ゲームブック大事典

今から20年以上前、80年代半ばに、パラグラフを選んで読み進めていくゲームブックというものがブームを巻き起こしました。ここでは当時、自分がハマった数々のゲームブックを紹介していきます。

                3


シャーロック・ホームズ 10の怪事件
ゲイリー・グレイディ、スーザン・ゴールドバーグ、レイモンド・エドワーズ 著 二見書房
10の怪事件
 名だたる探偵の中でも、最も有名な存在と言えるのがコナン・ドイルが生み出したシャーロック・ホームズであることに異論をはさむ人は少ないであろう。そのシャーロック・ホームズが活躍する世界を見事に再現したのが、このシャーロック・ホームズ10の怪事件である。ゲームブックと言っても、パラグラフを選んで進んでいく普通のゲームブックとは異なり、主人公である君はベーカー街探偵団の一人としてリーダーのウィギンズとともに、ロンドンの街を駆け巡ることになる。事件に関係のありそうな場所を片っ端から訪れて推理を働かせれば、たいがいの事件の謎は解けると思うが、勝利条件としては、出来るだけ少いヒントから事件を解決に導き、あらかじめ設定されているホームズの捜査点を上回る必要がある。
 本の付録として付いているのは、ロンドンの地図ロンドン住所録10日分が綴られたタイムズ、そして捜査を助けてくれる14の情報源である。本書は題名にもあるとおり全部で10の事件を一つずつ解決していくことになるが、まず事件のあらましを聞いたら、ロンドンの地図を広げ、その日のタイムズに目を通し、住所録から事件に関係のありそうな場所を見つけて聞き込みを行っていく。どこを訪れたら良いか全く分からない時は、情報源に頼ることになるが、その14の情報源とはスコットランド・ヤード、検死を行っている聖バーソロミュー病院、物的証拠を調べている犯罪学研究所、様々な書類が集められている公文書保管所、住民の出生や死亡情報が登録されているサマセット・ハウス、犯罪者が裁かれる中央刑事裁判所、裏世界の情報に詳しい烏と鼠亭の主人ポーキー・シンウェル、モリアーティ教授の動きを教えてくれるフレッド・ポーロック、タイムズ記者のヘンリー・エリス、ポリス・ガゼットの事件記者クィンティン・ホッグ、ホームズの兄のマイクロフト・ホームズ、ロンドン中の辻馬車が集まるセントラル馬車置場、社交界のスキャンダルを教えてくれるラングデール・パイク、あらゆる本が並ぶロンドン図書館となっている。
 解決すべきと事件とは、射殺されたコートニー・アレンの死の謎を探る「武器商殺人事件」、殺人の疑いをかけられたフランシス・ノーラン嬢の嫌疑を晴らす「放蕩息子の死」、今朝の新聞におもしろい記事が載っているというホームズの手紙だけで捜査をはじめる「ライオン殺害事件」、奇妙な暗号を残した身元不明の死体の謎を解く「<像と城>劇場の死体」、ミイラ調査に関わった3人の死を調査する「ミイラの呪い」、イングランド銀行会計局長の死にまつわる謎を探る「鼻のかけた男」、6日間で5人もの死体が発見された「テムズ河連続殺人」、密室の書斎で殺害されたアームステッド将軍の事件である「錫の兵隊」、複雑な人間関係の中で毒殺された弁護士の死をめぐる「謀殺された弁護士」、王立美術館で2枚の名画が盗まれた「名画盗難事件」の以上10件。単純な事件から複雑怪奇な事件まで千差万別である。これら10の事件をホームズより早く真相にたどり着くことができるだろうか。
 本書の素晴らしいところは、それぞれの事件がコナン・ドイルが書いたホームズ作品に収録しても見劣りがしないほど、良くできていること。さらにはプレイしていると実際に19世紀のロンドンを動き回っているかのように感じさせるほどのリアリティにある。本書を最初にプレイした時は、重要な場所がどこか分からず、ホームズの推理を聞いて初めて事件の謎が分かったものだが、新聞の読み方や、全て英語で書かれた住所録の見方が分かってから、改めてプレイしてみると新たな発見があって驚かされる。プレイヤーに高い能力が求められる本書だが、ゲームブックのブームが去った今となっては、このような作品にお目にかかることができないのが残念でならない。
お気に入りキャラ→捜査協力者はいずれも変わり者ぞろいだが、犯罪学研究所のH・Rマレー所長は、研究所に泊まりこんで弾痕や凶器の研究をする極めつけの変人。困ったことにベーカー街探偵団のウィギンズの名前をちっとも覚えてくれないのだ。
シャーロック・ホームズ 呪われた館
ゲイリー・グレイディ、スーザン・ゴールドバーグ、レイモンド・エドワーズ 著 二見書房
呪われた館
 シリーズ前作であるシャーロック・ホームズ10の怪事件は、そのクオリティの高さから大変な評判を呼んだが、本書においても、その価値は全く揺るぐことは無い。ゲームのルールは基本的には前作と同じでロンドンの街を調査してまわり事件の謎をホームズよりも少ない調査ポイントで解くことにある。その中で前作と大きく変わった点としては、事件の数が5つに減ったことで一つ一つの事件の内容が濃くなっていること。その5つの事件のうち4つがロンドンの街中に建つある館を舞台に起こっていることにある。それぞれの事件では屋敷の住人は異なってくるのだが、住むものが変わったにもかかわらず相次いで事件が起こったことから、この屋敷は呪われた館というあまり有難くない名前で呼ばれることになる。
 ロンドンの地図、ロンドン住所録、事件が発生した5日分のタイムズの記事、ヒントを与えてくれる情報源一覧が付いているのは前作と同じだが、それに加えて呪われた館で起きた4つの事件における屋敷の見取り図4点が付属されている。本作では多くの部屋が存在する館の中を調査して、住人から情報を聞き出した上で、ロンドンの街に調査に乗り出していくことになる。呪われた館は地上2階、地下1階の造りとなっており、部屋の数は100以上にも及ぶ(全て見て回れるわけではないが…)。この前作には無かった館という閉じた空間での調査が本書の魅力となっている。
 第1の事件となる「紅茶王殺害事件」は、呪われた館の最初の住人にして最初の被害者となった紅茶王ことアルフレッド・シプトン卿の死の謎を探ることにある。警官が駆けつけた時にシプトン卿のそばでナイフを持って立っていたドナルド・スティルウォーターの嫌疑を晴らすことはできるのか。第2の事件となる「地中海の秘鳥」だけが呪いの館とは関係ない事件で、行方が分からなくなった兄を探してくれという婦人の依頼からロンドンの街を駆け巡ることになる。第3の事件となる「舞踏会の惨劇」は紅茶王殺害事件から9ヶ月後、やり手の興行師であるファーナムの手に渡った呪われた館で、舞踏会の最中に厳重な警備の目を掻い潜って奪われた宝石の謎を探ることになる。そして第4の事件「七つのワイングラス」では舞踏会の惨劇から1ヶ月後にも関わらず、呪いの館はパークシャー連隊の将校官舎として貸し出されている。その将校官舎で晩餐会の最中に首吊り死体として発見されたジェームズ・サンダーズ卿の死の謎を探る。そして第5の事件となる「呪われた館の謎」では、館の最後の持ち主となったホプスン氏の元を訪れた招待客が一晩のうちに3人も殺される事件で、ホプスン卿の息子であるエリオットにかけられた嫌疑を晴らして回る。
 時間的な流れとしては前作のシャーロック・ホームズ10の怪事件より後というわけではなく、ほぼ同時期に起きる事件が扱われている。そのため前作と同じ登場人物が登場するなど、それぞれの事件の相関関係が前作のプレイヤーには分かるのがうれしいところである。14の情報源は前作と比べて重要性は低くなっているのに加え、訪れることができない場合も多いが、それでも時として事件を解決に導く重要なヒントを与えてくれる。普通に読み流すだけでは謎を解き明かすことができず、読者に向けて高いハードルが設けられているのは相変わらずだが、それ故に高いクオリティを誇ることができるのであろう。
お気に入りキャラ→ロンドンで私立探偵を開業しているマット・モーザーは、同じ探偵でありながらホームズの足元に及ばない平凡な男。しかし、この探偵に借りを作ってしまったことから、「舞踏会の惨劇」で館の警護を任されることになり、面倒な捜査に乗り出すことになってしまったのだ。
シャーロック・ホームズ 死者からの手紙
ゲイリー・グレイディ、スーザン・ゴールドバーグ著 二見書房
死者からの手紙
 シリーズ第3弾となる本書では、1888年9月5日から9月8日までの4日間に次々と起こった一連の事件を解決していくことになる。基本的な捜査方法は、これまでのシリーズとあまり変わらず、ロンドンの地図、ロンドン住所録、4日間の記事をまとめたタイムズ、そして14の情報源が付録となっている。それに加えて、今回はロンドンの北西部で新たに開発された地区となるクイーンズ・パークの地図も付いている。このクイーンズ・パークも今回の事件の重要な舞台で、ロンドンの街と同様に様々な場所を訪れ調査を進めていくことになる。また、今回は捜査時間に制限が設けられていて、足を運んだ捜査地点によって少しずつ持ち時間が減らされていく。初日の持ち時間は13時間だが、2日目は12時間、3日目は11時間、最後の4日目は10時間。それぞれの日の捜査が終わった時点で幾つかの質問事項に答えていくが、3日目までに出された合計12問の質問のうち4問以上に答えられなかったら探偵失格としてゲームオーバー。そして最後の4日目を終えた時点で、ホームズの5つの問いに挑戦し、この4日間を通じて起きた事件の謎が解けたかどうかが試される。
 全ての事件の発端は1888年9月5日にホームズから事件の調査を依頼されたことに端を発する。その事件とは、行方不明になったクイーンズ・スポーツ・ガゼット紙の記者であるフランクリン・カーニーを探し出すことだった。そこで、カーニーの机の中に残されていたメモや名刺を頼りにロンドンやクイーンズ・パークを動き回ることになる。そして、この事件がきっかけとなり、宝石盗難や脱獄事件など様々な事件に巻き込まれていくことになるが、この幾つかの事件とカーニー失踪事件が、どう絡んでいるのか考えながら、事件の全貌を読み取っていく。ちなみに、死者からの手紙とは調査2日目の9月6日に、死んだはずのヴィンセント・デリックから届いた「私の死は自殺ではない」と書かれた手紙に由来している。
 前作まではそれぞれの事件が独立していたが、本作では捜査1日目に訪れた場所を、別の日に訪れてみると事件に進展があるなど、時間の流れがおもしろい具合に取り入れられている。また、時代的にはシャーロック・ホームズ10の怪事件のライオン殺害事件と<象と城>劇場の死体の間、シャーロック・ホームズ 呪われた館の第1の事件となる紅茶王殺害事件の翌日にあたる。そのため、これまでの2作に登場した人物の姿を本書ではしばしば見かけることになる。それは時には、これまでのシリーズで描かれた事件に巻き込まれる前だったり、すでに事件が解決された後だったりするのだが、こうしたシリーズ読者だけが分かるサービスの入れ込み方が実にうまい。
 全て読み終えた時点で、ようやく謎を解き明かすことが可能なだけあって、事件の難易度はこれまでのシリーズに比べて格段にUPしている。それだけに気軽に取り組めるほど簡単ではないのだが、きちんとメモを取り、人物関係を把握しながら捜査を進めていけば、ホームズ同様にプレイヤーであるキミも、きっと事件の真相にたどり着けるに違いない。
お気に入りキャラ→捜査で訪れた占い師マダム・ロイシャーのもとに訪ねてくる客がいるのだが、この男こそシャーロック・ホームズの生みの親であるコナン・ドイル。これは非科学的なことを信じないホームズというキャラを生み出したにも関わらず、ドイル本人は心霊現象に傾倒していったことから書かれたエピソードとなっている。
シャーロック・ホームズ 切り裂きジャック事件
ベーカー・ストリート・イレギュラーズ編著 二見書房
切り裂きジャック事件
 シャーロック・ホームズシリーズのゲームブックを立て続けに発売した二見書房だが、シリーズ4作目はゲームブックではなくボードゲームでの登場となった。というわけで本作はゲームブックではないのだが、シリーズものということで特例として紹介させていただく。19世紀末のロンドンを騒然とさせた史上最悪の殺人鬼である切り裂きジャックの正体を仲間より早く見つけだすのが、このボードゲームの目的。ロンドンの街を模したボード上を、サイコロを振りながら自分のコマを進めて切り裂きジャックの特徴を集めて回る。
 プレイヤーには10人の容疑者リストが渡されるが、切り裂きジャックはこの10人の中に必ずいるという設定。ボード上には犯人の顔、特徴、歳、髪、体型、国籍を示した目撃者カードが各2枚ずつ置かれており、プレイヤーがカードのあるマスに止まったら、この目撃者カードを入手することができる。また、犯行現場のマスには現場の手掛かりカードが2枚置かれているが、これも犯人を見つけ出すための重要なヒントとなる。そして、ボードの4隅はそれぞれ、スタート地点、スコットランド・ヤード、ベーカー街221B、馬車乗り場になるが、スコットランド・ヤードにはガセネタが積み上げられている。役に立たないと思われるガセネタだが、ここで入手したガセネタと重なる容疑者は真犯人の可能性が低いということになる。また、ベーカー街221Bにはご存知シャーロック・ホームズがいるが、そこで得られるホームズカードは目撃者カード同様に真犯人を示す手がかりとなる。そして馬車乗り場に止まったら、次の回は出た目の2倍進むことができるのである。容疑者リストの誰が切り裂きジャックであるかは、最終的に12枚の目撃者カード、2枚の現場の手掛かりカード、2枚のホームズ・カードの全てのヒントを合計し、最も条件が合致したものとなる。推理力ではなく、目撃証言の数などが真犯人の決め手となるのは、いささか物足りない気もするが、犯人の指摘は早いほどポイントが高くなるので、少ない条件で犯人を指摘する決断力が求められるのである。ただし、結論を急ぎすぎて間違った者を指摘しまうと減点となるので要注意。
 このボードゲームは3〜5人でのプレイとなるので、一人で楽しむためにボードゲームとは別に、ソロ・ゲームとなる「ドンヒル邸殺人事件」が付いている。これは、従来のホームズ・シリーズのゲームブックを簡単にしたもので、殺害されたドンヒル夫人の関係者の証言がアルファベット順に記されている。読んでいくうちに次々と現れる人物や組織の証言から事件の真相を探り出していく。最後にはホームズの謎解きが書かれているが、ホームズの解決を読む前に関係者の証言だけで真犯人を導き出してほしい。
お気に入りキャラ→このゲームの最大の主人公は切り裂きジャックに他ならないが、容疑者の中にはモリアーティ教授や、彼の忠実な部下であるモラン大佐までいる。なお、ボード上に置かれた?カードの中には、「切り裂きジャックに襲われる」と書かれたものもあり、運が悪ければ犯人を指摘する前にゲームオーバーになる場合もある。
悪夢シリーズ 1
悪夢の妖怪村
鳥井加南子 著 祥伝社
妖怪村
 作者の鳥井加南子さんは「天女の末裔」で江戸川乱歩賞を受賞しているが、その文才をゲームブックという分野で発揮したのが、本書からなる悪夢シリーズ3部作。表紙のイラストが子供向けの感じがするので、ゲームブックとしてもレベルの低いものかと思ったら大間違い。自分も表紙のイラストを見ただけで判断し、手を出さないでいたのだが、書店で立ち読みしている人がいたので横からのぞいてみたら、鳥井氏の独特の文体が目に入って、その世界観に引き込まれてしまったのである。
 他のゲームブックと大きく異なるのはサイコロを使用しないということ。戦闘に勝利するかどうかは運命数バイオリズム数で決められ、その他の場面では正しい判断を下せるかや、正しいルートを通っているか、適切なアイテムを持っているかといった要素でクリアできるかどうかが決まってくる。面倒な戦闘が無いので簡単にクリアできそうに思えるところだが、自由度が高いように見えて、真のハッピーエンドにたどり着けるルートは、たった一つと言っても良いぐらいに限られている。なお運命数というのは、ゲーム開始早々に出てくるアミダババア(こいつが80年代を感じさせる)が出すアミダくじを選ぶことで決定し、最後まで変わることはない。バイオリズム数は運命数にその日の日付を加えるもので、いつゲームをするかによって変わってくる。つまり体調が良い時には妖怪に勝てても、不調の場合は負けてしまう場合があるのだ。ちなみに、どの運命数やバイオリズム数でもクリアすることは可能である。
 主人公の君の目的は妖怪が出るというウワサの村に行って、ビデオカメラに妖怪の姿を収め、それをテレビ局に売って一儲けしようというのだ。しかし、最終便のバスを降り立ち訪れた村は普通の世界ではなかった。ろくろ首や化け猫などの妖怪が出る上に、不思議な空間に包まれ村から脱出することも不可能な状態で、この妖怪村から脱出するための冒険が繰り広げられることになる。村から外に脱出できるポイントは村内に1ヶ所だけで、その場所にたどり着いたとしても、出口を見つけるのに一つ、出口を開けるのに一つ、元の世界に帰るのに一つ、そしてもう一つのアイテムを揃えていないとハッピーエンドにはならない。脱出のカギを握るのは、ちょっと気まぐれな妖怪村の住人たち。そんな連中と渡り合って果たして妖怪村から脱出することができるだろうか。なお数多くの妖怪が存在する村の中でも、幽霊列車だけは格別に危険な存在であることを忘れてはならない。
お気に入りキャラ→妖怪村の住人たちは恐ろしいながらも、どこか憎めない愛すべき連中であるのだが、中でも夫がゾンビで妻がウブメという組み合わせは秀逸である。そして、西洋妖怪が住む館では、シャイニングと書かれた部屋の住人が斧を持って襲ってくるのでご注意を。
悪夢シリーズ 2
悪夢のマンダラ郷
鳥井加南子 著 祥伝社
マンダラ郷
 鳥井加南子氏による悪夢シリーズの第二弾。悪夢の妖怪村を脱出した君を、さらに脱出が困難な状況が待ち受けていた。サイコロを使わない点や運命数やバイオリズム数で命運が分けられるというのは前作と同じ。戦闘というシステムにこだわらず、ほとんどストーリーだけでゲームブックを作り上げる技術は大したものだが、その物語運びは前作よりも向上しており、もしかしたら世界観の深さは数あるゲームブックの中でも一、二を争うものかも知れない。
 主人公である君は彼女にふられたことから思い悩んでいたが、そんな時、ゴミ回収場所に捨てられていた阿弥陀如来像を発見する。何でも望みをかなえてくれる阿弥陀様の言葉を信じて、女性にもてるようになりたいと願いをかけるが、それなら媚薬を手に入れてこいとマンダラ郷に送り込まれてしまう。前作ではアミダババアによって決められた運命数だが、今回は冒険に出る前に阿弥陀様があみだくじを出してきて運命数が決定する。
 そうなると媚薬を手に入れて元の世界に帰ってくることが冒険の目的のように思えるが、媚薬は冒険のきっかけに過ぎず、阿弥陀様の本来の目的は、君に女性にもてるような立派な男に生まれ変わってもらうことにある。そういうわけでマンダラ郷全体が輪廻転生のための舞台となっていて、冒険のスタート時は素っ裸でゴリラの横で寝ている状態だが、冒険を進めるうちに身に着けているものが腰みのから着物に変わり、持っている武器もこんぼうから勇者の剣へとレベルアップする。マンダラ郷全体が人類の進化の縮図みたいな様子を呈しており、そこを進むことで自らが新しく生まれ変わっていくのである。文明の縮図ということで、首刈り族と遭遇し自分のトーテムを決めることもあれば、中国の仙人に弟子入りしたり、イスラムのモスクを礼拝したり、スフィンクスの謎かけに挑戦したりと、冒険の舞台はめまぐるしく変わっていく。どの世界でも危険が待ち受けているが、最も危険なのは未開の土地をどんどん開拓してしまうキャタピラー邪蛮人がいる世界である。
 そんなマンダラ郷から脱出できる場所は1ヶ所しか存在しない。そこにたどり着いて新しく生まれ変わるには、ひとつの服、ひとつの武器、ひとつの呪文、ひとつの術が必要となってくる。なお、マンダラ郷は生まれ変わるための舞台なので、途中で死んでも阿弥陀様のありがたい慈悲で、何度も強制的に甦らされスタート地点に戻されるだけである。ただし死よりも恐ろしい罠にハマった場合は生き返ることもできないので用心が必要である。
お気に入りキャラ→当初の目的であった媚薬の持ち主であり、冒険序盤の敵として立ちはだかるのが魔女ランダ。バリ島では悪の象徴とされ、ゲームの女神転生シリーズでもおなじみのキャラだが、マンダラ郷のランダもゲーム同様にダメージを相手に返す能力を持っている。
悪夢シリーズ 3
悪夢の幽霊都市
鳥井加南子 著 祥伝社
幽霊都市
 鳥井加南子による悪夢3部作の締めくくりとなる作品。ゲームのシステムは悪夢の妖怪村悪夢のマンダラ郷と同様に、サイコロを使わずに運命数とバイオリズム数によって命運が分けられるというものだが、今回の運命数は一味違う。妖怪村ではアミダババア、マンダラ郷では阿弥陀如来像によって決められた運命数だが、今回は辻占いの易者の手相で運命数が決定する。どの運命数を選んでも攻略可能ということに変わりはないのだが、3通りある攻略ルートの、いずれを通って元の世界に帰ってくるかは選んだ運命数によって変わってくる。
 そもそも君が冒険に巻き込まれるきっかけとなったのは、映画を見ている途中でトイレのため席を立ったことにある。「映画が終わるまで、君は幽霊都市の放浪者」というキャッチフレーズを無視して席を立ったため、映画館の扉が開かなくなり元の世界に戻れなくなってしまったのだ。元の世界に帰るには映画のエンディングを観る必要があるが、扉を開けるためには秘石というアイテムが必要になってくる。ただし秘石は現代の日本には存在せず、弥生時代までタイムワープしなければならない。そのタイムワープできるポイントが幽霊都市の中に3つ存在するのだが、タイムワープのために必要となるアイテムやヒントは、どのルートでタイムワープするかによって異なってくる。つまり選んだ運命数によって3回は遊べるゲームブックなのである。
 幽霊都市は東西と南北に地下鉄が走っていて、お金を払わなくても乗り降り自由。同じ町を何度も行ったり来たりすることができ、お望みのアイテムを手に入れるまで、好きなだけ幽霊都市を散策することができる。また、地下鉄だけでなくバスも目的地にたどり着く有効な交通手段となるが、地下鉄やバスに乗っていても危険な目に遭遇するので気をつけなければならない。とにかく幽霊都市の地下鉄とバスの路線図を頭に叩き込むことが攻略の第一歩となる。
 幽霊都市で油断していると死を招くことになるが、マンダラ郷と同じく死は最も軽いペナルティ。死んでもゲームのキャラと同様に簡単に復活できるのだ。それよりも恐ろしいのが永遠の罠で、延々と同じことを繰り返すパターンにハマってしまったら、宝石を散りばめた短剣で無限ループを断ち切るしかない。しかし、最も恐ろしいのは街に魂を奪われることで、この罠にハマってしまったら助かりようがないのである。
お気に入りキャラ→幽霊都市にある紅葉学園では悪の超能力者と一人の少女が戦いを繰り広げているが、元ネタは眉村卓原作のねらわれた学園であることは言うまでも無い。また、ゲームセンターでは女の子とジャンケンをするゲームがあるのだが、なぜ女の子の名前が愛子かと言うと…
ツァラトゥストラの翼
岡島二人 著 講談社
ツァラトゥストラの翼
 一大ブームを巻き起こしたゲームブックは、多方面において大きな影響を与えたが、ミステリーをゲームブックにできるのではと考えたのが、江戸川乱歩賞を受賞した焦茶色のパステルでもお馴染みの岡島二人だった。ただし、ミステリーの読者がゲームブックになれているとは限らない。そこでゲームブック初心者でも楽しめるように、あまり煩雑なシステムはとらず、基本的には選択肢を選ぶだけで物語は進む。それでもミステリー好きの読者とゲームブック好きの読者のどちらも満足できるように、簡単には最後までたどり着けないようになっている。
 その事件というのは大金持ちの鹿島英三郎が何者かによって殺害され、ツァラトゥストラの翼と呼ばれる宝石が奪われたので、それを取り返すというもの。こうした事件ではお約束のように鹿島英三郎が殺害された現場は、部屋の中に鍵が残された密室状態となっていた。そのため宝石を取り返すと同時に密室の謎も解かなければいけないわけだが、英三郎の家族や関係者に話を聞きながら調査を進めていくことになる。
 調査の進め方としては、ゲームのポートピア連続殺人事件と同じように、難事件に手を焼いている探偵助手を頭脳面からサポートしてあげる形となるが、こうした形が最もミステリーのアドベンチャーゲームを作りやすい構造なのかも知れない。ポートピア連続殺人事件や探偵神宮寺三郎シリーズと同様に、次にどこに向かうかや、関係者にどんなことを聞くかの判断がプレイヤーにゆだねられる。ただし、ゲームのミステリーの場合は、総当りでコマンドを押していけば謎が解けるものが大半だが(それを防ぐために、カーソル操作や文字入力を設けているものもあるが)、本作の場合は捜査の手順によっては聞けなくなる証言もあるので、事件が解明できなくなる場合も充分に考えられる。大切な証言を聞いたり、重要な証拠を手に入れたりするたびに、巻末のチェックシートをチェックしていくことになるのだが、これによって調査の流れは大きく変わってくる。
 そして最大の難関としてそびえたつのが、ツァラトゥストラの翼の在り処を示した暗号の解読となる。恥ずかしながら購入してから20年以上たつのに暗号は解けないままである。文庫版では袋綴じで暗号を解くヒントが載っているということだが、自分が所有しているものは、それすらないので手がかりが全くつかめない。発行された当初はあまりの暗号の難しさに、講談社に問合せが殺到したということである。また、挿入されているイラストには重要なヒントが隠されている場合があるので、優秀な探偵を志すなら見落とさないでほしいところだ。
お気に入りキャラ→誰が印象に残るかというのなら、プレイヤーの分身として事件を捜査している探偵助手の、あまりの調子の良さに「お前は何も推理してないじゃん」とツッコミを入れたくなる。
ホーム      戻る