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『あ行』

愛のさかあがり 天の巻・地の巻・無用の巻 全3巻
とり・みき 平凡パンチ連載 角川書店
 とり・みきのエッセイ的なマンガで、本来のテーマであったはずの愛を探していくという設定はさておかれ、読者から寄せられた歯ブラシとカミソリを間違えて歯を磨いてしまったといった痛い話や(アイタタタ…)、工事現場に設置されている、頭を下げている人の看板を採取したオジギビトの伝説など、かなり限定した世界に向けて話が進められているような気が…。
 それにしても友人である下北沢BOOKSオリーブ店員の田北鑑生氏は、随分と登場していますな。
作品のツボ→小学生に嫌いなアイドルを聞いて小泉今日子という答えが返ってくるのだけれど、その理由が変な格好をしているから。連載当時(85年頃)の時代を感じさせてくれる。
アカギ 1巻〜22巻
福本伸行 近代麻雀連載中 竹書房
 昭和31年、やくざたちが麻雀をしている所に一人の少年が現れる。そこで勝負に加わった、赤木しげるは初めての麻雀にも関わらず、圧倒的な強さを見せる。そもそもアカギが、彼らの前に現れたのは、チキンラン勝負で全くブレーキを踏まず、崖から勢いよく飛び出したのがきっかけだった。このように怖れを知らず、危険なことに対してブレーキをかけることが無いのが、アカギの絶対的な強さにつながっている。そして、やくざが出してきた切り札の盲目の市川ですら、アカギには歯が立たなかった。
 その後、アカギは姿を消して普通の生活を営んでいたが、昭和39年になり再び裏の麻雀の世界に踏み込むことになる。ニセ赤木も登場するのだが、彼の死がきっかけとなり、戦争でばく大な財産を築いた鷲巣と勝負することになる。この鷲巣が若者が苦しんで死ぬのを見るのが楽しみというとんでもない男。その勝負と言うのが、麻雀で負けた分だけ血液を抜き取られるという命懸けのもの。かなり長期にわたって、この勝負が描き続けられているのだが、この狂気に満ちた吸血鬼老人をアカギは倒すことは出来るのか…。
作品のツボカイジがさえない青年が才能を付けてきたのに対して、アカギは生まれ付きの才覚の持ち主として描かれている。ある意味、福本節が最も光る作品と言える。
AKIRA 全6巻
大友克洋 講談社
 ある日、東京は一人の子どもによって壊滅してしまった。その子どもの名前はAKIRA。彼の持つ力は、あまりにも危険なものとして東京の地下深くに封じ込められることになる。その強大な力を巡って大佐をはじめとする政府側とをリーダーとする革命軍が争うことになるが、ひょんなことから、この争いに巻き込まれることになった、健康優良不良少年の金田が、中心となって物語が動いていくことになる。
 そもそものきっかけは、政府が超能力を持った子どもの育成に手を出したことにある。確かに、その研究は成果を出し始めていたが、28番目の披検体であったアキラは東京すら破壊するほどのパワーを持っていた。そんな破壊後の荒れた世界でも人々は順応して暮らしていたが、金田たちの仲間であった鉄雄が能力を持った子どもに接触したことから、覚醒が始まることになる。鉄雄は誰かの言いなりになることを嫌い、力による支配に走り始める。そして、敵と味方が入り乱れて、戦いを続けているうちに、ついにはAKIRAによる2度目の大破壊が起きてしまう。
 大東京帝国となった壊滅した世界で、かつて被検体の19号であったオタフクばばあことミヤコ様や、危険と見なした日本に攻撃を加えようとする米軍まで参加して、物語はさらに複雑にからみあっていくが、それぞれの登場人物の動きを追いかけるだけでも、かなり楽しめる作品である。大友克洋の、これでもかと言わんばかりに、細かく書きこまれた描写がすさまじい。連載中は、ゆっくりと進む展開に、ヤキモキさせられたが、豪華な装丁のコミックを読み返してみると、その世界観に圧倒されるばかりである。
作品のツボ甲斐ジョーカーなど、ちょっとした脇役が良い味を出している。特に武器調達を請け負う、最強のオバサンであるチヨコは最高。
あずみ 全48巻
小山ゆう 小学館
 関ヶ原の合戦から10年が立ち、徳川家康の天下のもと、太平の世が訪れていた。しかし、加藤清正らをはじめ、いまだに徳川に弓を引く者の数は少なくなかった。そんな不穏分子を一掃するために、家康のブレインである南公方天海は、小幡月斎に命じ最高の刺客を育て上げさせた。それは幼き頃より剣の技を叩きこまれた10人の子ども達。中でも少女あずみの腕はずば抜けたものだった。連載第1回目から10人の子どもは互いに殺し合うことを命ぜられるなど、読者を一気にシビアな世界に引きこんでいく。幼さが抜け切らず無邪気なあずみが、顔色一つ変えずに、強敵を一瞬で切り倒していくギャップは秀逸である。
 たった一人の少女が、浅野長政、加藤清正、そして徳川家康まで、その刃に手がけていく。物語の展開は、かなりスピーディーで、かなり早いうちから、一緒に育った仲間や、小幡月斎などは、敵の手にかかって退場してしまう。しかし、たった一人生き残ったあずみは、柳生宗矩が放つ刺客と戦いながら、強く生き残っていく。その後、天海から直接に指令を受けるようになったあずみは、神とあがめられる静音様が支配する理想国家への潜入や、伊達正宗ら13人の標的を消していくなど、苛酷な任務を次々とこなしていく。そして、物語は柳生との決着をつけるべきクライマックスに向かいつつある。豊臣秀頼宮本武蔵など実在の歴史上の人物のからめ方も、実にうまい。
 2003年には上戸彩の主演で、あずみは映画化され、最上美女丸との対決までを描き出している。
作品のツボ→小山ゆうが描き出す異常なキャラクターは、最上美女丸や、土蔵・火蔵佐敷三兄弟など、どいつもこいつも一癖あるやつばかり。
暗黒神話 全1巻
諸星大二郎 集英社
 1976年、今から25年前に少年ジャンプで6週にわたって一つの漫画が載った。その6週という短い期間で連載された漫画には、ヤマトタケルにまつわる日本神話から、弥勒が降臨する56億7000万年後までが一気に描き出されている。
 単行本のあとがきで作者は、1年半かけて構想をねった作品が6週で終わって、ひどくがっかりして拍子抜けしたと書いている。今のジャンプでも人気の無い作品は、10週で打ちきられるが、それ以上の短さなのだから、作者の落胆振りも窺い知れようというもの。しかし、その短い連載期間で、この作品を目にした者にとっては、一生忘れることができないインパクトを残すものとなった(怪物の姿で描かれるタケミナカタは特に怖かった)。
 オオナムチスサノオなど登場する日本神話の神々は女神転生 デジタル物語でお馴染みだという人もいるだろう。ちなみに、タケミナカタの上諏訪までの逃走ルートというのは京極作品の狂骨の夢を読んでから、改めて見なおすと、また違った見方ができるようになった。
 諏訪から出雲高千穂飛鳥と古代遺跡を巡りながら謎を解いていく。さらに、家の名誉と財産、不老不死の秘法、そして神に選ばれる栄誉、これらを巡って複雑に絡んでいく人間関係。はてはオリオン座馬頭星雲まで盛りこまれていく。もし、この作品が打ち切られなかったら、どんな作品になっていたのだろうか…。少し見てみたい気もするが、これだけ完成したものに仕上がっているのだから、充分満足とも言える。
 なお単行本には徐福伝説も収録。これを読んで塗仏の宴 宴の始末くんほう様を思い出した人はすいぶんとマニアック。
作品のツボ→作中に不老不死の泉につかって、餓鬼になってしまうというエピソードがあるのだが、これを読んでから、餓鬼になってしまうのではないかと怖くて、しばらくお風呂に入れなかった。
うしおととら 全33巻
藤田和日郎 小学館
 ある日、ふとしたきっかけで妖怪退治の槍である獣の槍を手に入れた蒼月潮と、その槍に縫い付けられていた狂暴な妖怪とらの妖怪退治の物語。倒すべきは大妖怪の白面の者
 主人公の蒼月潮はどこまでもまっすぐな心を持った少年(秋葉流じゃないけれど、だんだん真っ直ぐ彼の目をみるのがつらくなってくるほどに…)。妖怪のとらとは互いに協力して妖怪を退治しながらも、いつ食べられるか分からない緊張した関係を保っている。いまどき珍しい正統的な少年マンガで、この話を読んでいるときに何度、涙したことか(さとりの話とか、秋葉流の最後の場面とか)。
 妖怪のデザインもまた独特に描かれており、ふすま山魚には根強いファン多し。それにしても、後半部分の周囲の人が記憶を無くすあたりから、読むのがつらくなるぐらい息苦しい展開になっていくところがまた…。しかし、本当に登場人物(というか妖怪)を一人も無駄に扱っていない。よっぽど自分の生み出したキャラが好きなのであろう。
作品のツボ→蛇とガマの妖怪であるたゆらとなどかが人間に問う、「満足する死とは何か?」、それに真由子が答えた「泥なんてなんだい!」に感動。
伝染るんです 全5巻
吉田戦車 小学館
 不条理4コマという分野を、確立させた作品で、その後類似した作品が数多く書かれたが、やはり、この伝染るんですが最高峰だったのであろう。
 ハワイに行けないことに情念の炎を燃やすかわうそ、大学合格を目指すかぶと虫の斎藤、良い先生だけれど何の生き物なのか分からない山崎先生など、吉田戦車ならではのキャラクターが目白押し。
 人によって好きな作品が分かれるのが伝染るんですの特徴。ちなみに自分は「ゴワには五羽ゴワトリがいる」「汽車犬のように働く」「花の博覧会ならぬ鼻の博覧会」といった夢に見るなんてシリーズがお気に入り。基本的に言葉遊びが好きで、そこから膨らんでくる発想というか妄想をネタにマンガにしているように思われる。
 連載当時、いろいろな人に伝染るんですを描いてもらう企画があり、コミックスに付録として収録されているが、花輪和一柴門ふみが伝染るんですを描いてるのって、思えばすごい顔ぶれ。
作品のツボ→初もうでに2回以上来た人は、ただのもうでというネタを、初詣に行く度に思い出す。
エアマスター 全28巻
柴田ヨクサル 白泉社
 相川摩季は背が異様に高いということを除けば、一見普通の女子高性に見えるが、父親にプロ格闘家の佐伯四郎を持ち、母親から徹底的に新体操を仕込まれた摩季は、天性の格闘能力を秘め、その空中技のすごさからストリートファイターの間では「エアマスター」の異名で呼ばれていた。誰にも負けないと豪語するいかついファイターどもが、空を舞うエアマスターの前に瞬殺されていく様は、爽快の一語に尽きる。
 いつもは仲良しグループとつるんでいる摩季だが、その強さから女史プロでタッグを組んで戦うことになったり、修学旅行で東京に来ていた北枝金次郎が率いる黒正義誠意連合との争いに巻き込まれたりする。そして、ついには強いものを集めて戦わせる深道ランキングに名を連ねることになり、ゲームキャラの技をそのまま体得した深道ランキング6位のアキオ使いの駒田シゲオ、深道ランキング5位で尾張忍者の流れを組む尾形小路など、人間ばなれした連中と戦うハメになる。
 この漫画の魅力は格闘漫画としてのおもしろさもさることながら、どこかネジのはずれた登場人物に引き寄せられるものがある。いつも覆面をしているルチャマスターは実は40歳でプロのモデラー、深道ランキング15位のスナイパー空手の師範はカメラ小僧など、脇役にいたるまで、ある意味で魅力的な登場キャラが多い。そして、その代表格は摩エアマスターの強さに惹かれたジュリエッタ坂本。沢田研二のTOKIOを歌い終わると同時に蹴りが跳んでくる危ないヤツ。それと個人的には深道ランキング7位で花火使いの頭の悪い方の深道こと深道(弟)がお気に入り。
 こうして役者が出揃ったところで深道ランキングの連中をはじめ、これまでの登場人物が入り乱れてのバトルロイヤルを展開することになった。金次郎やジュリエッタ、さらには摩季を倒すためにインドで修行し、虎を倒すまでにいたった時田伸之助などが己の能力を超えて戦いを繰り広げる中、麻季は最強である深道ランキング元1位の渺茫に全てを賭けて戦いを挑んでいく。飛べ!相川摩季。
作品のツボ→連載初期から登場してエアマスターをライバル視する崎山香織の、女性であることを捨てた戦いへの執念には頭が下がるものがある。
小田原ドラゴンくえすと 1巻〜2巻 
小田原ドラゴン 小学館
 ヤングマガジンに連載された「おやすみなさい」で、情けない男の極地を描いた小田原ドラゴン先生だが、今度は現実にうずまく負の世界のダンジョンに、石川キンテツすとろう小泉という二人の戦士を引き連れて潜入していく。その取材する相手というのは、AV業界でも底辺とされる汁男優、ストリップ劇場で踊り子に向かってテープを投げる役割の人、これまで1500万円をラブドールにつぎ込んだ男など、いや、もう、何だか、ねぇ。
 取材先が、そんなところばかりなものだから、心を開いてもらえず、妙に攻撃的な対応を取られることがある。ストリッパーへのテープ投げも本編はおもしろいのだが、あとがきで編集部に苦情を持ち込まれたと描かれていて、この世の闇を探るのも大変なんだと実感させられます。そして、この漫画をおもしろくしているのは、小田原ドラゴンの容赦ないツッコミ。中でも汁男優を取材した時の「今までいった、どのスポットよりも、いやな湿度が高い」は名言。でも、声優オタクのバスには乗り遅れてもいいと思う。
 それにしても小田原ドラゴン先生、雑な絵のように見えて漫画に描かれた人物と本人がそっくりなので、さすが漫画家と改めて見直させていただきました。でも、取材が終わってからキャバクラに行くか、おっぱいパブに行くかでもめないように。
作品のツボ→ライターのキンテツは小田原ドラゴンからもバカにされるほどのキャバクラ好き。お前はだまされていると何度言っても聞き入れやしない。催眠術で治そうとしたが催眠状態に入ってもキャバクラを肯定し続けたという猛者である。
『か行』

海竜祭の夜 妖怪ハンター 全1巻
諸星大二郎 集英社
 暗黒神話は少年ジャンプで6回で打ち切られたが、妖怪ハンターというタイトルで連載された、この作品はたった5回で打ち切られてしまった。考古学者の稗田礼二郎は、民俗学や宗教学、古文書学など幅広い分野の研究を進めているが、妖怪伝説をはじめ、誰も手に付けないような異端の学問に手を染めているので、学生やマスコミからは妖怪ハンターと呼ばれている。その稗田礼二郎が、全国の伝説を探るうちに出くわす奇怪な物語。確かに説明文が多く、少年マンガの領域をはるかに越えている。しかし、少年ジャンプの連載を打ち切られた後は、ヤングジャンプなどに場所を変え、諸星のライフワークのように不定期掲載が続けられている。
 表題作の安徳天王の伝説を扱った「海竜祭の夜」をはじめ、妖怪ハンターの第1作となる、ヒルコ伝説を追う「黒い探求者」、瓜子姫とあまのじゃくの伝説をモチーフにした「幻の木」、花さかじいさんの話を民俗学にまで高めた「花咲爺論」など、9作品を収録。これまでただの昔話としか考えていなかった物語の裏に潜む意味が見えてくる。
 稗田礼二郎の名前は古事記の暗誦者である、稗田阿礼から取ったとのこと。古事記の語り部であった稗田にちなんで、礼二郎はこの作品の語り役となっている。稗田礼二郎のキャラは、どこか魍魎の匣などの京極作品に登場する京極堂を彷彿とさせる。しかし、彼の名前は榎木津礼二郎の元ネタではないのだろうか。
作品のツボ→海に身を投げた安徳天王が、海流に姿を変えた怪物のあんとく様は、一度見たら夢に出そうな怖さがある。
かってに改蔵 全26巻
久米田康治 小学館
 とらうま高校2年の勝改蔵は改造人間であると自分で思いこんでいる。かつて神童と呼ばれた改蔵が、あっちの世界の住人となってしまったのは、幼馴染の名取羽美にジャングルジムから突き落とされたのが原因である。とにかく改蔵は科特部に入部し、部長の彩園すずと下っぱの坪内地丹とともに、ハチャメチャな高校生活を送ることになる。しかし、改蔵のせいで、中途半端な天才にされた天才塾のメンバーが襲いかかる。
 というのが、大まかなストーリーであるわけだが、このマンガの特色を説明するのは実に難しい。1話完結の形で、卒業、バレンタイン、友情といったキーワードを決めて、ネタを展開させていくというのが基本的パターン。ドラゴンボール幽々白書、はてはドラえもんからカイジにいたるまでのマンガネタから、機動戦士ガンダムファイナルファンタジートライダーG7などの小ネタの使い方が、実にマニアのツボこを心得ている。ククルス・ドアンや、テムレイエンジンアミバなんかを出してくるあたり、本当にわかっていらっしゃる。
 だいたい最後は鉄道オタクの地丹くんが、ひどい目にあって終わるというのがオチだが、何だかだんだんひどくなっていくような気が…。コミックスではお便りをくれた人のハガキを全て掲載することにもチャレンジ。さらには、意外なことにフルCGで描かれているマンガだったりするのです。
作品のツボ→ヒロインであった羽美は、ヒロインの感じがしない、友達がいないといった感じで、部長や山田さんにヒロインの座を奪われ、今では呪術を駆使する電波系の女の子。
仮面ライダーSPIRITS 1巻〜16巻
原作:石ノ森章太郎、漫画:村枝賢一 マガジンZ連載中 講談社
 ある年代より上の男性にとって、仮面ライダーはウルトラシリーズと並んで、特別な思い入れのある作品となっている。もちろん人造人間キカイダー超人バロム1などもお気に入りの作品ではあるのだが、幼少期に数年間にわたって親しんだヒーローには特別な愛着がある。毎週登場する不気味な怪人に胸を躍らせ、ライダーカードを集め、ライダーキックを炸裂させていた記憶を持つ人も多いだろう。
 そんなライダーに込められた熱い思いを、見事なまでに昇華させたのが仮面ライダーSPIRITS。当時のテレビマガジンなどには戦いを終えたライダーたちが、その後世界のどこで活躍しているかが紹介されていたが、そうした設定を作品にうまく生かしている。
 話は滝和也などインターポールの捜査官を語り役にして、ライダー1号ライダー2号ライダーV3ライダーマンXライダーアマゾンライダーストロンガーなどの活躍が、個々に描き出されて行く(雑誌連載ではスーパー1まで登場)。本郷と滝の友情、2号の手袋の赤、家族を失ったV3、元は悪の組織にいたライダーマン、父と恋人を殺されているX、子どもとの友情を大切にするアマゾンなど、放映当時の設定が作品に生かされているので、思わずうれしくなってしまう。
 どうやら巨大な組織との戦いにつながっていくようなのだが、現時点では語られていない謎が多すぎる。登場するライダーも、どこまで出てくるか分からないが、この先ライダー大集合となることが予想されるので、ますます目が離せない。
作品のツボ→仮面ライダーV3の最終回で、ロケットとともに運命をともにしたライダーマンが、どうして生きていたかを描いたエピソードは特に秀逸。宿敵であるヨロイ元帥との真の決着に涙しろ。
からくりサーカス 全43巻
藤田和日郎 小学館
 人の血を吸って永久に活動を続ける自動人形と、その破壊者であるしろがねとの戦いを描いた物語。この作品の前に少年サンデーで連載していたうしおととらでも、人を襲うからくり人形のエピソードを描いたが、今回はそれを一つの作品にまで拡大させた。
 まだ小学生の才賀勝は、まだ見たことの無い父親から莫大な遺産を相続し、兄弟や伯父から命を狙われることになるが、そんな勝を助けたのは、中国拳法の使い手であった加藤鳴海だった。勝に襲いかかるのは懸糸傀儡という名の操り人形。阿紫花英良が率いるぶっ殺し組や、それと敵対する誘拐組の懸糸傀儡を撃破していくが、鳴海とともに命がけで勝を助けるのは、あるるかんという人形を操る少女エレオノール。というわけで、勝、しろがね、加藤の3人のつながりが物語の中核をなすと言っても過言ではない。
 勝の命を救ったものの記憶を失った鳴海は、ギイ・クリストフという人形使いに助けられるが、その頃から人を襲う自動人形の存在が明らかになってくる。最初の自動人形であるフランシーヌ人形を作った造物主は、彼女が笑顔を作れないことに絶望して姿を消すが、捨てられたフランシーヌ人形は、どうすれば笑うことができるのか探るため、多くの自動人形を従えて真夜中のサーカスという集団を作り上げる。笑いたいという小さな願いが、人形の愚かさから多くの人を殺戮する悲しい結果を招くことになる。フランシーヌ人形に付き従うのは、アルレッキーノ、パンタローネ、コロンビーヌ、ドットーレ最古の4人。勝が仲町サーカスの連中に拾われ、仲間を増やしていく中、鳴海やギイはパウルマン先生チャイナ・ホーといった自動人形との闘いを繰り広げ、サハラ砂漠での決戦では、多くの犠牲を払いながらも、真夜中のサーカスを壊滅させる。
 ここまで進んだところで、まだ物語は中盤にしか過ぎない。真夜中のサーカスよりも恐ろしく、なおかつ狡猾で、全ての出来事を裏から操っていたのは、造物主にして、しろがねの一員にも加わっていたフェイスレス司令だった。かつて愛したフランシーヌという女性を、兄に奪われた恨みから大きく捻じ曲がり、一人の女性の笑顔を見たいがためにゾナハ病を撒き散らし、全人類を殺そうとした男。使えなくなった最古の4人を見捨て、ハーレクイン、プリゲッラ、カピタン・グラツィアーノ、ディアマンティーナ最後の4人を生み出し、現代に甦ったフランシーヌであるエレオノールを自分のものにするため、勝を脅かし続ける。長い戦いの末に、勝は成長し、鳴海とエレオノールの愛も紆余曲折がありながらも、育まれていくが、何百年と続いた兄弟げんかの結末を、宇宙を舞台に見事に描き出し物語を完結させている。
作品のツボ→うしおととらの山魚ように、読者が考えた懸糸傀儡や自動人形で1位を獲得したアンラッキーブロム・ブロム・ローが、しっかりと作中で描かれている。それにしても、アンラッキーは怖すぎである。
監督不行届 全1巻
安野モヨコ 祥伝社
 花とみつばちなどの作品で知られる安野モヨコが結婚した相手は、新世紀エヴァンゲリオンの監督である庵野秀明だったわけだが、この漫画はオタクを旦那に持ってしまった妻の苦難の記録である…かどうかは定かでないが、オタクを普通の人間と思ってはいけない。オタクは衣類や食生活にいたるまで、普通の人間とは異なっており、油断をすれば特撮のDVDを見まくり、車に乗ったらアニソンを流しまくる、そんな生き物なのである。
 オタクの悪い癖の一つにコレクションを集めてしまう収集癖があるのだが、部屋の中に仮面ライダーフィギュアウルトラマンブレスレットを置かれた日には、妻もたまったものではないだろう。せっかくドライブに出かけたのに車の中でバトルフィーバーJを流されたのではいたたまれないだろう。新婚旅行が富士急ハイランドのガンダムライドというのには耐えられるのだろうか。そんなオタクの夫に頭を抱えつつ、次第にオタクのことを理解していく妻。オタクとして生まれてきたからには、その趣味を理解してくれる相手と結婚できた監督はラッキーだったのであろう。しかし、庵野監督はXボンバーの主題歌まで歌い、いまだに日曜朝の戦隊物は欠かせないほどのディープなオタク。まだまだ道は厳しいものがありそうだ。
作品のツボ→安野モヨコはオタクを亭主に持ったばかりに、次第にオタクの世界に感化されていくが、それとは逆に庵野監督の方は後書きでも語っているが、安野モヨコから非オタクの感性を注入されていく。この2人は何だかんだいって、お似合いの夫婦なのであろう。ちなみに作中に出てくる膨大なまでのオタク知識は、巻末の用語解説で一目で分かるようになっている。
寄生獣 全10巻
岩明均 講談社
 地球のために人間は、排除されなければならない。作者が言いたいこととは微妙に違うのだろうが、作品の根底には、このテーマが流れているのではないだろうか。食物連鎖の頂点に立っている人間だが、もし人間を捕食する存在が現れたら、どうなるのだろうかと考える作品。
 主人公の泉新一と、その右腕に寄生した生物ミギー。本来ならば人間を食料とする生物であったミギーが、新一の脳を奪えずに右腕に寄生したばかりに、同種の寄生生物たちと死闘を繰り広げることになる。主人公と、彼を食料にしたい生物が、互いの利益のために協力して敵を倒す。この構図はうしおととらでも描かれたが、二人の緊張関係が作品の魅力を高めるスパイスとなっている。特に、新一とミギーは、離れたくても互いに離れることが出来ないため、より緊張した関係になっている(この緊張感は新一の母親が寄生生物に体を奪われたことによりピークを迎える)。
 作品のテーマも深いが、新一を探るために送りこまれた寄生生物の島田や、史上最強の寄生生物の後藤との戦いの描き方など、バトルマンガとしてみても秀逸。連載開始時はミギーが可愛く思えるようになるとは予想だにしなかった。
作品のツボ→確かに人を食料として食べる寄生生物よりも、趣味のために人を殺す、殺人鬼の浦上の方が怖いかもしれない。
機動警察パトレイバー 全22巻
ゆうきまさみ 小学館
 1990年代末の東京ではバビロンプロジェクトと称する大規模な干拓工事が進行中であったが、この世界においては歩行式の作業機械であるレイバーが様々な分野で活用されるようになっていた。そして、ついにレイバーは警視庁にも導入されることになったが、その専門部署として設立されたのが特車2課である。特車2課は南雲隊長が率いる第一小隊と、曲者である後藤隊長が率いる第二小隊に分けられたが(後に第三小隊が誕生しかけたこともあったが…)、この第二小隊が問題児揃いの部隊となってしまったのだ。
 第二小隊には最新式のレイバーである98式イングラムが2台配備されたが、それを操縦することになったのは、レイバーを異様に可愛がり傷つくのを恐れる泉野明巡査と、直情型で命令を無視してでも発砲したがる太田功巡査の2名だった。それをバックアップするのは、イングラムを製造した篠原重工の御曹司である篠原遊馬と、太田の暴走で胃に穴が空きそうになっている進士幹泰、さらに後方支援を受け持つ心優しき山崎ひろみ。以上のメンバーで動き出した特車2課第二小隊に途中から太田を制御できる人材として熊耳武緒が加わることになるのだが、この連中がレイバーをめぐるトンデモない事件に巻き込まれることになるのである。
 連載は6年半にものぼる長いものだったが、その大半はシャフト・エンター・プライズの内海という男が巻き起こしたグリフォンという名の黒いレイバーとの戦いに費やされている。この内海という男が、おもしろければそれでいいじゃんといった感じの愉快犯で、実にお気楽にトンデモない事件を巻き起こしていく。要はグリフォンを暴れさせて、その性能をプレゼンするというのが目的なのだが、内海の性格が災いして無駄に騒動を大きくしていく。グリフォンを動かすのは、幼いころから操縦士になるために育てられたバドリナート・ハルチャンド。このバドと野明の戦いが、物語の大きな柱となっている。
 小年サンデーに連載されたのは88年から94年までで、物語の舞台となる98年から2001年は近未来のこと。10年後の未来を、かなりリアルに表現している反面、携帯電話が普及しておらず、非常時の連絡に苦労しているなど、微妙な違いを感じ取りながら読んでみるというのも一興かも知れない。
作品のツボ→2002年に劇場公開されたWXV(廃棄物13号)は、原作の中盤に出てきたエピソードを下敷きにしたもの。ゆうきまさみ版のロボット対怪獣ものを楽しめるエピソードとなっている。
究極超人あ〜る 全9巻
ゆうきまさみ 小学館
 高校の時に地学部(天文部)に所属していた自分は、部員一同と山に天体観測会に赴いていたわけだが、その時仲間の一人が持ってきていた少年サンデーに載っていたのが、究極超人あ〜るの第1回であった。偶然にも我らはあ〜ると、同じく高校の2年生で、マンガの中に展開されていたのは、まさに今の自分たちの姿、そのままだったのである。
 主人公のR・田中一郎成原博士によって作られたアンドロイドなのだが、特殊能力があるわけでもなく、実に内容の無い高校生活が展開されていく。あ〜るが所属する光画部には、運動部には無い文化部特有の、ゆるいようで強いような妙な連帯感が生まれている。そして登場する連中は、戦うセンパイとさか先輩や、恐怖の生徒会長西園寺まりぃなど個性際だった連中ばかり。
 作中の時間の流れは、現実の時間の流れと対応しているので、自分らが修学旅行に行けば、あ〜るたちも修学旅行に向かい、自分が高校を卒業すると同時に、あ〜るの高校生活も終わりを告げるので連載も終わってしまった。読み返すたびに、昔のアルバムを見ているような気分になる作品なのである。(もっとも私は、幽霊マッドサイエンテストには会いませんでしたが…)
作品のツボ→特撮関連をはじめとした、細かいネタが作中に散りばめられているので、元ネタを探すのも一興。最近になって、ようやくキングアラジン怪奇大作戦から取っていると知りました。
銀と金 全11巻
福本伸行 双葉社
 主人公の森田鉄雄は、ある日競馬場で平井銀二という男から日当10万円の仕事を引き受けないかと声をかけられる。その平井銀二こと「銀」は、闇の世界に生きて政治家や大企業の幹部と、多額の裏金をやり取りをするような男だった。銀の生きかたに魅せられた森田は、自分も銀のような男になりたいと、裏の世界に身を投じることになる。裏の世界で生きていくには、純粋すぎる所があった森田だが、思わぬ才能を見せ、大金を手に入れていく。
 カイジアカギでもお馴染みの命がけの勝負の駆け引きが、福本テイストで描き出される。強欲な画商から金をむしりとるセザンヌの目利き、金持ちのボンボンとの天井知らずのポーカー勝負など次々と勝利していく森田。そして福本作品と言えば、日本を牛耳る大富豪の老人ということで蔵前の登場。蔵前とは麻雀勝負が展開されるが、この勝負では師と仰ぐ銀が大逆転で勝利する。アカギやカイジのパターンならば蔵前が最後の相手となるところだが、その後、森田は大財閥であるカムイ一族の相続争いに巻き込まれることになる。このエピソードで多くの死を体験し、悪事にいやけが差した森田は引退してしまう。ここがポイントなのだが9巻で主人公が引退してしまって、その後は登場しないという珍しいマンガとなってしまったのである。それから申し訳程度に競馬編を描いて静かに連載を終了する。連載雑誌であるヤングビッツの路線変更が原因のようだが、しり切れトンボのラストが、いささか残念である。
 このマンガが連載を開始したのは90年代初頭で、バブルの崩壊直後。そんな時代の雰囲気を作中でも、うまく取り入れている。また、政治家の小沢一郎河野洋平をモデルにした人物が登場するのも興味深い。
作品のツボ→福本作品としては珍しく若い女性キャラが描かれるが、それ以上に前半に登場する連続殺人鬼は、福本キャラの中でも珍しいタイプである。
グラップラー刃牙 全42巻
板垣恵介 秋田書店
 東京ドームの地下に設けられた地下格闘場では、ありとあらゆる格闘家により、凶器の使用以外は、どんな技の使用も認められるルール無用の戦いが繰り広げられていた。そこでの勝利者こそ、最強の格闘家と呼ばれるにふさわしい者となるが、現在、地下格闘場のチャンピオンは、まだ顔にあどけなさの残る17歳の少年バキこと、範馬刃牙だった。そんなバキが強さを求めて戦うわけは、史上最強の男である父親の範馬勇次郎を倒すため。バキは、地下格闘場で相手の神経を引っ張り出して切断する鎬昂昇、その兄で人体実験により最強の体を作り上げたアミバみたいな医者の鎬紅葉などを次々と打ち破って行く。
 そこから、話は時を遡って単行本の9巻かrは、13歳のバキを主人公に、なぜバキが最強を目指そうとして、どのように強くなって行くが描き出されはじめる。ここでも大猿多重人格者のガイアとの戦いなど、常識破れな展開が続いていくが、ついにバキと父親の勇次郎、そして母親との歪んだ家族関係が解き明かされる。
 そして、過去から再び話が現代に戻ってからが、この物語のメインとなる部分。地下格闘場に世界中から集められた最強の男たち32人による最大トーナメントが始まるのである。主人公であるバキは当然参加するが、これまで戦った鎬昂昇に鎬紅葉、ケンカの達人の花山薫、それ以外にも中国4000年の拳法の達人である烈海王、父親の勇次郎が送りこんだ秘蔵っ子の天内悠など、参加者はいずれもくせものばかり。ボクシング、相撲、プロレス、サンボ、ボクシングと、それぞれの格闘技のプロが死力を尽くして戦っていくが、中にはなぜか暴走族の特攻隊長の芝千春なんてのも混ざっている。ボクシングヘビー級チャンピオンと特攻隊長の戦いが見られるのは、この漫画ぐらいのものであろう。
 この漫画のすごさは、戦いの予想が全くつかないということにある。主人公が勝ち進むことぐらいは、どうにか予想できるが、他の対戦相手は誰が勝ち残ってくるか、読んでいるものにとって予測不可能である。普通の格闘漫画ならば、主人公のライバルキャラの存在などから、ある程度の予想は出来るが、最大トーナメントは絶対勝ち残りそうなキャラが、あっけなく敗れ去り、そいつを倒したヤツでさえ、次の戦いで負けてしまったりする。決勝戦に行き付くまで補欠参加者の戦いまで含めた30以上ある試合は、どれも見ごたえのあるものとなっている。そして最大トーナメントを終えて、続編のバキにつながっていくのである。
作品のツボ→どうみてもジャイアント馬場なマウント斗場、そしてどう見てもアントニオ猪木なアントニオ猪狩もバキの対戦相手となる。何がすごいかって、この二人がテレビでは見られない真の強さを発揮することにある。ちなみに連載終了後の外伝では、この二人の戦いが描かれている。
甲子園の空に笑え! 全1巻
川原泉 白泉社文庫
 少女漫画といっても、目の中にお星様キラキラで、曲がり角でパンを加えた女の子とぶつかるような物語ばかりとは限らない。本書は、まったりとして、独特のリズムを生み出す川原泉先生の傑作集。表題にある「甲子園の空に笑え!」のほかに、「ゲートボール殺人事件」「銀のロマンティック…わはは」の3作品が収録されている。
 「甲子園の空に笑え!」の主人公は、九州のど田舎の豆の木高校に赴任してきた、若き生物教師、広岡真理子先生。赴任するやいなや、野球部の監督を任されることになった広岡先生だが、野球のルールも知らなければ、興味も全く無し。部員も9人ギリギリしかいないありさまで(しかも、ファースト、セカンド、サード、ショートは4つ子)、どうなることかと思いきや、広岡先生は意外なバントの才能を発揮する。生徒を右に左に飛びまわらせるのが、おもしろいばかりにバントの練習を繰り返すうちに、メキメキと守備力が上達していく。とはいうものの、監督も選手も野球を楽しむだけのまったりぶりだったが、何を間違ったか甲子園に出場を決めてしまったから、さあ大変。村をあげての大騒動となってしまったのである。そんな騒ぎは、どこ吹く風と、強豪校の監督との交流も交えながら、運が良いといいね、楽しいといいねとの、まったり野球で常に1対0の試合運びで決勝戦まで勝ち進んでしまった。果たして豆の木高校は、甲子園の空に笑うことができるのか。なお、女監督といえば、レッドビッキーズを思い出すが、それ以上に豆の木高校は、勝利への執念が薄い。
 「ゲートボール殺人事件」は、お年寄りとゲートボールをプレイするのが大好きな鈴菜さんが、やくざの後継ぎと殺し屋と刑事を立て続けに踏んづけることから物語の幕が開く。ゲートボールの会場であった空き地を封鎖されてしまったことから、どうにかしようと奮闘しているうちに組長の死体が発見される。麻薬の取引きまでからんで、本当ならば緊迫した事件となるはずが、どうにも緊張感に欠けるのは、全てメルヘンというキーワードで片付けようとする鈴菜さんのせいに他ならない。ちなみに、刑事のお決まり文句しか話せない新田刑事が妙にツボにはまる。
 「銀のロマンティック…わはは」は、幼い頃からバレエを習っていたもののセンスが無いと言われていた由良更沙と、スピードスケートの選手だったが、ケガで引退した影浦忍が、どういうわけかペアのフィギュアスケートに取り組むことになる。向きになって更沙の方が影浦を持ち上げてしまうような、どこかちぐはぐな二人だが、天性の才能も手伝って世界への階段を駆け登っていく。ちなみに、連載時の85年当時は、日本のフィギュアにはペアが、ほとんど存在せず、競争相手も少なかったそうだが、現在はどうなっているのであろうか。
作品のツボ→ゲートボール殺人事件では、必要以上にゲートボールのルールが解説されている。第1ゲートをくぐりぬけ、第2ゲートになだれこみ、第3ゲートでぶっちぎり、一気にゴールをめざすのだ 一気一気 赤と白 ゲートボールはおめでたい。 
孤独のグルメ 全1巻NEW
原作:久住昌之 作画:谷口ジロー 扶桑社
 主人公の井之頭五郎は輸入雑貨の貿易を個人で営む男。営業のため首都圏近郊を動き回る機会が多いのだが、仕事でバタバタしているうちに昼飯を食べ損なうこともしょっちゅうである。そこで腹をすかせた五郎が夕方近くになってから飛び込むのは、目に付いた定食屋ということになる。だいたい以上のような設定で紹介されるのは、その街に実在する小さな定食屋などである。グルメ漫画の場合、料理に関するウンチクが延々と語られるか、ちょっと普通の人では入れないような高級料理店や、食通だけが知っているような隠れた名店が紹介されたりするのだが、この漫画で紹介されるのは、本当にどこでもあるような普通のお店なのである。
 そうした何の変哲も無い店に飛び込んだ五郎は、腹を空かせていることから、読んでいる方が驚くぐらい大量の料理を注文する。しかも、酒は全く飲めないので、ひたすら料理のみを注文する。お酒のおつまみですら、ご飯と一緒に注文しておかずとして胃袋に収めていく。パッと食ってサッと出ようと入った回転寿司で11皿も取るのは食べすぎである。そもそも食べ終わった後にベルトを緩めなければならないほど、お腹がパンパンになるグルメ漫画なんて見たことが無い。なお、自分は見も知らない定食屋に入るのは苦手なのだが、その理由と言うのは店によってルールみたいなものがあり、それを知らないと恥をかきそうなのと、常連さんしかいない店だったりすると身の置きどころが無くなるからである。そして、見事なまでに五郎は自分が心配しているような失敗をしてくれる。煮込み雑炊を頼んだら冬だけのメニューだよと断られたり、大阪のたこ焼きやの屋台に飛び込んだら周りの常連客から完全に浮いてしまったりと、なかなか情けない目に遭っている。それでも、こりずにというか、空腹に耐えられず、初めての店に飛び込んでいくのだから大したものである。
 文庫版では18話分が収録されているが、街で見かける定食屋にとどまらず、デパートの屋上のうどん屋、神宮球場の売店で買ったウインナー・カレー、新幹線に乗る前に買ったシュウマイ弁当なんてものまで紹介されている。なお、ビニールテープを引っ張ると温かくなるタイプのしゅうまい弁当を買ったため、新幹線の社内にしゅうまいの臭いが充満してしまったエピソードは、そのバツの悪さが痛いほど伝わってくる。さらには掟破りとして、深夜のコンビニで買い込んだ惣菜の数々まで紹介されているが、こうして読んでいると、どこに行ってもそれなりにうまいものが食べられる日本という国は、本当にすごい国だと実感させられる。
作品のツボ→これまでグルメ漫画で紹介されるような店になど入ったことはなかったが、本書では庶民的な店ばかり取り上げているので、幾つか自分にとって馴染み深い店も登場している。浅草の豆かんは食べたことがあるし、板橋区大山町のハンバーグ・ランチの店は近所に住んでいたので入ったことがある。なお、このハンバーグ・ランチの店は主人公の五郎にとって最悪な出会いとなってしまい、「モノを食べる時はね 誰にも邪魔されず 自由で なんていうか、救われてなきゃあ ダメなんだ」という名ゼリフが生まれている。
GOLDEN LUCKY 全10巻
榎本俊二 講談社
 現在、モーニングで連載されているえの素の前に連載されていた4コマ作品。えの素ほど突き抜けた下品さは無いが、そこはかとなく下品である。榎本の作品を読んでいると、4コマの中にも独特のリズムが流れているのを感じさせてくれる。そして、一見可愛い絵柄の中にシレっと残酷さを書きこめるのも、榎本の持ち味の一つ。また、キャラクターがあっけなく死ぬのも特徴の一つで、これほど命の扱いが軽いマンガもほかには無いだろう。
 吉田戦車の伝染るんですのように、固定キャラを使って話を繋げていくシリーズ作品があり、ジェイコブヘタくんといった数多くの名物キャラを生み出すに至った。特に連載終盤に登場して、ついには人類を滅亡にまで追い込んだ殺人ロボットベインビールの冷酷ぶりは、ちょっとすごいものがある。また、連載終了直前には4コママンガの枠をブチ破って数週にわたって実験マンガを展開。8コマごとに登場するキャラと12コマごとに登場するキャラなどを設定し、互いに出会える場面が最小公倍数にするなど、細部まで考えて書きこんでいるのが読んでいて楽しい。
 講談社のコミックスは現在入手することが難しくなっているが、この度、太田出版から完全版が発売された。その発売の経緯が榎本本人が復刻してくれと頼んだからというところが、何だか泣ける。
作品のツボ→「良い大人がマンガを読んで恥ずかしくはないのかい」、「うるさいぞ、焼き鳥のくせに」。「母さん、今日は正しいことでも言ってはいけないことがあるのを学んだよ」、「キジも鳴かずば撃たれまいだよフライド」。
『さ行』

最強伝説黒沢 全11巻
福本伸行 講談社
 44歳にもなるのに結婚する相手もなく、人生にこれといった望みも持てず、穴平建設でひたすら肉体労働に従事する毎日を送っていた黒沢の唯一の楽しみは、夕食に居酒屋でビールを飲みながら軟骨の唐揚げを食べることだった。職場での人望も自分より年下の現場監督である赤松に奪われ、やることなすこと裏目に出る悲しい毎日を送っていたが、不良中学生にからまれたことをきっかけに彼の運命は思わぬ方向に転がっていく。
 連載当初はひたすら悲しい中年男性の生き様が描かれ、どこが最強なのかと思わせる展開が続いたが、この不良中学生との騒動から連載の流れがガラっと変わってしまう。当初は中学生にボコボコに痛めつけられ、その情けない姿を同僚に見られてしまったことから、伊豆にまで逃げてしまった黒沢だが、そこで見たシートン動物記に感銘を受けて中学生への復讐に乗り出していく。元々が180cmを超える巨漢で肉体労働で鍛え上げた体を持つ黒沢が、いきがっている中学生に負けるわけもなく、勢いで出した張り手一発で相手をノックダウンさせてしまう。そして、中学生側は切り札として中学を仕切る不良の仲根を呼び出してくるが、その仲根も命を捨てても構わないという黒沢の姿勢に、こいつだけは他の大人と違うと戦いを放棄する。こうして穴平建設の社員だけでなく不良中学生まで味方に引き入れてしまった黒沢だが、一度戦いに足を突っ込んでしまったら、中々後には引かせてくれなかったのである。
 単なる建設作業員であったはずの黒沢が、仲根を助けるためにプロレスラー3人組と戦いを挑んだり、黒沢を倒せば名をあげられるということから黒沢狩りのターゲットにまでなる始末。むなしい毎日に嫌気がさしていたとはいえ、そんな修羅場までは望んでいなかっただろうが、ひたすら年を重ねていくだけの人生に疑問を抱いた黒沢が、無様な姿をさらけ出しながらも何かをつかもうとする姿は、おかしくもあり、悲しくもある。しかし、そのかっこ悪さには熱い何かを感じさせるものがあるのだ。
作品のツボカイジアカギでもそうだが、突拍子も無い例えを出してくることが福本作品には見られる。中でも黒沢では、それをねらってやっているような節があり、開拓時代のアメリカでオランウータンの子供を連れて逃げる例えなんて、どこから引っ張り出してきたんだと言いたくなる。
ザ・ムーン 全4巻
ジョージ秋山 小学館文庫
 9人の子どもに与えられた巨大ロボット「ザ・ムーン」。大富豪が2兆5千億円もの大金ををかけて無敵ロボットを作り子どもに与えたのは、本当の正義とは何かを確かめるため。ロボットは9人の子ども全員の意思が一つにならないと動かない。突然、誰にも負けない強大な力を手してしまったのは、主人公の「サンスウ」、ヒロインの「カテイカ」、主人公のライバル「シャカイ」、主人公の弟「タイイク」、どんくさい「ズコウ」、頭の切れる「リカ兄弟」、まだ幼い「オンガク」、さらに年少のオンガクの弟「ヨウチエン」の9人。
 正義を行うのは時として残酷である。幼いヨウチエンですら、ロボットを動かすためには勝手な行動は許されない。そして、敵となるものたちも、自分の信じる正義のために行動している。多くの人を救うためには多少の犠牲は仕方ないと水爆を落とそうとする者。寂しい老後に絶えられず社会に反乱を企てる老人。しかし、一人でも敵に同情したり、集団の意思に反すればザ・ムーンは動かない。あまりにも過酷な運命を背負わされてしまった子どもたちは、自分たちの手にあまることに対して、判断をくだし戦わなければならない。
 弱い子どもに与えられた無敵のロボットという設定は、まんが史上もっとも救いようの無いラストに向かって突き進んで行くことになる。それと最後まで彼のポリシーは分からなかったけれど、ご主人の命令で、子どもたちを影から守りつづける糞虫かっこ良いです。
作品のツボ→正義のために四国に水爆を落とそうとするバイクの集団は、何故か同じ作者のデロリンマンに出てきたオロカメンの格好をしている。
失踪日記 全1巻
吾妻ひでお イースト・プレス
 「ふたりと5人」「ころころポロン」などの作品で知られる吾妻ひでおが、ここまで追い込まれている状態にあったなんて、この本を読むまで知らなかった。作家や漫画家ならば締切りに追われて逃げ出してしまいたいという思いは、常に誰もが持っている。しかし、本当にそれをやってしまい、浮浪者同然の生活を送ってしまったということが驚きなのである。おそらく肉体的にも精神的にも最悪の状況にあったのだろうが、その報告が悲惨になりすぎないように、あの画風で、ユーモアも交えながら描いているところは、さすが吾妻先生。普通の漫画として楽しめる読み物であるが、人気漫画家であった吾妻ひでおが、ゴミを漁ってまでして食べ物を得ていたというのは衝撃的である。ちなみに拾ってきたうどんやパンを食べている様子が、それがものすごくおいしそうに見えるのが不思議である。
 失踪したのは89年と92年の2回。しかも92年の時は失踪先で配管工にまでなって働いているのだが、仕事から逃げ出して働いているという逸脱ぶりに頭が下がる(しかも、社内報の漫画を望んで描いている)。よく周りの人間にバレなかったと思うのだが、漫画家の顔なんて案外誰も知らないものである。この配管工時代の体験は、周りの人間も変人ぞろいで実に読んでいておもしろい。この時、吾妻先生をいじめていた柳井さん(仮名)は、今でも世田谷区で配管工を続けているのであろうか。
 こうして2度にわたる失踪から無事に保護された吾妻先生だが、97年になってアル中になるという、さらなるピンチに見舞われる。これが浮浪者時代の方が、まだ健康だったと思えるような悲惨な状況で、ついには精神病院に入院させられてしまうのだが、この幻覚まで見るような状態から、よく立ち直ってこれたものである。どうやら、今は普通の生活を送っているらしい吾妻先生だが、この本を読んで、これまでの経緯を知ってしまうと、また道を踏み外してしまいそうに思えて、何だか心配になってくる。
作品のツボ→ついに保護された警察でサインをねだられ、イラストとともに「夢」という文字を書いたエピソードは、巻末対談でとり・みきも驚いていたがウソのようなホントの話である。
勝負師伝説 哲也 〜雀聖と呼ばれた男〜 全41巻
原案:さいふうめい 漫画:星野泰視 講談社
 麻雀放浪記の作者でもある阿佐田哲也を主人公にした麻雀マンガ。といっても、子どもでも楽しめるようにという配慮からか、次から次へと強敵が現れるという完璧な少年マンガになっている。終戦後、間も無く職場の先輩からギャンブルに誘われたことから、哲也の麻雀勝負がスタートする。その後、新宿で師匠となる房州から積みこみなど麻雀のイカサマ技の数々を教わって最強の玄人となっていく。
 房州から全てを教わった哲也は、ガン牌を得意とする印南や、盲牌の達人であるブー大九郎などの強敵を倒していく。そして、刑事の銭亀に目を付けられてからは、ほとぼりが冷めるまで北への旅を開始。途中の富山では無念無想で麻雀を打つ坊主たちと勝負している。麻雀のルールを知らなくても、読者として敵のイカサマを見破る楽しみは充分に存在する。全くツキが無いからこそ国士無双が作れる近藤の理論には驚かされた。(国士無双は手持ちに違う種類の牌が集まってこそ出来る技)
 上の階に上がるほど強敵が現れる展開や、ノガミ四天王の設定など格闘マンガの様を呈する所もあるが、麻雀を知らない人でも楽しめる展開がうれしいところ。しかし、印南の最期はヒロポン中毒で死亡するなど少年マンガとしてぎりぎりのところもあるのがすごい。ノガミのドサ健との死闘の末に敗れた哲也は、今度は西に向かって旅に出る。そこでも怪しげな風水師や、場を荒らしまくる暴風雨の目羅など、常識を外れた登場キャラが満載である。
作品のツボ→哲也を魅力的な作品としているのは、オヒキのダンチの存在が大きい。なんだかんだいっても哲也にとって無くてはならない存在。不定期登場のダンチ十番勝負は、現在二番勝負まで完了。
ジョジョの奇妙な冒険 第1部 その青春 1巻〜5巻
荒木飛呂彦 集英社
 いまや少年ジャンプ誌上で14年以上の長期連載となったジョジョの奇妙な冒険。その物語は19世紀末のイギリスから始まった。主人公のジョナサン・ジョースターは英国貴族で、自らを紳士と標榜する。不正を憎み、悪を憎むという正に正義の味方代表とも言うべきキャラクター。
 石仮面を被り吸血鬼となった親友のディオ(最もディオの方は、ジョナサンを利用するため近づいたのだが…)を倒すべく、波紋法という呼吸法を習得し、戦いに挑む。
 第1部は連載期間が約10ヶ月という短い期間ながらも、主人公の死とともに、読者に圧倒的なインパクトを残すことになった。この衝撃あればこその、今にいたる長期連載なのだろう。しかし、連載当初に描かれた主人公の少年時代などは、少年ジャンプで、よくもこの地味な展開が許されたものである…。切り裂きジャックや、メアリー王女を守る忠実な騎士、ブラフォードタルカスなど、時代背景を登場人物たちに上手に活かしているのが、うれしいところである。
作品のツボ→まさか、この時に登場したスピードワゴンの名が、今でも残ることになろうとは…。

ジョジョの奇妙な冒険 第2部 その誇り高き血統 5巻〜12巻
荒木飛呂彦 集英社
 第1部から約50年後、第2次世界大戦勃発直前のアメリカから物語が始まる。主人公は第1部のジョナサン・ジョースターの孫のジョセフ・ジョースター。ジョナサンの真面目な性格に惚れ込んでいたので、ふざけた性格のジョセフが登場した時にはショックを受けたものである。しかも、敵は吸血鬼を食料にする究極の生物とパワーアップしているのに、ジョセフの能力はジョナサンに劣るとくれば、大丈夫なのかこいつとい不安にさせられた。
 しかし、後に神をもあざむく男と称せられるジョセフは、ふざけた性格ながらも、騙しのテクニックで一発逆転を果たしてしまうのである。こうして、ふざけながらも実は真剣に仲間を救うことを考えているジョセフに対してジョナサン以上の愛着を持つようになっていた。
 ジョセフはアメリカンクラッカーに波紋を流し、仲間のシーザーシャボン玉に波紋を流す。そして師匠のリサリサはマフラーに波紋を流す。まさに2部において波紋法の、様々なバリエーションが花開いたのである。しかし、究極生物カーズとともに死ぬのかと思われたジョセフが、第3部はおろか第4部にまで登場することになろうとは…。
作品のツボ→最高のキャラは、ナチスのサイボーグであるシュトロハイム。我が、ナチスのォォォォォォ、科学力はァァァァァァ、世界一ィィィィィィィィィィ。
ジョジョの奇妙な冒険 第3部 未来への遺産 12巻〜28巻
荒木飛呂彦 集英社
 時は流れる時代は今、ということで現代(1989年)の日本を舞台に、ジョセフの孫となる空条承太郎が主人公となる。100年の時を経て復活した吸血鬼DIOを倒すため、年を取ったジョセフをはじめ、アブドゥル花京院典明ポルナレフ、犬のイギーらとともに、敵スタンド使いと戦いながらのエジプトへの大旅行を繰り広げていくことになる。
 そして、この3部から超能力を具現化したスタンドが登場。このスタンドも波紋法に慣れていた読者としては、当初は違和感を覚えたものである。今でも少年ジャンプ誌上で活躍しているスタンドだが、振り返ればこの頃のタロットカード9栄神のスタンド能力はまさに基本といった感じ。ジョセフの遠隔視や、ボインゴ未来予知テレンス・ダービー心を読む能力などは、スタンドは超能力の延長線上にあるんだと実感させてくれる。
 エジプトまでの道のりはシンガポールからインドパキスタンアラブ諸国など魅力的な国ばかり、このルートを辿っていつか旅してみたいものですな…。
 ちなみにダービー兄とのポーカー勝負は、ジョジョ史上1、2をあらそう名バトルとして記憶されることになる(ポーカー勝負というと、必殺必中仕事屋稼業を思い出す)。
作品のツボホル・ホース一番よりもNO.2という人生哲学は、妙に共感するところがあるのです。
ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない 29巻〜47巻
荒木飛呂彦 集英社
 第3部から10年後の1999年、世紀末の日本の杜王町が舞台。別に恐怖の大王が降ってくるわけではないのだが、町に潜む静かなる恐怖が敵となって襲い掛かる。
 主人公はジョセフの隠し子である東方仗助(名前の音読みがジョウジョ)。彼は壊れたものや、傷ついた人を治す能力クレイジー・ダイヤモンドを持つ。恐るべき吸血鬼DIOは滅んだものの、彼をスタンド使いにした弓矢が、この町には存在する。そして、矢によって生み出されたスタンド使いが町に集まってくる。主人公のスタンスは、あくまでも平和な町を守ることにあるようだ。ちなみに杜王町のモデルは作者の生まれ故郷である仙台の町がモデルであるらしい。
 この第4部では、第3部では見られなかった、薬菜飯店をアイディアにした病気を食べ物で治すトニオさんのパール・ジャムや、鉄塔の人を元にした鋼田一豊大のスーパーフライなど変り種のスタンドが表れるのが見もの。
 そして、最後の敵となる爆弾のスタンドであるキラークィーンを持つ、殺人鬼の吉良吉景は、平穏な暮らしを送りたいが、女性を殺さずにはいられないという恐るべき狂気を内に秘めている。この人の元ネタは警察署長に出てくる殺人鬼と思われる。
作品のツボ→作者本人を反映させたような、天才漫画家でヘブンズ・ドアのスタンド使い岸辺露伴は、わがままで、漫画のネタにすることしか考えていないが、一応は味方というすごい人。
ジョジョの奇妙な冒険 第5部 黄金なる遺産 48巻〜63巻
荒木飛呂彦 集英社
 第5部から2年後、2001年のイタリアが舞台。イタリアは荒木先生が第2の故郷というぐらい、好きな所らしく実際に足を運んで取材して、作品に反映させている。
 何と主人公は、かつての宿敵吸血鬼DIOの一粒種となったジョルノ・ジョバァーナ。しかし、どうやら頭の部分のDIOよりも、体の部分のジョナサンの遺伝子を多く受け継いだらしい。能力は無機物から生き物を生み出すゴールドエクスペリエンス。第5部は集団バトルにするという作者の意図から、他の主人公よりも幾分か影がうすくなっている。
 マフィアのボスを目指すジョルノの敵は、ギャング組織パッショーネのボスであるディアボロ。彼こそがエジプトの遺跡からスタンド使いを生み出す矢を掘り出した張本人にして、時間を吹っ飛ばす能力キングクリムゾンの持ち主。  味方チームにはスティッキーフィンガーズブチャラティや、エアロスミスナランチャなど愛すべきキャラが多いが、敵側にも話が進む内に成長していく釣り竿のスタンドビーチ・ボーイペッシや、すぐにブチ切れる全てを濃凍らすホワイトアルバムギアッチョなど曲者がそろっている。しかし、最後のレクイエムのくだりは、打ちきられたように、うまく締めくくれなかった感じがしてちょっと残念。
作品のツボ→これまでJOJOと表記されていたのが、イタリア語の発音に合わせて、GIOGIOに変更するという妙なこだわりを見せている。

ジョジョの奇妙な冒険 第6部 ストーンオーシャン 全17巻
荒木飛呂彦 集英社
 連載終了したと思ったジョジョだが、1年間の休載の末にジャンプに帰ってきた。今度の舞台は2011年フロリダの刑務所。主人公は空条承太郎の娘である空条ジョリーン
 かつてDIOの親友であったエンリコ・プッチ神父は、DIOが残した天国に行く秘密を探り出すために、承太郎とジョリーンを狙う。シリーズ初めての女性主人公というのは、奇抜な発想だと思うが、父親の承太郎を助けるために、今までの主人公と同様に傷だらけになって戦うのは、痛々しくて見ていられない。スタンドもストーンフリーという糸の固まりのスタンドで強く見えないし…。
 仲間もミジンコから進化したフーファイターズや、殺人鬼のアナスイなど、頼りになるんだか、ならないんだか、よく分からない。こんな状態で果たして、能力をCD化できるホワイトスネイクの能力を持つ神父を倒すことが出来るのか…。今の連載の時点ではDIOの骨が騒動を巻き起こしているのだが、まさかDIOが復活するのではあるまいね…。
作品のツボ→そろそろスタンドもネタ切れかと思うと、ドラゴンズドリームボヘミアン・ラプソディみたいな、トンでもない能力が出てくるから油断がならない。

しりももSHAKE 全1巻
榎本俊二 講談社
 ゴールデンラッキーやえの素でおなみの榎本テイストが、小学生向けになって展開される。このマンガには「しり見せごっこ」「はなくそ戦争」などの君達が見たことも聞いたこともない素晴らしい遊びがテンコ盛り。おまわりさんに捕まるから外でやってはいけないよ、というのは作者まえがきでの談である。最初は1ページ連載でスタートしたが、人気が出て2ページとなり、さらに雑誌のリニューアルにともない4ページとなった。しかし、人気が落ちて2ページに戻ったという複雑な経緯があるので、単行本は右から読み始め、途中で左から読むという、変わった作りとなってしまった。
 モーニングの連載ではお馴染みの、作者が得意とするウンコやおならのネタが、子供向けでも、全く衰えることは無い。というか、それこそ子供が喜ぶネタなのであろう。主人公は川崎だいすけ桃田よしおの二人の小学生。さらに尻見せ女と、二人が偶然に謎の呪文で呼び出した尻仮面によりドタバタ騒ぎが繰り広げられる。榎本独特のスピード感ある、コマの流れが見ていて気もち良い。
 そして全国の小学生から寄せられたキャラクターも次々と作品に登場。モンキーヘモグロンアホレイなど、子供が思い付くものには恐れ入る限りである。
作品のツボ→本とCD−ROMのセットで発売。CD−ROMの方は、動きもあり、おならの音もブーブー流れるので、お勧めです。
漱石事件簿 全1巻
原作・古山寛、画・ほんまりう 新潮社
 夏目漱石をはじめ、明治の世を舞台に実在した人物を絡めながら探偵小説の世界を、現実に浮き上がらせて行く。第一綴 黄色い探偵(前編・クマグス)の主人公は、粘菌の研究で知られる南方熊楠。彼が明治25年に英国に渡った時に、シャーロック・ホームズの生みの親であるコナン・ドイルに出会ったという設定で、捏造遺跡であるピルトダウン原人の謎を探っていく。理論的なホームズとは対象に、心霊現象に傾倒しているコナン・ドイルの一面が、探偵役の熊楠を対象に描き出されている。
 第二綴 黄色い探偵(後編・金之助)では、熊楠と入れ違いに英国に渡った夏目漱石が、ホームズのモデルであり切り裂きジャック事件にも関わったジョーゼフ・ベル博士に出会い、熊楠が解き明かせなかったピルトダウン原人の真相に直面することになる。
 第三綴の団子坂殺人事件は、明智小五郎の初登場作品であるD坂の殺人事件のオマージュで、漱石の向かいに明智のモデルとなった二山久が住んでいたことになっている。二山と二銭銅貨を発表する前の平井太郎こと江戸川乱歩が、黒田清隆の狂気が巻き起こす事件の謎に挑んでいる。マスコット的な存在の吾輩は猫であるのモデルの猫が良い味を出している。
 最後となる第四綴の明治百物語は、とくに事件が起こる訳では無いが、明治の最後の年に、日本を包みつつある黒い影の正体を、文人たちが語る百物語の場面から浮き彫りにしようとしている。熊楠や漱石、そして二山が一つに集い、その後の彼らの歩む道が照らし出されて行く。
 日本が、そして世界が大きな変革を迎えようとしていた時代に、大志を抱いたものたちにとっては、大きな可能性が示されていた。しかし、世界は暗い時代に向かい、天才達はその渦に飲みこまれて行く。そんな時代に誕生した探偵小説の魅力が充分に描き出されている作品である。
作品のツボ→中心となる人物以外に登場する、チャーリー・チャップリンや、芥川龍之介石川啄木柳田国男宮武骸骨たちくせものが良い味を出している。
『た行』

七夕の国 全4巻
岩明均 小学館
 東北地方の丸神の里出身の者には、物体に穴を空けることができる能力が伝わっていた。主人公である大学4年で就職活動中の南丸洋二にも、その能力の片鱗が表れていたのだが、せいぜい紙に小さな穴を空けることができる程度。あまりにもちっぽけなレベルの超能力に、こんな能力があっても何の役にも立たないとしか考えていなかった。しかし、里の出身者の中には、大きな力を手にして、世界を変えようとするものもいた。そうした争いに巻きこまれながらも、南丸くんは、自分の持つ力の正体を知るためにも、力の原点は何なのかを探って行くことになる。
 寄生獣の連載の後ということで、大きな期待を背負って、スピリッツで不定期連載された作品。しかし、民俗学宇宙人の存在超能力バトルなど、この先いくらでも膨らますことができるでテーマを抱え、いくつもの複線をはりながらも、打ち切り同然に唐突に物語りは終わってしまう。そのため、主人公の南丸くんは、大した活躍をすることなく、中途半端な存在のまま片付けられてしまう。もっとも、改めて読み返すと、南丸くんが実に普通の人っぽくて共感が持てたりする。
 超能力者でありながら、全編を通じて力の使い方を迷っているうちにほとんど能力を使わずに終わった主人公というのもすごい気がする。もっとも、この能力は使いすぎると思わぬ副作用があるので、彼の判断は正解だったわけだが…。
作品のツボ→穴を空けることができる能力者を「手の届くもの」、その穴の先の風景を見ることができる能力者を「窓を開くもの」といった呼び方をしているが、ここらへんの感性に岩明均らしさが出ている。
月館の殺人 上・下巻
漫画:佐々木倫子 原作:綾辻行人 小学館
 十角館の殺人など館シリーズでお馴染みの綾辻行人が原作を手がけた鉄道ミステリー。当初は鉄道館の殺人というタイトルも候補にあがっていたということだが、そういう意味では館シリーズの番外編とも言える。ちなみに月館は「つきだて」と読み、館の名称というわけではない。
 沖縄の高校生である雁ヶ谷空海は、母親が大の電車ぎらいだったこともあり、生まれてから一度も電車に乗ったことがなかった。常識から考えると、そんなことありえないと思われるが、2003年にゆいレールが開通するまで電車が走っていなかった沖縄だからこそ可能な設定である。そんな空海にも列車に乗る機会が、ついにやってきた。母親が亡くなり、それまで顔も見たことがなかった祖父に会うことになったのだが、そのためには特急「幻夜」に乗り込まなければならなかったのだ。その頃、首都圏で鉄オタを殺害して回るテツキラーによる連続殺人事件が発生していたが、テツキラーの魔の手は幻夜にまで及ぼうとしていた。
 しかし、空海が乗り込んだ幻夜には、トンデモない連中が集まっていた。切符や吊り革、果てはパンタグラフにいたるまで集めて回り、必要とあらば盗みまで働くコレクションテツの今福健至。時刻表を見ているだけで、全ての列車の運行状況を把握できる時刻表テツの沼尻孝一。全国の鉄道路線を制覇し、なおかつ日本中の駅のトイレやロッカーを全て使用する乗りテツの杉津治彦。週末になると必ず東京から山口に向かい山口線の写真を撮りまくる撮りテツの中ノ郷清。自宅のNゲージの総延長距離が東京〜大阪間に匹敵する模型テツの竜ヶ森集。以上のような感じで乗客全てが異常なほどディープな鉄オタばかりなのである。まともなのは空海を幻夜に送ってくれた日置健太郎と名乗る私立探偵だけだが、その彼の死体が発見されたことで、事態は混迷を深めていく。
 事件を複雑にしている原因の一つに、鉄オタたちが世間の常識から、かけ離れていることがあげられる。突拍子も無い行動をとる上に、いい加減なところがあるので、どうにも証言が信用できず、揃いも揃って事件を引っ掻き回しているとしか思えない。殺人事件が起きているのに、どこか緊張感に欠けるのも、彼ら鉄オタたちのキャラのせいである。綾辻行人の独特の世界観を、佐々木ワールドで包み込んでしまったコラボレーションは見事としか言いようが無い。月刊IIKIの編集長である江上英樹氏がディープな鉄オタであることから生まれた企画と思われるが、これまでにない鉄道ミステリーを誕生させてくれた。
作品のツボ→物語の骨子となる殺人事件を抜きにしても、鉄オタたちの自慢話だけでも、かなりおもしろい。中でも模型オタの竜ヶ森くんは、ほとんど口をきかないくせに異様なまでの存在感をはなっている。なお、主人公の空海もかなりの天然ボケで、常識ハズレの鉄オタたちを決してバカにすることはできないと思う。
デスノート 全12巻
原作:大場つぐみ 画:小畑健  集英社
 このノートに名前を書かれた人間は死ぬ。死神のリュークが落とした恐ろしい力を持つノートを拾ったのは、夜神月という一人の天才高校生だった。普通の人間ならば、恐怖のあまり使いこなすことができないであろうノートの力を、月は自らが腐れ切った世界を正すことができる神だと信じて、次々と悪人の名前を書いて死に至らしめていく。そして、何者かの手によって悪人が裁かれていると人々が気づき、彼のことを「キラ」と呼び出したとき、もう一人の天才が動き出した。そのLと呼ばれる男は、他に類を見ることが無い優秀な頭脳を持った名探偵で、独特の推理によってキラを追い詰めていく。
 正義の名の下にデスノートを使い始めた月だったが、自分の邪魔をするものは悪とばかりに、FBI関係者の名前をノートに書いて、次々と殺害していく。デスノートには「名前を書いてから40秒以内に死因を書けばその通りになる」「死因を書いてから6分40秒以内に死に至るまでの状況を書けば、死ぬ前の人間の行動を操れる」など、幾つかの細かいルールがあるのだが、天才である月はノートの持ち主であったリュークですら思いつかなかったような使い方をして、自分を捕まえようとするLの捜査から逃れていく。
 さらに、キラに憧れるタレントの弥海砂が、もう一冊のデスノートを手に入れ、第二のキラとなったことから、物語は複雑な様を呈していく。本来ならば月にとって味方であるはずの海砂だが、天才である月からすれば、自分の足を引っ張る存在でしかない。しかし、海砂にも死神のレムが憑いているので、ヘタに殺してしまうわけにもいかず、Lの追求と板ばさみとなる中、次第に追い詰められていく。しかし、一度はデスノートを手放すにまでいたったが、最終的にLとの頭脳戦に勝ったのは月の方だった。Lを死に至らしめ、誰も止めるものがいなくなった今、神の座につこうとしていた月だったが、Lを継ぐものであるニアメロが現れる。世論も警察の力も手中に収めた月にとって、Lよりも行動力に欠けるニアや、Lよりも冷静さに欠けるメロは、恐るるに足りぬ存在と思われたが、わずかなほころびから天才である月の計略は崩れていく。
 少年ジャンプ誌上で約2年間という連載は、決して長いものとはいえないが、少年誌では掟破りとも言えるストーリー展開は、読者にとって絶大なインパクトを残す。月やL、メロ、ニアといった天才たちのやり取りもおもしろいが、リュークやレムといった死神連中、さらには月の父親で警察幹部の夜神総一郎や、松田相沢といった刑事たちも魅力ある人物として描かれ、ノートをめぐる人間関係から最後まで目が離せない。
作品のツボ→キラを神と仰ぎ、絶対的な忠誠を誓い、その手足となって動いた魅上照。彼も悪人は死んでしかるべきという考えの持ち主だったが、その盲目的な忠誠心が仇となり、神と信じた月を追い詰めてしまうことになる。
鉄子の旅 全6巻+鉄子の旅プラス
菊池直恵 小学館
 漫画家の菊池直恵にトラベルライターと一緒に旅をして、その様子を漫画にしないかという企画が持ちかけられた。旅行漫画なら全国を旅しておいしいものが食べられると喜んだ菊池だったが、その目論見はトラベルライターが鉄オタだったことから、もろくも崩れ去る。旅の案内人となる横見浩彦氏は、鉄オタの中でも駅に対してすさまじい執着を見せる生粋の乗りテツ(特に古くて渋い駅がお気に入り)。すでに34歳にしてJR全駅下車という記録を達成し、この漫画の連載中に私鉄や第三セクターも含めた日本の鉄道の全駅下車という偉業の記録をなしとげた(その様子は第32旅に収録)。この全駅下車というのは、電車から駅に降りて再び電車に乗り込んだぐらいではカウントされず、改札から出なければならないという厳しいノルマを横見氏は自分に課している。
 そんな横見氏が企画するのだから普通の旅であるわけがない。第1旅では千葉を走るJR久留里線の全駅下車、第2旅では130円の切符で一都六県大回りの旅という過酷な行程に菊池さんは振り回されることになる。そもそも、何でこんな無茶な企画が始まったかというと月刊IKKIの江上編集長(かつてスピリッツで相原コージや吉田戦車、中川いさみなどを担当)がスイッチバックをこよなく愛する鉄オタで、横見氏の著書が目に留まったことがきっかけだった。しかも、編集部にイシカワさんという鉄オタがいたので、あれよあれよという間に企画が実現してしまったのである。このイシカワさんは鉄子の旅の初代担当となったのだが、第6旅で早くも2代目担当のカミムラさんにバトンタッチする。このカミムラさんは鉄オタでも何でもないのだが、菊池さんに続き横見さんに振り回される被害者第2号となる。
 そして、この漫画に色を添えてくれたのは、菊池さんやカミムラさんとともに横見さんのペースに振り回されてくれたゲストの方々。第8旅の銚子電鉄全駅下車の旅ではタレントの眞鍋かをり、第21旅の親子で楽しむ伊豆の旅ではフジテレビの笠井アナウンサーと子供達、第25旅の因美線オススメ駅めぐりでは秘境駅へ行こう!の著者である牛山隆信氏、第34旅・第35旅の北陸の旅ではホリプロのアイドル豊岡真澄鉄オタマネージャーの南田さんが参加している。
 この漫画の魅力=横見さんの魅力であるわけで、「30歳のころさすがにもう乗るものがなくなった」「この駅は世界中にここだけ」「時間が余ったからもう一往復」「居眠りなんかしたらぶっとばす」などの横見語録からも、そのすさまじさがうかがえる。ただし、彼の鉄道にかける愛と情熱だけは本物であり、この本を読んで同じルートを旅してみたいと思った人もいるはずだ。たぶん…
作品のツボ→横見さんが漫画の中で常に求めていたのが、鉄道界のアイドルとなるレールクイーンの存在。初代レールクイーンとなった横見さんの友人のきなこちゃんをはじめ、連載終了後も横見氏のサイトである横見浩彦WEB鉄道で、その数を着実に増やしている。なお、連載が終了した後になってアニメ化されたり、新潮社とのコラボなどの企画が行われたりして、何度か読みきりを載せているうちに単行本1冊分の分量がたまったので、鉄子の旅プラスが発行された。このプラスに収録された5つの旅を持って今度こそ完結となったようだが、これで本当に終わったのだろうか。
T・Pぼん 全5巻
藤子・F・不二雄  嶋中書店
 ドラえもんでもタイムマシンを使った時間旅行を何度もテーマに取り上げてきた藤子・F・不二雄が、タイムパトロールの活躍を描き上げた傑作が本書である。中学生の並平凡は寝起きが悪いのを除けば、その名の通りいたって平凡な男の子。その凡が偶然にもタイムパトロールの存在を知ってしまうことになる。タイムパトロールの秘密を知ってしまったものは、歴史上から存在を消される運命にあるが、凡を消してしまうと人類の歴史が大きく変わってしまうことが分かり(この歴史が変わる理由もすごい)、命を助けられた代わりにタイムパトロールの隊員として活躍することになる。
 凡は見習い隊員としてスタートすることから、その指導にはリーム・ストリームという女性隊員があたっている。そもそも彼女が凡に秘密を知られてしまったことが原因なのだが、歴史のルールを破りそうになる凡の行動にハラハラさせられ通しである。任務を進めるうちに凡が正隊員となったことから、途中でリームとはお別れになるのだが、今度は凡がタイムパトロールの秘密を知られてしまったことから、安川ユミ子という13歳の女の子が凡の相棒となる。
 タイムパトロールの使命は、歴史の中で不幸な死に方をした人を助けることにある。時間移動が可能なタイムボートを使えば、いくらでも人の命を救えるように思えるが、歴史の流れを変える人を助けてはいけない、物理的な力を加えて助けてはいけない、矛盾が生じるような無茶な助け方はしてはいけないなど厳しいルールが幾つも存在する。しかも、同じ時間を何度も行ったり来たりするのは危険なので、一度失敗したら取り返しがつかなくなるのだ。そんなタイムパトロール隊員を助けてくれるのが未来のアイテムの数々。その時代の文化や言語を一気に頭に叩き込む圧縮学習法、タイムパトロールを見た記憶を忘れさせるフォゲッター(凡はこれをすぐ押し忘れる)、動物を自由に操れる生体ラジコン、時間を止めたり遅らせたりすることができるタイムコントローラーなどである。また同じ時間を繰り返すのは危険なので滅多に使えないが緊急時には5分だけ時間を巻き戻すこともできる。
 かなり詳細にその時代の歴史や文化が描かれているので、ちょっとした社会の勉強にもなるが、取り上げている事件がマニアックでおもしろい。昭和22年のキャサリン台風で溺れたおばあさんを助ける、中世の魔女裁判で処刑された少女を助ける、沖縄戦で神風特攻隊として死んだ少尉を助ける、クレタ島のミノタウロスに生贄にされた若者を助ける、九尾の狐の疑いをかけられた玉藻を助けるなど、よくもこれだけの時代のことを調べて書き上げたものだと感心してしまう。
作品のツボ→タイムパトロール隊員が過去の人物を殺すのは最大級の犯罪だが、その掟破りの隊員を捕まえるエピソードがある。鯨を愛する隊員は捕鯨ブームのきっかけとなった男を殺そうとするのだが、捕鯨問題というのは実に難しいものだと思う。
デロリンマン 全2巻
ジョージ秋山 徳間書店(愛蔵版)
   魂のふるさとデロリンマン。彼は元々はエリートサラリーマンだったが、世の中に絶望し飛び降り自殺をはかり、その衝撃で醜い顔になり、イカレタ言動を繰り返すデロリンマンとして生まれ変わった。清新病院を抜け出しては、現代の救世主として人々に愛を説いて聞かせるデロリンマン。愛していた妻や息子からさえ化け物呼ばわりされ、嫌われ続けることになる。
 さらには、デロリンマンを傷つけることに喜びを見出す紅蜥蜴紅孔雀のコンビも登場。そしてデロリンマンが紅蜥蜴に崖から突き落とされたところで少年ジャンプの連載は終了している。そして、何事も無かったかのように、最初の設定に戻り少年マガジンで連載を再開する。ギャグマンガの要素を持ち合わせながら救いようの無い物語が展開されるデロリンマンだが、マガジンの連載では作者の画力が上がったので、なおのこと見ていてつらいものがある。
 マガジンの連載では息子の四郎までもが、途中で交通事故に会って独裁者ノーリターンになってしまう。子供ながら独裁者振りを発揮して、決めセリフは「そゆこというところすぞ」である。結局、最後まで愛が勝利することの無いデロリンマンだが、独特の読後感を残してくれる作品である。
作品のツボ→常にデロリンマンを冷たい眼で見続けるオロカメン。彼は強さこそ全てで愛は敵であると叫び続ける。オロカモノメ…。
賭博黙示録カイジ 全13巻
福本伸行 講談社
 アカギなどの麻雀漫画で人気を博していた福本伸行だが、カイジのヤングマガジンの連載により一気に一般にも知られるようになった。天性の才能を持つアカギの主人公と違い、カイジは何の目的も無く、ただ毎日を負け犬の人生を歩んでいたような男。そのカイジが、借金の肩代わりから乗りこんだ船、エスポワールで彼の勝負への執念が発揮されることになる。
 驚いたことに、その勝負というのが限定ジャンケン。グー・チョキ・パーのカードを各4枚ずつ持ち、勝って相手の星を奪えば勝ち。これほど命懸けのジャンケンはカイジとジョジョの奇妙な冒険第4部でしか見たことがない。そして、なんとか無事に船を下りることができたカイジは、それからも、死の鉄骨渡りや利根川とのEカード勝負など、危険なギャンブルに挑みつづけることになる。このあたりは。ギャンブル漫画家福本の能力全開。相手との駆け引きもさる事ながら、死に直面した際の人の心理の描き方もうまい。
 さらに、最後は悪の親玉ともいうべき兵頭会長とのティッシュ箱を使った当たりくじ勝負。貧乏青年の代表とも言うべきカイジと、有り余る金を持つ大人代表の会長との勝負の結果はいかに…。福本氏の絵はクセが有り、受けつけないという人も多いが(自分も最初そうであったのだが…)、読み始めたらはまること請け合いである。
作品のツボ→利根川との勝負で、「ヘビでいてくれてありがとよ」というカイジのセリフには、ただ戦慄するのみ。

賭博破壊録カイジ 全13巻
福本伸行 講談社
 会長との勝負に敗れ、どん底にまで落ちたカイジ。しかし、そのどん底の状況である地下強制労働所で、さらにカイジを苦しめる存在が現れる。
 賭博黙示録カイジから約半年の休載を経て、連載再開となったこの作品。ギャンブル中毒のようになって、再び現れたカイジを見たときには、いくらなんでもカイジがかっこ悪過ぎ、この調子で会長への復讐が果たせるのかと不安に思ったものである。しかし、作業所の班長である大槻とのチンチロリン勝負から、彼の研ぎ澄まされた牙が見えてきた。偶然にもチンチロリン勝負といえば、またもやジョジョの奇妙な冒険第4部を思い出してしまうのだが…。
 そして、チンチロリン勝負にもカタがつき、大量のペリカを手にしたカイジは、強制労働所からの外出権を得る。自分と仲間たちが自由になるには、この外出期間の間に、普通では考えられないぐらいの大金をつかむ必要がある。そんなカイジが選択したギャンブルはパチンコ。しかし、パチンコといってもただのパチンコではない。兵頭グループの配下にあるカジノに設置されたパチンコ台は、玉1個が4000円という、普通では当たることの無いパチンコ台「沼」。この沼はそれまでの敗者分の玉が蓄積されるので当たれば、何億もの金が転がり込む。おっさんと組んでイカサマをしかけるカイジに勝ち目はあるのか…。
 この先には、利根川の代わりにグループNO.2となった黒崎義裕もいるし、復讐すべき相手の兵頭会長までは、まだまだ長い道のり。そして、いよいよ賭博堕天録に突入していくのである。
作品のツボ→強制労働の後のビールは、漫画史上、最もおいしそうにビールを飲む場面だと思う。
『な行』

20世紀少年 1巻〜22巻
浦沢直樹 小学館
 子どもの時に描いた未来は、どれだけ実現したのだろうか。70年代初頭に輝かしい未来を想像した少年たち。しかし、その時に考えた世界滅亡のシナリオを大人になってから本当に実現させようとする奴がともだちの中に存在しようとは…。
 大阪万博で日本中が沸きあがり輝かしい未来を誰もが信じていた時代。学生運動の嵐が吹き荒れ、ロックのリズムに熱く魂を燃やしていた時代。子ども達はテレビに影響されて、誰もがヒーロー気取りだった。そんな時代の子ども達の中でリーダーとなっていたケンジ。彼は大人になってもヒーローにはなれず、好きなロックもものにすることができなかった。そして、昔遊んだ友達は、それなりの地位におさまって、ちゃんとした大人になっていた。
 しかし、彼らの中に恐ろしい力を持つ友達が存在した。その恐るべきともだちは2000年12月31日に世界を破滅させるために、子どもが考えた悪夢を現実のものとしていく。20世紀の少年たちは、21世紀を迎えることができるのか…。というところが第1部。
 結局、21世紀を迎えることは出来たのだが、世界はともだちに支配されていた。第2部の主人公はケンジの姪のカンナが主人公となって活躍する。うみほたるが海上刑務所となっているあたりなんか本当にうまい作りだと思う。現時点ではケンジの生死も不明だが、多くの謎と複線を張りながら、物語は第3部に突入していく。
作品のツボ→ともだちは、いつでも忍者ハットリくんのお面をかぶって正体を表さない。そこが、不気味なところで、裏切り者や邪魔者を消す時の言葉が絶交というところが恐ろしい。
『は行』

バオー来訪者 全2巻
荒木飛呂彦 集英社
 荒木飛呂彦がジョジョの奇妙な冒険の前に連載していた作品で、少年ジャンプで打ち切られた作品の中でも、最も打ち切るには惜しかったと語り継がれている名作。
 主人公の橋沢育郎は、寄生虫バオーによって肉体が強化されていく。しかし、その変化は自らの破滅にも繋がっている。このコンセプトならば、いくらでも長期連載にもって行けただろうに…。でも、この肉体強化というテーマがジョジョでは石仮面となって敵の能力で復活するのだから、さすが荒木先生、ころんでもただでは起きない。
 敵の組織であるドレスの登場人物も、幹部の霞の目博士や、全てのものを原子レベルに破壊するウォーケン、そして、サイボーグの体を持つドルド中佐(彼のデザインはジョジョの奇妙な冒険第2部シュトロハイムとして復活)など、魅力的なやつらばかりなのに打ち切られるとは、この頃のジャンプは名作があふれていたんだろうなあ。でも、おかげでジョジョの連載が始まるのだから、良しとしますか。
作品のツボ→必殺技の名前が無駄に長いってところがツボ。「バオー・リスキニハーデンセイバー・フェノメノン!」。 
バカ姉弟 1巻〜5巻
安達哲 ヤングマガジン連載中
 ヤングマガジンに隔週ぐらいのペースで巻末でカラー連載されている漫画。作者の安達哲は、以前ヤンマガでお天気お姉さんを連載していたが、それとは全く違った作風で姉弟の生活を描き出している。
 豊島区巣鴨在住の双子のバカ姉弟(推定3歳)。彼らは近所の人達からもバカ姉弟と呼ばれ可愛がられている。二人のお母さんは仕事が忙しいのか、一度も登場したことが無く、二人だけでたくましく近所を泊まり歩きながら生活をしている。それでも親からお金は、たくさんもらっているらしく、さらにお母さんの友達も姉弟を、しきり姉弟をかまってくれるので生活に困るようなことはない。
 独特のリズム感で話しが進んでいき、物語を膨らませるだけ膨らませて、何事も無かったかのように、唐突に終わったりする。この独特の物語の流れと、お姉ちゃんの額の広さからは目が離せなくなる。また、自分は巣鴨に住んでいたことがあるので、さりげなく描かれている巣鴨の雑然とした街の風景が妙に懐かしい。ちなみにバカ姉弟は、どんなに酸っぱいものを食べても甘いとしか言わない。
作品のツボ→ランドセルを持って、一人でものすごい勢いで回転を続けるくるくる坊やは、誰も邪魔してはいけない。
バキ全31巻
板垣恵介 秋田書店
 グラップラー刃牙の最大トーナメントで優勝したバキだったが、思わぬ強敵の出現を迎えることになる。シンクロニシティを知っているかの問いかけで始まったバキだったが、アメリカから絞首刑にされた死刑囚ドリアンが、イギリスから電気イスの刑でも死ななかった死刑囚ドイルが、ロシアからミサイル発射口で作られた刑務所から脱獄してシコルスキーが、海底刑務所の潜水艦を抜け出してスペックが、そして日本の特殊強化ガラスで作られた懲罰室を破壊して柳龍光が、示し合わせたわけでもなく時同じくして脱獄して日本にやってくる。彼らはそれまでの人生で敗北を知らずに生きてきた。最大トーナメントで優勝したバキならば、自分に敗北を味合わせてくれるかも知れない。そんな歪んだ望みのもと、バキに挑戦状を叩き付けてくる。
 地下格闘場は凶器以外は何でもありの戦いだったが、この死刑囚たちとの戦いは凶器の使用も許される、命の奪い合いにもなりかねない壮絶バトル。彼ら5人の無敵の死刑囚と戦うのはバキだけではない。最大トーナメントに参加した烈海王花山薫といった猛者たちも加わっている。それぞれが町を出歩いて、偶然に顔を合わせたらバトル開始というルールが話を盛り上げる。さらに、アントニオ猪狩鎬昂昇といった、これまでの登場人物も、うまい具合にバトルに関わらせているところがおもしろい。
 最大トーナメントに勝ち残った連中だから死刑囚など楽勝かと思いきや、身の回りにあるものが全て武器という連中ばかりで、逆に命を奪われかねない状況が続く。しかも、こいつらが異常なまでに生命力が強く、戦いが決着したかと思ったら病院を抜け出して再戦となったりして、バトル終了の判定基準が実に難しいのである。囚人ハンターのオリバまで参戦して、どうなるか分からない混戦状態となっていった。
 それでも、どうにか死刑囚との戦いを勝ち抜いたバキだが、死刑囚の一人である柳の毒手をくらって、瀕死の状態に陥ってしまった。その解決策として、一縷の望みをかけて参加したのが、中国で百年に一度、開催される武術大会である大雷台賽であった。その戦いにおいて、毒手に毒手をぶつけることで裏返ったバキは、以前よりはるかにパワーアップし、中国の武術の達人たちを赤子の手をひねるように倒していった。そんなバキに取って倒すべき相手として映るのは、父親である範馬勇次郎のみ。その前に立ちはだかった天才的ボクサーであるモハメド・アライJr.も瞬殺し、いよいよ父親との決戦にのぞむことになる。
作品のツボ→実は16巻までの間に主人公のバキは、ほとんど戦うことがない。グラップラー刃牙の頃から、あこがれのヒロインである梢江がいたのだが、彼女との恋愛を成就させるため戦いよりも、バキはそちらに夢中。死刑囚達とは、ほとんど脇役の登場人物が戦っている。一見、情けない主人公のように思えるが、守る彼女が出来たことで、戦ってみると以前よりもパワーアップしているという設定がすごい。
花の慶次 雲のかなたに 全18巻
原作:隆慶一郎 漫画:原哲夫 脚本:麻生未央 集英社
 隆慶一郎の時代小説「一俺夢風流記」をもとに北斗の拳でお馴染みの原哲夫が漫画化した作品。主人公は滝川益氏の次男で前田家に養子にだされた前田慶次(前田慶次郎利益) 。自由に生きることを信条とした慶次は傾奇者として知られていた。型にはまらない生き方をする慶次は、前田利家などから見ると、かなり目障りらしく、事あるごとに命を狙われることになる。
 かなり北斗の拳の影が残っている部分もあり、少女おふうに、どうしてもリンを重ねてしまう。また、キリスト教を普及しながらも、愛する女性のために捻じ曲がったカルロスはシンに見えるし、加賀忍軍の四井主馬も北斗の拳に出てもおかしなくない小悪党である。そんな花の慶次だが、慶次と忍の者との戦いは原哲夫の真骨頂。甲斐の蝙蝠風魔の小太郎との戦いは、北斗の拳と比べても決して見劣りするものではない。そして慶次を慕って集まってくる連中も、また風変わりなやつらばかり。爆弾を使う捨丸や、人の心を読む岩兵衛など、単純に良い奴では括れない連中ばかり。特に連載当初から登場しているは、慶次の命を狙いながらも仲間として付いてくる曲者である。
 また、大人向けの時代小説が原作だけあって、少年マンガながら、のキャラクターをはじめ、かなり際どい性表現があったりする。ただし、主人公の慶次の性格ゆえか、いやらしさは感じられない。さらに、豊臣秀吉伊達正宗千利休など実在の人物も数多く登場するが、他では見られない、かなり強烈な個性で描かれている。
作品のツボ→原哲夫は北斗の拳やサイバーブルーでも、登場人物のデザインをミュージシャンから持ってくることがあったが、この作品での真田幸村は、初登場時はどうみても長渕剛である。
風子のいる店 全4巻
岩明均 講談社
 寄生獣でお馴染みの岩明均が、その前に連載していた作品。高校生の風子は吃音の癖があり、学校の友人関係にも疎外感を感じていた。そんな風子が、強くなりたいという思いから始めたバイトが喫茶店「ロドス」のウェイトレス。人と話すことが苦手な風子だが、何故かロドスのマスターなど一部の人とは平気で会話をすることができる。そんなロドスにやってくる客は、誰もが一癖ある連中ばかり。そんな客たちと風子のやり取りが描き出されて行く。風子は自分でも気付いていないが、不安を抱えている人の拠り所となる所があるらしく、相談に乗るというよりは、からまれるような形で何故かこまったさんたちの受け皿的役割になることが多い。
 先に行き詰まったボクサーや、風子のどもりを楽しみにやってくるサラリーマン、果ては交通事故に遭って無意識で来店しまう人など、本当に様々な客がやってくる。そして、2年以上にわたりバイトを続けるうちに人間関係にもまれたせいか、風子も次第に成長してくる。その成長振りが、目立たないながらも確実な成長の仕方なのである。読んでいる途中は気付かないが、第1話とバイトを辞めることになった最終話を比べると風子が格段に成長していることに気付かされる。バイト先の喫茶店だけでなく、学校でも何かと問題に巻き込まれる風子は、大学受験恋愛問題などに直面しながら、自分の生き方を考えて行くことになるのだが、これを読むと高校時代というのは、自分の将来に不安を覚えながらも、生き方を模索する時代なんだなと感じさせてくれる。
作品のツボ→風子とともにバイトをすることになる女子大生のみさ子さんは、男にも負けない怪力の持ち主。風子から見ると頼りがいのある彼女も、コンプレックスを抱えており、風子とは好対称になっている。
変人偏屈列伝 全1巻
荒木飛呂彦 鬼窪浩久 集英社
 世の中には、どんな分野にも天才と呼ばれる人間が存在する。しかし、そういう人間は普通の人から見れば常軌を逸しているとしか思えないような行動をとることがある。この本では天才でありながら、異常としか思えない行動をとってしまった者たちを、多少の誇張はありながらも、独特の視点でとらえて漫画化している。
 本書はALLMANやウルトラジャンプに載った話を一冊にまとめたものだが、収録されているのは全部で6話。9年連続で首位打者に輝きながらも、その気性の激しさからチームメートからも嫌われた大リーガーのタイ・カップ。人と猿の中間の生物と言われたオリバーくんを日本に招き世間を騒がせた康芳夫。チフス菌の保菌者でありながら、賄い夫として多くの人に料理を出し、57人ものチフス病患者を生み出した腸チフスのメアリーことメアリー・マロン。ウィンチェスター銃のおかげで莫大な富を手にしながら、悪霊にとり憑かれていると思い込み、家を迷路のように改築してしまったサラ・ウィンチェスター。極度の人間不信に陥り、誰も入れないように家の中に数々のトラップを仕掛けまくったコリヤー兄弟。エジソンのライバルでありながら、歴史の影を生き続け地球を真っ二つにしてみせるとまで豪語したニコラ・テスラ。以上の6人(コリヤー兄弟は2人だから7人か…)のエピソードを垣間見ることができる。
 タイ・カップ、康芳夫、コリヤー兄弟、ニコラ・テスラは荒木飛呂彦の原案で鬼窪浩久の作画によるもので、腸チフスのメアリーとサラ・ウィンチェスターは荒木が原案と作画の両方を手がけている。荒木飛呂彦といえばジョジョの奇妙な冒険の作者であるわけだが、実在した人物のエピソードを描いているにも関わらず、作品からはジョジョっぽい雰囲気が強くただよっている。それは荒木作画による2作はもちろんんこと、鬼窪氏が描いた話でも同様である。なお、ニコラ・テスラの話は89年のスーパージャンプに掲載された作品で、他の作品と比べて飛びぬけて古い(他は2001年から2003年に初出)。本書は2004年に発行されたものだが、やっと15年前の作品を単行本という形で見ることができたのである。
作品のツボ→本書の発売がジョジョの奇妙な冒険の第7部にあたるスティール・ボール・ランの連載時期と重なったことから、レースのスポンサーの一人にウィンチェスターが名を連ねていたり、スティールが賄い夫の料理で腸チフスになった過去があるなど、微妙に物語がリンクしている。ハッタリをかまして大きなことをやろうとするスティールのキャラも康芳夫と重なるところがある。なお、スティール・ボール・ランレースが開催された1890年には、康芳夫以外の登場人物は全て生存していたことになる。
細腕三畳紀 全1巻
あさりよしとお 講談社
 三葉虫をテーマに描いた10話のオムニバス。本来ならば現代に生きていたら貴重な存在であるはずの三葉虫が、哀れなほどにいたぶられるのが基本的な流れ。三葉虫のちょっとした可愛らしさと、見事なまでの気持ち悪さが描き出されて行く。
 ある時はゆでられて、そしてまたある時は電子レンジでチンされて、さらには靴で踏み潰されて虐げられる三葉虫。しかし、時には地球の守護神として怪獣とも戦う三葉虫。ただし、エビの腐った臭いがするのがたまに傷。
 全編を読み返して見ると、三葉虫が食べられるというエピソードが、かなり目立つが、甲殻類というよりは虫に近い三葉虫は、やっぱりゲテモノの類といえるのでしょう。
作品のツボ→都会に出てきて、自分を変えるために怪人三葉虫男になった男の話は、ある意味でヒーローに倒される宿命の怪人の哀愁を、うまく捉えていると思う。
ぼのぼの 1巻〜33巻
いがらしみきお まんがくらぶ・まんがライフ連載中 竹書房
 このラッコの子どもを主人公にした4コマまんがは、もう10年以上の連載になるのではないだろうか。動物たちのキャラクターが可愛いので、ほのぼのとした4コマまんがと思って読んでいる人も多いかもしれないが、作品にはかなり深いテーマが込められている。
 児童心理をはじめ、心理学哲学的な見方で、この作品を読み解くこともできるのではないか…、自分はそちらは専門分野では無いのでなんとも言えないが、言葉で表現すると難しくなる、このようなテーマを、分かりやすくまんがで表しているように思える。もちろん、そんな小難しいことを考えなくても、シマリスアライグマなどのキャラクターの行動を見ているだけでも充分に楽しめるのだが…。
 シマリスも連載当初に比べて随分と成長したが、ボーズ君が成長した時には驚いたものだ。自分も少しは成長しないと、しまっちゃうおじさんにしまわれてしまうかも…。
作品のツボ→最近では主人公達よりも、ぼのぼののおやじアライグマのおやじ、はたまたクズリのおやじといった、おやじ連中に目が行ってしまう。
『ま行』

毎日かあさん 1巻〜6巻
西原理恵子 毎日新聞連載中 毎日新聞社
 自分の人生を質に入れていちかばちかの博打勝負で生きているような西原先生が、結婚したというのも驚きだが、生まれた二人の子どもの悪戦苦闘の子育て記録を毎日新聞で連載開始したと聞いた時には、もう世の中何が起こってもおかしくないと思ったものだが、そこは西原先生だけあって、我々の期待は裏切らない。家族の交流を描くはずの連載の途中で、夫とは別居し、ついには離婚してしまう。全て夫の鴨ちゃんの責任とはいえ、2巻に入ってたまに子どもに会える様子がいじらしい。
 連載開始時には4歳の息子と2歳の娘だった西原Jr。息子はすさまじくバカで泥まみれウンコまみれの毎日。娘の方は自分をかわいらしく見せる処世術にたけたつわものでありながら算数と音楽の無能ぶりは母親ゆずり。この二人を抱えて奮闘する母親の姿が描かれているといいたいところだが、その母親が西原だけあって、どこか投げやりで思わず親は無くとも子は育つということわざを思い出してしまう。
 1巻は「カニ母編」で幼児期のバカっぷりが炸裂、2巻は「お入学編」で息子は小学校に入学するが、学校から漫画にあまり描かないでと注意される始末(でも、そのことも漫画に描いてしまう)。読んでいる方としては小学校に入っても母親と手をつながないと学校に行けない息子が心配になってくるのだが、もうしばらく成長を見守っていきたいところである。ちなみになぜが2巻では石原東京都知事との対談が収録されている。そして、3巻「背脂編」4巻「出戻編」5巻「黒潮家族編」と巻を重ねるごとに子供も成長していき、5巻の時点では長男は小学5年、長女は小学2年となっている。大きくなるとバカなことをやらなくなると思うのだが、今後はどんな漫画になっていくのだろうか。
作品のツボ→娘のことがかわいくて仕方が無い、お父さんである鴨ちゃんのダメっぷりから目が離せない。アル中でさけを手放せないゆえに離婚することになり、入院して娘の運動会も見に行くことができない始末。その鴨ちゃんこと、鴨志田穣氏だが、2007年4月に亡くなられた。そのあたりのエピソードは4巻「出戻り編」に描かれているが、幼い子供を残したまま亡くなるというのは、悔いが残るところでは無いだろうか。
魔少年ビーティー 全1巻
荒木飛呂彦 集英社
 荒木飛呂彦の原点とも言える作品。ちょっと悪魔的な性格を持つ主人公のビーティーが、奇術的なトリックや、語りによるだましを使って窮地を切りぬける。
 荒木先生の絵柄は今と比べて随分と違い、どちらかというと遊戯王に似ている(というか遊戯王の第1話を見たときに、ビーティーかと思った)。たった、数話の話ながら警備員のサイコや、ヒットラーおじさんそばかす不気味少年(後のジョジョの奇妙な冒険第4部での小林玉美のモデルか?)など、荒木ワールド全開なキャラが揃っている。
 主人公のビーティーも正義の味方というよりは、ジョジョでいうならディオに通ずる悪のカリスマ的な部分があるように思えるのだが…。それにしても番長が使ったムカドタマーという表現は、妙に記憶に残るフレーズです。
作品のツボ→作品の語り手となる麦刈康一君は、ジョジョの奇妙な冒険第4部広瀬康一君として復活。
マッドメン 全1巻
諸星大二郎 ちくま書房
 ニューギニアの奥地から教授によって日本につれられてきた、少年でありながら部族の酋長であるコドワ。彼が現れてから教授の娘である波子の運命は動き始めた。
 マッドメンとは泥で作ったお面。これをかぶってニューギニアの部族は祭りの精霊に扮して行く。文明世界においても、彼らの掟は息づいて崩れることは無い。呪術は効力を持ち、それを破ったものには、容赦無く死が訪れる。このあたりはアフリカとニューギニアの違いはあるものの、ガダラの豚を彷彿とさせる。私達の尺度から考えれば、残酷なように思える風習だが、彼らのルールを変える権利は、私達は持ち合わせていないのかもしれない。
 話は後半から諸星大二郎の得意分野である日本神話とからめて、イザナギ・イザナミ神話とニューギニアのカワナギ・ナミテの神話を交差させていく。最後にコドワは、文明世界に飲まれるでもなく、部族の掟に縛られるでもない、自分の考えで生きていくことを選択する。この正義にも悪にも傾かない解決は、予測外の展開だった(絶対、文明を悪とする終わりになると思っていた)。
 ちなみに、暗黒神話とマッドメンの2作を読み返して気がついたのだが、どちらも隼人という青年(顔も似ている)の独白で、ラストに向かっていく。この一致は明らかに意識しているのだろう。
作品のツボ→人に憑き、たたりをなす悪霊アエンは、本当に恐ろしい存在だが、その正体は部族の風習を崩そうとする、文明世界の人間なのかもしれない。
魔法陣グルグル 全16巻
衛藤ヒロユキ エニックス
 甦った魔王ギリを倒すために旅だった勇者ニケと、グルグル使いのククリ。こんな風に書くとかっこいいヒロイックファンタジーのように思いますが、見事なまでにファンタジーの定石をはずしてくれます。ニケは力抜けまくりのへっぽこ勇者だし、ククリは天然ボケで失敗ばかり。
 そして、なんといっても登場人物における変体オヤジの割合が以上に高いのが特徴。キタキタおやじをはじめ、ヘッポコ剣法の使い手ゴチンコ魔法使いデリダ、ヘンテコ発明家アダムスキー地の王などなど。また、ギャグもマニアックなネタ多し。特にゲソックの森では、RPGの定石を、ひっくり返すような話が炸裂。
 しかし、それでいて妙なところでファンタジーのツボを突いてくるから油断がならない作品である。滅茶苦茶に話をすすめているように思っていたら、これまた滅茶苦茶に話のつじつまを合わせてしまう。随分前にチラッと出てきただけのエピソードやキャラクターが、見事に複線となってつながったりするからすごい。作中で勇者ニケくんが、決められた話なんかつまらないと言っているように、おもしろければ、ファンタジーの定石なんか破ってもいいじゃないかといった作者のスタンスがうかがえる。それにしても、予想以上の長期連載となって、どのように衛藤流の決着をつけるのか楽しみ。
作品のツボ→「勇者どの見てくだされ、わしのキタキタ踊りを!」。キタキタおやじことアドバーグが、こんなにも人気の出るキャラになろうとは…

南くんの恋人 全1巻
内田春菊 青林堂
 高校生の南くんの恋人のちよみは、ある日突然、手の中に入るほどの大きさになってしまう。そのことを知っているのは南くんだけ。ちよみの家族たちは行方不明になったと思って心配しているのだが、小さくなった体では顔を出すわけにはいかない。ちよみの洋服やお風呂をどうするか、南くんは頭を悩ませながらも、工夫をこらして乗り切って行く。
 また、二人が恋人関係であったことから、多少エロチックな部分も描いている。体の大きさが全く違う二人が恋愛を持続させようとするには、どのようなことが障害になるのかを、作者はコミカルな中にも、真剣に描き出そうとしたのだろう。ちなみに、高橋由美子がちよみになってドラマ化されたのを、覚えている人もいるだろう。
 そしてこの作品が、漫画界の中でも話題に残る名作として残っているのは、その衝撃的なラストにある。最終回で突然にちよみは不慮の事故で死んでしまうのである。それまで、ほのぼのとした二人の関係を描いていたので、まさか、ちよみが死ぬなんて誰も予想をしていなかった。この意外な展開は、突然の打ちきりとかではなく、作者の内田春菊が小さな生き物はいともたやすく死に、ここでちよみが死ななければ、自分にウソを付くことになるという考えから来ている。その真摯な取り組みには頭が下がる思いである。
作品のツボ→ちよみを修学旅行に連れていくために、考え出したお出かけハウスは、よくもリアルに考え出したと思う。結局、不備な点があって実現できなかったけれど…。
ムジナ 全9巻
相原コージ 小学館
 落ちこぼれ忍者のムジナは、父親のゴキブリから秘術跳頭の術を授かる。そして父の死をきっかけに、どんなことをしてでも生き延びることを心に誓うようになる。そこで、できるだけ危険なことには関わらないようにするムジナだが、その思いとは裏腹に、百鬼衆や卍の里の頭である百目木幻夜斎、そして影の首領である服部半蔵と命を掛けて戦うことになる。
 相原コージが、昔から強い思い入れを持っていた忍者マンガにチャレンジした作品。主人公のムジナは、それほど強くないだけにかえって感情移入がしやすい。話の途中では、実験マンガも試みられており、擬音に凝ってみる、欄外でつっこみを入れてみるなど、ともすれば作品の雰囲気を壊しかねないところを、危ういところで踏みとどまって見事に成功している。目玉まで飛び出しながらも、服部忍軍を倒して生き残ったムジナが、恋人のスズメと抱き合うシーンはかなり衝撃的。
作品のツボ→敵の百鬼衆は、手塚治虫のどろろ百鬼丸がモチーフとなっている。10人のメンバーのそれぞれが、耳が無かったり、鼻が無かったり、異様な大男だったりするが、リーダーである盲目の観世音のキャラクターは特に秀逸(ふんどしはげだけど…)。
『や行』

幽々白書 全19巻
富樫義弘 集英社
 最初は、ほのぼのとした霊界探偵ものでスタートしたのだが、少年ジャンプならではのバトルまんがに路線変更。この路線変更が作者にとって幸せだったのかどうかは定かでないが、結果的には人気が上がって大ヒット。
 それでも当初は試行錯誤の手探り状態だったが、どうも飛影というキャラが作者の波長と合ったらしく、一気に連載に勢いがつき始める。その後連載が続くにつれ、かなり危ないキャラクターが登場し始める。爆弾テロリストをモチーフにした、卑怯キャラナンバー1の戸愚呂(兄)と、ひたすら強さを追い求めた戸愚呂(弟)。そして、正義を愛するあまり、人間嫌いとなった多重人格の泉水忍という、究極の危ないキャラが登場することになる。彼の壊れ方は少年誌で許されるギリギリのラインだったのではないか(ある意味、このラインを超えちゃっているバスタードとかあるけどね…)。
 ちなみに、能力者の一人である御手洗清の名前は占星術殺人事件などで、活躍する島田荘司が生み出した名探偵から取られていると思われる。
作品のツボ→最後は魔界三国志になりそうだったが、作者が臨界点に達して連載が終了してしまった。残念な気もするが仕方なしといったところか。
『ら行』

ROOKIES 全24巻
森田まさのり 集英社
 かつては甲子園にまで行ったことのある名門校だったにも関わらず、試合中の乱闘事件がきっかけで不良のたまり場にまで成り下がった二子玉川学園(通称 ニコガク)野球部。そこへ現れたのが、いつの時代からやってきたと言わんばかりの熱血教師の川藤幸一。彼が自分の進退をかけて、タバコは吸うわ、物を盗むわ、暴力事件を起こすわの問題児ばかりの野球部をまとめあげていく。夢を見るものをバカにするな!という川藤先生のスタンスが熱い。しかし、川藤先生は野球のことなんか全く分からないので、ルールやサインも即興で覚えている困った監督なのである。部員たちには我慢をしろと言いながら相手チームの監督を殴ってしまう所なども良い味を出している。
 そんなニコガクメンバーは数少ない野球経験者(実は球拾い)であるキャプテン御子柴、何でも盗んできた50m5秒6の俊足でベースも盗む関川、ドレッドヘアーも決まっている岡田、バッティングセンターで90`を4回連続空振りの桧山、ビビリーキングでにゃーのかけ声を持つ湯舟、逆立ちで甲子園を目指すキャッチャーの若菜、自分の顔に向かって飛んできた球ならばホームランに出来る平塚、アンダースローで一本足打法でスイッチヒッターで平塚の友達の今岡、喧嘩も強いが打球も飛ばすスーパースラッガーの新庄、そして無類の女好きにも関わらずエースで強打者の安仁屋と、アパッチ野球軍にも負けないくせもの揃いの1年生10人。ご覧のようにチームメンバーの名前は、どれも阪神タイガースの選手から取られている。
 こいつらが2年生に進級して、晴れておとがめも解けて甲子園地区予選に出場。新しく大リーグを目指す天才の赤星と、その対極にある根性無しの濱中も加わり、周りから不良集団と見られているプレッシャーも何のその、快進撃を続けていく。連載開始から4年が立つが、主要メンバーが1年生の時に2試合、2年生になってから3試合の計5試合しか描かれていないというスゴイ野球マンガである。
作品のツボ→川藤先生は現代国語の先生だけあって、文学などから名セリフを引用することが多いが、「夢にときめけ!明日にきらめけ!」は、先生渾身の名ゼリフ。
るろうに剣心 全28巻
和月伸宏 集英社
 明治維新の際に維新政府側について、多くの幕府側の人間を殺した人斬り抜刀斎。その後、行方をくらませていた抜刀斎は、明治政府が完全に機能した頃になり、殺さずの誓いを立て、人を斬ることが出来ない逆刃刀を手に剣心と名を改め登場した。
 明治の世に再び姿を表した剣心は、抜刀斎の頃の鬼気迫る様子は消え、「おろー」が口ぐせの飄々としたキャラクターとなっていた。しかし、平和に生きようとする剣心の前には、元公儀隠密の四乃森蒼紫や、政府転覆をたくらむ志々雄真実、そして志々雄の配下である十本刀たちが次々と立ちはだかる。そして、かつて人斬り抜刀斎だったころに、恨みを買った連中が敵となる、雪代縁を筆頭とする私怨6人組との戦いは、自らの過去もろとも切り捨てなければならないすさまじい戦いであった。それにしてもグレネードランチャーを装備した鯨波兵庫の迫力はすさまじい
 文明開花の明治の世で、刀をふるった戦いが繰り広げられるというのは、少年マンガ誌上でも画期的な展開であった。登場人物も赤報隊にあこがれていた相良左之助や、新撰組三番隊隊長の斎藤一など、歴史好きを喜ばせてくれる。連載終盤で、殺されたと思われたヒロインのが、生きていたことで読者の不評を買ってしまったが、そんな些細なことを気にしないで、読んでもらいたい作品である。
作品のツボ→いつでも、さわやかな笑顔を浮かべながら、人を殺す瀬田宗次郎の壊れた性格は、なんとも魅力的。(ちなみに彼は大久保利通の暗殺犯)。

レベルE 全3巻
富樫義弘 集英社
 宇宙人はすでに地球にやって来ている。そう、どこかの星のバカ王子もきっと地球にやって来ている。富樫義弘が幽々白書の後の、長い休載の後に少年ジャンプに、この問題作を引っさげて帰ってきた。
 少年誌のレベルをはるかに超えた高いクオリティを誇り、ネームにかなりの労力を裂いているものと思われる。もちろんこれだけのレベルを週刊連載するのは不可能な話で、不定期連載という特別な形をとっていた。しかし、この当時の少年ジャンプはドラゴンボールスラムダンクも終わり低迷期にあったので、この作品がジャンプの読者離れを防ぐ最後の切り札となっていた。
 小学生の5人組みを、むりやり戦隊ヒーローにしてしまうカラーレンジャーのエピソードは、RPGツクールの実体化など富樫の遊び心がうまい割合で入りこんでいる。短い間に燃え尽きて全3巻で終わった作品だが、強いインパクトを残すことになった。
作品のツボ→単行本にも収録されているが、ページいっぱいに文章で埋め尽くされている話がある。ジャンプ誌上で見たときにはページを開いたとたんに驚いたよ。
『わ行』

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