のようである。
 第3号はパラグラフ1〜100で盗賊ランブルを倒すまで、第4号は101〜200で僧侶グレイズを倒すまで、第5号は201〜300で剣士ブリンケンを倒すまで、第6号は301〜400で魔法使いストームシャドウを倒すことでエンディングを迎える。さて、最後に君は何のモンスターになっているだろうか。なお、連載が好評だったことから、後に文庫として1冊にまとめられたが(画像は文庫の表紙)、自分は雑誌連載時にしかプレイしたことが無いので、文庫化された際に変更点があったとしたら、そこまでは知らないのであしからず。
お気に入りキャラ→剣士ブリンケンを追っている途中で出会うシェイナ・デルカドは、一国の城主であるもののうら若き乙女。この段階ではかなり強いモンスターになっているので、負けることなんてないと思いきや、相性というのはあるもので油断しているととんでもないことになる。
君ならどうする食糧問題
M・アラビー 著 教養文庫
食糧問題
 ゲームブックといっても、魔王を倒すために洞窟の中を進んだり、宇宙船の中で銃撃戦を繰り広げるものばかりとは限らない。この作品ではキミは政府の大臣になって食糧問題を解決していくことになるが、信長の野望やシムシティといった国を統治していくゲームがあるように、こうしたシミュレーション的な要素が強いテーマはゲームブックとしても向いているのである。なお、発売当時はゲームブック専門誌であるウォーロックで、かなりプッシュしていた覚えがある。
 その舞台となる国の設定はコインを投げて決めることになるが、1回目のトスは緯度を決定するもので、表が出ればヨーロッパやアメリカに近い緯度40度から60度、裏が出たら赤道から緯度40度までの熱帯地域となる。2回目のトスで気候が決まり、海洋性気候の島国(日本がモデルか?)、大陸性気候、乾燥した亜熱帯、湿気の多い熱帯の4つに分岐する。さらに3回目のトスで国民の暮らしぶりが決定するのだが、機械化された農業国、農業に依存している国、貿易大国、遊牧民族、砂漠同然の国、鉱物資源が豊かな国、自給自足のみで暮らしている国、資源がない貧しい国といったように最終的8つの国に分かれていく。それぞれの国の条件によって取るべき政策が変わってくるので、自分の国の現状をしっかりと把握しておく必要がある。
 他のゲームブックと違ってアイテムを記録しておくアドベンチャーシートもなければ、サイコロを振る必要もない。もちろんモンスターとの戦闘も無いわけで、ひたすら分岐点でどちらを選ぶか考えながらページをめくっていくだけである。食糧不足を補うために新たに農地を開拓するか他国から食料を輸入するか、そのためのお金はどうやって捻出するかなど、様々な問題に頭を悩ませながら国民の生活が豊かになるように配慮していく。このゲームブックをプレイしたのは学生の頃だが、世界情勢が分かってきてから読み返してみると新たなおもしろさが伝わってくる。ただし、これだけの大きなテーマを500のパラグラフのゲームブックでシミュレーションするには限界があり、割と簡単に問題が解決されてしまって拍子抜けの部分もある。このような政治的な問題をゲームとしてシミュレートしてみるおもしろさに気づかせてくれただけでも貴重な一冊だが、天候などランダムな条件を入れられる分、コンピュータでプレイした方がおもしろみは増すのかも知れない。しかし、大臣の側に立って国を動かしてみると、何で国民というのはわがままばかり言って思い通りに動いてくれないのだろうと、うんざりさせられるところがおもしろい。
お気に入りキャラ→観光立国にしたいがホテルを建設する費用もないので、テントで寝泊りするアドベンチャー・ホリデーという観光を企画したが、それには健康な若者しか参加せず、学生は貧乏だからお金を現地に落としていかないという設定がひどいというか何というか…
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